不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

花と光とリンゴ

 吉井和哉『The Apples』の感想を書く前にライブへ行ってしまった。分けて感想を書けそうにないので、ライブ感想の前にさらりとだけ書く。
 要は吉井和哉の「アダムとイブ」達ということなのだろう。前作『VOLT』で一つの完成を見た己の音を、さらに深めるべく、迷いに迷っていた時期のソロ第一作『at the BLACK HOLE』を今の状態でもう一度試した。ほとんどの楽器を自らで鳴らし、自分自身のルーツとなる音楽や好みの音を吉井和哉流に奏でている。それは、たとえばボブ・ディランであり、OASISPrimal Scream、The Music、The Who22-20s?)などだ。最初はビートルズもいるかと思ったら、よく聞くとあまりいなかった。
 だから、バラバラな印象を受けてしまうが、試行錯誤の跡がはっきり見えて、たいへんにおもしろい。そして、ラストの“Flower”で、ルーツから現在までの全ての過去の肯定をし、つまりThe Yellow Monkeyを背負っていく事を改めて宣言したのだった。
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 というわけで昨日、吉井和哉 Flowers & Powerlight Tour 2011に行った。ハコはZepp Tokyo。吉井のライブでライブハウスは初めてだから、結構ドキドキして、開演前から舞い上がっていた(末尾にセットリストあるんで、これからの方はご注意を)。
 新譜発売後、初の東京公演という事でカンカンにあったまってる観客。開演時間少し押してスタート。大歓声の中、バックのスクリーンに幾何学模様の映像が映しだされ、“The Apples”でメンバー登場。そのまま“ACIDWOMAN”。うは、かっこえー! 続いて“VS”で高度を上げていってから、いきなりの“WEEKENDER”ッ! 一気に加速ッ! この流れはまいった。
 新譜から“ロンサムジョージ”(エロいなこれ)と“イースター”(ライブ映えする一曲)で少し落ちついたところに、ドラムソロが始まり「“リバティーン”かな?」と思ったら“VERMILION HANDS”って、アンタそんな曲をッ! 「昔、不器用な恋人に爪を切られたことがある」。
 MCはさんで“おじぎ草”の後、ギターのアレンジされた入りからピアノのイントロ、“球根”。グッズに鉢植えと球根があったからやるんじゃない、なんて友人が言っていたが、まさに。そのまんまやんけと思いつつも、真っ白い光の中で、いまこの瞬間に、この歌詞を、全身全霊を込めて歌う吉井にシビれる。当時は暗くて重い曲だなと思ったものだが、いま聞けばこんなにストレートで、強い曲だったんだな。
《世界は粉々になった でも希望の水をぼくは撒いて》
 シリアスな空気にしておいて、次にアゲアゲな“MUSIC”を入れてくるのがすごいね。思ったよりアッサリ目だったけど、もう少しライブでこなれたら爆発する一曲になりそう。ハード&ヘヴィな“クランベリー”のアウトロから“シュレッダー”への繋ぎは秀逸でグッときた。
 “ONE DAY”で会場が解放的になった瞬間、叩きこまれた“Sweet & Sweet”ッ! ぎゃー。今日のイエローモンキーからの選曲はずいぶん渋いが、俺のツボ。そんでもって“ビルマニア”で昇天。
 本編ラストは“LOVE & PEACE”。アルバムよりも、すごくいい。期せずして、この曲がこれほど胸に響く事になるとは。44歳のピースサインに、感動。
 アンコール。アコギとハーモニカを装着する吉井さん。“HIGH & LOW”のようだが、いやー、やめた方がええて。ボブ・ディランは歌は下手でもギターとハーモニカはうまいんやで。アンタ、不器用なんやから。案の定、歌詞は間違えるわ、ギターは弾けなくなるわで、グッダグダ。それはそれでほほ笑ましいんだけどさ。ライブ後のSEで“blowin' in the wind”流したのには笑った。
 謎のフリをつけた“CHAO CHAO”、ファンキーな“プリーズ プリーズ プリーズ”と畳みかけ。
 そして、大ラス前のMCで、こんな事を言っていた。
 震災があって、CDは出ないんじゃないかと思って、でも出たら結構売れて有難かった(「いっつも心から喜べない時に1位を取る」なんて言いつつ、嬉しそうだったな)。音楽を聞けなかったし、聞きたくないとも思った。だけど、そうじゃない。音楽の役割や力ってある。
 このツアーは国際フォーラムが最終日になっているけど、そこで終わりません。年末まで続きます。いつと約束はできないけれど、絶対に東北に行きます。みんなにもらった力を渡しに行きます。
 みんな、身体には気をつけて。平和でいられますように。
 そう言ってから、“FLOWER”を吉井は歌った。この時じゃなかったけど、「ライブはあっという間に終わるよ。だから一瞬一瞬楽しんで」と言っていて、きっとそれは人生もそうなんだろうなぁとしみじみ思う。
 冷静に振り返れば、吉井の喉は本調子ではなさそうだったし(少し風邪をひいていたらしい)、バーニーのギターも今日のプレイはイマイチ、ドラムの音の抜けが悪かったと、不満な部分はある。“FLOWER”も意外と淡白な曲だから、ライブだとあっさりしすぎるので、もうちょい前の曲との繋ぎで盛り上げるとよいのでは、と我がままに思ったりもした。
 でも、ライブの最中はメチャクチャ楽しくて、全身で吉井の音を浴びていた。それは、決して現実を忘れるとかじゃなくて、現実と戦うためのライブだったと思う。「Flowers & Powerlightという名前のツアーだけど、節電中だから普通ライトだ」と冗談を言っていた。でも、間違いなく俺の中の力強い光となった。
 これら楽曲はどんどん洗練されていくのだろう。珍しく同ツアーでもう一度行くので、楽しみでしょうがない。次回はNHKホール。


《We wanna music さらにぶっ飛んでる music
 探し続けるよ
 We wanna music 溢れ出すんだよ music
 魔法をかけるよ
 音のない世界あるかな 色のない世界あるかな
 どんな時も傷に染み込む 音楽があってよかったな》
(“MUSIC”)

set list
01.The Apples
02.ACIDWOMAN
03.VS
04.WEEKENDER
05.ロンサムジョージ
06.イースター
07.VERMILION HANDS(The Yellow Monkey
08.おじぎ草
09.球根(The Yellow Monkey
10.MUSIC
11.クランベリー
12.シュレッダー
13.ONE DAY
14.Sweet & Sweet(The Yellow Monkey
15.ビルマニア
16.LOVE & PEACE


en.
01.HIGH & LOW
02.CHAO CHAO
03.プリーズ プリーズ プリーズ
04.FLOWER

The Apples (初回限定盤)(DVD付)

The Apples (初回限定盤)(DVD付)

The Apples

The Apples