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2016-05-24

[]真実とはえてしてそんなものである『ソロモンの偽証』 17:04 真実とはえてしてそんなものである『ソロモンの偽証』を含むブックマーク

『ソロモンの偽証 前篇・事件』と『ソロモンの偽証 後篇・裁判』を鑑賞。前者はテレビ放映で、後者はレンタルBDで観た。

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一人の生徒が屋上から転落死し、一人の生徒が告発状を出し、そのせいで一人の生徒が疑われた。警察自殺と断定したものの、真実はわからずじまい。「だったら私たち生徒が学校で裁判して決着つけましょう!」というお話。

わりと早々に告発状はウソでしたとタネ明かしすることにより、「ウソがいつかバレてしまうのではないか」というサスペンスが生まれ、そこになぜか本格的なホラー演出と、容赦がなさすぎるリアリティ、さらに重厚かつトリッキーなカメラワークで魅せて魅せて魅せまくる。冒頭、子供の死体の顔を大写しにし、そこからカットを割らずにカメラが高く高く上昇していくシーンで傑作を確信。その確信以上にことが進んでいくので大興奮。そのいきおいのまますぐに後篇をレンタルした。


ここから誰がどうしたとはいわないが、ネタバレ


中学生だけで裁判をやるということでかなり勉強し、相当な期間を準備に費やしたわりに検察と弁護側でのやりとりがないし、わりと観客が知ってる(描いていなくても予測できる)ことを延々繰り返すだけなので、真実が明らかになるまでの1時間40分はそこまで重要ではなく、だったら例の彼が怪しいというくだりは隠してしまってもいいように思えた。

結局裁判で明らかになったのは、一人の無実の人間をスケープゴートにすることで生まれる欺瞞であり「都合のいいように記憶をねじまげる」というのは奇しくもちょっと前にテレビで放映された『白ゆき姫殺人事件』と一緒。とはいえ、結局いちばん悪いのはあの不良のアイツでしょう。なんで他の人が揃って「自分が悪いんです」「いやいや、自分が」「いやいやいや自分が」とダチョウ倶楽部みたいなことになっているのか。

「本当の裁判ではない、すべてが明らかになっても裁かれることはない」というのがポイントになってるが、罪を背負えといってるわりに最後なんかヘラヘラしてるし、最初に警察が判断した「これは自殺であり、告発状は○○さんと○○さんによって書かれたもの」というのはまぁある意味真実であり、途中で被告人が「もうアリバイが証明されたから終わってもいいだろ」というがまさにそのとおりで、告発状がウソであることは誰が見てもあきらかであり、真実が明かされたところでそんなたいしたことでもなく、最終的にこの裁判はなんだったのだろう……という気にもなった。まぁ真実とは得てしてそんなものだということを言いたかったのだろうが。

あと気になったことを箇条書きに


ジョーカーの思い通りにならない『ダークナイト

原作の宮部みゆきがどこまで意識したのかは不明だが、自殺した例のあの子が『ダークナイト』のジョーカーみたいなヤツであり、こんなところにも未だに影響があり、さらにこの悪役像がスタンダードになっているのかと驚いた。


・完璧なキャスティング

いろんなところで言われてると思うが、役者の演技はとにかくすごい。心が削り取られているみたいなセリフがあったが、それはこの映画の役を演じた君たちだろうと思った。特に検事の役、おいしいねぇ。


・全員が悪いわけではない

先ほどもちらっと書いたが、登場人物全員の欺瞞を描いてほしかった。太った子も実は悪い子でというエピソードがひとつほしいところだが、恐らく、運命とはえてしてそんなものである的なことを言いたかったのだろう。


ネタバレ終了


と、いろいろノイズになる部分は多かったが、スタッフとキャストの「おもしろ映画を作ってやろう!」という気概には満ちあふれていて、4時間30分はわりとあっという間だった。テレビでやれそうでやれない描写も満載で、これが映画だよなと改めて感じることも多く、こういう映画がもっともっと増えればいいなぁとも思った。

