前回読んだ勢古浩爾『ただ生きる』という本の中で、鴨長明の『方丈記』について触れているところがあった。(正確には玄侑宗久『無常という力ーー「方丈記」に学ぶ心の在り方』という本についてだが) それでなんとなく『方丈記』を読んでみたくなった。 『方丈記』は文庫でも何種類か出ているが、今回選んだのは蜂飼耳の現代語訳による光文社古典新訳文庫(2018)である。自慢じゃないが、現代語訳がないと読めない。 『方丈記』といえば、冒頭の文章と、都を襲った数々の災害(火事、竜巻、飢饉、地震)の記録の部分が有名で、確か高校の授業でもその辺りを読んだ(読まされた)記憶がある。 しかしそれは『方丈記』の前半だけで、後半…