『裏表太閤記』の続き。二幕目一場「備中高松塞の場」。ここからいよいよ幸四郎が登場。しかし秀吉ではなく鈴木喜多頭重成と云う毛利方の武将の役。『義経千本桜』が題名にある義経が必ずしも主役でない様に、この狂言も「太閤記」となってはいるが、秀吉としての出番は必ずしも多くはない。そしてこの「備中高松塞の場」が、この長い芝居の中でも白眉とも云うべき場になっていた。 この場は史上名高い秀吉の備中高松城の水攻めの場面である。幸四郎演じる鈴木喜多頭重成は高松城の城主清水宗治の家臣で、自らの塞を守っている。幕が開くと見張りの兵がおり、その中に現役最高齢役者の寿猿がいる。他の兵に「敵は幾人いる?」と聞かれて「今年で…