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himaginaryの日記

2014-11-24

ソロー「サービス部門の生産性の研究は立ち遅れている」

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昨日冒頭部分を紹介したマッキンゼーソローインタビューから、残りの部分の概要をまとめてみる。

  • 世界で最も優れた経営を行っている先導的な企業と競争することは、自分の経営を優れたものとするだけでなく、規模の経済を得ることにもつながる。というのは、世界的な優れた経営というのは、国際市場を必要とするものだからである。
  • MGIのセクターレベルのアプローチが有望な研究分野は、サービス部門生産性の研究。
    • そもそもサービス部門内、およびサービス部門と財生産部門を比較した相対的な資本集約度についても我々は良く分かっていない。
      • サービス部門資本集約度は低いという論考を書いている時に歯医者に行ったところ、歯医者のオフィスはこれまで目にした中で最も資本集約度が高い500平方フィートであることに気付いた。
    • サービス部門生産性の研究がMGI内外でなされていないわけではないが、先進国の7割以上の人がサービス部門で働いている割には進んでいない。
    • サービス部門の中でも影響が大きいのは卸売業と小売業。雇用人数が多いため、僅かの生産性の違いも国の生産性に大きく影響する。特に医療、教育、保育といった対個人サービスの研究を進めるべきではないか。
  • マクロ経済学者として将来予測は避けたいが、2つのことは確かだ:
    1. 先進国においても新興国においても人口の伸びは鈍化する。そのため人々に住宅や耐久消費財を供給するという資本拡張の勢いは弱まり、経済の成長も鈍化する。
    2. ただし一人当たりの経済成長は別問題。例えばBRICsは、欧州北米の技術フロンティアに追いつくために近代化する余地がまだあり、そうしたキャッチアップは起こるだろう。それが起きないとしたらそれは政治的な理由が原因であり、経済的な理由ではない。
      • この点については産業別の定量的な分析が必要。キャッチアップするのは経済全体ではなく産業なので。
  • 長期の技術展望について自分はボブ・ゴードンほど悲観的ではない。彼ほどその先行きに確信を持っていないので。
    • 彼は時間労働あたりの実質GDPよりは、技術が生活にもたらす変化に関心を持っているようだ。我々は生産性を劇的に改善する技術進歩を得るかもしれないが、それは、車輪やゴードンの好きな水洗トイレほどには生活に変化をもたらさないかもしれない。
  • サマーズなどが唱える長期停滞論は、来る50年間はこれまでの50年間ほど経済を完全稼働させるのが難しいかもしれない、という見方だ。技術的に表現すれば、完全稼働と両立する実質金利はマイナスかもしれない、というのが一つの言い方になる。これはアルヴィン・ハンセンの古典的な長期停滞論だ。
    • この話は、利益の出る投資機会が枯渇するかどうかに掛かっている。
      • 技術進歩が進み、その進歩がハードウェアを伴うならば、利益の出る投資機会が提供されるだろう。
      • 人口伸び率の鈍化が各家庭への住宅や冷蔵庫や洗濯機の供給といった投資機会を奪うために技術進歩も鈍化するならば、収益逓減と技術の間のバランスは収益逓減の方に傾くかもしれない。それにより、工場や設備といった投資から得られるリターンは低まり、ゼロ以下にはなり得ない金利との差が縮まってしまうかもしれない。そのため完全雇用の維持が難しくなる。
    • この問題へのケインズ的な良き回答は政府支出だ。しかし我々は政府支出に長けていないし、その手腕が改善する見込みもない。従って今後は、完全雇用と完全稼働を維持するのに必要な、所得に依存しない独立支出をもたらすのが難しくなるかもしれない。
    • 現在の企業投資が低調なのは、企業利益が好調なことを考えると不思議。将来の利益性を懸念しているために投資を手控えているようにも見えるが、その理由は分からない。
  • (成長を加速させるために企業経営者ができることはあるか、という質問に対し)自分としては奇妙なことだが、ここではミルトン・フリードマンの見解を取りたい。「経済の健全性にとって何が良いことか?」と問うのは個々の経営者の仕事ではない。効率性と利益性を高めるのが彼らの仕事。政治的不確実性とやらによって最高経営者が立ちすくんでいるならば、それは集団行動の失敗であり、怖気づいているだけだ。
  • ITはどこにでも見られるが生産性の数字にだけは見られない、という1980年代のコメント[いわゆるソローパラドックス]について問われて)それは誰かの本の書評をしている時にしたコメントだと思うが、それは当時は真実であったが、今はもはや真実ではない。今は情報技術の影響を辿ることができる。振り返ってみれば、情報技術を製造業や小売業や卸売業といった大部門で効果的に使えるようになるまでには、おそらく必然的にラグが生じるものなのだ。

