くりごはんが嫌い このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

新潟 |映画 | オールタイムベスト | カンフー | ゾンビ | 地雷 | アメコミ | 読書 | 聖書 |超訳 | 音楽 | 思想 | ネタ | 事件 | ゲーム | モノポリー | アニメ
2006 | 06 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2007 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2008 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2009 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2010 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2011 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2012 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2013 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2014 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2015 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2016 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 09 | 10 | 11 |

2016-11-21

[]スマホ/SNS時代に銀行強盗をするということ/伊坂幸太郎『陽気なギャングは三つ数えろ』 09:32 スマホ/SNS時代に銀行強盗をするということ/伊坂幸太郎『陽気なギャングは三つ数えろ』を含むブックマーク

伊坂幸太郎『陽気なギャングは三つ数えろ』読了

f:id:katokitiz:20161121093105j:image

伊坂幸太郎東野圭吾松岡圭祐、古くは村上龍に並んで“いけすかない*1”作家のひとりなのだが*2、この『陽気なギャング』シリーズはかなり好きな本で、一作目は三回再読してる程度にはお気に入りである。知らない間に最新作が9年振りに刊行されことを知り、発売されてから一年後に買うという体たらく(それまでずーっと本から離れていたというのもあるが)。

一作目にあたる『陽気なギャングは地球を回す』はかなり好きな本だ。

当時、和製ガイ・リッチーを自ら名乗り、それを帯に書いて発売した戸梶圭太の『なぎら☆ツイスター』がわりと似ている部類に入る小説だと思うが、どっちかというと和製ガイ・リッチーは『陽気なギャング〜』シリーズで戸梶圭太は和製タランティーノだと思った。それくらい伊坂幸太郎はチャラついていておしゃれな感じがあり、戸梶圭太下品で野蛮である。

ただ、好きな本ではあるけれど、欠点もあると思っていて、一番の問題点は主人公たちのキャラクター造型をないがしろにしてる部分である。

銀行強盗を副業としているという設定で、各々、嘘を見抜く名人、スリの達人、演説の達人、完璧な体内時計を持つ女など、特技があるのだが、その特技だけしか描かれず、彼らが一体どんな生活をし、どんな風体をしているのかが一切描かれてないため、話としてはスピーディーでおもしろいし、彼らの会話もおもしろいんだけど、キャラクターとして魅力的かどうかと言われると疑問が残るという小説であった。『スラムダンク』はマンガだから絵として書かれてるからいいものの、もしあれがノベライズされたら、風体が書かれなければ誰が誰だかわからなくなるというのと一緒だと思う。とはいえ、これに気づいたのは三回目の再読で、それまではすっげーおもしれえと思って読んだのだけれど。

二作目にあたる『陽気なギャングの日常と襲撃』は誰かに指摘されたのかそういう評価が多かったのかわからないが、キャラクターたちが普段どういう仕事をし、どういう生活をし、どういう風体をしているのかにスポットがあたる。

普通続編を書くとなると、キャラクターの説明が終わってるため、いきなり本題にいって、一気にエンターテインメントとして爆発するというものが多いが、このシリーズにおいては「普通一作目でやらなければならないことを二作目でやり、それを伏線として中盤から本題に入るという」ユニークな作りになっている。故に二作目は一作目よりもスピード感が足りないかもしれない。ただ、物語の作りとしては圧倒的に二作目の方が上だと思う。今回また再読してそれを強く思った。

さて9年振りに放たれたシリーズ最新作『陽気なギャングは三つ数えろ』だが、いよいよキャラクターの説明も終わり、どういう方法で謎を解いていくか?がわかってるわけで、本来の意味の続編という感じでこれがまぁすこぶるおもしろい。バランスがよく、後半のハチャメチャぶりも含めて傑作といっていいかもしれない。

まず9年振りに作られたということもあり、時間経過がしっかりしていて、いきなりスマホSNSが日常の一部と化し、防犯カメラがここまで進化していたら銀行強盗なんか無理じゃね?というミドルエイジクライシスからスタートする。

その強盗した際に左手をケガした男がいて、そのケガから銀行強盗であることが、ある記者にバレてしまうというところから本筋にいくわけだが、もはや強盗はあまり関係なく(それは二作目もそうだったが)、キャラクターたちのやりとりと固有名詞をあまり使わない会話の妙で魅せていく。中盤はアガサ・クリスティーばりの超ドンデン返しがあり、それはホントのホントに序曲にすぎず、そこからさらに伏線が張られまくり、後半で全部回収していくというお得意の作り。

