くりごはんが嫌い このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

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2017-04-27

[]ペット・サウンズやロング・バケーションに匹敵する名盤サニーデイ・サービス『DANCE TO YOU』 22:09 ペット・サウンズやロング・バケーションに匹敵する名盤/サニーデイ・サービス『DANCE TO YOU』を含むブックマーク

サニーデイ・サービスの『DANCE TO YOU』を聴いた。

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仕事の移動中にiPodをつないで音楽を聴けるという環境になり、小沢健二の『流動体について』や、NGT48の『青春時計』など、久しぶりにCDを定価で店頭で買って聴くということをした。それで火がついたのか、「あ、サニーデイの新しいアルバムまだ聴いてねぇや」と、朝の4時過ぎにホントに思いつきでiTunes storeで購入して聴いた。CDじゃなくてごめんなさい。ホントに思いつきだったもので。てか、リリースほとんど一年前だし……

んで、視聴もせず、何の情報も入れずに聴いたんだけど、これが……マジでぶったまげるほど良くて驚いた。なのでこうしてブログを書いている。

この意見には賛否あるかもしれないが、最初に聴いたとき、ビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』や大滝詠一の『ロング・バケーション』を彷彿とさせた。共通点は陽光が海に差し込み、キラキラと反射してるような音像であるが、どこか引きこもって聴くのが適してるという感じがあるということだ。陰と陽のバランスがちょうどいいというか、少なくともリア充のための音楽ではないということはいえる。その後、何度も何度も聴いたが、その印象は変わらず、むしろなぜそのような評価がないのか不思議に思ったくらいだった。

アルバム自体はドゥービー・ブラザーズの『ロング・トレイン・ランニング』やウィーザーの『バーント・ジャム』のような、あまり歪ませないギターのカッティングでグルーヴを作るタイプの曲が中心。これにそのグルーヴを邪魔しないソフトなメロディが寄り添うように深く染み込んでいく。ただ、それだけでなく、はっぴいえんど的な『青空オンリー』、ビートルズの『ワイルド・ハニー・パイ』的な『血を流そう』に、ティーンエイジ・ファンクラブを落とし込んだ『パンチドランク・ラブソング』。フィッシュマンズを内包した『冒険』など、ダンサブルな楽曲にはさみこまれるように、ヴァラエティに富んだ珠玉のポップソングが並ぶ。

全9曲にしたことでヘビロテしやすく、メロディよりもトラックに比重がいっているため、BGMとしてもいいという点で優れている。

サニーデイ・サービスの最高傑作は『東京』かセルフタイトルの『サニーデイ・サービス』になるのだろうが、個人的にはそれに匹敵する……むしろそれ以上の思い入れがある作品になった。これがこのご時世にできてしまったという意味でも感動を覚える超大傑作。なぜ発売日にチェックしてアナログ盤もカセットテープ盤も買わなかったのか……サニーデイ・サービスごめんなさい。これから死ぬまで聴きます。まじで定価で買っても問題ないくらいおすすめ。サニーデイ・サービスを知らない人ほど聴いて欲しい。

DANCE TO YOU

DANCE TO YOU

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2017-04-23

[]なぜNGT48の『青春時計』はへっぽこな“水曜日のカンパネラ”みたいになってしまったのかについての考察 09:32 なぜNGT48の『青春時計』はへっぽこな“水曜日のカンパネラ”みたいになってしまったのかについての考察を含むブックマーク

立ち上げ時からローカル番組などである程度追っかけ、お披露目公演やイベントも行った程度には思い入れがあるNGT48がついに『青春時計』でメジャーデビューを果たした。

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すでに代表曲としての評価も定まっており、リクエストアワードでも1位をとった『Maxとき315号』を何度も何度も聴いているだけにいやがおうでも期待は高まり、YouTubeMVが発表されると知ってすぐに視聴。後日Type-Bをツタヤでフラゲ、Type-Cをハードオフで購入して聴いた。

早速だが、この『青春時計』かなり変わった構成になっている。

D

まず出だしだ。48Gの楽曲といえば印象的なイントロから転調に転調を重ねていくというのがお決まりのパターンであるが、『青春時計』にはイントロがなく、いきなり歌い出しが“水曜日のカンパネラ”的なけだるいラップになっているのだ。

もちろんそのようにコンペも行われたのかもしれないが、実はこの曲の振り付けも“水曜日のカンパネラ”を担当している人が振りつけており、そこまで深読みでないことがうかがえる。

