Hatena::ブログ(Diary)

himaginaryの日記

2014-09-01

均衡実質金利とテイラールール

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ジョン・テイラーが、PIMCOのPaul McCulleyが書いた最近のニューズレターから以下の一節を自慢げに引用している

…for me, it is so befuddling that the Fed, and thus the markets, still clings – even if reluctantly – to one man’s estimate of an “equilibrium” real fed funds rate, made in 1993: John Taylor, who assumed it to be 2%….I’ve got to hand it to John, whom I’ve known and liked for a very long time: Twenty-one years on, and you are still hardwired into the catechism of Fed policy!

(拙訳)

・・・1993年に一人の男が推計した「均衡」実質FF金利を、FRB、延いては市場が――渋々とはいえ――未だに墨守していることは、私には非常に悩ましいことのように思われる。ジョン・テイラーは、それを2%と仮定したのだった。・・・私はジョンを長いこと知っており好感を抱いているが、敬意を表せざるを得ない。21年経過して、彼は未だにFRB政策教義問答にハードコーディングされているのだ!

PIMCOは今の均衡FF金利は0%だと言い、サマーズら新・長期停滞論者はマイナスだと言うが、2%というのは今も適切な値、とテイラーは述べている。近年の先進国の停滞は政策の失敗のためであり、中立的な金利が変わった(“new neutral”)ためではない、というのがテイラーの見解である。


なお、ここでの2%の均衡金利とは、テイラールールで2%のインフレ目標がちょうど達成される実質ベースの金利を指している。テイラー元論文の式で言えば、r = p + .5y + .5(p - 2) + 2でインフレ率p=2%、GDPギャップy=0%とした時のr-pに相当し、名目ベースではr=2+2=4%となる。従ってここでの均衡実質金利は、名目金利と実質金利が一致する水準、という通常の定義とは異なるが、それは、y=0%においてp=0%ではなくp=2%となることを暗黙裡に仮定しているためのように見受けられる。ただ、その伝でいくとp=0%に対応するyはマイナスとなり、仮にそれがy=-2%だとすると、通常の定義による均衡実質金利は0%となる。テイラーはその点を見落としているように思われる。

2014-08-31

コースの定理のフライトコース逸脱

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ロバート・バローの息子で現在NYTの「The Upshot」に記事を書いているジョシュ・バローが、このCNN日本語記事などで報じられた旅客機の座席のリクライニングを巡る乗客同士のトラブルを8/27付け記事で取り上げ、解決策としてコースの定理を持ち出した。そのバロー記事を、マンキューが「コースの定理の素晴らしい応用(A Nice Application of the Coase Theorem)」と題したブログエントリでリンクした。一方、Econospeakのピーター・ドーマンは、同記事をフォローする形で書かれた同じくThe UpshotのDamon Darlinの8/28付け記事共々、コースの定理の悪用として一蹴している

