詩人。1923年東京巣鴨生まれ。1998年没。 戦後の1947年、鮎川信夫らとともに『荒地』を創刊。 1952年から4年間、早川書房に勤務。その頃のエピソードは、宮田昇『戦後「翻訳」風雲録』(ISBN:4938463881)が詳しい。 吉本隆明は「わが国でプロフェッショナルと呼べる詩人は、田村隆一・谷川俊太郎、吉増剛造ということになる」と云う。 翻訳、エッセイも多数。
田村隆一詩集 (1968年) (現代詩文庫)
続・田村隆一詩集 (現代詩文庫)
続続・田村隆一詩集 (現代詩文庫)
田村隆一全詩集
以前、常盤新平さんの自伝的短編集「片隅の人たち」を読んで、当時の早川書房の雰囲気を垣間見たが、生島治郎さんのこの実名小説はその前日談と言えそう。「エラリー・クイーンズ・ミステリー・マガジン(EQMM)」の編集長は、創刊直前に辞めた人をカウントするかどうか変わるが、都筑道夫さんが初代、生島さんが二代目、常盤さんが三代目となる。 生島さん本人は、越路玄一郎ととして登場するが、他に登場する人たちは実名で、主に作家たち。早川書房のケチな社長が「ファッツ」としてあだ名で通されている。好きな詩人の田村隆一さんがイメージ通りの人物として登場するので口元が緩んでしまった。生島さんの名前はハードボイルド系の作家…
2月は猫の本が読みたくなります。 そんなわけで、長らく本棚に仕舞い込んでいたル・カインの「キャッツ」と「魔術師キャッツ」を棚から取り出してきました。 この2冊はT.S. エリオットが書いた猫の詩にル・カインが絵を描いた絵本です。 そう、この絵本はミュージカルのキャッツと同じでエリオットの詩が原作なんです。 あいにく私はミュージカルを見てないので、さっき映画のほうを観てみました。 (映画はどうも酷評のようですが、^-^;) この曲は、この詩のこと?と、答え合わせ中。 ちなみに、絵本「キャッツ」に載っている詩は、 ・ボス猫・グロウルタイガー絶体絶命 ・ピークとポリクルの大げんか ・ジェリクルの歌 …
結局「やまと絵展」に3回も行ってしまった。結果的に四大絵巻、神護寺三像、三大納経を全部見るというミーハーな人になってしまった。平日の昼間よりか土曜の夜間開館のほうがよっぽど空いていたのは《鳥獣戯画》が丁巻だったからなのかは知らんが、さすがに18時に入ったら人が少なかった。18時に入って20時の閉館までいるというのはその辺に住むか泊まるかしないとできない芸当で、この辺に住んでいるうちにこういうことはしておくべきである。 第4期は三大納経よりも根津美術館所蔵の《那智瀧図》が目当てで、あの縦に長い画面をまっすぐ流れる滝の絵を見て「やっぱりニューマンだなあ」と思った。国宝指定のこいつが、奥村土牛が《那…
今回は本書の第二章 「「戦後詩」という課題」 を読んでいこうと思う。 まず、著者は 「第二次世界大戦を経まして、「詩」の姿は完全に変わってしまった、……というのがわたくしの考えです」(p.52) という。 >> 太平洋戦争の敗戦によって、おそらく当時の日本人は、……その中には幼かったですけれどもわたくしも含まれておりますが、……原爆などの癒(い)やしがたい「傷」とともに、もうどうしようもない「恥」の感覚を植えつけられてしまいました。この敗戦という、実存レヴェルでの屈辱、「恥」の感覚。あるいは「核」という未知の原罪、……。さらには無邪気にそれまで信じていた価値の崩壊、そしてそのようなものを信じて…
静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 見えない木 田村隆一 雪のうえに足跡があった 足跡を見て はじめてぼくは 小動物の 小鳥の 森のけものたちの 支配する世界を見た たとえば一匹のりすである その足跡は老いたにれの木からおりて 小径を横断し もみの林のなかに消えている 瞬時のためらいも 不安も 気のきいた疑問符も そこにはなかった また 一匹の狼である 彼の足跡は村の北側の谷づたいの道を 直線上にどこまでもつづいている ぼくの知っている植える飢餓は このような直線を描くことはけっしてなかった この足跡のような弾力的な 盲目的な 肯定的なリズムは ぼくの心にはなかった たとえば一羽…
