Architectural Theory Now:これからの建築理論

特別シンポジウム:「Architectural Theory Now:これからの建築理論」
主催:東京大学大学院建築学専攻 Advanced Design Studies
企画:東京大学大学院建築学専攻 Media Initiative Lab
日時: 12月1日(日) 17:00 – 19:30
場所: 東京大学工学部1号館15号教室
ゲスト: 槙文彦、磯崎新原広司
モデレーター: 隈研吾東京大学教授)

131201東大特別シンポジウム「これからの建築理論」 - Togetter

日曜日に行われたシンポジウムを拝聴してきた。東京大学を卒業した三人であり、加えて元教官でもある槇文彦原広司と、教職には就かないと30代で決め官職にも就いてこなかった磯崎新。平均年齢が80を超える三人による放談だったが、気になる部分は多くあった。
シンポジウムのタイトルに「建築理論」が掲げられているのだからその話が殆どになるものと思われ、槇文彦言うところのディベート、ディスカッションが盛んに行われることを欲したが、「建築理論」に関する意識のちがいが当初から顕在化した。
磯崎が言及したのは、建築史家が批評をやり、建築家が理論をやるということ。建築史家は過去の歴史を踏まえて、緻密に批評をやらねばならない。だが、建築家は、自分が成功した建築を作り、その根拠を最もらしく語れば理論になる、というのだ。
理論とはほんらい、複雑な事象に法則性を見出して再現可能なものにするものだと思ってきたから、これには驚いた。社会一般的に使われてきた理論と、建築のそれとは大きくちがうのかと。のちに、大野から指摘があったこととも結びつく。大野は、建築はその根拠を欠く。法律家は法律を作り使い、医者は医学を作って使っている。けれど、建築にそのようなものはない。だからこそ、理論があると示し、必要性を訴えてきたのだと。
それはまた、磯崎の話にもつながってくる。冒頭で、槇、磯崎、原がそれぞれ20分ほどプレゼンをしたのだが、磯崎は「アーキテクト」が含みこむ広範な意味に焦点を絞っていた。ホワイトハウスでオサマ・ビンラーディンの射殺現場を中継で見守っていた部屋はアーキテクトルームであり、「建築家」が新聞の一面を飾るなど無い中、「アーキテクト」が紙面を躍らしている。ビッグデータなど情報を扱う人間だって「アーキテクト」には含まれるのだから。
こうなってくると、建築という営みはこれまで確実にあったのは事実だけれど、それを一本化してこういうものですよと表明するのは難しいということなのだろうか。では、理論など打ち立てられない、そんな不条理を前にしてそれでも尚「これからの建築理論」と言い切っているのだろうか。

原広司が言及していた三冊の宇宙の本。

大栗先生の超弦理論入門 (ブルーバックス)

大栗先生の超弦理論入門 (ブルーバックス)

強い力と弱い力 ヒッグス粒子が宇宙にかけた魔法を解く (幻冬舎新書)

強い力と弱い力 ヒッグス粒子が宇宙にかけた魔法を解く (幻冬舎新書)

こちらは槇文彦推薦の一冊。

人間のための建築 建築資料に見る坂倉準三

2013.11.27[水]-2014.2.23[日]
人間のための建築 建築資料に見る坂倉準三

日本の建築の多くが、この半世紀、木造から鉄筋コンクリート、鉄骨造に変わり、私たちの生活空間はモダンムーブメントの潮流の上につくられてきた。そのデザインの源流を創ったのが、巨匠・ル・コルビュジエ[1887-1965]であり、パリで彼に師事し、その後、日本国内に多くの作品を手がけた建築家が坂倉準三[1901-1969]である。

坂倉準三は、東京帝国大学で美術史を学び渡仏し、ル・コルビュジエのアトリエで5年間働いた後、1937年にパリ万国博覧会日本館[Exposition internationale des Arts et Techniques dans la vie moderne, Expo 1937]で建築界に華々しくデビューする。帰国後は、大戦からの復興期の1951年に世界的に知られる鎌倉の神奈川県立近代美術館を生み出した。本展では、同館のデザインへいたる足跡とその後の広範囲にわたる多様な作品群について、原図や当時の写真、建築資料によって紹介し、デザインの中心に人間を据える坂倉準三の考え方とその大胆な発想と調和の感覚へ迫る。 さらに、坂倉作品が社会に与えた影響と建築の文化の豊かさについて、シンポジウム等を開催し検証する。

今年開館したばかりの国立近現代建築資料館。湯島の旧岩崎邸庭園のそばにある。

見応えがあった。希望すれば図録を無料で頂けるので有難い。坂倉準三が稀有な建築家であることを、また強く意識したのだった。デザインの国立ミュージアムも間違いなく必要である。

山縣良和+坂部三樹郎『ファッションは魔法』/絶命展 ーファッションの秘境

ファッションは魔法 (ideaink 〈アイデアインク〉)

ファッションは魔法 (ideaink 〈アイデアインク〉)

国立新美術館で最大規模のファッションショー 若手デザイナー約30人が作品発表 | Fashionsnap.com


山縣良和(writtenafterwards)&坂部三樹郎(mikio sakabe)プロデュース
絶命展 〜ファッションの秘境
僕たちは若かりし頃、麻薬中毒者のようにファッションに魅了され、のめり込みました。 いつの頃からか、更なるファッションクリエーションの神秘を求め、探求と実験と研究を重ねると同時に、世界中から、これからのファッションクリエーションを指し示す原石を探し続けました。
すると、長い間探していたその原石が、意外にも、極東の最果て、ファッションの秘境ともいえる、私たちの内部にあることを発見したのです。 冒険と秘教的な修行の末に、ファッションクリエーションのあらたな可能性が表現されます。
ファッション世界の最果ての地に見出された、小さくもまた力強い、新たな創造の芽吹きを、ぜひ絶命展の会場で体感していただきたいです。

與那覇潤『史論の復権』

史論の復権 (新潮新書)

史論の復権 (新潮新書)

第1章|日本に「維新」は必要なのか|政治学との対話 中野剛志
第2章|企業が受け継ぐ「江戸時代」の遺産|経済学との対話 中谷巌
第3章|ソ連化した団地とアメリカ化する郊外|戦後史との対話 原武史
第4章|中国化する日本/近代化できない日本|民俗学との対話 大塚英志
第5章|小津安二郎が「作為」した日本|昭和史との対話 片山杜秀
第6章|国民の「時代劇」はよみがえるか|映画史との対話 春日太一
第7章|「太閤記」の夢よ、いまいずこに|大河ドラマとの対話 屋敷陽太郎

建築と日常別冊 日本の建築批評がどう語られてきたか

多木浩二と建築 (建築と日常別冊)

多木浩二と建築 (建築と日常別冊)

多木浩二と建築』の出版で注目を集める「建築と日常」の別冊「日本の建築批評がどう語られてきたか」が発売された。
本というよりもリーフレットのような趣きだ。