2014-11-23

ソロー「恐怖は経営努力につながる」

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Fear is the path to the dark side. Fear leads to anger. Anger leads to hate. Hate leads to suffering.」というヨーダ師の有名な台詞のもじりのようなタイトルになったが、ロバート・ソローマッキンゼーの季刊誌McKinsey Quarterly(MQ)のインタビューでそう語っている(H/T Mostly Economics)。

...In the early 1990s, Solow accepted the role of academic adviser to the then-fledgling McKinsey Global Institute (MGI), which was proposing to research and explain differences in the productivity of industries and countries. Economist Martin Neil Baily and McKinsey Publishing’s Frank Comes recently sat down with Solow to discuss the implications of those early studies for business and economics, as well as the prospects for future productivity-led growth.

The Quarterly: What, if anything, surprised you about the findings of the early MGI studies?

Robert Solow: What came as something completely new to me was that if you looked at the same industry across countries, there were almost always dramatic differences in either labor productivity or total factor productivity. To my surprise, it turned out that most of the time, certainly more often than not, the difference in productivity—in the auto industry or the steel industry or the residential-construction industry in the US and in countries in Europe—was not only substantial but couldn’t seriously be explained by differences in access to technology.

We also found that the productivity differences could not be traced to differences in access to investment capital. The French automobile industry, much to my surprise, turned out to be more capital intensive than the American automobile industry. So it was not that either. The MGI studies instead traced these differences in productivity to organizational differences, to the way tasks were allocated within a firm or a division—essentially, to failures in managerial decisions.

I was, of course, instantly suspicious of this. I figured to myself, “What do you expect a bunch of management consultants to find but differences in management capacities? That’s in their genes. That’s not in my genes.” But MGI made a very convincing case for this. And I came to believe that it was right.

The Quarterly: So management was the primary factor in productivity differences?

Robert Solow: Yes, and there was another surprise, for which there was partly anecdotal, partly statistical evidence. If you asked why there were differences that could be erased or diminished by better management, the answer was that it took the spur of sharp competition to induce managers to do what they were in principle capable of doing. So the idea that everybody is everywhere and always maximizing profits turned out to be not quite right.

MGI made a very good case that what was lacking in these trailing industries in other countries—or in the US, in cases where the US trailed—was enough exposure to competition from whoever in the world had the best practice. And this, of course, can apply within a country. We know that in any industry, there is a whole distribution of productivity levels across firms and even, sometimes, across establishments within a firm. And much of that must be due to the absence of any spur to do more.

So an interesting conclusion to me was that international trade serves a purpose beyond exploiting comparative advantage. It exposes high-level managers in various countries to a little fright. And fright turns out to be an important motivation.

