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himaginaryの日記

2018-06-24

勃興しつつある中国を西側はどのように判断すべきか

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2週間ほど前のエントリで、デロングが中国の直面する問題について以下のように書いている

The big problem China will face in a decade is this: an aging near-absolute monarch who does not dare dismount is itself a huge source of instability.

The problem is worse than the standard historical pattern that imperial succession has never delivered more than five good emperors in a row. The problem is the aging of an emperor. Before modern medicine one could hope that the time of chaos between when the grip on the reins of the old emperor loosened and the grip of the new emperor tightened would be short. But in the age of modern medicine that is certainly not the way to bet.

Thus monarchy looks no more attractive than demagoguery today.

We can help to build or restore or remember our “republican remedy for the diseases most incident to republican government“. An autocracy faced with the succession and the dotage problems does not have this option. Once they abandon collective aristocratic leadership in order to manage the succession problem, I see little possibility of a solution.

And this brings me to Martin Wolf. China's current trajectory is not designed to generate durable political stability:

(拙訳)

10年後に中国が直面する大きな課題は、次の通り。即ち、その座を降りようとしない老いつつある絶対君主に近い統治者が、それ自身、不安定性の大いなる源になることだ。

この問題は、続けて5人より多くの良い皇帝皇位継承によりもたらされたことは決して無かった、という標準的な歴史のパターンよりも悪い話だ。問題は皇帝の老化にある。現代医学の到来以前は、前の皇帝の統治力が衰え、次の皇帝の統治力が強まる間の混乱期は短い、という望みがあった。しかし現代医学の到来後は、その望みに賭けるのは間違いなく難しくなっている。

従って、君主制が今日の民衆扇動主義より魅力的だとは思われない。

我々は、「共和制政府に最もありがちな病弊に対する、共和制的な治療法*1」を構築したり修復したり覚えておいたりするよう努力することができる。君主の後継問題と高齢化問題に直面した独裁制には、その選択肢が無い。後継問題を片付けるために高位者による集団指導体制を破棄してしまった現在、解決法は無きに等しいように見える。

この話はマーチン・ウルフの論説につながる。中国の現在の軌跡は、持続的な政治的安定を生み出すように設計されてはいない。

これに続けてデロングはウルフの表題の論説原題は「How the west should judge a rising China」)を抜粋引用しているが、その冒頭は以下の通り。

Chinese political stability is fragile...History suggests that they are right. The past two centuries have seen many man-made disasters, from the Taiping Rebellion of the 19th century to the Great Leap Forward and cultural revolution. It is quite easy therefore to understand why members of the elite seem convinced that renewal of the Communist party, under the control of Xi Jinping, is essential. We must recall that the upheaval of modernisation and urbanisation through which China is now going, destabilised Europe in the 19th and early 20th centuries. Yet this tightening of control could derail the economy or generate a political explosion in a country containing an ever more literate, interconnected and prosperous people. China wishes to be a huge Singapore. Can it?

(拙訳)

中国の政治的安定性は脆弱である・・・歴史はそのように述べる人たちが正しいことを示している。過去2世紀の間、19世紀太平天国の乱から大躍進や文化大革命に至るまで、多くの人災があった。従って、指導層の人々が、習近平の支配の下で共産党一新することが肝要だ、となぜ確信しているかを理解するのは極めて容易である。中国で現在進行中の近代化と都市化という大変動が、19世紀と20世紀初頭の欧州不安定化させたことを我々は思い起こす必要がある。とは言え、人々がますます教養を高め、相互のつながりを深め、裕福になる社会でそのように支配を強化することが、経済を軌道から踏み外させたり、政治的爆発を招く可能性もある。中国は巨大なシンガポールになりたいと願っているが、なれるだろうか?

