ある地点の粒子の状態に関する情報を量子力学特有の性質を利用して別の地点の粒子に瞬間的に移すこと、また情報が移るその現象。
つまり量子テレポーテーションは「テレポーテーション」と名前がついているが、実際は単なる情報のコピーである。ただし、使用可能な情報自体の伝播速度は光速を超えない(詳しくは下記参照)。またSFなどで言うような、単純に物質が瞬間移動するという意味のテレポーテーションではない。
理論的予言はすでになされていたが、1998年古澤明博士*1らによって、実験的には初めて光の量子である光子の量子テレポーテーションが実現された*2。
2013年、東京大学の古澤明教授らの研究チームが、光の粒子に乗せた情報をほかの場所に転送する完全な「量子テレポーテーション」に世界で初めて成功したと発表*3。
「任意の量子状態の完全コピーを取ることは出来ない」という量子複製不可能定理に反するように思うが、確率1で成功するわけでもないし、複製元の破壊を伴うのでこの定理に反さない。
ある種の「関係」をもつ「情報の担い手」のペアがあるとする。この「関係」を維持する限り、空間的に離れていても構わない。この片方に別の「担い手」と相互作用させる。このとき、「関係」を通じて相互作用がもう一方の「担い手」に伝播する、というのが大雑把な説明である。
情報が瞬時に伝わるように見え、相対性理論の要請である、「何者の速度も真空中の光速度を超えることは無い」に違反しそうであるが、この手続き中に、古典情報を送信する部分があり、そこが光速を超えないので、この一連の手続きが光速を超える情報の伝達になることは無い。
また、「担い手」の輸送も光速を超えられないので、ここからも光速を越えての情報の伝達はできないことが分かる。
技術的には現在の技術で十分可能であり、「担い手」を変えてさまざまな所で盛んに研究されている。
Entangled stateをあらかじめ共有しておくことで、量子状態を直接送ることなく、古典情報の送信のみで量子状態を伝送するプロトコルの事。
及び、
で張られる2つの量子2準位系
の合成系
上にentangled state
を用意する。
送信者(Aliceとする)は、で張られる量子2準位系
と、
を持ち、受信者(Bobとする)は
を持っているとする。
Aliceは上で、正規直交基底
*4に対応する測定を行い、その測定に関する情報を(古典通信路で)Bobに送る。
Bobはに対し、
に対応するunitaryな時間発展を行うと、
の終状態は
の初期状態に一致する。
*リスト:リスト::物理関連
*1:2007年8月14日現在・東京大学工学部物理工学科教授
*2:参考:http://www.jst.go.jp/kisoken/seika/zensen/09furusawa/index.html; A. Furusawa et al., Science 282, 706-709, 1998; H. Yonezawa et al., Nature 431, 430-433, 2004
*3:http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130815-OYT1T00283.htm
*4:はPauli行列