宮沢賢治は「風野又三郎」という童話を二つ書いています。最初の作品は1924(大正13)年、『注文の多い料理店』を出版した頃に作られましたが、生前には発表されませんでした。次のような独特な文章で始まります。 どっどどどどうど どどうど どどう、 ああまいざくろも吹きとばせ すっぱいざくろもふきとばせ どっどどどどうど どどうど どどう 谷川の岸にある、先生が一人で生徒は二十人の「小さな四角な学校」が舞台です。夏休み明けの9月1日に生徒たちが学校に来ると「おかしな赤い髪の子供がひとり一番前の机に」座っていたのです。その子は鼠色のマントを着て水晶かガラスでできたすきとおった沓をはいており、顔は熟した…