片倉 健『三宝寺池』 考えさせられる画だ。反射景は近景か遠景かという問題である。 石神井公園の有名な池の畔だろう。午後深くの黄ばんだ陽射しも、枝葉に阻まれて林の根まわりにまでは届かない。水面も深い色に沈んだままである。 空と雲とが遠景をなす。半分落葉した高木とうっそうたる常緑樹とが中遠景をなす。池の畔で柔らかい光を浴びて鈍く色を放つ雑木類が中近景である。画面構成上で近景と称べるのは水面ばかりだ。そこにはさらに鈍い色合いで、中近景の雑木類が反射して見える。 水面は近景だろう。だがそこに映った樹木の影も近景だと云えるか。それとも地上の樹木と同じく中景か。さらには画家の想念のうちでは、近景でも中景で…