あいかわらず成瀬は天才肌でなんでもかんでもうまくいくし、すべての道具を用意してしまう田中も作家の都合でしかないし、どこからともなくギャングの親玉があらわれるとか、そこはどうなのと思う部分もあるが、それを補ってあまりある話の軽快さが良い。

何十回と殺しても殺しきれないくらい憎い悪人を描かせたら天下一品だし、あるアイドルを助けたことが物語の推進力になっているなど、基本的には『ゴールデンスランバー』にも通ずるところもあり、伊坂幸太郎の集大成といったことなのだろう(ツイッターで指摘されたのだが、最近の作品は作風が変わってきていたらしい)。ファンはもちろんぼくのように『陽気なギャング』シリーズは楽しく読んだという方はおすすめ。そもそもノン・ノベル文庫並みに安いし、というかそろそろ文庫出るだろうし。

*1:作品はおもしろいものもあるが、基本的には絶対に友達になれないタイプ

*2:といいつつ、数本の映画化されたものと『ゴールデンスランバー』しか読んでいない

神崎和幸神崎和幸 2016/11/21 21:49 こんばんは。

自分も『陽気なギャングが地球を回す』読みましたよ。
面白いですよね。
最終章への一連の駆け引きを秀逸だと思いました。
そのうえ登場人物たちの会話も楽しかったです。

それに『陽気なギャングの日常と襲撃』も読みましたが、この作品もいいですよね。
頼まれてもいないのに命がけの人助けをサラッとしてみせるところがカッコ良かったです。
そのうえストーリーも秀逸だと思いましたよ。

『陽気なギャングは三つ数えろ』も面白いですよね。
軽快な会話とスカッとくる展開が良かったです。
そのうえ小気味良いテンポで進んでいくストーリーも素晴らしいと思いましたよ。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/katokitiz/20161121

2016-10-14

[]ぼくが思うボブ・ディランのすごいところ 10:33 ぼくが思うボブ・ディランのすごいところを含むブックマーク

仕事を終えた21時半頃になる。スマホの画面を見たら父からメールが届いていることが通知されていた。件名は「ボブ・ディラン」だった。

滅多にどころか、片手で数えるくらいしかメールをしたことがない父である。CD貸してくれ程度のことなら帰ってからでもいいのにと本文を開いたら「ノーベル文学賞受賞」と書かれていた。ぼくはそこでボブ・ディランノーベル文学賞を受賞したことを知った。

もちろんニュース番組はトップでこの話題を取り上げた。なんといってもミュージシャン初の快挙である。しかし『風に吹かれて』の歌詞が紹介されてばかりで、受賞した理由である「アメリカ音楽において新しい詩の表現を創造した」という部分をしっかり説明している番組は皆無だった。もちろん受賞自体にピンときてない方も少なくないはずだ。

そこで、今回、せっかくなので、ぼくなりにいままでなんとなく「ボブ・ディランすげえな」と思ってたところをツラツラ書いていこうと思う。最初に断っておくが、ぼくはボブ・ディランアルバムを全部聴きこんだわけでもなく、詩集を買って隅から隅まで読んだわけでも、もちろん歌詞カードを読みこんだわけでもない。もっといえば、頭のなかで鳴らせるくらい覚えてる曲もかなり少ない。故に好事家の方からお叱りを受けたり、間違ってると指摘されるかもしれないが、あまり知らない人でも「すごいな」と思える部分だけを都市伝説風に話そうくらいのことなので、そのあたりはご了承いただきたい。

f:id:katokitiz:20161014102730j:image


・『ハッティキャロルの寂しい死』の歌詞

どのくらいすごい人なのかについて語る前にある曲の歌詞を紹介しようと思う。当時ボブ・ディランの偉大さがわからなかったぼくが衝撃を受けたのがこれで、『時代は変る』というアルバムをツタヤでレンタルし、それについていた歌詞の翻訳を読んだことにはじまる。ぼくの世代に例えるとBUMP OF CHICKENの『天体観測』とか『K』の歌詞を読んだときの感じだろうが、当時はこういう物語調の歌詞自体が珍しかったはずで、インパクトはそれ以上になると思う。黒人のメイドが白人に酔った勢いで撲殺されるも、その白人は裁判で軽い罪になったというすさまじい物語が繰り広げられ、その軽い刑だったという部分がオチであり、繰り返される「今は泣くときじゃない」というフレーズが変化することで状況を説明する。それはまるでオー・ヘンリーの短編小説を読んだかのようである。

