昭和三十四年(1959)に建てられたブロック塀である。日本の職人が、腕を振るった仕事だ。寸分の凹凸もなく平らな塀だったにちがいない。六十六年前は。 歳月により、コンクリート構造にも変化があったろう。風雪の影響も受けたろう。避けられぬ地盤沈下による歪みも生じたことだろう。内部にきちんと鉄骨を通してあるブロック塀だ。今日明日に崩壊するとは考えられない。しかし少なくとも表面には、渋いといおうか現実的といおうか、どことなく人の半生を連想させる凹凸と、それらによる陰翳とが生じてしまった。 歳月を経たればこその表現力というものを、見くびることはできぬと、改めて感嘆せざるをえない。 昨日は、読者にはさぞやお…