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2016-05-23

[]ポップな『東京物語』/『海街diary11:24 ポップな『東京物語』/『海街diary』を含むブックマーク

是枝監督の「生き死にを商売にし、それが作家性でござい」という感じが好きじゃないので、基本的に作品をほとんど観ておらず、少女漫画も片手で数えるくらいしか読んだことがないうえに、誰が出てるのかもよくわからないという状態だったが(だからレキシが出てきたときにはホントにビックリして声でた)、たまたまTVで放送していたものがリビングのHDDに入ってたので観た。いまどきこんな状態で注目されていた映画を観るというのも珍しい。

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冒頭、印象的に煙突からけむりがモクモクと立ち上がるカットが挿入され、ラストも例の場所で終わり、別れの象徴としてリンゴを買うくせがあるなど、全体的には是枝監督なりの小津安二郎オマージュであり、ハッキリいうと観てすぐの印象はポップな『東京物語』という感じ。

音楽を抑えめにし、街の雑音を強調することで生活を表現したり、坂口健太郎と加瀬亮をキャスティングすることで男の好みが一貫してるというのをうっすら分からせたり、虫を退治しにいくのに新聞紙を丸めていったり、ちゃんと鍋が油でこげついていたり、酒飲みでチャラチャラしてるわりに数字の計算が速いのは何でだ!?と思ったら実は銀行員だったり、細かいところまでものすごく気を配っていて、何から何まで完璧。ウエルメイドってこういうことだよなという見本で100点満点。いいところを言いだせば枚挙にいとまがない。

さすがにこれはキレイに描きすぎだろと思ってしまう4姉妹の関係性も実力とスター性を兼ね備えた女優をキャスティングすることにより、演技を見せる方向にシフト。広瀬すずの殺人的なかわいさもあいまって、事件が起きずとも最後まで見れる……むしろ変な事件なんて起きないでほしいと思わせるほどに魅力的。

ただ、やっぱりというか、原作がそうなのかもしれないが(とはいえ是枝監督はこの原作を読んで映画化したいと思ったので、シンクロしてる部分が強かったのではないかと推測される)、この人の「生き死にを商売にし、それが作家性でござい」というのが好きじゃないんだなと改めて。若干見え隠れするだけでもこう思うのだからよっぽどなのだろう。もちろん世界的な巨匠やぼくの好きな監督たちにもそういうのはあるのかもしれないけれど、こればっかりは感覚的なもので、お前に言われるとなーみたいなのがどうもあるらしい。ホントにすみません。ごめんなさい。

しかし、この手の……いわゆる「イヤな人がいっさいでてこない世界なんて!ない!キレイごとだ!」と言いたくなる映画に対して嫌悪感を持つ、ぼくのような人間でも楽しく観れたので、相当うまい、相当出来る子の作品であることは確かだ。自信を持っておすすめしたい。

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2016-04-12

[]映像化不可能部分とは別に映像化には成功している『イニシエーション・ラブ11:42 映像化不可能部分とは別に映像化には成功している『イニシエーション・ラブ』を含むブックマーク

イニシエーション・ラブ』をレンタルDVDで鑑賞。

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Mr.Childrenの曲で「ありふれたLove Story」というのがあるが、まさにそれを地でいく超普通の恋愛の話。

87年の静岡が舞台。学生のときに合コンで出会った童貞と処女が付き合うことになるが、社会人になると彼は東京へ転勤になる。静岡東京間の微妙な遠距離恋愛になってしまい、さらに環境の変化もあってかふたりはやがて破局を迎える……

原作は筒井康隆の『ロートレック荘事件』や綾辻行人の『十角館の殺人*1』と同じく、最後の二行でもって物語の意味がガラッと変わってしまうというものであり、もう一回頭から読み直すことで本当のおもしろさが味わえるというもの。別に誰かが死ぬわけでも幽霊が出るというわけでも夢オチでもなく、たかだか二行でもって「超普通の恋愛の物語が普通じゃなくなる」という点がおもしろかった。

