『逃避めし』/吉田戦車/イーストプレス/2011年刊 フリーライターをしていた頃、必要もないのに弁当を作っていたことがある。寝る前に炊飯器のタイマーをセットして、朝、炊き上がった米を弁当箱に詰め、おかずを載せて、冷めたら蓋をして、大判のハンカチで包んで置いておく。どこに出かけるのでもない。弁当を詰めたキッチンから十歩くらいの仕事机で、昼飯時になるとそれを広げて食べる。ちょっとバカみたいかなあと思いながらも、自分で自分のために作って自分一人で食べる「自分弁当」が私はわりと好きだった。 スパゲッティを茹でたり冷凍ご飯にレトルトカレーをかけるだけでも、じつはそれなりに頭を使う。「ツナ缶、これが最後だ…