この後ウルフは、中国からの見方として以下の項目を挙げ、それぞれについて自分の見解を論じている。

  • 西側モデルの信用は失墜した
    • 中国の指導層のその見方は正しく、残念ながらそれは失墜した。
    • かつて我々は、西側は介入主義的で自己中心的偽善的だが、有能だ、と考えていた。しかし金融危機ポピュリズム台頭の後は、西側は自分の政治経済システムを上手く運営できる、という能力面についても疑問符が付いた。
    • 個人自由の表現として民主主義市場経済を信ずる者にとっては、この失敗は手痛い。
    • この失敗には改革を以って対処するほかは無いが、残念ながら西側で実際に起こっているのは非生産的な怒りである。
  • 中国は世界を支配したいとは思っていない
    • その点は疑問。これまでの大国と同様、中国は間違いなく世界秩序を自らの好みに合わせようとしている。
    • また、中国人留学生をはじめとして、海外の行動にも影響を与えようとしている。そうしたことは、中国の力が海外に伸長していくという不可避の流れの表れ。
  • 米国の貿易交渉の目的は訳が分からない
    • その点で中国は正しく、米国のやり方は馬鹿げている。しかし中には本当に重要な問題もあり、とりわけ知財問題がそうである。
  • 中国はそうした攻撃を乗り切る
    • それはほぼ間違いないだろう。中国にとってより重大な脅威は、厳しさを大きく増す外部環境に対する国内の反応にある。
  • 今年は試練の年になる
    • そうなるだろう。むしろ、今世紀が試練の世紀となる。
    • 西側は真剣に考える必要がある。米国がその力を一方的に振るえばそれで話は済む、という米政権の見方は失敗に終わるだろう。トランプ政権そもそも気にしていないかもしれないが、そのやり方で世界の共有財を管理することはできず、世界の安定を達成することもできない。
    • 西側は、自国を上手く運営できないことが自らの最大の敵になった、ということを認識する必要がある。
    • 将来の相互依存世界への唯一の道は、相互の尊敬と多国間の協力によってしか開けない。

*1cf. ここ

2018-06-23

貿易戦争とネイピア数

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6/17エントリクルーグマンが、貿易戦争の帰結について考察し、以下の予測を行っている。

  • 関税は30-60%の範囲となる
  • 世界の貿易は7割減少する
  • 世界のGDPは2-3%減少する

関税についてクルーグマンは、最適関税を理論的に導いたOssaNicita et alの試算(Ossa=60%近く、Nicita et al=現状から32%ポイントの上昇)や、スムート=ホーリー法の45%という数字*1から、40%以上になる可能性が高い、としている。

貿易量については、こちらのメモでの考察から7割減少という結果を導き出し、これはGDP比で1950年代に戻ることに相当する、としている。

GDPへの影響については、厚生損失を三角形に近似して求めた輸入減少量×1/2×関税率という式に、米国における輸入のGDP比率として15%、その減少率として上述の70%、関税率として40%という数字を当てはめ、GDPの2.1%という値を弾きだしている。ただ、いわゆる中国ショックが、たとえ米国雇用全体を大きく減らさなかったとしても、業種や地域によっては大きな打撃を与えたように*2、「トランプショック」も同様のショックを輸出産業に与え、しかも規模はより大きなものとなるだろう、とクルーグマンは指摘している。


これらの考察のうち、貿易量が7割減少する、というのはかなり衝撃的な数字であり、俄かには信じがたいように思われる。そこで、以下ではそれを導出したメモの内容を少し詳しく見てみる。

同メモでクルーグマンは、政府独占企業に見立て、価格弾力性をεとして、利益を最大化するマークアップが1/(ε-1)であるとしている。これが最適関税率になる。その場合、価格は自由貿易に比べて 1+1/(ε-1) = ε/(ε-1) 倍となる*3

水平な供給曲線を仮定すると、その時の貿易量は自由貿易に比べて(ε/(ε-1))^(-ε)倍になる、とクルーグマンは言う。そして、εを以下のように変えてもこの式の結果は0.3近辺で安定している、としている。

ε関税貿易量
30.50.296
40.330.316
60.20.335

ただ、こちらブクマで指摘したように、この貿易量の式は結果的にネイピア数(=自然対数の底)の公式になっており、そのため貿易量が価格弾性値の広い範囲について概ねネイピア数の逆数になる、という結論になっている。しかし、そこから貿易戦争が発生すると貿易量は7割減る、とするのはやや極論のように思われる。小生が感じる疑義は以下の通り。

