五月大歌舞伎(新橋演舞場) 昼の部


5月15日(木)に、新橋演舞場で五月大歌舞伎 昼の部を見物。

今月、新橋演舞場に出演の子役は、すでに書いた通り(http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20080504/p2)。

昼の部は、11時開演で、30分と20分の幕間があって、この日終演は3時36分くらい。


まずは、染五郎の六助、亀治郎の女武道で「彦山権現誓助剱 毛谷村」。「毛谷村」の上演では省かれることも多い「お幸の入り込み」というのを、私ははじめて見た。六助とお幸(吉之丞)が金の包みを投げ合って、この老婆が只者でないことを面白く見せるなど、一幕中のアクセントにもなり、また後の筋とのつながりとしても分かりやすい。

亀治郎丈のお園は、花道の虚無僧姿が絵になる。が、六助と知ってからも声が男声のままに聴こえるところがあって、ずっとこわい印象も。それなら、カラミを出してもうひと立ち回り見せてくれてもよかった。

冒頭の、微塵弾正に化けた京極内匠(錦之助)と六助の剣術試合では、木剣は打ち合わせてはいなかった。(ああいう殺陣は、やはり海老さまの六助ならでは、でしょうか)

染五郎丈は、子あしらいに情があって、よい感じ。
子役の弥三松は、この子が秋山悠介くんだね。


藤娘」(福助の藤の精)、「三社祭」(染五郎の悪玉、亀治郎の善玉)、「勢獅子」(歌昇錦之助の鳶頭)と、舞踊三題。

「藤娘」は有名な舞踊だが、これまで、芝翫海老蔵、今回の福助と、私はまだ3丈しか見ていない。筋書の上演記録を見ると、2003年秋以降の東京の劇場ではこの3優しか踊っていないのだから、然りか。


吉右衛門の駒形茂兵衛、芝雀のお蔦で「一本刀土俵入」。歌舞伎の「一本刀」を見るのは、2004年9月歌舞伎座(現・勘三郎の茂兵衛、福助のお蔦)以来のことで、今月演舞場のいちばんの楽しみだった。

吉右衛門丈の取的はずい分鷹揚だが、こちらの先入観もあるのか、貫禄たっぷりなひとの仮の姿にも思えてしまう。やはり見どころは、10年後に無職渡世になってからの風姿だ。

序幕では、船戸の弥あ公(歌昇)が、芝居で魅せる。
川べりでの老船頭(由次郎)は滋味があったが、若船頭(種太郎)はさすがにちょっと間がもたない。が、こういう、いまだからこその配役も歌舞伎の楽しみなのだろう。

お蔦と辰三郎(錦之助)の子、お君ちゃんは、長谷川伸の戯曲(たとえば、これ。→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20080515/p2)では、10歳か11歳という設定になっている。もっと小さいように思っていたが、しかし、理屈で考えれば、序幕の利根の渡しの場で、子守娘(京妙)がおんぶしていたのがそうなのだから、10年後のシーンでお君ちゃんの年がひと桁という訳はないのだ。(今後また、歌舞伎以外の舞台で見ることがあれば、このあたりの処理に留意して観劇したい)

15日のお君は、須田あす美さん。

子守娘といえば、安孫子屋の前の場に出て来る子守娘と、利根の渡しの場の子守娘は、別という指定が、ちゃんと戯曲にあるのだねぇ。なるほど。

戯曲といえば、大詰のお蔦の家の場の最初に、子どもの声でうたが聴こえて来る(生でうたっているのかしら?)が、これも戯曲の指定にあるものだ。

逆に、戯曲にないのは、利根の渡しの場の角兵衛獅子。(で、角兵衛獅子の子役を見取り損ねた。二兎を追うものは一兎をも得ず、を実演してしまった気分。あんなに左右にわかれて動くのだっけか…。次回は心がけたい)

なお、筋書の英語表記によると、Nami Ichiri Giju,a gang boss(歌六)、Carpenter(桂三)、堀下げ根吉はただのNekichi(染五郎)。ちなみに、勢獅子の鳶頭も、Carpenter だ。


舞台写真については、別稿にて。↓
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20080517/p2