まだ私の退職は社内で公表されておらず、ごく限られた人間にしか伝わっていません。上司に退職の意思を伝えてから少しずつ書き始めていた引継書は案外早く仕上がって、後はそれを誰に託すか会社が決めてくれればそれで終わりです。 来年の年明けから、私はどこの組織や団体にも属さなくなります。思えば、物心ついてから集団の中での自分を演じてきたわけですから、肩書のない人間になるのは自分の意識の中では初めての経験です。 それがどのようなものなのか、今のところ実感が湧きませんが、不安や焦りは感じません。むしろ逆で、安堵の気持ちで満たされています。 ずっと私にまとわりついていた得体の知れない焦燥感のようなものは、仕事を…