以下はドーマンのエントリの概要。

  • バローは、座席をリクライニングする権利を認めた上で(∵座席はそもそもリクライニングできる設計になっており、乗員もその権利の執行を強制できる)、解決を市場に委ねるべき、と言う。もしリクライニングしてほしくなければ、後部座席の人は前部座席の人に金を払え、というわけだ。
  • Darlinはニー・ディフェンダーというリクライニング防止装置によって、リクライニングする側に一方的に有利だった状況が変わった、というが、それは別に権利関係を変えたわけではなく、ニー・ディフェンダーをしまえ、と言う手間が一つ付け加わったに過ぎない。
  • コースの定理適用は一見合理的に思われるが、社会正義の問題はなおざりにされている。バローはリクライニングを嫌がる人は背が高い傾向にあり、背が高い人は低い人より平均収入が多い*1ので、金銭の支払いによる解決は既存の不公平を是正することになる、と言う。これは、あるいは寒い冗談のつもりかもしれないが、経済分析としては極めてお粗末。身長による収入差は、全体的な格差に比べれば極めて僅かなものであり、たまたま前と後ろに座ったもの同士に適用できるとは思われない(ドーマン自身も6フィート超だが、彼が得ている平均的な学者の収入は、まずもってどんなに身長の低いビジネス旅客の収入にも劣るだろう)。リクライニングされる人は、現在もしくは将来のフライトでリクライニングする人となる可能性もあり、この制度が導入された場合、平均すると金銭移転は相殺される、と考えるべきだろう。
  • この状況についてコースの定理適用することの真の問題は、リクライニングするぞと脅すインセンティブをもたらすことにある。即ち、リクライニングしてもしなくてもどちらでも良い人でも、リクライニングして金銭を受け取ろうとするインセンティブが生じる。これは経済学では良く知られた結果であり、環境汚染という代表的な例においては、汚染者に権利を与えることによって、動学的均衡では静学的均衡に比べて多くの汚染者が参入し、汚染を受ける人の汚染者への支払は多くなる(すべての経済学入門書にこのことが記載されているわけではなくが、最良のもの*2には記載されている)。
  • バローは、すべてのことに市場を持ち込むのは素晴らしい、というところでコースの定理への理解が終わっている人の良き見本となっている*3。そうした浅薄な理解は、労働搾取工場の美徳労働者は自発的にその仕事に就いているんだよね?)から家賃統制の悪(死荷重闇市場!)に至るまで、ミクロ経済学のあらゆる側面で見られる。その際、動学や相互作用の効果などを取り入れたより複雑な分析は、考慮の外となる。そこでは、経済学は結局、イデオロギーの枠に嵌められて残りが切り落とされたものとなる。

*1cf. マンキュー研究ここで紹介したマンキューとソローの論争でもその話が触れられている。

*2:ここでドーマンは自著のミクロ経済学入門にリンクしている。

*3cf. ここで紹介した騒音おばさんへのコースの定理適用の試み。

2014-08-30

群盲長期停滞を撫づ

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Timothy Taylorが、Coen TeulingsとRichard Baldwinがまとめた長期停滞に関する13の小論集取り上げ、そのうちの7つ*1の小論から以下の文章を抜粋している。

Larry Summers: "This chapter explains why a decline in the full-employment real interest rate (FERIR) coupled with low inflation could indefinitely prevent the attainment of full employment. . . . Broadly, to the extent that secular stagnation is a problem, there are two possible strategies for addressing its pernicious impacts. ... The first is to find ways to further reduce real interest rates. These might include operating with a higher inflation rate target so that a zero nominal rate corresponds to a lower real rate. Or it might include finding ways such as quantitative easing that operate to reduce credit or term premiums. These strategies have the difficulty of course that even if they increase the level of output, they are also likely to increase financial stability risks, which in turn may have output consequences. ... The alternative is to raise demand by increasing investment and reducing saving. ... Appropriate strategies will vary from country to country and situation to situation. But they should include increased public investment, reductions in structural barriers to private investment and measures to promote business confidence, a commitment to maintain basic social protections so as to maintain spending power, and measures to reduce inequality and so redistribute income towards those with a higher propensity to spend."

(拙訳)

ラリー・サマーズ
本章では、低インフレと結びついた完全雇用実質金利の低下が完全雇用の達成を無期限に妨げる理由を説明する。・・・大雑把に言えば、長期停滞が問題となる限りにおいて、その悪影響への対処として2つの戦略が候補として挙げられる。・・・第一の方法は、実質金利をさらに低下させる方法を見出すことである。インフレ目標を高め、名目ゼロ金利がより低い実質金利に相当するようにする、というのがその一つである。あるいは、量的緩和のように信用ないし期間プレミアムを減少させる方法を見出すこともその中に含まれる。これらの戦略には当然ながら、例え生産水準を増加させても、金融の安定性に関するリスクを増加させ、そのことが延いては生産にも悪影響を及ぼす可能性が高い、という問題が存在する。・・・もう一つの方法は、投資を増やし貯蓄を減らすことによって需要を喚起することである。・・・適切なやり方は国や状況によって異なるだろう。しかし、以下のことは含まれている必要がある。即ち、公共投資の拡大、民間投資を阻む構造的障壁の削減、企業の信頼感を促す施策支出力を維持するために基本的な社会的保護の維持を約束すること、消費性向の高い層への所得の再分配を行うための格差縮小政策

Barry Eichengreen: "Pessimists have been predicting slowing rates of invention and innovation for centuries, and they have been consistently wrong. This chapter argues that if the US does experience secular stagnation over the next decade or two, it will be self-inflicted. The US must address its infrastructure, education, and training needs. Moreover, it must support aggregate demand to repair the damage caused by the Great Recession and bring the long-term unemployed back into the labour market."

