詩人。1923年東京巣鴨生まれ。1998年没。 戦後の1947年、鮎川信夫らとともに『荒地』を創刊。 1952年から4年間、早川書房に勤務。その頃のエピソードは、宮田昇『戦後「翻訳」風雲録』(ISBN:4938463881)が詳しい。 吉本隆明は「わが国でプロフェッショナルと呼べる詩人は、田村隆一・谷川俊太郎、吉増剛造ということになる」と云う。 翻訳、エッセイも多数。
田村隆一詩集 (1968年) (現代詩文庫)
続・田村隆一詩集 (現代詩文庫)
続続・田村隆一詩集 (現代詩文庫)
田村隆一全詩集
静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 見えない木 田村隆一 雪のうえに足跡があった 足跡を見て はじめてぼくは 小動物の 小鳥の 森のけものたちの 支配する世界を見た たとえば一匹のりすである その足跡は老いたにれの木からおりて 小径を横断し もみの林のなかに消えている 瞬時のためらいも 不安も 気のきいた疑問符も そこにはなかった また 一匹の狼である 彼の足跡は村の北側の谷づたいの道を 直線上にどこまでもつづいている ぼくの知っている植える飢餓は このような直線を描くことはけっしてなかった この足跡のような弾力的な 盲目的な 肯定的なリズムは ぼくの心にはなかった たとえば一羽…
全集未収録なので、読んでみた。簡単に言ってしまえば、田村隆一はどこに向かおうが田村隆一である。読んだ感想としては、それを再確認したに過ぎない。帯にも〈ニホン酔夢行〉と書いてあるが、読み進めて頭に浮かんだのは、やはり「インド酔夢行」だ。目的地云々よりも、その行程が楽しい。 詩人の旅-増補新版 (中公文庫) 作者:田村 隆一 中央公論新社 Amazon 寂しがり屋なのかもしれない(たぶんそうだ)。田村さんの旅って、誰がついてきている。「インド酔夢行」の青年も登場してくる。誰か連れがいて、そのやりとりが魅力だ。そして、酒を飲む。いつものようなやり取りの中に、旅先の本質を見抜いたような描写があってそれ…
映画「アイネクライネナハトムジーク」を観たとき、詩人田村隆一の70年代頃の言葉を思い出した。エッセイだったのか対話だったのか、思い出せなくて正確には言えないが、だいたいのところ「今の平和を満足して安心してはいけない。私たちの次のその次の世代まで、これが続いて、そこでやっと本当に平和と言える」というような内容だ。 田村隆一は1920年代生まれの人なので、1950年代生まれの私が彼の次の世代だったと言える。そして「アイネクライネナハトムジーク」の監督今泉力や原作作家の伊坂幸太郎は、80年代70年代の生まれで、私の次の世代と言っていいだろう。もはや、田村隆一が言っていた新たな世代の時となった。 それ…
まぎらわしいが、「港の人」という鎌倉の出版社が出した「港の人」という題の詩集を買った。昨年末に買った、田村隆一さんの本が「港の人」から出版されたものだった。その後、ねじめ正一「荒地の恋」にぶち当たり、そこで北村太郎さんという詩人の存在がより大きくなった。「荒地の恋」は北村さんと田村隆一さんの妻との間の出来事をもとにした小説である。そもそも1988年に思潮社から出た北村太郎さんの詩集「港の人」が、北村さんの晩年を世話した人によって再刊された。 港の人 付単行本未収録詩 作者:北村 太郎 発売日: 2017/09/22 メディア: 単行本 北村さんは晩年に多発性骨髄腫を患い、92年に亡くなった。こ…
「ぼくの鎌倉散歩」を読んだら、やっぱり鎌倉に行きたくなった。コロナで人出が多いと嫌なので、北鎌倉から比較的大きな通りを避けて、鎌倉駅西口にある「たらば書房」で本を買うのを目標に数時間滞在。 北鎌倉駅から円覚寺や建長寺方面に向かうのはやめて、東慶寺へ。夫からの離縁状なしでは妻からは離婚できなかった時代に、ここに駆け込めば離縁できたという女人救済の寺として知られる。学者や作家の墓が多く、鈴木大拙、西田幾多郎、岩波茂雄、和辻哲郎、小林秀雄らが眠っている。前の道路は車の死亡事故(伝聞による)で交通整理で渋滞していたが、敷地内に入ると寂しいほど人がいなかった。 こんこん狐に誘われて 田村隆一さんのこと …