ボブ・ディラン訳詩

http://www1.odn.ne.jp/~cev29720/DYLAN-1.html

ちなみにこちらのサイトでは『スペイン革のブーツ』という曲の翻訳もあるが、この曲は遠くへ行ってしまった彼女を待つ彼氏が“いっそ帰らず、もう君のなかに僕という存在がなくなるのならスペイン革のブーツを送ってくれないか”といった手紙を出すという内容であり、男と女のそれぞれの心情が交互にやってくるという構造で描かれていく。もうピンと来た人もいるかもしれないが、そう、あの名曲木綿のハンカチーフ』の元ネタである。


・フレーズがいちいちキャッチー

ボブ・ディラン歌詞は基本的に哲学的なものが多く、理解できなかったりするが、それでもワンフレーズがキラーラインになる打率が高い。有名どころをあげると「答えは風に吹かれている」「時代は変わる」「あの頃のぼくより今のほうが若いさ」「今は泣くときじゃない」「どんな気がする?転がる石になるってことは」「フォーエヴァー・ヤング(いつまでも若いままで)」などなど。ぼくらの世代で例えるなら「ナンバーワンにならなくてもいい もともと特別なオンリーワン」「私以外私じゃないの」みたいなのが連発される感じ。特に吉田拓郎は顕著であり『ローリング30』という曲で「転がる石になれ」というフレーズを作ったり「フォーエヴァー・ヤング」という曲があったりする。ちなみに秋元康はこの吉田拓郎の「転がる石になれ」をそのまんまタイトルに引用し、AKB楽曲を作っている。


・めちゃくちゃ韻を踏む

ボブ・ディラン歌詞が難解な理由のひとつでとにかく韻を踏んで踏んで踏みまくる。音の響きで選んでいる節もあり、散文的なその詞は翻訳しても意味不明になるに決まっている。もしかしたらブルースをはじめとしたルーツロックにそういう曲があるのかもしれないが、ここまでわかりやすく最初から最後まで踏んでいる人は彼以降でいえばヒップホップになるだろう。特に『サブタレニアン・ホームシック・ブルース』という曲は矢継ぎ早に言葉が連発され、ずーっと韻を踏んでいる。歌詞を読むよりも音を聴くとそのすごさがわかる。ぼくらの世代でいうとヒップホップ以外ではサザンミスチル、B'zがそのあたりになるかと。

『サブタレニアン・ホームシック・ブルース

https://www.youtube.com/watch?v=MGxjIBEZvx0

PVのようなものが作られているが、踏んでいる部分をわざわざ紙に書き、一枚一枚それを見せていく姿がかわいい。


・「?」が連発される歌詞

これは『風に吹かれて』のことで、この曲は「友よ、答えは風に吹かれている」というキラーラインで評価されがちだが、実はすべてのフレーズの最後に「?」がついていて、聴き手に問いかけているというスタイルであり、これが当時衝撃的だったという。たしか音楽歌詞でこれを最初にやったのがボブ・ディランだった……というようなエピソードをどこかで見聞きした気がするが、忘れた。ブルースでそういうことをした人がいたかもしれないが、当時のヒット曲にこうしたものがないことは確かである。それはそのまんま「どんな気がする?」とサビで叫ぶ『ライク・ア・ローリングストーン』に続き、そしてそのフレーズに影響を受けて、なんとか日本語にできないかと思案した中村一義が「どう?」という風に意訳し、『犬と猫』で歌ったことにつながっていくのである。


・「馬が二頭近づいてくる」というフレーズが「革命を予感させる」という意味になる奥行きと引用と含蓄っぷり

これはNHK井上陽水と山田五郎が解説していて、マジか!と唸ったのだが、代表曲である『見張塔からずっと』の最後のフレーズ。歌詞を要約すると、泥棒とペテン師格差社会から抜け出せるんじゃないか?ということについて議論しており、そのあとで見張塔から王子が世間を見下ろしているという描写がでてきて、最後に馬が二頭やってくるという構成で、表面だけすくい取るとまったく意味不明なのだが、これは「見張塔からロバに乗った男が見えたときにバビロンが陥落したことを知る」という聖書からの引用であり、バビロンというのは基本的に悪の権力や支配者の象徴として使われることから、「革命が起こる予感」について歌っていることがわかる。もちろんここにいきつくためには外側の知識がないとダメなのだが、逆にいえば、それらが頭に入っていると非常にかっこよろしい言い回しで革命を声に出しているわけで、故に「革命を起こそうぜー!」と歌うよりも響いてくる。ちなみにこの曲はジミヘンもカバーしており、そのカバーバージョンが映画ウォッチメン』で使われているのだが、それがオジマン・ディアスの見張り塔に向かうシーンでかかるため、全部の意味を分かってるうえで観ると死ぬほど鳥肌が立つ。