  • クルーグマンは価格弾力性が一定という貿易量関数からこの結果を導いているが*4、特にこれだけ大きな貿易量の変化についてその関数を使うことが適切かどうか。
  • この式は完全に自由な貿易市場と、完全に独占的な貿易市場の比較をしているが、現状でも関税は存在しており、完全に自由な市場に比べて既に貿易量が減少した状態と考えられるのではないか。
  • 価格弾性値から導かれる最適税率まで実際の関税率が引き上げられるか、という問題。この式ではすべての商品の関税率が一律に1/(ε-1)になる状況を考えていると思われるが、実際にはそこまで行かないのではないか。

*1クルーグマンは、1932年に関税率が59%に達したことも指摘しているが、これは(パーセントではなく)ドル建てで指定した関税比率デフレのせいで保護主義者の想定をも上回った結果である、と説明している。

*2cf. Autor研究

*3:導出については例えばこちらの資料のp.13参照。

*4:Q=cP^(-ε)とすると、-(∂Q/Q)/(∂P/P)=εとなる。

2018-06-22

不均一主体と投入・生産ネットワークによるマクロ経済学の分解

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ここここでその研究を紹介したDavid Rezza Baqaee(LSE)とEmmanuel Farhi(ハーバード大)のコンビが、最近流行りの不均一主体と、生産関数の産業レベルの分解とを同時に取り入れたモデルに関する表題のNBER論文原題は「Unbundling Macroeconomics via Heterogeneous Agents and Input-Output Networks」)を上げているungated版)。

以下はその要旨。

The goal of this paper is to simultaneously unbundle two interacting reduced-form building blocks of traditional macroeconomic models: the representative agent and the aggregate production function. We introduce a broad class of disaggregated general equilibrium models with Heterogeneous Agents and Input-Output networks (HA-IO). We elucidate their properties through two sets of results describing the propagation and aggregation of shocks. First, we characterize how shocks affect prices and quantities of goods and factors. Even with purely microeconomic shocks, the mapping from structural primitives to observed effects is complicated by “local” general equilibrium forces. Our framework shows how to account for these forces, and helps interpret IV-based cross-sectional regression results. We also uncover a surprising property of a large class of efficient representative agent models: they feature symmetric propagation in that a shock to producer i affects the sales of producer j in exactly the same way that a shock to j affects the sales of i. This improbable symmetry breaks in the presence of heterogeneous agents or distortions. Second, we provide aggregation results characterizing the responses of industry-level variables such as markups and productivity. The behavior of these aggregates is particularly delicate in inefficient economies: they respond to microeconomic shocks outside of the industry; and they can give rise to fallacies of composition whereby aggregates move in the opposite direction of their microeconomic counterparts. Our results shed light on many seemingly disparate applied questions, such as: sectoral co-movement in business cycles; factor-biased technical change in task-based models; structural transformation; the effects of corporate taxation; and the dependence of fiscal multipliers on the composition of government spending.

(拙訳)

本稿の目的は、従来のマクロ経済モデルにおける2つの相互作用する誘導型の基本要素を、同時に解きほぐすことにある。その2つの基本要素とは、代表的個人と総生産関数である。我々は、不均一な主体と、投入・生産ネットワークを備えた、多様な種類の非集約型一般均衡モデルを導入する。我々は、ショックの伝播と集約を描写する2種類の結果を通じて、それらのモデルの特性を説明する。まず、ショックがどのように財や要素の価格や数量に影響するかについての特性を示す。純粋にミクロ経済的なショックについても、構造上の構成要素から観測される影響への写像は、「局所的な」一般均衡の力によって複雑化する。我々の枠組みは、そうした力を説明する方法を示し、操作変数法に基づくクロスセクション回帰結果の解釈に役立つ。我々はまた、多くの種類の効率的代表的個人モデルの驚くべき特性を明らかにする。それらのモデルは、生産者iに対するショックから生産者jの売り上げへの影響が、jに対するショックからiの売り上げへの影響とまったく同様の形になる、という対称的な伝播を特徴としている。こうした非現実的な対称性は、不均一な主体もしくは歪みの存在によって破られる。次に、マークアップ生産性といった産業レベルの変数の反応の特性を表す集約的な結果を示す。これらの集約量の振る舞いは、非効率的な経済でとりわけデリケートである。そうした経済は、産業の外のミクロ経済的ショックに反応するほか、集約的な動きがミクロ経済的な動きと逆方向になるという合成の誤謬が生じ得る。我々の結果は、一見バラバラな応用問題に解決の糸口を与える。そうした応用問題とは、景気循環における部門間の共変動、業務ベースモデルにおける要素偏向的な技術変化、構造転換、法人税の影響、政府支出の構成に財政乗数が左右されること、などである。