全集未収録なので、読んでみた。簡単に言ってしまえば、田村隆一はどこに向かおうが田村隆一である。読んだ感想としては、それを再確認したに過ぎない。帯にも〈ニホン酔夢行〉と書いてあるが、読み進めて頭に浮かんだのは、やはり「インド酔夢行」だ。目的地云々よりも、その行程が楽しい。 詩人の旅-増補新版 (中公文庫) 作者:田村 隆一 中央公論新社 Amazon 寂しがり屋なのかもしれない(たぶんそうだ)。田村さんの旅って、誰かがついてきている。「インド酔夢行」の青年も登場してくる。誰か連れがいて、そのやりとりが魅力だ。そして、酒を飲む。いつものようなやり取りの中に、旅先の本質を見抜いたような描写があってそ…
映画「アイネクライネナハトムジーク」を観たとき、詩人田村隆一の70年代頃の言葉を思い出した。エッセイだったのか対話だったのか、思い出せなくて正確には言えないが、だいたいのところ「今の平和を満足して安心してはいけない。私たちの次のその次の世代まで、これが続いて、そこでやっと本当に平和と言える」というような内容だ。 田村隆一は1920年代生まれの人なので、1950年代生まれの私が彼の次の世代だったと言える。そして「アイネクライネナハトムジーク」の監督今泉力や原作作家の伊坂幸太郎は、80年代70年代の生まれで、私の次の世代と言っていいだろう。もはや、田村隆一が言っていた新たな世代の時となった。 それ…
まぎらわしいが、「港の人」という鎌倉の出版社が出した「港の人」という題の詩集を買った。昨年末に買った、田村隆一さんの本が「港の人」から出版されたものだった。その後、ねじめ正一「荒地の恋」にぶち当たり、そこで北村太郎さんという詩人の存在がより大きくなった。「荒地の恋」は北村さんと田村隆一さんの妻との間の出来事をもとにした小説である。そもそも1988年に思潮社から出た北村太郎さんの詩集「港の人」が、北村さんの晩年を世話した人によって再刊された。 港の人 付単行本未収録詩 作者:北村 太郎 発売日: 2017/09/22 メディア: 単行本 北村さんは晩年に多発性骨髄腫を患い、92年に亡くなった。こ…
「ぼくの鎌倉散歩」を読んだら、やっぱり鎌倉に行きたくなった。コロナで人出が多いと嫌なので、北鎌倉から比較的大きな通りを避けて、鎌倉駅西口にある「たらば書房」で本を買うのを目標に数時間滞在。 北鎌倉駅から円覚寺や建長寺方面に向かうのはやめて、東慶寺へ。夫からの離縁状なしでは妻からは離婚できなかった時代に、ここに駆け込めば離縁できたという女人救済の寺として知られる。学者や作家の墓が多く、鈴木大拙、西田幾多郎、岩波茂雄、和辻哲郎、小林秀雄らが眠っている。前の道路は車の死亡事故(伝聞による)で交通整理で渋滞していたが、敷地内に入ると寂しいほど人がいなかった。 こんこん狐に誘われて 田村隆一さんのこと …
好きな詩人と言われて、頭に浮かぶのは田村隆一さんである。鎌倉には1970年から1998年に亡くなるまで住んでいた。自分が日雇いのバイトで得た金を握りしめて、鎌倉に行き始めたのは1980年代の半ば。残念ながら本人に会ったことはないが、気張ることのない生き方と、酒との付き合い方に魅せられた一人である。その昔、角川春樹事務所から出た「スコッチと銭湯」は、この組み合わせがミスマッチだと思いつつ、田村さんの人生を言い表したようなタイトルなので、ついつい読み返してしまう。 ぼくの鎌倉散歩 作者:田村 隆一 発売日: 2020/11/27 メディア: 単行本(ソフトカバー) 会社近くの書店に、この本が売って…
日本精神史 近代篇 下 (講談社選書メチエ) 作者:長谷川 宏 講談社 Amazon 『日本精神史 近代篇 下』長谷川 宏著を読む。 下巻は、軍国ファシズム下から敗戦後、高度経済成長下を経ての「日本の美術・思想・文学を、人々の精神の歴史として描く」。感じたことなどをとりとめもなく、引用多めで。 〇『細雪』が「陸軍報道部の圧力で連載中止」となった。しかし、谷崎潤一郎は「ひそかに書きつづって」いた。「戦争の影をほとんどとどめない」ことは、作家として「戦争の時代に抗する」姿勢だと。 〇旧制中学時代に聴力を失った画家・松本俊介。そのため戦時下、招集されることもなかった。「負い目」を越えて「清澄かつ静謐…