とはいえ、いかんせん250ページ以上も普通の恋愛話が続くだけなので、かなり読むのが苦痛であり、この二行があろうが、なかろうが、そもそも小説としていかがなものか?という感想をもったのも事実である。もちろんやや退屈に設定することで細かな部分をスルーしてしまう精神状態になり、ある意味ですべてが計算されたものではあるだろうが、ハッキリいうと最後の二行を読むまではまったくおもしろくない。

その点、この映画版『イニシエーション・ラブ』は「映像化不可能問題」とは別に原作がもっていた「普通の恋愛ものすぎて苦痛」という部分がおもしろくなっている。

よくよく考えれば旬のスターが普通に恋愛をするドラマというのはひとつのジャンルともいえ、それこそ80年代以降トレンディドラマブームとしてピークを迎える。『イニシエーション・ラブ』はその時代の恋愛ものをストレートにオマージュできるという利点があり、堤幸彦が監督するというのは必然だったともいえるのだ。ある世代にとっては懐かしさすら感じるのではないだろうか。


しかし、それでもいくつか気になるところはあった。ここからは内容についてネタバレありで箇条書きにしていく。


・原作通りとはいえ、音楽の使い方がなんかダサい

有名な主題歌を自分の作品の主題歌にしてしまうというのはタランティーノがよくやるが、この作品もそういうことをしている。ぼくはこの世代とはズレるので気にならなかったが、そこに違和感を覚える人がいてもおかしくない。さらに小説では音は鳴ってくれないので、映像にしたことでその音楽が鳴るのは嬉しいが、意外とキャラクターの心情を歌詞が代弁するという演出は日本でやるとダサいんだなということがわかった。というか、「都会の絵の具に染まらないで帰ってね」と歌詞の内容をキャラクターが喋るということが間違っているんだろうが………


CGがなんかダサい

トレンディドラマ風に演出するのであれば前半のコミカルなCGシーンは絶対にいらなかったと思う。あれはなんのためにしたのだろうか。


・映像化不可能部分を映像化したことにより起きる違和感

これを書くと反発を覚える人もいるだろうが、アイドルとしてセンターを勤めた前田敦子が、そのバックグラウンドを利用し、ひとりの男を夢中にさせていく様子を段階を追って演じていて、ハッキリいってこの作品は彼女の一挙手一投足を観ているだけで成立しているとさえいえるが、まぁその相手が………ね?………やっぱり無理あるでしょう。劇中で「オレがもっとかっこよければ恥をかかせることはなかった」と言っているが、もうひとりの相手は松田翔太であり、なぜ前田敦子があんなキモデブに惹かれるのか、その動機や理由がトリックを成立させるためか、かなり薄い。いちおう、同じ趣味を共有していて、さらにさりげない優しさも見せるというシーンがあるが、松田翔太のほうは木村文乃が二股の相手なのである。超深読みすれば、イケてない男でも前田敦子のような女の子と付き合えるという夢を映画で叶えてくれるということになるのだが、いやいや、そこで待ち受ける悲劇を思うと……でも、悲劇ではないのか、一応前田敦子松田翔太は恋愛に決着をつけているのだから。


・原作にはなかったオチ

映画で付け加えられた三人が出くわすというオチだが、一度決着つけたはずの恋愛なのに修羅場にはならないだろうかとはちょっと思った。ただ原作のオチだと1800円払って観て、ポカーンとして帰ることになるため、いちおう分かりやすく謎めいて終わるというのは正解なのかもしれない。そのあと時間がさかのぼってどういうことだったのかを映像で見せるが、いちいち読み返す作業をする必要がなく、ぼくは楽しいかなと思った。


・解説にあった「“鈴木”という名字がやたらと多い町、静岡

文庫で読んだのでハードカバー版にあったかどうかはわからないが、原作は最後に解説として80年代に流行ったものと共に彼らの行動やセリフについてヒントが書かれている。映画はそれをエンドロールで再現するのだが、その解説にあった「静岡は鈴木という名字が多い町」というのをカットしてしまったのはいかがなものか。そもそもこの作品のトリックはふたりの「鈴木」がいることで成立しており、偶然とはいえそれはできすぎだろうというツッコミ静岡を舞台にすることでカバーしているというおもしろさがあるわけで、そこは最後の最後に入れてもよかったのではないかなと個人的には思った。


