Hatena::ブログ(Diary)

磯山友幸のブログ RSSフィード Twitter

2012-09-14

改正金融商品取引法の成立で「総合取引所」がついに実現!! 役所の縛りをこえて東証・大証の統合で「強い取引所」はできるか

| 00:16

「総合取引所」を実現させるための制度整備を盛り込んだ改正金融商品取引法が9月6日、衆議院本会議で可決された。すでに参議院は通過しており、会期末ギリギリでの法案成立となった。これまで、金融庁経済産業省農林水産省に分かれていた取引所に対する規制・監督の権限を、原則として金融庁に一元化することとなる。

 株式や金融先物、商品などを一括して取引する総合取引所の実現に向けて、民間の取引所に対して政府は積極的に働きかけを行う方針。省庁間の権限争いもあり、法案の成立が危ぶまれたが、とりあえず、第一歩を踏み出した格好だ。アジアの中心となる「強い取引所」を再構築できるかどうか、注目される。

規制が一本化される意味は大きい

 総合取引所の実現は民主党政府が掲げた「新成長戦略」の柱の1つ。金融分野では「目玉」の政策だった。地盤沈下が著しい日本の資本市場再興に向けた政策として打ち出された。自民党政権時代の「骨太の方針2007」に盛り込まれたのが最初だったが、原油や金属など工業品の取引所を所管する経済産業省や、農産物の取引所を所管する農林水産省の根強い反対で、規制の一本化ができなかった。

 民主党政権で法案が動き出したのは、工業品や農産物などの商品取引の売買激減で取引所の行き詰まりが明らかになったため。農水省所管だった東京穀物商品取引所は自社所有の取引所をすでに売却、それでも赤字経営から脱却できなかった。

 2013年2月頃までに経産省所管の東京工業品取引所(東工取)に上場商品を移管した後、来夏には解散することを表明している。一方の東工取も4年連続で大幅な赤字を計上しており、このままでは日本から商品取引所が消えかねない状況に追い込まれている。

 焦点は来年1月に東京証券取引所と大阪証券取引所を統合して発足する「日本取引所グループ」に商品取引所が合流できるかどうか。持ち株会社の下に現物株式取引所(東証)、デリバティブ(金融派生商品)取引所(大証)、決済会社、自主規制機関がぶら下がる。

 東証や大証の幹部は、東工取が持ち株会社傘下に加わること自体は拒否していないが、東工取が加わることで、経産省の規制が加わり、二重規制になることを懸念してきた。今回の法案成立で、曲りなりにも規制が一本化される意味は大きい。

「強い取引所」を創るしかない

 もともと、経産省は自らの権限を残したまま、東工取主導で生き残る方策を模索、東証に決済部門の引き取りを打診して断られると、大証との統合を持ちかけた。米CMEグループへも出資の打診をしていたと報道された。経産省内では、依然として日本取引所グループへの合流を忌避する考え方が強いという。

 経産省の抵抗を突破できるかどうかは、政治家の意思にかかっている。7月26日の参議院での法案審議で、自民党の古川俊治参議院議員が、松下忠洋金融担当相(当時、9月10日死去)にこんな質問をしている。

「具体的に日本の総合取引所なわけですけれども、東証、そして大証、東工取の合併・統合というのは2013年中にやっていただけますね」

 これに対して、「実現したいと強く考えています。そのために長年課題を整理してここまで参りましたので、各省庁の垣根を越えて、しっかり取り組んでいきたいと、そう思っています」と松下金融担当相は強い決意を示したのだ。

 金融担当相に就く前、松下氏は経産副大臣を務めていた関係で、総合取引所の議論には当初から関わってきた。2013年というのは、金融庁経産省農水省が2010年12月22日に合意した「中間整理」の中に、「2013年に総合的な取引所の実現」と盛り込まれていることを指す。

 松下氏は答弁の中で商品市場の危機的な状況を語っている。「工業品や農業品などの商品市場においては、世界の市場規模がこの6年で4倍に増加しています、4倍です。一方、我が国の方は逆に4分の1に縮小している」というのだ。その商品市場の復活には、もはや役所の権益を超えた統合によって「強い取引所」を創るしかない、ということなのだ。

「口座や税制の一元化」が今後の課題

 政治が強い意思を示すことで、役所をねじ伏せることができたとしても、それで総合取引所がすぐに実現するわけではない。日本取引所グループも、東工取も民間の株式会社で、前者は上場企業だ。政府の指示に従って、統合を決めるわけではない。総合取引所となる戦略的なメリットを感じるか、投資家のニーズがあるかどうかがポイントになる。

 そのためにも、さらなる規制改革が必要なのは明らかだ。法案が参議院を通過する際に附帯決議が行われているが、その1つに以下のような決議が盛り込まれた。

「証券・金融、商品の垣根を取り払った総合的な取引所を早期に実現し、利用者利便の向上、取引の活性化、国際競争力の強化を図るため、金融庁農林水産省経済産業省が連携して、取引所等の関係者に対し、総合的な取引所創設に向けた取組を促すとともに、口座・税制の一元化等の課題に取り組むこと」

 最後のくだりにある、「口座や税制の一元化」というのが今後の課題だろう。金融先物と商品先物を売買する取引所が同じ持ち株会社の傘下にあるだけでは何の意味もなさない。1つの口座で売買できる仕組みや、税制の一元化、売買に伴う損益の通算といったことができてはじめて「総合取引所」を創る意味がある。

 日本が総合取引所の議論を繰り返していた5年の間に韓国は総合取引所を創設、世界有数のデリバティブ市場となっている。また、シンガポールアジアの金融センターとしての地位を固めている。世界からヒト・モノ・カネが集まってこそ国は栄える。アジアの中心市場として日本の取引所が復活できるかどうか。今回の法案成立を反転攻勢の号砲にしなければならない。