好きな詩人と言われて、頭に浮かぶのは田村隆一さんである。鎌倉には1970年から1998年に亡くなるまで住んでいた。自分が日雇いのバイトで得た金を握りしめて、鎌倉に行き始めたのは1980年代の半ば。残念ながら本人に会ったことはないが、気張ることのない生き方と、酒との付き合い方に魅せられた一人である。その昔、角川春樹事務所から出た「スコッチと銭湯」は、この組み合わせがミスマッチだと思いつつ、田村さんの人生を言い表したようなタイトルなので、ついつい読み返してしまう。 ぼくの鎌倉散歩 作者:田村 隆一 発売日: 2020/11/27 メディア: 単行本(ソフトカバー) 会社近くの書店に、この本が売って…
suehiroyu.net Google マップ アクセス 【入浴日】2022/7/7:リニューアル後 【入浴日】2021/4/14:リニューアル前/上福岡銭湯散歩① アクセス 末広湯さんの最寄は東武東上線 上福岡駅。東口右側の階段を下り、そのまま直進し東武東上線沿いに道なりに進みます。 通りの突き当りで左折。 暫く進むと駅から徒歩7分程で末広湯さんが見えて来ます。※今はガス釜になった事で煙突はカットされている為、近くからでないと見えません。 それでは暖簾を潜って末広湯さんの世界へお邪魔してみましょう。 【入浴日】2022/7/7:リニューアル後 この日はリニューアルされたと伺い、末広湯さんを…
子どもの頃からなりたいものはたくさんあった。しかし、どれも非現実的な職業ばかりだったし、移り気だったので何かを目指して頑張るという経験には乏しかった。 幼稚園年長組だった頃、お絵かき用のスケッチブックを買ってもらった。表紙にはヨーロッパの古城を写生するベレー帽の画家の姿を円形で撮影した写真が使われていた。かっこいいと思った。「絵描きさんになりたい」。近くに居た祖母に言ったら、一言「絵描きなんて食えないからやめとき」。祖母は職人肌で趣味人の祖父に苦労をさせられた大阪商人であった。小学校から中学生にかけてはずっと科学者になることが夢だった。影響を受けたのは天文学のニュートンやコペルニクス、ライプニ…
【 07.29 日録 】 朝、汗をかいて目覚める。8時半起床、僕の朝は自分の理想とはかけ離れて遅い。トシヨリの常態ともかけ離れている。すでに暑く、のっけからあまりやる気がしない。これを倦怠感というのだろうか。僕の居室は西向きに窓があるので、午前中はまだマシだが、午後遅くなるとじわじわと気温が上がる。エアコンのかかったリビングからサーキュレーターで送風しているのだが西日が入る頃には…汗をかくほどではないが空気が生暖かくなる。起きてから6時間以上経過しているので鮮度も落ちているし、脳も身体もバッテリー切れ。これは夏に限らないけど、やるべきことがあるなら午前中にやっておこう。……なーんて書いて思った…
■吉増剛造先生より「みらいらん」第10号を御恵贈賜り、対談「吉増剛造×城戸朱理 西脇順三郎をふたたび考える ~生垣・女の舌・異語の声~」のP38に旭川の「フラジャイル」のことを言及戴いております。誠にありがとうございます。昨年12月12日、旭川市中央図書館での御講演(「小熊秀雄生誕120年記念講演 小熊秀雄への応答~現代への影響と将来への展望~」・詩誌「フラジャイル」14号に掲載)で、『詩とは何か』(講談社現代新書)より、西脇順三郎に「脛さが足りない」という問題について、旭川出身の鍵谷幸信についてお話戴きました。あのとき「鍵谷幸信の面影が西脇風に幽霊みたいになってきて…」お話されたとのこと。城…