曲はそのまま終わるわけはなく、Bメロからは『365日の紙飛行機』を彷彿とさせる60年代カレッジフォーク調になり、タイトル通り、青春を強調した歌詞がうたわれていく。秋元康といえば、吉田拓郎を敬愛している一方で、Daft Punkが『Get Lucky』でグラミーを獲れば『恋するフォーチュンクッキー』を発表したりと流行にも敏感だ。この最先端の音楽と牧歌的なフォークソングを融合させるというのも合点がいく。

とはいえ、なぜこのような変化球的な曲を彼が選んだのか?それについては引っかかるところもあった。ぼくはこの曲を30回以上聴き、なんでこのような構成の曲になったのか……正確にいうなら、なぜ秋元康がこのような曲をNGT48デビューシングルにしたのか?について仕事をしながら考え続け、そして一週間ほど経ってついにひとつの結論に達した。

もしかしたら秋元康新潟がどういう街なのか?というのを音楽を通して、そしてNGT48を通して、表現したかったのではないか?

出だしの“水曜日のカンパネラ”的なラップはある意味で現在の最新系の流行歌であるが*1、このラップの部分が政令指定都市になって以降の新潟を象徴しており、中盤からの60年代カレッジフォーク調は古き良き在郷としての新潟を象徴している………

つまり新潟という街は政令指定都市でありながら、少し車を走らせれば田んぼだらけの在郷で、その都市感と在郷の解離が異常に激しく、それが魅力であり、その魅力を外に向けてNGT48は発信していく……そんな決意表明があったのではないか?

「さしきた合戦」という番組のミニコーナーで地方出身のメンバーが集まり「新潟は私たちの住んでたところに比べると都会」とコメントしていたが、これがすべてを表しており、どこか新潟というのは水と米と魚だけの地方(田舎)であるというイメージがつきまとっているような気がする。しかし、いうほど田舎でもなく、魅力的な……それこそ歌詞を引用すると「美しいあの街」……それをそのまんま曲で表現した……それが『青春時計』が選ばれた理由なのではないか?

そう考えると、この曲をNGT48のデビューに持ってきた秋元康の手腕は優れていると言わざるを得ない。今までの48Gのなかで最も地方に密着したNGT48の門出に選ばれた楽曲はことばではなく、曲構成だけで新潟を象徴するというこれまでになかったタイプの曲。それが『青春時計』であり、その新潟を背負っていくアイドルとしての決意をも感じる。これこそがNGT48デビューシングルに相応しい曲なのではないかとぼくは考えるのであった。



……いや、でもね。わかるよ。わかるんだけど、言ってしまっていいかな??



……この曲クソじゃね??


ここはあえて賛否両論を狙ったのだろうが、出だしの“水曜日のカンパネラ”調のラップは、トラックも含め、とてつもなくヘッポコな出来であり、アイドルが持つ魅力のひとつである“ほつれ”が表現できてない。言ってしまえば、元からほつれているうえにほつれが重ねられていて、聴いてて気恥ずかしくなるレヴェルだ。

そして突如やってくる『この広い野原いっぱい』や『あの素晴らしい愛をもう一度』的な展開もただ単に『365日の紙飛行機』のウケがよかったから入れただけという感じもする。サビ終わりの「感情こそが青春〜」という部分もそのまま「365日〜」と歌えそうだ。

「仏作って魂入れず」という言葉があるが、この『青春時計』にはそれしか感じない。むしろアイドル自体がそもそも仏作って魂入れずの状態なのだから、その魂は楽曲にあるのだ。故に近藤真彦の曲は山下達郎が作ったりしているのである。

ぼくはホントに秋元康に対して、なぜこの曲だったのか?の真意が聞きたい。それくらい『青春時計』には何も感じない。とはいえ、これはラブオアヘイトの話なので、他の人はどうなのかなとまとめサイトなどを見ると意外と高評価で絶望的な気持ちになる……

同じように48G推しのぼくの友人は「なんでこの曲を選んだのか?」と思っており、妹にいたっては「なんじゃこりゃ!チクタクーじゃねぇよ!ふざけんな!」というラインを送ってきた。そういう意見が多いと思っていたのだが……うーむ。井の中の蛙大海を知らずとはまさにこのことであった……

