1948年、東京都生まれ。情報科学研究者。 東京大学工学部計数工学科卒業。株式会社日立製作所に勤務しコンピュータ・システムの研究に従事。この間、スタンフォード大学に客員研究員として留学。1986年同社を退職、明治大学助教授を経て、明治大学教授。現在、東京大学大学院情報学環 ・学際情報学府教授。 著書『秘術としてのAI思考』(筑摩書房)、『AI―人工知能のコンセプト』(講談社)、『文科系のコンピュータ事始』(有斐閣)
人間はいつか死ぬのに、多くの野心的な行動をとり、意欲的な意思決定をする。非常に不思議である。身近な例であれば、会社に入り出世したいと考える。最終ゴールが代表取締役だとして、その先に何があるだろうか。あるいは、学問の世界では教授になり、より優れた業績を残すことだとして、その先に何があるだろうか。「向上心」といえば、聞こえがいいが、あきらめが悪いとも言い得る。結局、その先は死というゴールでしかないのに。 一方で輪廻転生の考えを受け入れると、来世において今生の努力が実ることもあるので、努力し続けることに意味を見出せる。私は輪廻転生肯定派なので、そのような思考もあり得るわけだが、今の努力は来世のためと…
工学博士である先生からのご指摘であるところが興味深い記事です。 日経新聞より。 www.nikkei.com (有料会員限定記事となっております。ご了承ください) この記事で語って下さっているのは、東大名誉教授の西垣通氏。 記事のプロフィールによりますと、東大工学部計数工学科卒の工学博士で、 日立製作所などでコンピューターソフト開発に携わった後、 東大教授などを歴任、となっています。 先日のブログでもご紹介したとおり、 本年度から情報科が高校の必修科目になり、 2025年からは大学入学共通テストで「情報」が必須科目となります。 そのような中で、西垣氏はこのような指摘をされています。 「教育の拡…
書誌情報:永岡書店,223頁,本体価格1,500円,2020年6月10日発行英語で話せる日本図鑑 増補・改訂版永岡書店Amazon日本の買い物,食事,観光,伝統文化などイラストと写真満載の,日本人が英語話者に説明するために使える図鑑。もしもの必要になったらスマホを使うことになるだろうが,読んで楽しい。 特産品と郷土料理のページには「愛媛 Ehime pref. みかん mandarin」とある。みかんだけだと和歌山がトップだ。柑橘類としていろんな種類があるとの説明がふさわしい。 温泉に道後温泉があった。他の温泉は火山性だが,道後は地熱。♨も奥が深いのだ。日本語→英語の裏にはなにを一言で説明する…
いつもの 新基礎情報学 新 基礎情報学 ―機械をこえる生命 作者:西垣 通 NTT出版 Amazon トランス・ヒューマニズムとその行きつく先にあるホモ・デウスに対抗するための哲学。良書。 生命と機械の違いを考察しながら、そもそも情報とはなにかを見ていく。 私がスチュアート・カウフマン(複雑系の理論生物学者)に傾倒しているのもあって、この本の考え方にしっくりきた。 『ホモ・デウス』を読んだときに違和感、トランス・ヒューマニズムへ微妙に相容れなさがあったが、もともと一神教の考え方をベースにしているという説を読んでなるほどとなった。 AI原論 神の支配と人間の自由 AI原論 神の支配と人間の自由 …
NHKのテレビ番組、「100分de名著」、「日蓮の手紙」を見て、日本の思想の変遷を辿ってみたいと思ったので、この記事を書くこととなった。 まず思想とは、人々の言動の基礎としての知識体系となるものである。 その前に、これは単なる私の私見であることを申し添えておきたい。 日本においては、古代(原始時代のあと大和、飛鳥、奈良、平安時代:古代は王朝が支配する時代)は、占いや神話が、人々を導く思想(占いと神話の時代)であった。しかし、それは大和時代(大和朝廷による古代国家の基礎が整えられた時期)までであって、その後、仏教が国を治める思想として取り入れられた。それは、仏教に帰依していた推古天皇が、592年…
今日は特別寒い。-8℃。 「ネットとリアルのあいだ」に二種類の自己があると書いてある。これがラカンの三界ともつながるのではないかと感じる。 私(自己)という存在は少なくとも二種類に大別できる。「言語的自己」と「身体的自己」〇「言語的自己」とは意識的な存在で、いつどこで生まれた、職業、経歴、趣味といった社会的プロフィールで記述される。と同時にそれは理性と結びついており、合理的な推論を行うことができる。人格と呼ぶ。〇「身体的自己」とは半ば無意識的な存在。自分がどういう身体状況にあり、何を知覚し、どういう気分であるかなどの体験についての直感的印象のまとまりで、感情(情動)の源泉をなし、身体技能とも関…
2021年、NFTの全世界での売上は2.5兆円を超えたそうである*1。その前年が100億円程度だったことを考えると、凄まじい成長である。それがどれくらいの規模かをイメージするのに、日本のインターネットメディア広告費を思い浮かべるといいかもしれない。100億円規模だったのは1998年、2兆円を超えるのは2019年だ。全世界と日本とでは同一条件の比較とはいえないが、それでも、あるところでは21年かかった成長を、わずか1年でやってのけたマーケットがあったのだから、突如のデジタルゴールドラッシュに人々が沸き立つのも無理からぬ事だろう。 しかし、そんな話を聞けば聞くほど、胡散臭さに身構えてしまうのが心理…
