これは、「才能がある」ってことの悲劇性を描いた物語なんだ、と最近読み返して腑に落ちた。 物語はふたりの男をメインに据えて進んでいく。ひとりは、飛鹿乗りの戦士で、故郷を守るために戦い、破れ、奴隷となって働かされていたヴァン。もうひとりは高名な医術師であるホッサル。 正直、あらすじを述べるのは非常に難しい。国と国の関係、病、宗教、いろんなものが絡みついた物語だからだ。 だから、ある意味ではふたりの全く異なるところで生活し、異なる価値観を持つ男の人生が、とある病を起点にして一瞬交わる、そういう話である、と言うこともできる。 ふたりには、ぱっと見て、あまり共通点がないように見えるのだが、強固な共通点が…