【平家物語 第2巻 少将乞請①〈しょうしょうこいうけ〉】 丹波少将|成経《なりつね》は、 その夜、院の御所の宿直で、まだ家には帰っていなかった。 そこへ、大納言の家来が、急を知らせにかけつけてきた。 始めて、事の子細を知った少将の驚きも深かった。 それにしても、宰相《さいしょう》殿から、 何ともいってこないのは変だ、と思っていた矢先、 宰相からも使いの者がとんできた。 宰相とは、清盛の弟 教盛《のりもり》のことであるが、 教盛の娘が成経の妻になっていたから、 成経には舅《しゅうと》であった。 「何事か存じませぬが、清盛公から、 西八条へ出頭するようにというお達しが参っておりますが」 宰相の使い…