『見張塔からずっと』訳詩

http://mettapops.blog.fc2.com/blog-entry-767.html


ほかにもルーツロックザ・バンドと一緒に紐解いたり、二枚組アルバムをはじめて成功させたり、歌詞だけじゃなく音楽的にも相当なことをやっているのだが割愛(というか、ぼくなんかよりも死ぬほど詳しい人がいるのでおこがましい)。歌手なのに何がノーベル文学賞だよと思ってる人もいると思うが「アメリカ音楽において新しい詩の表現を創造した」という部分において、これだけのことをやっているんだということが少しでも伝わればこれ幸いである。

2016-10-08

[]宮部みゆきが誉めた“理由”/朝井リョウ桐島、部活やめるってよ』、『何者』 00:07 宮部みゆきが誉めた“理由”/朝井リョウ『桐島、部活やめるってよ』、『何者』を含むブックマーク

これから映画が公開される……からというわけでもないが、朝井リョウ直木賞受賞作『何者』とデビュー作にあたる『桐島、部活やめるってよ』を読んだ。後者は映画版も鑑賞。

f:id:katokitiz:20121225155752j:image

ハッキリいうとみんなが大絶賛した映画版『桐島〜』はそこまでハマらず、普通におもしろかったという感じだったのだが、原作も読んだ直後は同じようなテンションで、なんでこれがここまでヒットしたのだろう、若い世代にウケたのかなーくらいにしか思ってなかった。

原作は小説すばる新人賞を受賞し、それでもって朝井リョウはデビューしたわけだが、驚いたのは選考委員である宮部みゆきがこれを「傑作」と評したことだった。なんといっても同じく選考委員を務めている直木賞にて、黒川博行氏の『破門』を「こういう小説はあまり好みではない」と前置きしたくらいの人である。こういった瑞々しいティーン向けの青春小説も同じように好きではないはずなのだ(石田衣良も誉めていたが、それはすごく理解できる)。

しかし、よくよく考えてみれば、この『桐島〜』はプロットだけ抜き出すと「重要な人物がある日突然消えて、そのことについて外部の人間が証言するように語る」という構造で、宮部みゆきの代表作『理由』に似ており、桐島は消えたは消えたが、そのこと自体に関してそこまで気にしてないという風に変化しただけで、基本的には同じ。そこに各々、自分が他人にどう思われているのか気にしているということをメインに書いていくあたり、太宰治風な純文学でもあり、それらを知らずに手に取った若者がバイブルとしているのも納得で、宮部みゆきが誉めるのも分かる気がするのだ。故に今読んでから少し時間が立ち、そういうことを考えたうえで、この原作は多いに気に入っている。

この『桐島〜』のミステリー要素を大きくし、純文学の精度を高めたのが『何者』なのではないかと思っている。

『何者』は就職活動にいそしむ5人の大学生グループのなかのひとりの視点で語られるという物語だ。

ハッキリ言ってしまえば、この『何者』も『桐島〜』同様、特に何かが起きるとかそういうものではない。淡々と就職活動の様子がディテール細かく、瑞々しい文体で語られていく。

しかし、その裏では自分だけの手札を持ち、ある程度本音を隠し、自分ひとりで内定を取ってしまって、みんなを出し抜きたい……など思っているのかもしれない。そういう風に話が読者も思ってないところで転がっている……そういう悪意が核になって表れてくる。実際、この一文もぼくが読んで勝手に想像したことで、作者自身は「そんなことはないです」というかもしれない。それこそひとりの視点でしか描かないために、誰がどう思っているのか?はすべて把握できず、解釈するしかないのである。

ぼくがこの作品から汲み取ったのは「内定を取った人間は偉人であるかのように扱われるが、内定をひとつも取れない人間は人間失格のように蔑まれる」という部分で、まさに現代版『人間失格』だなと素直に思った。

