フーデリ配達員には、絶対に信用してはいけない言葉がある。 それがこれだ。 「あと1件だけやったら帰ろう」 嘘である。 だいたい帰らない。 本人は本気で言っている。本気で帰るつもりなのだ。 だが、帰れない。 なぜなら「あと1件」は、ただの1件ではないからだ。 あれは配達員界のラスボスである。 しかも倒しても翌日また出る。 魔王より勤勉。町内会より出席率が高い。こっちはもう来なくていいと言っているのに、毎晩きっちり出勤してくる。 本当に困る。 第一議案:帰宅推進党、ついに政権を取る 夜の稼働も終盤。 配達員の身体は、そろそろ人間から「疲れた乗り物」に変わり始める。 肩が重い。膝が静かに文句を言う。…