発刊順:28(1935年) ABC殺人事件/田村隆一訳 かの有名な「ABC殺人事件」です。 おそらくクリスティー作品のベスト5に入るのではないでしょうか。 有名ではありますが、内容は嬉しいことに忘れており、 とても楽しめました。 久々にヘイスティングズが登場し、彼の語りで記録されたていである。 南アメリカの農場から、6ヶ月くらい滞在する予定で帰国し、 イギリスで人任せにできない仕事を片付けなければならない…といいつつ、 ポアロとこの事件にかかりっきりになるとは、まぁ。 殺人事件が起こると共に、ポアロに犯行声明文のような挑戦状が届く。 ところどころに挟まる、犯人らしき人物の記述。 果たして、犯人…
・出版業 ・1954年 創業 ・新宿区 【memo】 吉田満『戦艦大和ノ最期』(1952年)、谷川俊太郎『二十億光年の孤独』(1952年)、田村隆一『四千の日と夜』(1956年)などを刊行したことでも知られる。翻訳推理小説、翻訳SFの老舗出版社として知られ、特に創元推理文庫は、ミステリ専門の文庫としては日本の草分け的存在である。 公式キャラクターの名前は「くらり」で、東京創元社の「創」の字を「倉+刂」と分解して読んだもの。当初60周年記念のみのキャラクターの予定だったが、好評を得て2015年に公式キャラクターとなった。黒毛に青い目の雄の子猫で、猫であるがウサギのふりをしている。
2007年5月30日第1刷発行 「素朴な琴をおけば/琴はしずかに鳴りいだすだろう」 【詩】素朴な琴 八木重吉 はじめに 「情に感ずる事は、みな阿波礼なり」 【歌論】石上私淑言 本居宣長 第一弦 いのちを奏でる 「日めくりを一枚めくる私のいのちをめくる」 【短歌】柳澤桂子 「いのちだけが はだかで/はたらいているように見える」【詩】アリ まど・みちお 「母よ母よ息ふとぶととはきたまへ」 【短歌】坪野哲久 「支えられているから/立っていられる」 【詩】ささえられて・ハギ 星野富弘 「彼らに『シベリアおもちゃ』をつくらせたのは何か」 【学術エッセイ】人間の限界 下山徳嗣 「すきになる ということは/…
なんだかまたコロナが流行っているようで・・・。 桜子の校舎でも感染者が出ているようです。 夏は中受関連のイベントも多いし、できるだけ開催してほしいところですが。 いつまでこの感染症に振り回されるんでしょうか(;´Д`)さて今日は、桜子が最近読んだ本の紹介です。前回の桜子が読んだ本(6年生6月②)はこちら↓ binbojuken2023.hatenablog.jp 最近読んだ本3冊 今月に入って桜子が読んだ本は、この3冊です。3冊と言っても2作品です。 エッセイ?と小説ですが、名作系の小説。 どちらも1冊2~3日で読んでしまいました。本をいつ読んでいるんでしょうか? 育成テストの勉強をさぼって本…
学生時代、熱心に詩を読んだり書いたりしていた頃、大手拓次(1887-1934)の存在が気になっていた。今回読み返してみても、詩作品そのものが印象に残っているわけではない。生前に詩集を持てずに不遇だったことや、ライオン歯磨きの会社員をしながら女性職員に熱烈な片思いをしていたことなどのエピソードに心ひかれていたのだと思う。 前橋で大手拓次展をみたタイミングで、ちょうど読書会で彼の岩波文庫の詩集を読むことになる。岩波文庫になった時は喜んで手に入れたが、きちんと読むことなく30年が経過してしまった。ようやく収録の全作品に目を通すことができた。 読書会では「むらがる手」と「法性のみち」を選んで朗読したが…
発刊順:26(1935年) 三幕の殺人/田村隆一訳 短編集「謎のクィン氏」で活躍したサタースェイト氏が再出。 今回は中心人物の一人ではあるが、謎を解くのはポアロなので、 クィン氏で演じたひらめきがなく、残念な役回りでした。 別な場所で起こった2つの殺人、この2つに因果関係があるのか。 2つのパーティに参加した共通の人物達の中に犯人がいるのか。 最初の殺人の動機となるものが全然浮かんでこない。 ここに何か隠されたものがあるのか。 いろんな要素に読みながら推理したが、最後まで騙されました。 ポアロが中盤までほぼ出番がなく、 サタースェイト氏を含む3人の素人探偵で物語が進み、 少し退屈な状況が続くの…