ファンタスティック Mr.FOX [DVD]ジョージ・クルーニーAmazon 原作はロアルド・ダール。ロアルド・ダールといえば『チャーリーとチョコレート工場』の原作者で、その奇妙な味わいの作品には日本でもファンが多い。この『ファンタスティック Mr.FOX』も、かつては田村隆一訳で出ていたし、今では柳瀬尚紀の訳で読めるようだ(「父さんギツネバンザイ」)。 『チャーリーとチョコレート工場』といえば監督はティム・バートンが監督なのだけれど、ティム・バートンも『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』などのストップモーション・アニメーションを撮っていて、どうもその作家性とか考えても、このウェス・アンダー…
旅先で読んだ『夢果つる街』の訳者北村太郎。 北村は『荒れ地の恋』の主人公。友人の田村隆一の妻和子と恋愛関係に。 この和子は有名な彫刻家、高田博厚の娘。 この高田は獅子文六の友人。 何となく再読している『獅子文六の二つの昭和』に出てくる福澤諭吉。 で獅子文六の父は福沢諭吉の弟子である事を初めて知りました。初読の時は見逃した。 しかもこの父茂穂は豊前中津藩の武士の出で攘夷にとりつかれて、同郷の福澤の開国・外国かぶれに反対し暗殺団?に加わるも失敗。後に福澤に心酔してか時代の趨勢もあってか門下生となる。さらにアメリカ留学まで果たす。 しかも(またです)有名な福澤の『学問のすゝめ』の共著者、小幡篤次郎が…
旅行中は気軽に読める文庫本を2冊携行。 1冊はトニー・ケンリックの『スカイジャック』。機内で読むには差支えのあるタイトルを隠して?読みました。 2冊目は謎の?作家トレヴェニアンの『夢果つる街』。 実は2冊とも小林信彦のお薦め本。 1冊目のコミカルな犯罪物は僕的にはいまいちでした。 でも2冊目は訳者が北村太郎だったのも僕的には興味深い。作品も面白かった。 詩が好きだったので、20代から北村太郎の名前は知っていましたが、鮎川信夫や田村隆一、吉本隆明のようなビッグ・ネームではない。その人が50代から「荒れ地の恋」をきっかけに詩を再開し、没後そのロマンスが本になり映画化された。 僕はその本『荒れ地の恋…
絵・大島 都幾枝(大字大野生まれ) 里から山へ。春が花たちを導きます。梅・桃・桜・シャガ・つつじときがわが一番華やぐ季節シュウカイドウの花やホタルたちも準備に入っているでしょうか。 (掲載誌「広報ときがわ」はコチラ)
3月22日金曜日 晴れ。サッポロ一番豚骨塩ラーメン。万ネギとコンビニで買ったチャーシューとゆで卵をのせる。Sがたくさん食べたいというので3袋分作り、Sが1.7、わたしが1.3食べる。アメトーーク、テレビ千鳥、見る。文房堂から額装ができたと電話あり。Sは往来座へ。絵。夕方、池袋から丸ノ内線で御茶ノ水まで、坂おりて文房堂へ。蟲文庫のショップカードになった枇杷の絵の額装をお願いしていた。グレーのマット、フレームはチーク材。いい額ですね、と担当さん。今日の担当は昔池袋の中国画材で働いていた方。前から元中国画材の人が働いているとうわさで聞いてはいたが、まさか倉敷に送る日に出会うとは思わなかった。中国画材…
ずっと読みたくて図書館で探してもなくて、あったのは前の前に住んでいた場所の最寄り図書館で「行くか?(行ってその場で読みきる)」と思いつつコロナ禍突入し、引っ越しして、縁遠くなっていてこの度やっと古本屋さんで手に入れました。 印字がなつかしい感じのフォントです。 少しずつ大事に読み進め、読み終わりに本を閉じて「読めてよかった、また読もう」と思える本でした。 内容は一冊ほぼ「卵」についてと言っても過言ではないです。 著者の卵への並々ならぬ愛を感じます。 私は初めて知ったのですが、このエッセイが書かれた当時は「ゴキブリ亭主」という言葉があったのですね。すごい響きです。 フェミニストさんたちが読むと何…
記事タイトル 詩タイトル 雑誌タイトル 出版者 城趾の町 日本詩壇 日本詩壇発行所 11(8) 1943-08 夕景 日本詩壇 日本詩壇発行所 11(9) 1943-09 県立神奈川近代文学館蔵書検索 新詩派 一心読書会 蠅 現代人 隅田書房 (6) 1948-09 蠅 文学時標 文学時標社 三好達治論 鱒 赤絵書房 (4) 1947-10 三好達治論(二) (5) 1947-12 三好達治論(三) (4) 1947-10 欺瞞者の文學 コスモス コスモス書店 (7) 1947-10 遲刻者 コスモス コスモス書店 (8) 1947-12 県立神奈川近代文学館蔵書検索 詩行動 詩行動社 詩人の…
