意見訴訟団と厚生労働省との検証会議のメモ

障害者自立支援法意見訴訟団と厚生労働省の検証会議の3回目が開かれた。

骨格提言を8月30日に出してから、3ヶ月過ぎたが厚労省、政府側からは明確なものが示されていない。
記録の中に、厚労省が段階的に自死するとか言っている部分がある。
「大臣からも申し上げているように、段階的、計画的に実現をめざしていくべきものと考えている」
どのように段階的、計画的に実現を目指すのか不明だ。財政的に徐々に予算を増やしていくということなのか、対象者に様々な制限、制約を付けて、それを「拡大」して行こうとしているのか不安だ。

制度の谷間のないとは言葉ではあるが、実際に難聴者の聴力レベルの基準の変更とか、感音性難聴者のように聞こえるが言葉が理解できないという面をどのように盛り込んで行くのか。

ラビット 記
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◆1◆ 160名こえる出席で第3回検証会議が開かれました
    12月13日(火)17:30〜19:00 厚労省講堂

第3回検証会議(障害者自立支援法違憲訴訟に係わる基本合意文書に基づく定期協議)は、新法案の提出めぐってきわめて重要な時期での開催となりました。基本合意文書は、障害者権利条約と並んで、骨格提言の基礎となる指針になっています。
また、本日13日は障害者権利条約が国連で採択された日でもあります。
会議には元原告や弁護団、各地のめざす会から160名こえる人びとが出席しました。

厚労省などからの主な出席者
津田政務官、岡田部長、中島企画課長、土生障害福祉課長、
福田精神障害福祉課長、君島自立支援振興室長
立ち会い:民主党障がい者WT・中根座長

〇写真ドキュメント
 https://picasaweb.google.com/sonobe.hideo/20111213?authuser=0&authkey=Gv1sRgCJu9pJjjyN-UYQ&feat=directlink
 
厚労省・津田政務官あいさつ(動画)
 http://www.youtube.com/watch?v=Mq62vYsC00I

〇元原告・弁護団あいさつ・辻川弁護士(動画)
 http://www.youtube.com/watch?v=RjLUbnmGtpE


厚労省・中島企画課長 検討状況報告(メモは編集部)
・昨年4月以降、総合福祉部会で18回にもわたる精力的な議論をしていただき、今年8月には、骨格提言の提言をまとめていただいた。
・大臣からも申し上げているように、段階的、計画的に実現をめざしていくべきものと考えている。
・こうした提言も受けて、与党・民主党では、部門会議の下に障がい者WTを設けて、10月以降、原告団弁護団含めまして42団体、部会では充分に意見を聞けなかった知事会・市長会・町村会から意見をうかがった。
厚労省は与党での議論をふまえ、法案の具体的内容について検討をすすめている。
原告団弁護団厚労省が取り交わした基本合意文書では、新法の制定にあたって6つの論点(利用者負担、支給決定、報酬支払、制度の谷間のない障害範囲、権利条約批准のための国内法整備、関係予算の国際水準にみあう増額)
 しっかり検討を行い対応していくことがこの基本合意書にもられているところ

1)利用者負担のあり方
・骨格提言では、食材、光熱費は自己負担。ただ、障害にともなう支援は原則無償、ただ高額な収入ある方は応能負担求める
自公政権下でも類似の負担軽減策が講じられてきたが、民主党への政権交代後は100億を越える財源措置を講じて、今年の4月から、低所得者の福祉にかかる利用者負担が無料とされて、実質的に応能負担とされた。
・さらに昨年12月に民自公3党の共同提案で成立した議員立法では、法律上も応能負担となることが明確化された
・今後は、与党での議論ふまえて検討