(拙訳)

バリー・アイケングリーン
悲観論者は発明と技術革新の鈍化を何世紀にも亘って予測してきたが、彼らは一貫して間違えてきた。本章では、仮に米国が来る十年もしくは二十年に長期停滞に陥るならば、それは自ら招いたものである、と論じる。米国は自国インフラ、教育、および訓練の必要に対処しなくてはならない。また、大不況による打撃を修復するため総需要を下支えし、長期失業者労働市場に呼び戻さなくてはならない。

Robert J Gordon: "US real GDP has grown at a turtle-like pace of only 2.1% per year in the last four years, despite a rapid decline in the unemployment rate from 10% to 6%. This column argues that US economic growth will continue to be slow for the next 25 to 40 years – not because of a slowdown in technological growth, but rather because of four ‘headwinds’: demographics, education, inequality, and government debt."

(拙訳)

ロバート・J・ゴードン
米国の過去4年間の実質GDPは、失業率が10%から6%に急低下したにも関わらず、年率2.1%という亀の歩みの如き成長に留まった。本稿では、米国の経済成長は来る25年ないし40年に亘って低いものに留まり続ける、と論じる。それは技術の伸びの鈍化のためではなく、人口動態、教育、格差、そして政府債務という4つの「逆風」のためである。

Paul Krugman: "Larry Summers’ speech at the IMF’s 2013 Annual Research Conference raised the spectre of secular stagnation. This chapter outlines three reasons to take this possibility seriously: recent experience suggests the zero lower bound matters more than previously thought; there had been a secular decline in real interest rates even before the Global Crisis; and deleveraging and demographic trends will weaken future demand. Since even unconventional policies may struggle to deal with secular stagnation, a major rethinking of macroeconomic policy is required."

(拙訳)

ポール・クルーグマン
ラリー・サマーズの2013年のIMF年次研究大会における講演は、長期停滞という陰鬱な可能性を提起した。本章では、その可能性を真面目に捉える必要がある三つの理由を概括する。
  1. 近年の経験は、ゼロ金利下限は以前思われていたよりも問題となることを示している。
  2. 世界危機の前にも実質金利は長期低下傾向にあった。
  3. レバレッジと人口動態の趨勢は将来の需要を弱める。
非伝統的政策でさえ長期停滞の対処には手を焼くため、マクロ経済政策の大いなる再考が必要となる。

Edward L Glaeser: "US investment and innovation – the most standard ingredients in long-run economic growth – are not declining. The technological world that surrounds us is anything but stagnant. Yet we can have little confidence that the continuing flow of new ideas will solve the US’s most worrying social trend: the 40-year secular rise in the number and share of jobless adults. ... The massive secular trend in joblessness is a terrible social problem for the US, and one that the country must try to address. I do not believe that this is a macroeconomic problem that can be solved with more investment or tax cuts alone. . . . Alongside targeted investments in education and training, radical structural reforms to America’s safety net are needed to ensure it does less to discourage employment."