タゴール自身の英訳詩からの重訳をベースにした訳詩集。九つの詩集と初期詩篇をおさめる。代表作として森達雄訳の『ギタンジャリ』のほかに片山敏彦訳『渡り飛ぶ白鳥』が収録されているところに大きな意味がある。 両者とも、梵我一如思想の色濃い「わたし」から至高者たる「あなた」への呼びかけの歌が特徴的。東洋的な一元的汎神論であるので現代日本人にとってもどこか親しみやすさがあるのだが、至高者たる「あなた」が、基本的には非物質的な存在でありながら人格をもったものとして詩に呼びこまれるときには、全面的には賛同できない疎隔感が湧いてきてしまうのも確か。信仰や世界観に十分に賛同できないと、どれだけすごい才能であること…
本の買取強化中です。JR小倉駅北口「小倉の古本屋」古書城田(旧ブログです) JR小倉駅北口(新幹線口)の古本屋、古書城田です。北九州市内をはじめ福岡県内&近県、本の出張買取、本の遺品整理を行なっています。大量歓迎です。査定無料、出張費無料です。どうぞご相談くださいませ。 (買取専門)093-551-3009 メール:shirota@mx71.tiki.ne.jp 古物商許可証 [第32483号/福岡県公安委員会] 全国古書籍商連盟北九州古書組合所属 店舗はJR小倉駅北口、徒歩1分の場所にございます。ファミリーマート小倉駅北口店さんのすぐ裏手となります。ご来倉の折は、どうぞお気軽にお立ち寄りくだ…
予告殺人 (クリスティー文庫) 作者:アガサ・クリスティー,田村 隆一 早川書房 Amazon 普通の推理小説は事件が進行する事で、話が進みますが、ミス・マープルのシリーズは、群像劇的に話が進みます。群像劇とは、特定の主役を設けずに構成する作品の事です。では何故、ミス・マープルという主役がいるのに、群像劇的な作品と、自分は感じてしまうのか?それは、ミス・マープルが作品の中では、ただ「噂話が好きなお婆さん」という立場になってしまうからです。ミス・マープルは洞察力は鋭いですが、ただのお婆さんです。なので、マープルが事件と関わる時は、「噂話が好きなお婆さん」として、関係者に会い、事件以外の会話や噂話…
2021年8月、七月堂から刊行された神泉薫(1971~)の評論集。著者は中村恵美のペンネームでも詩集がある。 目次 鳳小舟の舳先から見えるもの 与謝野晶子 人類の時間、ことば、金色のウィスキーに酵う 田村隆一 「わて」の詩 永瀬清子 拳玉少年の夢想 吉岡実 卵をわると月が出る 左川ちか トンカ・ジョンの雀は赤子のそばに 北原白秋 かなしみの朝露 八木重吉 むんむんする青いメロン、●(まんまる)が熟すとき。 草野心平 若葉とおっとせい 金子光晴 火星からやって来た男 小熊秀雄 レモン色の車輪に乗る、薔薇の人 多田智満子 都市から半島へ 稲葉真弓 虚無の音楽、その美しき<ことだま> 那珂太郎 ND…
えぇっ、Serge Lutensの謎ポエムって、フランス語か英語から翻訳したものじゃないんですか!? 諳んじることが出来るほど好きなnuit du cellophaneのポエムは断然日本語の方がいい。 「もしもしお嬢さん。このあたりの空気をぜんぶ包んでいただけますか?」 「贈り物ですか?」 「ええ、あなたへの」 最高。 la vierge du ferは英語の方が良い。 【追記】________ 言語の切り替えは日本語と英語しかできないからフランス語のサイトは無いのかと思 ったが、そんなわけはなくしっかり存在した。 謎ポエムは英語のはフランス語からのほぼ直訳。フランス語のほうが意味は明快。なぜ…