吉野弘の詩集『花と木のうた』(青土社)のなかに「闇と花」という一文が収められています。アサガオは一定時間、連続した闇のなかにいないと、花の芽ができません。花の芽はフロリゲンという植物ホルモンによってでき、この物質が体内に作られるためには8時間から9時間の闇が必要とされるのです。 これが、アサガオ、キク、コスモスなど、夏から秋にかけて次第に日の短くなってゆく頃に花を咲かせる「短日植物」の特徴です。吉野は、この植物の特性を引いて、次のように書いています。“人間もまた一生を通じて、多くのことを考え、迷い、納得し発見しながら生きてゆく。そのときどきの発見や到達点をかりに花と呼ぶことができるならば、その…