奇跡論法とは「ある科学理論について,現在の科学の成功はその科学理論が経験的に妥当でなければ奇跡になってしまうから,その科学理論は経験的に妥当なはずだろう」という,科学理論の経験的妥当性(ないしは科学理論の指示対象の実在性)を擁護する議論である.以下ではこの議論の数式による定式化を試みる(cf. Sprenger (2016)). なお,奇跡論法を含めた科学的実在論争については以下の戸田山の本に詳しい. 科学的実在論を擁護する 作者:戸田山 和久 名古屋大学出版会 Amazon :科学(理論)の(予測や説明の)成功 :科学理論が経験的に妥当 として,奇跡論法を考える.奇跡論法の中心的前提は以下の…