今回取り上げるのは、映画化もされたアガサ・クリスティーの『ねじれた家』(1949)である。本作はその「意外な真相」によりとりわけ知られているが、記述・叙述の面でも、この作家の美質が示されている。いやむしろ、ミス・ディレクションという叙述面に注目した場合、彼女の作品中でも指折りの複雑な絡み合いが本作には存在する。この記事では、本作にどのようなミス・ディレクションが存在し、また相互に関係し合っているか、という点にフォーカスして論じる。 参照するのは田村隆一訳(ハヤカワ・ミステリ文庫、1984年)である。 *原書を参照して、訳文等を一部改変する可能性がある。 【以下、本作の真相と興趣に触れる。】
全9項目●代表作 ●「ホイチョイ的映画生活〜この一本」 ●「GQ JAPAN」2021年3月号 ●「【A MESSAGE OF HOPE】Vol.126」 ●「mononcle.jp」●「mynavi.jp」 ●「欲望の断片」第75回 ●「谷川俊太郎が聞く、武満徹の素顔」 「仁義の墓場」より 全5項目 ●代表作 TVドラマ監督「ナニワ金融道」シリーズ、 「きらきらひかる(1998年)」〃、 「沙粧妙子-最後の事件-」、 「人間の証明(2004年)」竹野内豊 版、 「ギフト(1997年)」、 映画監督「仕掛人・藤枝梅安(2023年)」〃等 TVドラマ監督、映画監督 等で活躍する河毛俊作が影響を受…
マギンティ夫人は死んだ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) 作者:アガサ ・クリスティー,田村 隆一 早川書房 Amazon すばらしいニュースです。誰かがわたしを殺そうとしたのです。 人間が一日に三度しか食べられなくてがっかりするポワロ。じゅうぶんだよ! 5時のお茶が許せない。一番の晩餐である夜ごはんがおいしく食べれないから。 朝ごはんのココアもクロワッサンもいらない。あれ?ココア好きじゃなかったっけ? 昼ごはんは遅くても1時半まで。それからの夜ごはんがもう最高。 ポワロはビールよりも甘いリキュールがお好き。 マギンティ夫人がたまごでジェイムス・ベントリイがオムレツの可能性。 姑のようなポワ…
親鸞の言葉 (中公文庫 よ 15-10) 作者:吉本 隆明 中央公論新社 Amazon 吉本隆明の『親鸞の言葉』を読んだ。『最後の親鸞』とか『信の構造』とかは読んだ。 この文庫本には鮎川信夫との対談が載っていた。その中で吉本はこんなことを述べていた。 革命家でもマルクス主義者でもいいし、そうじゃなくてあらゆる政治的な権力といってもいいし、また集団はすでに権力と考えればあらゆる集団でもいいですが、あらゆる集団あるいは権力というものは、その理念がなにを目指しているか、なんであるかにかかわらず内部のものをみんなやくざ者にする作用があるとマルクスは言っています。やくざ者にしちゃうってことの意味は、マル…
今週の音読課題: 「木」 田村隆一 今回は 詩 先週までの「走れメロス」に比べると、 ページ数も一気に減って言葉も易しく読みやすい 今週はゆっくり読みよ~ と声掛けせずとも 行間の取り方がいい感じ 心地よいスピードで読めるようになっている この詩、なんかいいね。と話ができる 録音時間も短くなったので 今週からまた朝イチ音読ができるようになった! 朝の忙しい時間ではあるけれど 何かしらの支度をしながら 音読が聞けるって とっても贅沢だー👂✨ 追記。 田村隆一氏、調べて知ったのですが 早川書房のアガサ・クリスティーの翻訳もされていた📖 知らぬ間に出会っていたのかもしれない…
総合詩誌『PO』2024年春号の「ことば」特集に寄せて、「『言葉』と『ことば』ー田村隆一生誕百年」を書きました。これは昨年12月の講演「いま、戦後詩をみつめる」の準備と並行して書いたもの。ちなみに講演では詩を、田村の言う「感情の歴史の創造」と捉えて話を進めました。一緒に読んで頂ければ幸いです。