(拙訳)

・・・1990年代初頭、ソローは当時誕生したばかりのマッキンゼー・グローバル研究所(MGI)の学術顧問の役割を引き受けました。MGIは産業や国の生産性の違いを研究し説明することを標榜していました。経済学者のマーティン・ニール・ベイリーマッキンゼー出版のフランク・カムスが最近ソローと対談し、そこでの初期の研究成果のビジネスや経済にとっての意味合いと、生産性が先導する将来の成長の見通しについて議論しました。

インタビュアー
初期のMGIの研究の発見であなたを驚かせたものがあるとすれば何ですか?
ソロー
私にとって完全に新しい発見だったのは、同じ産業を国別に見ると、ほぼ常に労働生産性もしくは全要素生産性に劇的な違いがあることでした。私が驚いたのは、大体において、まず大抵の場合、米国欧州各国の自動車産業にせよ鉄鋼産業にせよ住宅産業にせよ、生産性の差が顕著なだけでなく、それが技術の利用可能性の差によってもまともに説明できないことでした。
我々はまた、生産性の違いを投資資本の利用可能性の違いに帰することができないことも発見しました。私はかなり驚いたのですが、フランス自動車産業米国自動車産業より資本集約的でした。ということで、どちらも原因では無かったのです。それに対しMGIの研究は、そうした生産性の違いを、組織の違い、企業や部門の中での仕事の割り振り方――要するに経営の意思決定の失敗――に帰しました。
当然ながら私はこの結果を疑ってかかりました。私は自分にこう言いました。「経営コンサルタントの一団が経営能力の違い以外に何を見つけるというのだ? それは彼らの遺伝子に組み込まれている。私の遺伝子にはそれは無い。」 しかしMGIはこれについて非常に説得力のある主張をしました。そして私はそれが正しいと信じるようになったのです。
インタビュアー
つまり、経営が生産性の違いの主要な要因であったと?
ソロー
そうです。そして、事例と統計的証拠がないまぜになった話で、驚いたことがもう一つありました。経営を改善すれば消去ないし減少できるような差がなぜあるのか、と尋ねたならば、激しい競争によって駆り立てられないと経営者は本来できるはずのことをやらないのだ、というのがその答えになります。誰もがどこでもいつでも利益を最大化している、という考えは完全に正しくはない、ということが明らかになりました。
他国のそうした負け組の産業――および米国が負けている分野の負け組の産業――は、世界で最も優れた経営を行っている企業――それがどこの企業であろうとも――との競争に十分に曝されていない、ということをMGIは非常に巧みに示しました。そしてもちろんこのことは国内についても当てはまります。どんな産業でも、企業同士の間で生産性が広くばらついていること、そして場合によっては同一企業内の組織の間でもばらついていることは周知の事実です。そしてその大きな要因は、もっと頑張るための動機付けの不在なのです。
ということで、私にとって興味深い結論は、国際貿易は比較優位の活用以上の目的を果たしている、ということでした。それは様々な国の上位の経営者に少しだけ恐怖を与えます。そして恐怖が重要なモチベーションとなるのです。

2014-11-22

スヴェンソン「スウェーデンはまだ日本になっちゃいねえ」

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引き続きスヴェンソンねた。以下は、以前ここで紹介したリクスバンクの内紛の顛末に関する「Central banks: Stockholm syndrome(中央銀行ストックホルム症候群)」と題されたFT記事の一節(H/T スヴェンソンブログツイート、およびクルーグマンブログ)。

The lessons for other central banks from the Riksbank’s actions fall into two broad categories. First, there is the difficulty of using monetary policy not to guide inflation but instead to try to rein in household debt or asset bubbles – what economists call “leaning against the wind”. The ECB is also battling against deflation while some of its members worry about the impact of low interest rates on financial stability. Mr Svensson’s advice is not to confuse objectives: “There is really no evidence that monetary policy has a systematic effect on financial stability.”

...

A second lesson for central banks is to be cautious when raising rates after a crisis. “I can assure you that people at the Fed have heard about this and are thinking about it,” Mr Krugman says. Both he and Mr Svensson invoke the Fed’s decision to tighten in 1937 – which is blamed for tipping the US back into recession.

So where does this leave Sweden? Some have sought to compare the country to Japan but Mr Svensson does not agree. “I don’t see it as out of control yet,” he says. “It’s not like Japan where the Bank of Japan did not have control.”

Sweden’s mix of zero rates, no inflation, some growth and expanding credit means its policy makers are set to be in the spotlight for some time. “The Riksbank may have done a great disservice to its own economy but it may have done a service to the global economy,” he says.