ふとTVドラマを見たら、そこに出てきたセリフに引き付けられた。「ミステリと言う勿れ」月曜日9時随所に出てくる主人公が語る言葉が面白い。 『ネットとリアルのあいだ』西垣通著を何度も読んでいる。昨日も病院で30分ほど読んだ。持続時間はこれくらいでちょうどよい。一度目に読んだときはわからなかった。三度目で少し見えてきた。 「読書百遍意自ずから通ず」である「習うより慣れろ」であるからいつも要約を書いている「百聞は一見にしかず」だからそれまでの経験を思い出している言葉と身体技能を結び付けている。 FBが「子どもむけインスタのアプリ開発」で提訴されている。FBは社名をメタに変えて、「メタバース」というバー…
自分は二十数年前の学生時代に(科学としての)認知科学に魅了されて今に至るのだが、その中で認知科学への無理解な批判には何度も会っている。認知科学を一時の流行とか過去の遺物とか言ってた奴らは、欧米の事情を知らないただの無知なので付き合うだけ時間の無駄でしかない。それよりも頻繁に聞いた典型的な批判がある 人間など生物を、機械的な情報システムとして分析するだけでは不十分なのだ。だが、AIばかりかバイオ技術の関係者も同じ罠に陥り、データ至上主義にたどりつく。 西垣通「巻頭言 人間が神になる未来を阻止しよう」 より これは、この前の第三次人工知能ブームの頃の西垣通の言葉だ。しかし、心は計算できないだの、脳…
災害への備えと怒った後の行動については予め考えておく必要がある。 増田寛也。東日本大震災からの復興と政策形成。大変な被害。岩手宮城福島の3県は死者など。岩手県知事をしていた。日本は災害列島。台風や噴火。災害については事前の防災体制を。必ず被害が出るので事後の復旧復興をどのように構築するか。行政の役割が重要。大変被害が出たがそれ以降は予測精度も上昇した。しかし地震の予知は困難。緊急地震速報が。一瞬のことだが心構えを。尚更事前の防災体制や事後の復旧復興を。非常時の行政について東日本大震災を例に。東日本大震災とは。三陸沖で9.0。1900年以降の中でも4番目。04年のスマトラ地震。9.1。死者行方不…
昨日は午前中に離れの雪下ろしと車庫の雪下ろしで二時間ほど。図書館で二冊本を借りて、司書の方といろいろ話す。午後は高鷲古文書を読ままい会。 読ままい会の参加者は10名。新しく2名参加。鷲見大鑑の資料としての位置づけーどれだけ正しいのか―という話が出た。そこに書かれていることが正しいわけではない。特に書いた時よりもずっと以前のこととなると、「事実かどうか」よりも「なぜそう書いたのか」の方が問題提起として楽しい。テクストとして読むということだ。でも、つい「ホントかウソか」で見てしまう。 さて、借りた本『ネットとリアルのあいだ』西垣通著についてこの中に人間の意識が生まれたのはほんの3千年前だということ…
人間をこえる人工知能という、一神教的世界観を引きずったトランス・ヒューマニズム(超人間主義)の思想に根をもつ近未来の世界像に異を唱える西垣通の基礎情報学の3冊目のテキスト。最新の学問動向に反応しながら、ネオ・サイバネティクスのひとつの流派としての基礎情報学が担うべき批判的視座を明らかにしていく。 自律閉鎖系の創発的システムなのか他律開放系の命令準拠的システムなのか、意味を理解し創造するシステムなのか統計的優位性や論理演算結果をデータから析出するシステムなのか、はたまた「ウィーナー・パラダイム」なのか「ノイマン・パラダイム」なのか、「サイバネティック・パラダイム」なのか「コンピューティング・パラ…
謎床、なぞどこ。 謎を生み出すための苗床や寝床のような安らいつつ生気を育む場という意味でつけられたタイトル。 ぬか床で漬物をつけているという情報工学が専門のドミニク・チェンが、正解を導くために必要とされるある謎を生む必要があり、謎を触発したり提示したりする師弟の場や読書探索の場をもつ必要があるということで、発言されるにいたった造語。 ぬか床のように、手入れを怠ったり漬けぐあいの判断を誤ったりすると、発酵から腐敗に変わってしまうことも念頭に入れつつ、謎床もいい謎が出てくるように手入れをしていかなければいけないという、ドミニク・チェンの思いは、松岡正剛とも共鳴し、対談全体を象徴するすぐれたタイトル…
資本主義経済下で実学志向の御用学問としての色合いをますます強めていっている専門家による専門知の凋落傾向と、スポンサー重視の情報発信がもたらす弊害を、より強く感じるようになった二十一世紀の社会。あわせて、インターネットという情報インフラの進展で加速された高度情報化社会がもたらした、大衆レベルから発信される情報の集積として像を結ぶ「集合知」に対する期待。著者自身は情報工学のとびきりの専門家で、専門家が本来担うべき知に対する真摯な態度と検証を経た専門知の提供に専念することを推奨する一方、新たに脚光を浴びるようになった集合知に対しては過剰な期待を抱くことなく、適切な水準での利用を推奨するというスタンス…
以上述べた全ては従来から存在しており、ただ現在の装置や機械を未来に延長したものにすぎない。とはいえ、それは連想索引法への直接の手がかりを与えてくれる。連想索引法の基本的なアイデアは、どんな事項からでも他の望みの事項を、瞬時かつ自動的に選択するようにできる、という点にある。重要なのは二つの事項をむすびつける過程なのだ。 ユーザが事項間をむすぶ検索経路を作るときには、その経路に名前をつけてコード表に挿入し、キーボードをたたく。目の前の隣り合った画面に、結合される二つの事項の内容が映し出される。各々の下部に空白のコード記入用の欄が幾つかあり、各々そのうちの一つを指すようにポインタがセットされる。キー…