いつか王子駅で (新潮文庫) 作者:敏幸, 堀江 新潮社 Amazon 『いつか王子駅で』堀江敏幸著を読む。 エッセイのような不思議な味わいの小説だ。長い文章なのだが、軽やか。主人公は、講師をしたり、翻訳、大家の孫娘の家庭教師などをしながら、のんしゃらんな暮らしをしている。気が向けば、格安で買い求めた中古自転車で遠乗りしたりと。 書かれている世界は、どちらかというと、詫び寂びっぽい。取り立ててこれといった大きな出来事は起きない。平凡な毎日なのだが、その中にだって凝視すれば、出来事は幾らでも転がっている。 彼は、定食屋兼居酒屋で印鑑職人と知合う。銭湯で出くわしたら職人には刺青が彫られてあった。本…