(拙訳)

リクスバンクの行動の他の中銀にとっての教訓は、2つの項目に大別される。第一に、金融政策インフレ誘導ではなく家計債務資産バブルの抑制に使うこと――経済学者が「風向きに逆らう(予防措置)」と呼ぶもの――には困難が伴う。ECBもまた、低金利金融の安定性に及ぼす影響を懸念する委員がいる中でデフレと闘っている。スヴェンソン氏の助言は、目的を混同するな、というものだ:「金融政策金融の安定性にシステマティックに影響を及ぼすという証拠はまったくない。」

・・・

中銀にとっての第二の教訓は、危機後に金利を上げる際には慎重になるべき、というものだ。「FRBの人々がそのことを聞いたことがあり、それについて考えていることは間違いない」とクルーグマン氏は言う。彼とスヴェンソン氏は二人とも、1937年のFRBの引き締め決定を引き合いに出した。その決定は米国を再び不況に陥れたものとして批判されている。

そこでスウェーデンの現状はどうなのか? 日本に準えようとする者もいるが、スヴェンソン氏はそれには与しない。「まだコントロールを失っていない、と思う」と彼は言う。「日銀がコントロールしていなかった日本とは違う。」

スウェーデンのゼロ金利、無インフレ、幾ばくかの成長と拡大しつつある信用という組み合せは、同国の政策当局者が暫くの間注目を浴びることを意味する。「リクスバンクは自国経済には大いなる害をなしたが、世界経済には貢献したのかもしれない」と彼は言う。


記事では、FRBにいたら「退屈な主流派の人間(boring mainstream person)」と見做されただろうが、スウェーデンでは「異端児(outlier)」だった、というスヴェンソンの自己評を伝えている。


記事ではまた、2008年のリーマンショック直前に利上げに彼が賛成したことにも触れているが、その件について最近ツイッター上で問われた彼は、以下のように弁明している

It is not a secret that I regret that increase. But I hadn't learnt to look at unemployment and disregard the unreliable output gap

(拙訳)

その引き上げについて後悔していることは秘密ではない。ただ当時はまだ失業を見るようになっておらず、信頼できない生産ギャップは無視していた。

oumu79358oumu79358 2014/11/23 11:19 訳がしてもらってあるから良かった。しかし 経済のことは難しくて 私はよく判らなくない、勉強しなければ! 金利で調整できるうちは良いが、これが効かないようになったら お仕舞い と 以前聞いた事があります。現実はこれから先はどうなるのでしょう。

2014-11-21

スヴェンソンのリクスバンク批判は間違っていない

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昨日紹介したスウェーデン・ルンド大学のFredrik N G AnderssonとLars Jonungによる批判に、スヴェンソンが自サイトで猛然と反論している(17日エントリ20日エントリ20日エントリでリンクされたメモ;H/T スヴェンソンのツイート)。


Andersson=Jonungは、インフレ率と失業率のフィリップ曲線の回帰式に予想インフレ率を入れると失業率の係数が有意でなくなることを示したのだが、スヴェンソンによるとその定式化には以下の誤りがある。

  • インフレ率として四半期データの代わりに年次データを用いたが、そのためにデータのオーバーラッピングの問題が生じた。
    • Andersson=Jonungがインフレ率として年次データを用いたのは予想インフレ率が年次データであるためだが、それは年次データを使う根拠として弱い、とスヴェンソンは指摘している。というのは、予想インフレ率をインフレ率の測定期間よりも長期に当てはめるのは普通のことであり、特にスウェーデンのように賃金交渉による合意が複数年に跨る場合はそのことがよく当てはまる。また、次年のインフレ予想が4四半期に亘って概ね一様に分布するというのは自然な仮定である。
  • オーバーラッピングの問題に対処するために2段階最小二乗回帰を用いたが、操作変数が説明変数と十分な相関を持っていない。

