『ヘンリ・ライクロフトの私記』という小説がある。エッセイの形を借りた一人称小説です。 某から遺産を譲られた「私」が、ロンドンの雑踏から脱出し、南イングランドのある村で悠々自適の生活を送る。そんな内容です。 「私」は家事一切を村で雇った家政婦にまかせ、読書と散歩に明け暮れる。稀にはロンドンから訪ねてきた旧友と歓談する。晴耕雨読ならぬ晴散歩雨読の日々。 いいなあ。理想だよ、こういうの。 しかし日本で、これが可能だろうか? 「私」は言う。土地の人たちと話をしたいなど、まったく思わない。彼らには全然関心がない。植物には興味があるので、道端に咲く花々について質問は時々するが、それ以外は、村人なんぞどうで…