「実際死にたくないと思わなかった。」 これはある老人の話。 居酒屋でたまたま出会った老人は続けてこう言う。 「ただ敵隊に体当たりする。敵戦艦を自分がやっつけてやる。」 「勇ましく死ぬことが名誉だと使命感に燃えていた。」 老人は特攻隊だった。 「たまたま俺は生き残っちまったがな」 「知り合いはみんな死んじまったよ。」 「俺は悔やんだ。なぜ俺だけ生き残ったんだって。家族のもとに帰るのが恥ずかしかった。」 自ら死に向かっていく。 おれには考えられなかった。 仮にその時が来ても、おれは必至で拒むだろう。 「なんでそんなに?」 「バカ!当時はみんなそうだ!最後の晩餐はメシいっぱい食って、家族には喜んでく…