従って、彼らのフィリップス曲線の推計は信頼できない、とスヴェンソンは言う。


以下は20日エントリでリンクされたメモからの引用(なお、この中のSvensson(2015)はAmerican Economic Journal: Macroeconomics 7(1)に掲載予定の論文、Svensson(2014)は17日エントリを指している)。

Since Andersson and Jonung insist on using data on annual inflation rather than quarterly inflation, they face an overlapping-data problem with moving-average error terms. In line with the strong conclusion and recommendation of Harri and Brorsen (2009), it would be better to use data on non-overlapping quarterly inflation, as I do in Svensson (2015). A second-best very common alternative with overlapping data is to use OLS with Newey-West errors, as I do in Svensson (2014). Since I get similar results with data on annual inflation in Svensson (2014) as with data on quarterly inflation in Svensson (2015), this indicates that in this case OLS with Newey-West errors works well for annual data, and that my results for the Phillips curve are robust, in line with the other numerous robustness tests I conduct in Svensson (2014, 2015).

But Andersson and Jonung insist on their own solution to the overlapping-data problem, namely to use 2SLS with instrumental variables that are lagged 5 and 6 quarters, so as to be uncorrelated with the error term. This might have worked, if their instruments had been sufficiently correlated with the explanatory variables in the Phillips curve. But if the instruments are weak, that is, they have low correlation with and are bad predictors of the explanatory variables, the predicted values of the explanatory variables will have little variation. Then the estimates of the coefficients of the explanatory variables may be biased, and the coefficients may get large confidence intervals that include zero, meaning that the coefficients are not significantly different from zero.

This seems to be precisely what happens in their 2SLS regressions. Their instruments soundly fail the standard Cragg-Donald F-test and are very weak. And the coefficients of the unemployment terms indeed get large confidence intervals and are not significantly different from zero.

(拙訳)

Andersson=Jonungは四半期のインフレ率の代わりに年次のインフレ率を使うことにこだわったため、移動平均誤差項を伴うデータのオーバーラッピング問題に直面している。Harri=Brorsen(2009)の強力な結論と勧奨に従い、Svensson(2015)で私がやったように、オーバーラッピングの無い四半期インフレ率を使う方が良い。オーバーラッピングデータを扱う非常に一般的な次善の策は、Svensson(2014)で私がやったように、Newey-West誤差を用いた通常の回帰を使うことだ。Svensson(2014)の年次インフレ率でSvensson(2015)の四半期インフレ率と同様の結果を得たことは、今回のケースにおいてはNewey-West誤差を用いた通常の回帰で年次データがうまく推計できることを示しており、Svensson(2014,2015)で実施した他の様々な頑健性の検証と相俟って、私のフィリップス曲線の推計が頑健であることを示している。

しかしAndersson=Jonungはデータのオーバーラッピング問題に対する自分たちの解決法にこだわっている。それは、5四半期および6四半期のラグの操作変数*1を用いた2段階最小二乗回帰で誤差項との相関を無くすことだ。もし彼らの操作変数フィリップス曲線の説明変数と十分に相関していれば、これはうまくいっただろう。しかし、操作変数が弱ければ、即ち、操作変数と説明変数との相関が弱く、説明変数を予測するのに相応しくないのであれば、説明変数の予測値はあまり変動しないであろう。すると説明変数の係数の推計値に偏りが生じ、係数の信頼区間はゼロを含む広いものとなるだろう。つまり、係数は有意にゼロと異ならない、ということになる。

彼らの2段階最小二乗回帰ではまさにそれが起きているように思われる。彼らの操作変数は標準的なクラッグ=ドナルドF検定で確実に棄却され、非常に弱いものである。そして失業率の項の係数は実際に広い信頼区間を持ち、ゼロと有意に異ならない。

*1:Andersson=Jonung論文では「As instruments we use the 5th and 6th lag of the explanatory variables in the models and the 5th and 6th lag of US inflation, euro area inflation, US unemployment and euro area unemployment.」と書かれている。