と、いろいろ文句はあるが、なんだかんだで2時間かなり楽しい時間をすごしたのは事実。もし小説を読もうかなと思っているのならぼくは映画の方を観ることをすすめたい。ただ、トリックそのものは小説の方が圧倒的に優れてはいるけれども……


噂通り二度読みたくなるが……『イニシエーション・ラブ』 - くりごはんが嫌い


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実は前田敦子妊娠を告白するのウソなんじゃねぇか?とか、元ネタはこれじゃねぇか?とかコメント欄の深読みが楽しい。

イニシエーション・ラブ Blu-ray

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*1:原作では主人公が『十角館の殺人』を読んでおり、彼女に貸すというシーンがある

2016-04-05

[]「映画は二回観たほうがいい」なんて言いますが……『裏窓10:52 「映画は二回観たほうがいい」なんて言いますが……『裏窓』を含むブックマーク

ヒッチコックの『裏窓』をちょー久しぶりに観たんですよ。

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脚を骨折したカメラマンがひまつぶしに向かいのアパートの部屋をいくつかのぞき見してて、そうしたらそのなかのひとりがどうも奥さんを殺したっぽいなと思って勝手に調査する………

まぁこういう話じゃないですか。実際そういうサスペンス映画だと思ってたわけですが、数年振りに見返したら全然違う話だったんですよ!

主人公にはものすんごくキレイで仕事もバリバリできる彼女がいて、その彼女が主人公のカメラマンと結婚したがってるわけです。めっちゃ惚れてて、すげえ尽くしてるんですよ。わざわざワインを届けさせたり、レストランの料理を持ってきてもらったりとか。

ところが主人公は結婚したくなくて、その二人のこれからのことで痴話喧嘩をはじめてしまいます。それで彼女が部屋から出て行ってしまう。その夜はラブラブですごす予定だったんだけど、脚骨折してて動けないし、なんとなーく手持ち無沙汰になって、それでもって向かいのアパートをのぞき見するという展開だったんですね。ここに動機があったわけです。まったく覚えてなかった。んで、主人公は何をのぞいてるかというと、夫婦のことなんですよ。

つまり、主人公は彼女にいわれて「結婚とは何か?」を他人の生活を見て知ろうとするわけなんですね。新婚だったり、熟年夫婦だったり、もちろん未婚のカップルだったり。そこで昨日まで奥さんがいたはずのある部屋から奥さんがいなくなってるということに気づくわけです。そりゃそうですよね。普通にボケーっとのぞいてるだけだったらいなくなってても気にならないというか、そこまで早く気づかない。結婚のことや夫婦のことを考えてたわけですから、すぐに「あれ奥さんは?」と気づく。「これはおかしい、彼は奥さんを殺したんじゃないか?」と疑いはじめ、そこから調査をすると。

警察には「お前の妄想だ」といわれ、最初は彼女も「あなた頭おかしいんじゃないの」とかいうんですけど、彼女は彼氏にぞっこんですから。話を聞いて、結婚指環がどうしたっていうくだりでもっていの一番に気づくわけですよ。女の勘ってやつでしょうか。そこで興味をもった彼女は………とまぁここからネタバレになるんで言いませんが、まぁ……危険な目にあうわけですね。

するとどうなるか?そこで主人公は「はっ」とするんですよ。彼女のことを心底心配し、いなくなったら困ると思うわけです。本当の愛に目覚めるというか、大切なことに気づくんです、このことを通じて。

これはスピルバーグが『ジュラシック・パーク』や『宇宙戦争』で子供を使ってやってますが、一種の通過儀礼というか、まぁ大人になるという話なんですね。

だから久しぶりに観てたら40分くらいしても全然話がはじまらないし、早くミステリーになれやと思ってたんですが、端から男女の話だなと思えば納得です。フィルマークスでも「オチが弱い」とか「サスペンスとして長い」という感想が続々あがってますが、それも分かる気がします。

