『角の国』 ありふれた話かもしれない。 それでいいのなら。 ◇ 幾何学模様が刻まれた、果てなくつづくガラス面の上に立っていた。 ガラスの底には光を透かせたなめらかな琥珀色の液体が流れ、私の足もとにはゆらめく波紋が反射している。それらはすべて小さな気泡を帯びており、まるで広大な炭酸泉の宇宙に浮かんでいるような錯覚に陥った。 見上げた先には、広大なカウンターテーブルのような景色が左右一面に伸びている。テーブルを境界にして、私側には一定の間隔でずらりと並ぶ無数の黄色いカウンターチェア、その向かいには同じ数だけ、人のような姿が見えた。 不思議な心地よさを感じながら私は、ゆっくりとその景色に向かって歩き…