ちなみにカップリングではひなたんセンターの『純情よろしく』がよかった。ややアーバン寄りのK-POPって感じでMVもそんな感じで作られている。それでもめちゃめちゃおすすめはできないけれど……っていうか、デジパンクな曲だったり、クールな四つ打ちだったり、なんか曲のテーマというか、方向性が定まってないんだよな……

青春時計(TypeA)(DVD付)

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*1:これについてはいろいろ意見あるだろうが、秋元康のなかでそうなのだということを言いたい

ましろましろ 2017/04/24 11:13 大体、新参者にケチを付けたがる人っていますよね!そんな感じでしょうか?個々に感じ方に違いはある事なのですが、素直にデビューを祝ってあげませんか?

katokitizkatokitiz 2017/04/24 12:43 大体、批判的な記事が出るとこういうこと書く人っていますよね!そんな感じでしょうか?個々の感じ方の違いの前に「どういう曲か?」の説明はしているつもりですし、デビュー自体はかなり喜んでますが?

2017-04-02

[]一週間『シン・ゴジラ』漬けだった 08:15 一週間『シン・ゴジラ』漬けだったを含むブックマーク

ちょうど『破門』を観にいった2月2日が面接の日で無事に転職したのだが、一日最低で13時間、最高で15時間残業なしで働くというブルーカラー男子になってしまったので(休憩もほぼない)、小説など読めるはずもなく『モンハンダブルクロス』も買うには買ったのだが、数回しかやっていない。帰ってくるとかなり疲弊しているため、メシを喰らって酒飲んだらテレビを見ながら気絶するようにリビングで寝ているという生活。おかげで8キロ痩せ、入社したときにサイズを測って注文した制服のズボンが速攻でブカブカになった。

しかし、隔週で土日休みがあるため、わりとDVDBDなんかで映画を観るという余裕はそれなりにあり、観たかった『シン・ゴジラ』を特典映像付きの三枚組を購入して鑑賞したのだが、これが本編を含め、買って大正解のソフトであり。ここ一週間は仕事終わったら本編と特典映像を観るという生活を送っていたくらいハマった。今更ながらおすすめである。

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話としては東京湾ゴジラが現われ、東京の街を破壊しながら原発に向かっていってるのでなんとかして止めろ!という非常にシンプルなもの。その時、政府はどのように対応するのだろうか?というのを徹底的にシュミレートしていく。

もうさんざ語り尽くされてるだろうが、1954年の『ゴジラ』が戦後わずか9年で公開されたように『シン・ゴジラ』も恐怖の対称として3.11をエクスプロイト。通常の映画の二倍の厚さとも言われる脚本だが、1.5倍速で観ているのかというくらいすさまじい早さで演者はしゃべり、カット割りもめまぐるしい。ほぼ政治家と官僚と専門家しか映り込まないなか、その役職も字幕で表記されるが、読ます気ないだろうというくらいの早さで消えていく。未使用テイクには逃げ回る群衆やエモーショナルな演技はもちろん、偽のニュース番組など、怪獣映画にはよくあるものも多いが、それをあえて編集の段階で切り捨て、なるべくドライにデタッチメントに演出。見終わったあとの興奮はこの種類のものでは『パトレイバー2』以来であり、こういう映画をずっとずっと待っていたんだ!と素直に思った。

津波が押し寄せるという映像は丸々完コピなんじゃないかと思うほどであり、それを前半に持ってくることで、3.11をフィクションで超えてやるんだという気概に満ち満ちている。みんながネタバレしてくれなかったおかげで、最初のキモイあいつマジなんだよとも思ったが、そこからのサプライズを経て中盤、東京の一部が破壊しつくされるというシーンではあまりのすごさにマジで打ち震えた。ハリウッド版が一体何だったんだ?というくらいゴジラというジャンルは日本で作られるべきなんだなと思い知らされた。

あと、当たり前っちゃ当たり前なのだが、映画は監督のモノとよくいったもので、この作品は新しいゴジラでもありながら、エヴァンゲリオンがいない『エヴァ』でもあり、音楽も後半の展開もあえて意識していて作られている。『進撃の巨人』と同じ役者も出ているのに、学芸会調の仰々しい演技は見られず、そのあたりで庵野秀明樋口真嗣の才能の差も改めて感じられたが、会見では『エヴァ』の新作ができてなくて申し訳ないと言っていたので、そのかわりのサービスだったのかもしれない。それでいて、伊福部明の音楽もかなり使っており、先代の『ゴジラ』へのリスペクトも忘れてない。