(拙訳)

エドワード・L・グレイザー
米国の投資技術革新――長期的経済成長におけるもっとも標準的な要因――は別に低下してはいない。我々を取り巻く技術的世界は停滞からは程遠い。しかし、新たなアイディアの奔流が、失業中の成人の人数と比率が40年の長期に亘って上昇している、という米国の最も懸念すべき社会的傾向を解決するだろう、という確信はまず持てない。・・・失業の大いなる長期的趨勢は、米国における恐るべき社会的問題であり、国が取り組むべき問題である。私はこれが投資の増加や減税だけで解決できるマクロ経済問題であるとは思わない。・・・教育や訓練に的を絞った投資だけでなく、米国のセーフティネット雇用を阻む効果を確実に減らすため、その抜本的な構造改革が必要とされている。

Gauti B. Eggertsson and Neil Mehrotra: "Japan’s two-decade-long malaise and the Great Recession have renewed interest in the secular stagnation hypothesis, but until recently this theory has not been explicitly formalised. This chapter explains the core logic of a new model that does just that. In the model, an increase in inequality, a slowdown in population growth, and a tightening of borrowing limits all reduce the equilibrium real interest rate. Unlike in other recent models, a period of deleveraging puts even more downward pressure on the real interest rate so that it becomes permanently negative."

(拙訳)

ガウティ・B・エガートソンとニール・メヘロートラー
日本の二十年に亘る沈滞および大不況は、長期停滞仮説への関心を改めて呼び覚ましたが、最近までこの理論は明示的に定式化されてこなかった。本章では、まさにそうした定式化を行った新たなモデルの核心部分の論理を説明する。そのモデルでは、格差の拡大、人口成長の鈍化、借入上限の引き下げがすべて均衡実質金利の低下につながる。最近の他のモデルと異なり、デレバレッジが一定期間進むことがさらに均衡実質金利に低下圧力を加えることになるため、均衡実質金利は恒久的にマイナスとなる。

Richard C. Koo: "The Great Recession is often compared to Japan’s stagnation since 1990 and the Great Depression of the 1930s. This chapter argues that the key feature of these episodes is the bursting of a debt-financed asset bubble, and that such ‘balance sheet recessions’ take a long time to recover from. There is no need to suffer secular stagnation if the government offsets private sector deleveraging with fiscal stimulus. However, until the general public understands the fallacy of composition, democracies will struggle to implement such policies during balance sheet recessions."

(拙訳)

リチャード・C・クー
大不況は良く1990年以降の日本の停滞や1930年代大恐慌と比較される。本章では、これらの出来事の主要な特徴として、債務で賄われた資産バブルの破裂、ならびにそうした「バランスシート不況」は回復に時間が掛かることを挙げる。民間部門のデレバレッジ政府が財政刺激策で相殺すれば長期停滞に陥る必要はない。しかし、一般市民が合成の誤謬理解しない限り、民主主義体制下でそうした政策バランスシート不況の最中に導入することには苦労が伴う。

Taylorは、

Secular stagnation, we have learned, is an economist’s Rorschach Test. It means different things to different people.

(拙訳)

長期停滞は経済学者によってのロールシャッハテストであることが分かった。人によってその意味が異なる。

という編者の言葉を引用し*2、この小論集を群盲象を撫づに喩えている。

*1:Taylorは6つと書いているが…。

*2:正確にはアイケングリーンの言葉を編者が引用したものの孫引き。ちなみにアイケングリーンの章ではロールシャッハのスペルを間違えている。

2014-08-29

影の金利が示さないもの

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影の金利に関する論文をもう一丁。以下はNeville R. Francis(ノースカロライナ大)、Laura E. Jackson(同)、Michael T. Owyang(セントルイス連銀)による「How Has Empirical Monetary Policy Analysis Changed After the Financial Crisis?」というセントルイス連銀論文の要旨。

In the wake of the Great Recession, the Federal Reserve lowered the federal funds rate target essentially to zero and resorted to unconventional monetary policy. With the nominal FFR constrained by the zero lower bound (ZLB) for an extended period, empirical monetary models cannot be estimated as usual. In this paper, we consider whether the standard empirical model of monetary policy can be preserved without breaks. We consider whether alternative policy instruments (e.g., the size of the balance sheet) can be considered substitutes for the FFR over the ZLB period. Furthermore, we construct a shadow rate via the method proposed in Krippner [2012] to represent an alternative measure of the stance of monetary policy and compare this with the shadow rate of Wu and Xia [2014]. We ask whether the shadow rate is a sufficient representation of the policy instrument or if the financial crisis requires other modifications. We find that, if using a dataset that spans the pre-ZLB period throughout the ZLB environment, the shadow rate acts as a fairly good proxy for monetary policy by producing impulse responses of macro indicators similar to what we’d expect based on the post-WWII, non-ZLB benchmark. However, the linear model exhibits a significant structural break at the onset of the ZLB and the shadow rate may still be insufficient for examining the ZLB period in isolation.