2018-06-21

住宅資産効果:長期的視点

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といNBER論文をエミ・ナカムラ、ジョン・スタインソンらが書いているungated版)。原題は「Housing Wealth Effects: The Long View」で、著者はAdam M. Guren(ボストン大)、Alisdair McKay(同)、Emi Nakamura(コロンビア大)、Jón Steinsson(同)。

以下はその要旨。

We provide new, time-varying estimates of the housing wealth effect back to the 1980s. We exploit systematic differences in city-level exposure to regional house price cycles to instrument for house prices. Our main findings are that: 1) Large housing wealth effects are not new: we estimate substantial effects back to the mid 1980s; 2) Housing wealth effects were not particularly large in the 2000s; if anything, they were larger prior to 2000; and 3) There is no evidence of a boom-bust asymmetry. We compare these findings to the implications of a standard life-cycle model with borrowing constraints, uninsurable income risk, illiquid housing, and long-term mortgages. The model explains our empirical findings about the insensitivity of the housing wealth effects to changes in the loan-to-value (LTV) distribution, including the dramatic rise in LTVs in the Great Recession. The insensitivity arises in the model for two reasons. First, impatient low-LTV agents have a high elasticity. Second, a rightward shift in the LTV distribution increases not only the number of highly sensitive constrained agents but also the number of underwater agents whose consumption is insensitive to house prices.

(拙訳)

我々は1980年代以降の住宅資産効果の時変的な推計値を新たに提示する。ここでは、地域の住宅価格サイクルに対するエクスポージャーの都市レベルの系統的な相違を利用し、住宅価格の操作変数とした。主な発見は次の通り。1)大きな住宅資産効果というのは目新しいものではなく、1980年代半ばにもその効果は顕著に見られた、2)住宅資産効果は2000年代に特に大きかったわけではなく、むしろどちらかというと2000年以前の方が大きかった、3)好不況の非対称性の証拠は無かった。我々は、以上の発見を、借り入れ制約、保険できない所得リスク、非流動的な住宅、長期の住宅ローンのある標準的なライフサイクルモデルの含意するところと比較した。モデルは、大不況における対不動産価格借入金比率(LTV)の急上昇も含め、住宅資産効果がLTVの分布の変化に反応しない、という点に関する我々の発見を説明した。そうした不感応性がモデルで生じる理由は次の2つである。第一に、LTVの低い我慢しない主体は、高い弾力性を持つ。第二に、LTV分布の右方向へのシフトは、感応度の高い制約された主体の数を増やすだけでなく、消費が住宅価格に反応しない水面下の主体の数も増やす。

2018-06-20

格差、景気循環、および金融財政政策

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一昨日エントリで金融政策と再分配に関する論文を紹介したが、意外にも(?)トーマス・サージェントらが似たような主旨の表題のNBER論文書いている論文原題は「Inequality, Business Cycles, and Monetary-Fiscal Policy」で、著者はAnmol Bhandari(ミネソタ大)、David Evans(オレゴン大)、Mikhail Golosov(シカゴ大)、Thomas J. Sargent(NYU)。

以下はその要旨。

We study optimal monetary and fiscal policy in a model with heterogeneous agents, incomplete markets, and nominal rigidities. We develop numerical techniques to approximate Ramsey plans and apply them to a calibrated economy to compute optimal responses of nominal interest rates and labor tax rates to aggregate shocks. Responses differ qualitatively from those in a representative agent economy and are an order of magnitude larger. Taylor rules poorly approximate the Ramsey optimal nominal interest rate. Conventional price stabilization motives are swamped by an across person insurance motive that arises from heterogeneity and incomplete markets.