まぁとにかく、他にも言及すべき点は山ほどあるが、長くなるのでこのあたりで。ぼくのなかでは完璧な映画であったことは間違いない。これからも末永く付き合っていくことになるだろう。文句なしの大傑作でオールタイムベストテン入り確定である。三枚組ブルーレイがおすすめだ。

最後に特典映像の見所をいくつか。

・偽のニュース映像集がとにかくおもしろい。本編の話の流れもわかるようになっていて、こういうスタイルの映画が作られるんじゃないかくらい。

プロモーション映像集の石原さとみが素晴らしいコメントをしている。

・NGテイクの大杉漣おもしろい。

・発声可能上映にて、島本和彦に「ごめんね、ありがとうね」を連発する庵野秀明に萌え。

シン・ゴジラ Blu-ray特別版3枚組

シン・ゴジラ Blu-ray特別版3枚組

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2017-02-02

[]マーケティング重視なキャスティングとは思えない/『破門 ふたりのヤクビョーガミ』 11:53 マーケティング重視なキャスティングとは思えない/『破門 ふたりのヤクビョーガミ』を含むブックマーク

『破門 ふたりのヤクビョーガミ』鑑賞。それにしてもこのクソだっさいタイトルなんとかならんのか……

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原作は個人的に“ナニワのエルロイ”、“ナニワのレナード”と呼んでいる黒川博行直木賞受賞作。センテンスは短く、セリフはおろか、それ以外も関西弁で書かれており、軽快でノリがよく、キャラクターの掛け合いで話を転がしていく文体が特徴。タランティーノが『パルプ・フィクション』をエルモア・レナード風に仕立て上げたように、この映画版の『破門』も、「文学映画に移し替える」ということをしており、作品のテンションは結構似ている部分があっておもしろく観た。

自主規制が当たり前になった昨今のメジャー邦画では珍しく、タバコをスパスパ吸い、登場人物の8割くらいはヤクザ長回しによる執拗なエグいバイオレンスもあり、これにおっぱいが出てればいうことないという感じ。

何よりもこの映画の最大の魅力はキャスティング。マーケティングを重視しつつ、関西出身で固め、北野武とは真反対の関西弁のみで奏でられる小気味良いセリフ回しで魅せていく。二宮役の横山裕はもちろん、イケイケヤクザの桑原はちょっとインテリ寄りに変更されるもキレたら豹変するという設定で、その変貌ぶりを佐々木蔵之助が見事に演じている。さらにしぶとく逃げ延びる小清水の橋爪功、その愛人に橋本まなみ、気が強い関西のねーちゃんっぽい北川景子二宮を息子のように想う國村隼などほぼほぼ原作通りで感動。 さらに黒川博行サプライズで出演している。

大阪でロケしてるわりに泥臭さがなく、スタイリッシュな感じに仕上がっていて、全体的に軽く、安っぽいのが残念極まりないし、原作から丸々シーンを抜くのではなく、ひとつのシーンから少しだけぶっこ抜いているので、まったく繋がってこないシーンもあって、話がわかりにくくなるのではないか?という懸念もなくはないが、元々小説自体が軽快なエンターテインメントだけに、その軽さやスピード感も含めて及第点はあげてもいいのではないだろうか。とはいえ、傑作でもないので、強くおすすめはしないけれど。

破門 (角川文庫)

破門 (角川文庫)

2017-01-30

[]関根彰子はあのとき何をしていたのか?/葉真中顕『絶叫』 12:19 関根彰子はあのとき何をしていたのか?/葉真中顕『絶叫』を含むブックマーク

葉真中顕という作家の登場は衝撃的だった。正確にいうならば、その登場の“仕方”が衝撃的だったというべきだろう。

まず彼はブロガーとしてぼくの前に現われた。彼のブログは立ち上げてから半年もしない内にブレイクし、その名を轟かせていったが、そんな彼のブログにぼくのブログリンクが張られたことがきっかけで、それまで三ケタだったぼくのブログアクセス数は飛躍的に伸びていった。その意味で彼はブログ界の恩人のひとりである*1

二回、直接お会いする機会があり、いろんなお話をさせていただいたり、そのあとも互いのブログにコメントしたりしていたが、2011年頃に彼のブログの更新が少なくなり、そのまま停止した。過激な内容の記事もあって、あまりのブレイクぶりにコメントが荒れたりもしていたから、疲弊していたのは明らかだった。Twitterのつぶやきもなくなった。少しだけ心配しつつも、まぁ気が向いたらまた再開するのではないか程度に思っていた。

