神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

黒岩さんと唐沢隆三氏

日本古書通信』7月号の大和田茂「追悼唐沢隆三氏 個人誌『柳』八六三号でついに終刊」にも黒岩さんの名が出ていた。57年間、月刊個人誌『柳』を発行していた唐沢隆三氏が5月6日93歳で亡くなったが、入院前には、親しく文通していた黒岩さんの『パンとペン』出版を喜び、ブログ本『古書の森 逍遙』を座右に置き、感想を同誌に書き連ねていたという。
『柳』については、茅原健氏も「古書の森日記」へのコメントで言及されていた。

Posted by 茅原 健 2008年12月17日 20:51
『『食道楽』の人村井弦斎』からお仕事に注目しておりました。黒岩涙香の縁者かと思いつつ。唐沢隆三さんの『柳』でご尊名を拝見。堀切利高さん(30年近いお付き合いです)とご一緒だたりして、存外、周辺の人物としてご登場なのが、親近感を覚えました。華山については、拙書『民本主義の論客 茅原華山伝』(不二出版)があります。その不二出版の編集者山本有紀乃さんから、華山が出ていると教えられて『日露戦争ー』を読みました。最近では『工手学校』(中公新書ラクレ)を出しました。という自己宣伝はともかく、「茅原」という名字は、かなり珍しく(「チハラ」と読む例もある)「緑」が「茂」と連想した次第です。『日本古書通信』はお読みですか。そこに「書架拾遺」というコラムを連載しております。主に、華山(実弟茂、東学など)周辺の著書を話題に書いております。

                                                • -

「古書の森日記」によると、明日「本の現場シリーズ」最終回があるようだ。前回は5人しか見ていなかったと思うが、皆さんぜひ見ましょう。

「本の現場シリーズ」最終回
★10月19日(水)19:30〜はピーマンTV★
本の現場シリーズ 第8回は「本と書評」

                                                                                              • -

第8回 読売新聞編集局文化部 鵜飼哲夫さんが語る
「読書委員」黒岩比佐子さん〜「読書委員」の仕事と「本と書評」

『歴程』詩人としてのSF作家今日泊亜蘭

SFマガジン』11月号が「日本SF第一世代回顧」特集で、なつかしい今日泊亜蘭の名前も出ていたので、今日泊の話題をしよう。
水島爾保布の長男である今日泊亜蘭(本名水島行衛、幼名太郎)については、峯島正行『評伝・SFの先駆者今日泊亜蘭』に、先駆的SF作家の側面のほか、『歴程』系の詩人の側面についても書かれている。同書によると、辻一(つじ・まこと。辻潤伊藤野枝の長男)が、今日泊を『歴程』の同人に強引に加入させたという。また、今日泊は、同誌には、宇良島多浪の名で定型の長編叙事詩を昭和49年2、7月号に、水島太郎の名で日本語の表記に関する言語学的な長い論述を昭和30年5〜7月号に掲載しているとある*1
『歴程』を主宰した草野心平の日記に、水島、今日泊や宇良島の名が出てくる。

昭和35年1月11日 トミイに行く。歴程例会。
         出席者、清水深生子、鳥見迅彦、山本太郎、山本道子、本郷隆、水島太郎、山田今次、高内壮介、会田綱雄、生野幸吉、前田棟一郎、宗左近、山崎栄治、赤坂長義、草野ら。
         次号より(略)企画事業的なことを辻まこと、水島太郎、山田今次、草野らが当ることにする。

37年9月8日 歴程例会、6pmトミイ。
        岡本喬、宇良島太郎(ママ)、辻まこと長光太、那珂太郎、宇佐見英治、新藤千恵、山本道子、前田棟一郎、入沢康夫、小生などあつまる。帰り、辻、宇佐見、前田と学校*2へ。ボディビルなどきている。のむ。

  37年9月25日 五時半から山水楼、今日泊亜蘭の会。帰り、辻、宇佐見、岡本、赤坂と学校へ。

  37年10月10日 歴程の会、トミイ。宇良島太郎(ママ)、宇佐見、赤坂、酒井、安西、入沢、小生。終って宇良島の妹のおでんやへ寄る。

  38年3月11日 歴程フェスチバルの件の相談。辻、緒方、高橋、高松、山本道子、太郎、今日ドマリ[水島太郎]、長光太、赤坂長義、宇佐見等集る。

  47年9月2日 歴程フェスチバル相談会。赤坂長義、宗左近、宇良島多浪山本太郎田村隆一、那珂太郎、墨岡孝、池井昌樹、黒岩隆、新藤凉子、安西均、粕谷栄市、石垣りん、小松郁子、嶋岡晨、柴田恭子、野村太郎、吉原幸子、小生等。トントンと話運ぶ。九時散会。Bar学校に寄らず五光へ。

  49年6月11日 渉君と土屋君クルマで宇良島多浪君のところに行き、天山文庫への寄贈の本と雑誌をとりにゆき、もってくる。宇良島君遺言として、死んだら蔵書の全部を天山文庫に寄贈すると書いている。変った男だ。しかし有難い。

注:[ ]は、編者の注記。

昭和37年9月の「今日泊亜蘭の会」とは、おそらく同年8月刊行の『光の塔』(東都書房)の出版を祝う会だろう。
今日泊は平成20年5月12日没、蔵書はどうなっただろうか。

(参考)「今日泊亜蘭の祖父水島慎次郎

*1:水島太郎「諧音語法新論」は、正しくは昭和30年4、6、7、9、11月号に掲載。宇良島多浪名義の作品は、34年6月号、37年5月号、38年3月号、40年5月号、41年4月号にも掲載。

*2:昭和35年6月10日草野が新宿区新宿一の五に開店したバー。設計は辻一。