(拙訳)

大不況後、FRBFF金利の目標を事実上ゼロまで下げ、非伝統的金融政策の手段を取るようになった。名目FF金利が相当の期間ゼロ金利下限(ZLB)に制約された状況下では、通常の形で実証金融モデルを推計することはできない。本稿で我々は、金融政策の標準的な実証モデルが断層無しに維持できるかを検討した。我々は、代替的な政策手段(例:バランスシートのサイズ)が、ZLB期間においてFF金利代理として扱えるどうかを検討した。また我々は、金融政策のスタンスを表す代替的な指標としてKrippner[2012]*1で提案された手法を用いた影の金利を構築し、Wu and Xia [2014]*2の影の金利と比較した。我々は、影の金利政策手段を表す十分な指標になっているのか、それとも金融危機のためにさらなる改善を加えた指標が必要となっているのか、について調べた。我々は、ZLB以前の期間からZLB下の期間に跨るデータセットを用いた場合、影の金利金融政策のかなり良い代理指標になっていることを見出した。それによるマクロ指標のインパルス反応は、第二次世界大戦後の非ZLBのベンチマークから予想されるものと同様であった。しかしながら、線形モデルはZLBの開始時において有意な構造的断層を示し、影の金利はZLB期間だけを取り出して調べる際には依然として不十分な指標であるように思われる。

*1これ

*2これungated版)。

2014-08-28

影の金利が示すもの

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以前、影の金利に関するSF連銀論文を紹介したが、今度はBISから影の金利に関する論文出ている論文のタイトルは「A shadow policy rate to calibrate US monetary policy at the zero lower bound」で、著者はMarco LombardiとFeng Zhu。

以下はその要旨。

The recent global financial crisis, the Great Recession and the subsequent implementation of a variety of unconventional policy measures have raised the issue of how to correctly measure the stance of monetary policy when policy interest rates reach the zero lower bound (ZLB). In this paper, we propose a new "shadow policy rate" for the US economy, using a large set of data representing the various facets of the US Federal Reserve's policy stance. Changes in term premia at various maturities and asset purchases by the Fed are key drivers of this shadow rate. We document that our shadow policy rate tracks the effective federal funds rate very closely before the recent crisis. More importantly, it provides a reasonable gauge of US monetary policy stance when the ZLB becomes binding. This facilitates the assessment of the policy stance against familiar Taylor rule benchmarks. Finally, we show that in structural vector autoregressive (VAR) models, the shadow policy rate helps identify monetary policy shocks that better reflect the Federal Reserve's unconventional policy measures.

(拙訳)

最近の金融危機大不況、およびそれに続く様々な非伝統的政策手段の導入は、政策金利がゼロ金利下限に到達した時にどのように金融政策のスタンスを正しく測るか、という問題を提起した。本稿では、米国のFRB政策スタンスの多様な側面を表す大規模なデータセットを用い、米国経済の新たな「影の政策金利」を提示する。様々な満期についての期間プレミアムの変化とFRB資産購入が、この影の金利を動かす主な要因である。ここでは、我々の影の金利が今回の危機の前に実効FFレートを極めて良くトラックしていたことを示す。より重要なのは、この指標がゼロ金利下限の制約下における米国の金融政策のスタンスの適切な尺度を提供する点である。そのため、お馴染みのテイラールールというベンチマークと比較対照させた政策スタンスの評価が可能になる。最後に我々は、構造的ベクトル自己回帰モデルにおいて、影の政策金利が、FRBの非伝統的政策手段をより良く反映する形で金融政策ショックを判別する助けになることを示す。