その二年後、彼のブログは再開された。「新人賞をとって、ミステリー作家になりました。」というタイトルで。

これに驚いたのはぼくだけではないだろうが、そういった特殊な状況でぼくは葉真中顕という作家の登場を見ていたのであった。

そんな彼の処女作『ロスト・ケア』を読んだのだが、新人賞を満場一致でとったのも頷ける傑作であった。

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43人を殺したという戦後最大の殺人事件の犯人に死刑判決が下る。しかし被害者は彼を憎むどころか感謝すらしているという、一体この事件はなんなのか…………というのが主なあらすじ。

読んだのはだいぶ前になるが、この小説の感想をブログに書かなかったのは、作者が書こうとしているテーマをばらすと、上記の作品を引きつける部分が台なしになってしまうからだ。ぼくがこの『ロスト・ケア』でいちばんおもしろかったのはその部分であって、これから読む人もそこに感動してほしかったので、あえて書かなかったというのが本音である。

それこそこの作品の先見の明はすばらしく、相模原で起きた障害者施設での殺傷事件ニュースで見たときにすぐに『ロスト・ケア』を思い出した。もしかしたらこういう事件は起こりえるかもしれないと思ういっぽうで、ここまで規模の大きなものは小説のなかの世界だけだろうと思っていただけにショックは尚更大きかった。逆にいまこのタイミングで読まれるべきなのかもしれない。

作品としては可読性が高い社会派ミステリーという感じだろうが、彼がブログで書いてきた社会の欺瞞やそれに対する怒りがギュウギュウに押し込まれており、それが葉真中顕という作家の個性を形成しているようにも思えた。叙述トリックの使い方も鮮やかでキレイにダマされたし、何よりも悪を悪として描かずに正義は社会の後ろ盾になることはあまりないというメッセージも強く心に響いた。いや、もしかしたら書いてる本人はそういうつもりではないかもしれないけれど。

二作目の『絶叫』はこのスタイルをそのままにスケールを大きく広げ、社会の欺瞞と怒りを詰め込みながら、それをわりと冷静に眺めている————俯瞰しているという風に受け取った。

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ストーリーは鈴木陽子というひとりの女性がマンションの一室で孤独死しているところからはじまる。彼女の人生を同じような境遇の刑事が追い、それと平行して彼女の視点から過去が明らかになるという構成である。

読書メーターやAmazonレビューで『火車』や『嫌われ松子の一生』っぽいというのがそこそこ目についたが、ぼくも同様で、最初に読み終わったときに『火車』を関根彰子の視点から描いたような話だなと素直に思った。

他にもマンションの一室にいた人が……というのは同じ宮部みゆきの『理由』を彷彿とさせたし、普通の女がとあるきっかけから堕ちていくのは『グロテスク』で、20年以上の時をカルチャーや事件と共に一人のキャラクターとすすめていくのは『白夜行』や『幻夜』からの影響があるなと感じた。というか、この辺の本をたまさか最近読んでいたので感じたわけだが、言ってしまえば90年代〜2000年代のミステリーノワールに影響を受けた作品ということである*2

独自性でいうなら描写の容赦なさ。これは『ロスト・ケア』にもあったが、葉真中顕は現実にある悲惨な状況やよくあるようなこと————ノンフィクションな状況をこれでもかと詰め込み、そのリアリティラインでフィクションを構成していく。そして、それが野島伸司のように畳み掛けるわけではなく、真綿でゆっくり首を絞めるように読者を追い込んでいく。

ポエムのような心情描写が随所に差し込まれるため、どこか現実でありながらも現実ではない世界を構築。このスタンスは『コクーン』に持ち越されるのだが、長くなったので次の機会に。

二作目にして(というか一作目からそうだったけど)葉真中顕の刻印がバッチリ押された『絶叫』。まさに『火車』とか好きならおすすめ。今年中に文庫化すると確か言っていたので、解説が気になるところである。

ロスト・ケア (光文社文庫)

ロスト・ケア (光文社文庫)

絶叫

絶叫

*1:ちなみにTHE KAWASAKI CHAINSAW MASSACREのdoyさんもぼくのブログブレイクさせてくれたひとり

*2読書量が多くないため、大元のネタは他にあるのかもしれないが

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