権勢の強さの思われる父君を見送っていた令嬢は言う。 「ごりっぱなお父様だこと、あんな方の種なんだのに、 ずいぶん小さい家で育ったものだ私は」 五節《ごせち》は横から、 「でもあまりおいばりになりすぎますわ、 もっと御自分はよくなくても、 ほんとうに愛してくださるようなお父様に引き取られていらっしゃればよかった」 と言った。 真理がありそうである。 「まああんた、ぶちこわしを言うのね。失礼だわ。 私と自分とを同じように言うようなことはよしてくださいよ。 私はあなたなどとは違った者なのだから」 腹をたてて言う令嬢の顔つきに愛嬌《あいきょう》があって、 ふざけたふうな姿が可憐《かれん》でないこともな…