これは父親が買った本である。奥付をみると昭和50年12月5日初版発行とあるから、僕が生まれる前後に買った本だろう。昔の実家の本棚の一角に刺さっていたのを記憶している。そのすぐそばには『家畜人ヤプー』の函入りの単行本があった。大江健三郎の分厚い本もあった。子供というのは妙にそういうことを覚えているものだ。いやしかし、それはある段階で脳が編集した偽の記憶であるかもしれない。いずれにしても、僕がはじめて触れたマーダーケースの本が今、手元にある。 当時まだ30半ばだった父親がある晩に『名探偵13人登場』を取り出し、朗読をはじめた。傍らに僕と弟がいた。僕は小学校低学年、弟は未就学児だった。 ヨコミゾセー…