2)支給決定のあり方 
・骨格提言では障害程度区分は使わずに支給決定する、本人の意向の尊重など
議員立法では、サービス等利用計画を作成する事業者を大幅に拡大するとともに、本人意向を勘案することが法律上明記され、付帯決議でも本人希望尊重を決議
・最終的に財政当局と折衝しているが、来年度予算要求では、障害程度区分の調査経費1億円を計上し、財務省と詰めている。年末までに結論
民主党WTにおける地方3団体、関係団体のさまざまな意見ふまえながら検討

3)報酬の支払い方式
・骨格提言では、日払あらため月払、在宅系は時間割、適切な賃金が支払える報酬
・H21年10月〜 基金事業=職員1・5万円の賃金引き上げ経費を積み増し、年額500億円
・この基金は本年度をもって終了するので、来年度以降は12月8日民主党WTからひきつづき処遇改善提言をいただき、財務含め検討中
・報酬は、障害者報酬改定の年、来年4月からの新たな報酬となるが、客観性、透明性をはかりつつ、津田政務官の下に報酬改定検討チームを設置し、アドバイザーに総合福祉部会の4名学識者の参画で公開の場で検討中

4)制度の谷間のない障害の範囲
・骨格提言では、基本法定義とし、慢性疾患にともなう機能障害含む
議員立法による一部改正、基本法一部改正で、精神障害発達障害が含まれる高次脳機能障害も明確化
・与党での検討をふまえ検討をつづけていきたい

5)権利条約批准の実現のための国内法整備
・条約批准にむけ、改革推進会議で議論。7月に基本法一部改正。
 差別禁止部会で検討中

6)予算増
・骨格提言では、OECD平均、地域間格差の是正
 H18年度4375億円→H23年度6787億円に 。着実なのび10%を確保
・移動支援、コミュニケーション支援、GHCH→地域生活支援事業
 裁量的経費は毎年10%づつ削減の対象だが、特別枠・政策コンテストで5億増、施設整備費8億増
・来年も10%削減の対象経費。昨年度同様に特別枠で調整をしている。

なお、自立支援医療については、恒久的な財源190億円。どのように考えるか、引き続き検討おこなっている

いづれにしても厚労省は、民主党障がい者WTをまえながら、来年通常の国会への法案提出めざしている


◆2◆ 原告・弁護団の意見・質問から

○和歌山の元原告・大谷真之さん
 国との基本合意から早くも2年が経とうとしています。その間、自立支援法の改正で市町村民税非課税の障害者には原則無料になりました。これによって利用者負担が重荷でサービスを使えなかった人たちも利用することができ、喜んでいる障害者も多いことでしょう。一方で、収入のある方は今でも負担が残っています。働けても日常生活では介護が必要という障害者もたくさんいると思います。
決して収入は高額ではありません。今よりも低負担で利用できるよう考えほしいです。

 また、介護の問題はなかなか前に進んでいないのが現状です。障害者が地域で生きるため介護が必要不可欠です。人それぞれに障害は違います。それぞれに介護の必要度も違います。月24時間必要な人もいれば、月10時間でいい人もいるように支給量も違うのが当たり前だと思います。

 しかし、「一律にしなければ平等にならない」ということをよく言われます。
「障害も違うのに平等にしなければいけないのか」といつも疑問に思うのですが、介護が必要な人に必要な量だけ与えてもらいたい。どんなに重い障害があっても本来地域で生活できなければならないと考えます。24時間介護が必要な人には
きちんと支給量を24時間にする対応をぜひとってもらいたい。そうすることによって地域で暮らす障害者は元気になり、人間らしい生活を送ることができます。
「障害があっても地域で生きられるんだ」という安心できる社会にしていきたい。

 今僕は、仕事のかたわら「障害者が地域で暮らすこと」というテーマで市民に理解してもらおうと活動をしています。僕たちも様々な活動を通じて障害者の必要なことを真剣に考え、訴えています。

