茶畑が一面に広がる八女の地に、仕事で定期的に出向いています。『茶摘み』の歌にある「八十八夜」は5月初旬で、今回の訪問はちょうど一番茶を摘む時期に重なりました。長い冬を越え時間をかけて育てられる一番茶は、枝葉全体に栄養がみなぎり、葉は柔らかくなります。甘味が増え、香りも高くなるので、特に貴重なお茶なのです。さて、茶園の木は「取り木」という、挿し木とほぼ同じ原理の繁殖法でクローンを増やしていきます。これにはいくつか理由があって、花が咲いて獲れた種から育てるような栽培法では、せっかく交配で作った新種の品質を一定に保つことができないというのが、理由のひとつです。さらに、花を咲かせるには大量の栄養を消費…