(拙訳)

我々は、不均一主体、不完全市場、名目硬直性を持つモデル*1で、最適な金融財政政策を研究した。我々はラムゼープランを近似する数値技法を開発し、その技法をカリブレートされた経済適用して、マクロショックに対する名目金利と労働税率の最適な反応を計算した。得られた反応は代表的個人経済における反応とは定性的に異なり、一桁大きかった。テイラールールでは、ラムゼーの最適な名目金利をあまり良く近似できなかった。従来型の物価安定化動機に比べて、不均一性と不完全な市場から生じる、個人間の社会保険を実施する動機は極めて大きかった。

以下はungated版の一節。

Applying our approach to a calibrated New Keynesian economy with heterogeneous agents, we find that attitudes about inequality induce the planner to use fiscal and monetary tools to redistribute resources toward agents who are especially adversely affected by recessions. ...

In response to a negative productivity shock, we find that optimal monetary policy lowers nominal rates while keeping expected inflation near zero. But the planner also engineers high unanticipated inflation in recessions because that is a good way to transfer resources from agents with high bond holdings toward agents with low holdings. This transfer makes up for the inability of agents fully to insure against aggregate shocks. ...Furthermore, as in data, recessions in our calibrated economy are accompanied by persistent increases inequality. This generates a motive to redistribute labor income from productive agents by increasing transfers. The planner achieves this by keeping marginal labor tax rates high long after output has recovered. We find that in response to a productivity shock that lowers output growth by 3%, there is a nearly permanent increase in the labor tax rate of about 0.5 percentage points and a 0.25 percentage points jump in inflation for one period. As a point of comparison, the optimal tax rate and inflation rate in an economy without heterogeneity are constant for permanent productivity shock and an order of magnitude lower if we impose zero lump-sum transfers.

(拙訳)

我々の手法を、カリブレートされた不均一主体のニューケインジアン経済適用したところ、計画者が、格差に対処しようとする姿勢に基づき、不況で特に不利益を蒙る主体へ資源を再分配するために財政金融政策を使うようになる、という結果が得られた。・・・

負の生産性ショックに対する最適金融政策では、期待インフレをゼロ近くに保ちつつ名目金利が引き下げられる、という結果が得られた。しかし、計画者はまた、不況期に予期せぬ高いインフレを引き起こす、という結果も得られた。というのは、それが保有債券が多い主体から保有債券が少ない主体への所得移転を行う良い方法だからである。この所得移転は、主体マクロ的なショックに対して完全な保険が掛けられないことへの補償となる。・・・また、データにおけるのと同様、我々のカリブレートされた経済の不況は、格差の継続的な拡大を伴う。そのため、所得移転を増やすことによって生産性の高い主体の労働所得を再分配する動機が生じる。計画者は、生産が回復した後も長期に亘って限界労働税率を高く据え置くことによってそれを達成する。生産を3%下げる生産性ショックに対し、約0.5%ポイントのほぼ恒久的な労働税率の上昇と、インフレの1期間の0.25%ポイントのジャンプが生じる、という結果が得られた。対照的に、不均一性の存在しない経済での恒久的な生産性ショックに対する最適な税率とインフレ率は一定となる。また、所得移転をゼロにするという制約を課せば、値は一桁小さくなる。

*1:この論文に使われているHANKモデルについてはここ参照。ちなみに18日エントリで紹介したAuclert論文には「The model presented above takes incomes as exogenous. This distinguishes it from the recent wave of Heterogeneous-Agent New Keynesian models which endogenize aggregate income and its distribution. My analysis shows that the endogenous distribution of income can matter a great deal for monetary policy transmission because of the earnings heterogeneity channel.」という一節がある。