しかしですね。そういう話だと理解してもですよ。やっぱり主人公のリア充感が許せないわけですよ。絶世の美女であるグレイス・ケリーに惚れられてるくせに結婚したくないとか生意気いって、しかもことあるごとにイチャイチャして……

だから個人的嗜好もあいまって、そこが引っかかってみなさんが評価するような感じになりませんでした。映画は二回観た方がいい、二回目の方が評価が上がるなんてよく言いますが、二回観たことでちょっとイラっときたのはこれがはじめてです。

2016-03-22

[]ヒッチコック映画の決定版『北北西に進路を取れ14:39 ヒッチコック映画の決定版『北北西に進路を取れ』を含むブックマーク

北北西に進路を取れ』を音声解説で鑑賞。

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最近「昔観ておもしろかったんだけど、いまひとつ細部を覚えてない名作を見返す」ということをやっていて、その流れで久しぶりに観ようと思ったら、DVD脚本家の音声解説とメイキングがついていることを今更知り、それで観てみようと思った。

注・ネタバレしてます。

元々は「ラシュモア山でのチェイスを撮りたい」というヒッチコックの一言から企画がスタート。当時、新人で元々ヒッチコックファンだった脚本家アーネスト・レーマンは「誰が誰を追いかけるのか?どうやってラシュモア山にたどり着くのか?」など何も考えずに執筆をはじめた。さらに打ち合わせ段階で「ウィットに富み、洗練され、魅力に満ち、アクションがあり、舞台が変化する映画にしてほしい」といわれ、それに応えるようにレーマンは「ヒッチコックの決定版にしたい」と数ヶ月推敲を重ねた。その脚本の出来にヒッチコックは感激し、4ページに渡る手書きの手紙をレーマンに送ったほどだった。その気概はしっかり観客に伝わり、フランソワ・トリュフォーは「アメリカ時代のヒッチコック作品の決定版」とヒッチコックの前で断言し、映画を研究している学生たちは「ヒッチコックで一番好きだ」と口を揃えてレーマンに伝えた。

とはいえ、話が話だけにケイリー・グラントのセリフは説明的であり、そこが気になったのか、グラントは誰にも文句がいえず、若くて脚本自体を書いたレーマンに意義申し立てた。レーマンは「彼は威圧的ではなく、いいヤツだった」と語っているが、なぜかそのあとになんの文脈もなく「ケイリー・グラント麻薬常習者だったんだよ。撮影中はやってなかったけどね」と意味深に語っている。

プロット自体はある映画ライターの「架空のCIA工作員がいるって話を知ってるか?そうすれば本物の工作員が悪党に殺されないんだ」というパーティーでの会話からヒントに、架空のスパイに間違えられた男がどうにかしてラシュモア山にいくという設定にした。国連本部や飲酒運転で逮捕されたときどのような流れになるのかなど、レーマンは徹底的にリサーチし、脚本にリアリティを加えていった。

しかし、この作品、中盤でCIAの人間が言っているが「そもそも存在しない、誰も見たことがない人物にケイリー・グラントはなぜ間違えられたのだろう」という、軸にならなければならない部分に無理がある。それだけでなく、なぜでっちあげた工作員の部屋の中に国連の人物が写っている写真が置いてあるのか?レナードがイヴに指示する公衆電話の番号はどこで知ったのか?事故死に見せかけなければならないのになぜ農薬散布の小型飛行機は銃撃を行ったのか?など、細かい部分でつじつまが合わないところがある。

だからといってその欠点がこの作品の価値を下げることなどない。誰が観ても文句なしにおもしろい観客巻き込み型サスペンスアクションの最高峰。「私は食事の後にメイク・ラブをするのよ(あまりに過激ということで音声だけは変えられている)」というセリフやラストのトンネルという穴に列車というおちんちんが……など下ネタも華麗に決まっている。

参考資料:『北北西に進路を撮れ』アーネスト・レーマン音声解説、メイキング。晶文社『定本 映画ヒッチコックトリュフォー

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