クラブが発足した1963年から2012年までの50年を、クラブに所属する50人の作家、50の短編で振り返る。それぞれの年の特徴をとらえた作品を選び、しかも作家は重複させない。困難は承知の上のパズル
(巻頭言、より)
という、アンソロジストのお遊びとしか思えないような企画が実現。その1冊目は、1963年から72年まで。
- 1963年 墓碑銘二〇〇七年 光瀬龍
- 1964年 退魔戦記 豊田有恒
- 1965年 ハイウェイ惑星 石原藤夫
- 1966年 魔法つかいの夏 石川喬司
- 1967年 鍵 星新一
- 1968年 過去への電話 福島正実
- 1969年 OH! WHEN THE MARTIANS GO MARCHIN' IN 野田昌宏
- 1970年 大いなる正午 荒巻義雄
- 1971年 およね平吉時穴道行 半村良
- 1972年 おれに関する噂 筒井康隆
この年代のSF独特の香り、というか文体を感じさせるものあれば、そうでないものもある。題材も描写も懐かしげなものもあれば、それほど感じないものもあり。
それぞれに、後の別の作家の別の作品で扱われたテーマがあったりするのも面白い。『墓碑銘』とか読むとやはり『雪風』を連想するわけだし。
建築、古文書、メディア、宇宙探検、時間ネタ、などはやはり日本SFにとっては伝統的なテーマなんだな、とも。
未読で、かつ予想以上に面白かったのが『およね平吉時穴同行』。同じアイディアで書かれた小説を多分複数読んでいるはずなのだけれど、思わず引き込まれる面白さだった。