後半まではストレートな純文学として描かれていくが、あるトリックというか、語られなかった真実が最後の最後にやってきて、ミステリーの要素が含まれてくる。そのために直木賞を受賞したのだろうが、その最後の最後以外に書かれていない部分で別な余韻を読者に持たせてくれるという意味では『桐島〜』がとてつもなくパワーアップした作品と言い切ってもいいだろう。

というわけで、あんまり語るとネタバレになってしまうが、朝井リョウの代表作は二作とも楽しめた。特に『何者』はストレートに傑作といっていいだろう。絶賛文庫版が本屋平積みになって置いてあるので手に取ってみることをおすすめしたい。

何者 (新潮文庫)

何者 (新潮文庫)

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/katokitiz/20161008

2016-10-07

[]加藤シゲアキ小説を全部読んだ 09:03 加藤シゲアキの小説を全部読んだを含むブックマーク

お久しぶりです。8月の頭から20連勤→6連勤→13連勤→12連勤→8連勤という地獄を味わっておりました。おかげで何もする気がなく、休憩中もほぼほぼ待機という扱いで本を読むくらいしかやることがなく、そのおかげというか、ちょっとした活字中毒になってしまい本ばかり読んでました。そんな中、職場のジャニヲタからNEWS加藤シゲアキが書いた小説を全部借りて読んだのでその感想でお茶を濁したいと思います。

f:id:katokitiz:20161007090015j:image

ピンクとグレー

ジャニーズのタレントがはじめて小説を発表したとして話題になり、映画化もされた作品。「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」でも公言していたように今敏の『PERFECT BLUE』の影響がかなり大きく、あの映像の感じを文章で再現したクライマックスは圧巻で評価に値する。ポップカルチャーの引用しかり、あるキャラクターの死と、それを受けて残された人間は喪失感を抱えつつどう生きていくのか?など、基本的には芸能界を舞台にしたライトな『ノルウェイの森』という感じ。読みにくいという感想も目立つが、確かに文体はゴツゴツしており、決して可読性が高いとはいえない。さらに結論を引っ張る傾向があり、突拍子もなく人の名前が出てきて、それが一体誰なのかわかるまでの時間が長いなど、欠点もあるが、おもしろく読めた。吉田拓郎の『流星』の使い方やヒース・レジャーポール・トーマス・アンダーソンの『マグノリア』など、固有名詞による例えがうまく、それが全部頭に入っていると、バックグラウンドがより深く入り込めるという仕組み。所詮ジャニーズだろ?と思ってる人も多いと思うが、サブカル寄りの人ほど必読だと思われる。石田衣良が誉めたのもそのへんじゃないかなぁ。しかし、なんで「情熱大陸」と「Mステ」はハッキリと表記しないのに「笑っていいとも」だけはちゃんと表記するのか……その「笑っていいとも」も最初はお昼の長寿番組みたいに表していたのに……


閃光スクランブル

この人の本をなんで読みたいと思ったかというと、ツタヤでこの本を手に取って、出だしの数ページで「あれ?この人、マジに才能あるんじゃないの?」と感じたからで、それは確信にかわった。ハッキリいうと中盤、ちょっとやりすぎなんじゃないの?と感じたが、可読性の高さは目を見張るものがあり、構成は見事だったものの、印象に残るシーンがあまりないように感じた前作に比べ、今作は「こういうシーンを作りたい」というところから入ってるような、そんな印象を受ける。それほどにエモーショナルなシーンが多い。文書力が格段にアップされ、ポップカルチャーの引用もかなり決まっている。特に中村一義の「キャノンボール」とピチカート・ファイブの「東京の夜は七時」は元の曲が分かっていると読みながら頭のなかで鳴っているため、そこで泣いてしまう。映像化されたときも同じように演出しないと意味がないように思えた。前作同様『PERFECT BLUE』からの影響があり、特に女性アイドル卒業や、マネージャーが◯◯……などそのまんまの設定。


『Burn』

ホームレスドラッグクイーンとの友情を描いた作品で、これまた今敏の『東京ゴッドファーザーズ』と同じ設定。どんだけ今敏好きなんだ……とはいえ、可読性は最高点をマークしており、レイジという名前がそのまんまクライマックスでの重要な伏線になっていたり(ファーストのジャケである)、絶妙な「東京流れ者」の引用など、あいもかわらずサブカル心をくすぐる作り。シーンの作り方も二作目ほど過剰じゃなくなり、喪失感からどう立ち直るのか?というテーマにもイヤミがない。


