昔は何も深く考えることができずに、 あの騒ぎのあった時も恥知らずに平気で父に対していたと思い出すだけでも 胸がふさがるように雲井の雁は思った。 大宮の所からは始終|逢《あ》いたいというふうにお手紙が来るのであるが、 大臣が気にかけていることを思うと、御訪問も容易にできないのである。 大臣は北の対に住ませてある令嬢をどうすればよいか、 よけいなことをして引き取ったあとで、 また人が譏《そし》るからといって家へ送り帰すのも軽率な気のすることであるが、 娘らしくさせておいては満足しているらしく 自分の心持ちが誤解されることになっていやである、 女御《にょご》の所へ来させることにして、 馬鹿《ばか》娘…