 僕たちは国と一緒になって考えていきたいと思っています。8月30日の総合福祉法の骨格提言が出されました。委員55人が真剣にまとめてくれました。
僕も勉強しました。みんなの声が詰まった骨格提言を早く法制化してください。一部からは、「自立支援法を改正すればいい」などの声も聞こえてきますが、基本合意を結んでいる以上は「自立支援法は廃止、25年8月までに新法制定」ですよ。きちんと守ってください。多くの障害者が見守っていますよ。
「総合福祉法」で明るい未来を期待しています。

○藤岡弁護士の質問と厚労省の回答(メモ)
1)ロードマップ、タイムスケジュールを明確に回答下さい
厚生労働省が「骨格提言を受領してから法案化作業に時間が掛かるから2011年8月31日24時までに、必ず厚労省に提言を提出されたい」と部会三役、座長会議において要請し、部会はそれに従って期間を遵守して提出した。
 それから既に3カ月と13日が経過している。本日12月13日時点の定期協議において、総合福祉法案の要綱案の素案程度のものが提出されていないこと自体が遺憾とおもう。
・要綱案、法案が、何時公表されるのですか?
●中島企画課長
・今後のスケジュールは、3月の上中旬目途に国会提出。その前に与党審査。経て内閣法制局、財政当局ふまえ・・・

2)厚生労働省との間で訴訟団との間で、法案に関する意見交換の場を保障して欲しい。原則は次回の第4回定期協議を国会上程の前に実施し、その場でおこなっていただきたい。仮に正式な定期協議でないとしても、基本合意締結の際のように訴訟団PTメンバーとの意見交換の場を設定するよう強く求めます。
●中島企画課長
・新年の国会状況不明な点も多い。内容の説明の場を努力したい

3)制度改革推進会議総合福祉部会を、法案国会上程前に開催して、法案に関して部会委員との意見交換の場を持つことは余りにも当然と思われる。
●中島企画課長
・所管は内閣府 内閣府で判断 相談がきとところでご意見申し上げたい

4)障害者総合福祉法案というのは、まさか、障害者自立支援法の改正法案という意味ではなく、障害者自立支援法という法令を廃止して、新たな法律を制定するという意味で宜しいですよね。
・基本合意文書に明確に書かれている以上それで間違いありませんよね。
●中島企画課長
・法案内容どうするか 含め 与党議論ふまえながらの検討になる

4)利用者負担
・骨格提言では、原則無償、高額所得者だけ応能的負担とされている。
 そのとおりの内容の法案で間違いないか。
・負担者の範囲と負担額の基準を説明頂きたい。
・「自立支援医療 当面の重要な課題とする」を果たして欲しい。

●土生障害福祉課長
・H22から100億円。低所得者無料化実現。法律上も応能負担に、H23年4月に施行
・提言いただいているところ、具体的な 民主WTふまえ今後検討
 現時点で説明することはなかなかむずかいし
・支給量の保障:しっかり検討行い対応していく
・適切な支給量決定を自治体にくりかえしている 財政が弱い自治体にも
 基金事業もしている
・現時点では説明することは・・・ご理解いただければ・・・

自立支援医療
自立支援医療低所得者見直しには190億円超える新たな財源必要となる
 どのように財源捻出するかが 重要な課題で引き続き検討行う

5)基本合意でも、どんなに重度の障害者も地域生活が可能な支給量保障が謳われて
いる。支給量の保障について、法案でのかきぶりを説明下さい。

〇藤岡=「努力」ではなく「約束」を
〇中島=「いまのところ」では「努力」で、大臣とも相談
〇藤岡=年内には日程を明らかにして
〇中島=努力はする 意見いただいたことふくめ 相談したい
〇藤岡=確信している

〇藤岡:参議院 - 予算委員会 平成22年11月19日民主党金子恵美議員の質問に細川律夫厚生労働大臣が内閣国務大臣として答弁しています。(議事録の44番目)
国務大臣細川律夫君)「この障害者自立支援法につきましては、本年六月の閣議決定に示されたとおり、これは廃止をする予定でございます。」
・この答弁は現在も政府の答弁として変わりがないですね。
●中島:かわりございありません

