雲の上に 思ひのぼれる心には 千尋《ちひろ》の底もはるかにぞ見る 右方(権中納言側)大弐の典侍の、 伊勢物語に対しての意見 〜雲居の宮中に〈思い〉上った正三位の心から見ますと 伊勢物語の千尋の心も遥か下の方に見えます 【千尋→業平の噂。伊勢73】 次は伊勢《いせ》物語と正三位《しょうさんみ》が合わされた。 この論争も一通りでは済まない。 今度も右は見た目がおもしろくて刺戟的で宮中の模様も描かれてあるし、 現代に縁の多い場所や人が写されてある点でよさそうには見えた。 平典侍が言った。 「伊勢の海の 深き心をたどらずて ふりにし跡と波や消つべき ただの恋愛談を技巧だけで綴《つづ》ってあるような小説…