『傘をもたない蟻たちは』

短編集だが、間違いなく最高傑作で、もし加藤シゲアキで読むなら何がいい?と聞かれたら迷わずこれをあげる。「ゴーストライターが書いたのではないか?」と疑ってしまうくらい筆致も内容も大幅に変化させた短編集。ファンタジー、ホラー、サスペンス、SFリアルなエロ描写を散りばめ、いよいよ小説家としての実力を見せ始めたという感じ。とはいえ、無理してる感じは毛頭なく、単純におもしろい話が並ぶ。特に脱サラに憧れた男の悲劇を描いた「Undress」と一見普通の恋愛話……という「インターセプト」が驚くほどに傑作。わけわからん生物を喰らいつくす「イガヌの雨」も筒井康隆が書きそうな感じで印象深い。


総括としてはジャニーズのタレントが片手間で書いたような感じではなく、若手の小説家おもしろい本を読んだという感じ。ボロカスに叩かれた水嶋ヒロや芸能界を代表する読書家で小説も書きながらなんの話題にもなってない太田光に比べれば、ちゃんと正統な評価もあるし、ヘタしたら賞だって取る可能性もあるということで影ながら応援したいと思う。

Burn.‐バーン‐ (単行本)

Burn.‐バーン‐ (単行本)

傘をもたない蟻たちは

傘をもたない蟻たちは

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/katokitiz/20161007

2016-09-14

[]意外や意外、ド直球のノワール黒川博行後妻業16:39 意外や意外、ド直球のノワール/黒川博行『後妻業』を含むブックマーク

前回、黒川博行直木賞受賞作『破門』と『国境』について書いたのだが、その二作から黒川博行という作家にドップリハマってしまい、その二冊を含むシリーズの『疫病神』、『暗礁』、『螻蛄(けら)』を全部読んだ。

これが信じられないほどおもしろく、今までの読書体験のなかでもトップクラスだったのだが(このシリーズについてはまた別エントリで)、はたしてこの他の作品はどうなんだろうと今映画化されて話題になっている『後妻業』の文庫版を読んだ。

f:id:katokitiz:20160914163801j:image

発売された直後に関西連続不審死事件というまったく同じような事件が発覚したことで話題になったが、そのタイトルから、事件と同じように資産家のジジイをだまくらかして公正証書遺言を作成させ、殺して遺産をその子供たちから奪い取る“後妻業”についての話かと思いきや、興信所の探偵(元マル暴担当の悪徳刑事)にジワジワと追いつめられていく犯人を描いたド直球のノワールであり、良い意味でやられた。

エルモア・レナードに影響を受けているだけあり、ひとつのシーンをひとりのキャラクターの視点で描いていくという手法で、前半は犯人と被害者家族の視点で後妻業の手口を丹念に描いたクライムノヴェルであり、中盤は探偵(元・マル暴担当の悪徳刑事)の視点でコツコツといろんな場所へと足へ運び、細かく細かく事件を追う、松本清張ばりの社会派ミステリーであり、後半は犯人の視点から、その探偵にジワジワと追いつめられ、破滅に向っていくノワールと、ジャンルがコロコロ変わっていく。

特に探偵のキャラクターがほぼほぼ無感情で淡々と犯人を追いつめていくのでハードボイルドの要素も多分にあるが、その人間とは思えないやり方で人を殺していく後妻業の天才・小夜子はそれこそ『鬼畜』のようでもある。そしてその探偵が依頼人の依頼を無視して、暴走することから破滅に向っていくというのは小説ではなくコーエン兄弟の『ブラッド・シンプル』のようでもあり、それこそ『疫病神』シリーズよろしく、いろんな要素の良い部分だけをぶっこ抜いて再構成したサンプリング小説といってもいいかもしれない。

もちろん黒川博行が得意とする関西弁の小気味良さと『疫病神』シリーズを読んだ者なら思わずニヤリとしてしまう小ネタ(ヤクザの息子や“ショーファー”といった単語など)もあり、あとがきに書いたあった通り集大成的な作品といえるのかもしれない。

後妻業”についての話を期待すると肩すかし喰らう可能性もあるが、それを遥かに凌駕するおもしろさ。480ページもあるように思えないスピード感と圧倒的なリアリティに手に汗握った。ノワール好きなら必読といえるだろう。超大傑作。

後妻業 (文春文庫)

後妻業 (文春文庫)

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/katokitiz/20160914