〇藤岡 議事録の55番目
国務大臣細川律夫君)「これまで政府が方針を決めております、自立支援法の廃止をして総合的な福祉政策をしっかり打ち立てるということについては、一切変わりはございません。」
●中島:大臣の発言にかわりございありません 

〇藤岡:厚生労働委員会 - 5号  平成22年11月17日
・細川国務大臣「政府といたしましては、本年六月に閣議決定をいたしました「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」、ここにおきまして次のように書いております。「応益負担を原則とする現行の障害者自立支援法を廃止し、制度の谷間のない支援の提供、個々のニーズに基づいた地域生活支援体系の整備等を内容とする「障害者総合福祉法」の制定に向け、第一次意見に沿って必要な検討を行い、平成二十四年常会への法案提出、二十五年八月までの施行を目指す」、こういうことといたしているところでございます。
 同様の細川厚生労働大臣の答弁は参議院厚生労働委員会平成22年12月3日にもあります。
ちなみに当時の委員長は津田弥太郎政務官でしたので御記憶のことと存じます。
・政府としてこの答弁に変わりありませんか。
●中島:かわりございありません

○藤岡:閣議決定は 平成22年6月29日閣議決定
障害者制度改革の推進のための基本的な方向について
障害者自立支援法(平成17年法律第123 号)を廃止 とあります。
この閣議決定は守りますね。
●中島:閣議決定の方向でやっていくことはまちがいありません。
書いてある方向でしっかり検討していく。閣議決定を守ります

○藤岡:基本合意
一 障害者自立支援法廃止の確約と新法の制定
国(厚生労働省)は、速やかに応益負担(定率負担)制度を廃止し、遅くとも平成25年8月までに、障害者自立支援法を廃止し新たな総合的な福祉法制を実施する。質問:遅くとも平成25年8月までに、障害者自立支援法を廃止し
・このことを守ることで間違いありませんね。
●中島:政府としてはそういう方向でやっていく

○藤岡:新たな総合的な福祉法制を実施する。
 このことを守ることで間違いありませんね。
●中島:最終的にあらたな法律をつくるかは国会。
 厚労省としては閣議決定の内容通りに対処していく

〇藤岡:二 障害者自立支援法制定の総括と反省
国(厚生労働省)は、憲法第13条、第14条、第25条、ノーマライゼーションの理念等に基づき、違憲訴訟を提訴した原告らの思いに共感し、これを真摯に受け止める。
・このとおり政府として確認していることで間違いありませんね。
●中島:まちがいございありません

〇藤岡:「その点についても検討する」と聞こえたが、閣法として責任出すのは政府。廃止法案を出すことは議論の余地はないのでは?
●中島
厚労省としては閣議決定で約束守る 
・具体的法案づくりの作業はしている 

〇藤岡:障害者総合福祉法に必ず必要な条項
1 障害者自立支援法の廃止条項
附則 (障害者自立支援法の廃止)
第一条 次の法律は、平成25年8月31日、廃止する。
これは11月22日に実施された民主党障がい者ワーキングチームにて、私たち訴訟団が中根座長に提出した文書にあり、口頭で御説明したものであり、その場に中島企画課長も同席していらしたので承知されていることと存じます。
・廃止条項の文案はこのようなものを想定していますか。
●中島
・具体的なものはまだ検討していない 
・上程する前に与党審査 があるので それを経ないと政府案は出せない 
 ご理解いただく政治システム。に
〇藤岡
・政府として守ってもらう文書 政府の約束だ
●中島
・政府としては最大限努力します

(次号につづく)

━━━MEZASU━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現をめざす会◆
  ニュース 2011.12.13 第162号(通巻270)
   http://www.normanet.ne.jp/~ictjd/suit/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━MEZASU━━━