2014-11-20

スヴェンソンのリクスバンク批判は間違っている

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という主旨の論文スウェーデンのルンド大学の2人の研究者書いている論文のタイトルは「The Return of the Original Phillips curve?/An Assessment of Lars E O Svensson’s Critique of the Riksbank’s Inflation Targeting, 1997-2012」で、著者はFredrik N G AnderssonとLars Jonung。

以下はその要旨。

We examine Lars E O Svensson’s prominent critique of the monetary policy of the Sveriges Riksbank (the Swedish central bank) from 1995-2012. Our main objection concerns Svensson’s conclusion that the original pre-Friedman/Phelps version of the Phillips curve based on constant inflation expectations has returned for Sweden. Based on estimates of this model, Svensson claims that that the Riksbank’s policy has contributed to an average of 38 000 more unemployed a year between 1997-2011. This result is based on Svensson’s unrealistic as well as unnecessary assumption of constant inflation expectations anchored at the Riksbank’s inflation target of 2 per cent. Data show, however, that the public’s inflation expectations have varied between 0 and 4 per cent, thus they have not been anchored. The negative employment effect found by Svensson vanishes once actual data on inflation expectations are included in the estimates of the Phillips curve. The long run non-vertical Phillips curve is transformed into a vertical one, in line with the Friedman/Phelps theory.

We have additional objections to Svensson’s reasoning. First, we show that the Riksbank has on average met its inflation target between 1995 and 2012. Second, we suggest that the original Phillips curve is too simple a model to draw any firm policy conclusions about unemployment and monetary policy in a small open economy such as Sweden. Third, we do not want to overburden Swedish monetary policy by making the Riksbank responsible for three objectives. It has already two objectives: price stability and financial stability. Criticising the Riksbank for employment losses, as Svensson does, gives priority to a third objective, high employment. Finally, Svensson adopts a short-term perspective by focusing on the period 1995-2011. When we compare the Riksbank’s inflation targeting regime with previous monetary policy regimes over the past 100 years, inflation targeting in the past fifteen years is clearly one of the most successful.

(拙訳)

我々は、スウェーデンのリクスバンク(スウェーデン中央銀行)の1995-2012年の金融政策に対するラース・スヴェンソンの有名な批判を検証した。我々の異論は主に、フリードマンフェルプス版より前のバージョンである一定のインフレ予想に基づくオリジナルのフィリップス曲線スウェーデンに戻ってきた、というスヴェンソンの結論に向けられている。そのモデルに基づき、スヴェンソンは、リクスバンクの政策が1997-2011年に年平均38000人の失業者を余計にもたらした、と主張する。この結論は、リクスバンクの2%のインフレ目標インフレ予想が固定されている、というスヴェンソンの非現実的かつ不必要な仮定に基づいている。だが、データの示すところによると、人々のインフレ予想は0%と4%の間で変動しており、固定されてはいなかった。スヴェンソンの見出した負の雇用効果は、フィリップス曲線の推計にインフレ予想の実際のデータを織り込むと消失する。フリードマンフェルプス理論に沿う形で、長期的な非垂直のフィリップス曲線は垂直のフィリップス曲線に転換する。

我々は、その他にもスヴェンソンの推論に異論がある。第一に、1995年から2012年の間にリクスバンクは平均的にインフレ目標を達成していたことを示す。第二に、オリジナルのフィリップス曲線は、スウェーデンのような小国の開放経済における失業と金融政策に関するいかなる頑健な政策的結論を導き出すにもモデルとして単純過ぎる、ということを示す。第三に、リクスバンクに3つ目的を課すことによってスウェーデンの金融政策に過剰な負担を負わせたくない、と考える。リクスバンクは既に物価の安定と金融の安定という2つの目的を有している。スヴェンソンのように雇用の喪失についてリクスバンクを批判することは、第3の目的である高い雇用優先権を与えることになる。最後に、スヴェンソンは1995-2011年の期間に焦点を当てることによって短期の見通しを考えている。リクスバンクのインフレ目標レジームを、それ以前の過去100年の金融政策レジームと比較すると、過去15年のインフレ目標は明らかに最大級の成功を収めた。