新刊『老舗の流儀』が出ました

お知らせが遅くなりましたが、今週、とうこう・あい 監修/南陀楼綾繁 著『老舗の流儀 戦後六十年 あの本の新聞広告』(幻冬舎メディアコンサルティング)が刊行されました。本書は、出版の新聞広告につよい広告代理店として知られているとうこう・あい(以前は東弘通信社)の創立60周年記念として企画されたもので、同社が扱ってきた版元の出したベストセラーや話題になった本について、出版の経緯や広告戦略を中心に記述しています。

老舗の流儀―戦後六十年あの本の新聞広告

老舗の流儀―戦後六十年あの本の新聞広告

必殺紹介人の書肆紅屋さん(http://d.hatena.ne.jp/beniya/20090824)がさっそく目次を掲載してくれましたが、そこにあるとおり、篠山紀信 撮影『Santa Fe 宮沢りえ』(朝日出版社)、郷ひろみ『ダディ』(幻冬舎)をはじめ、謝国権『性生活の知恵』(池田書店)、河野実・大島みち子『愛と死をみつめて』(大和書房)、イザヤ・ベンダサン日本人とユダヤ人』(山本書店)、紀田順一郎荒俣宏 責任監修『世界幻想文学大系』(国書刊行会)、植草甚一植草甚一スクラップ・ブック』(晶文社)、アレックス・ヘイリー 著/安岡章太郎、松田銑 訳『ルーツ』(社会思想社)、土居健郎『「甘え」の構造』(弘文堂)、 ポール・ケネディ 著/鈴木主税 訳『大国の興亡』上・下(草思社)、小林康夫船曳建夫 編『知の技法』(東京大学出版会)、江本孟紀プロ野球を10倍楽しく見る方法』(KKベストセラーズ)、東京サザエさん学会 編『磯野家の謎』(飛鳥新社)などを取り上げています。また、「出版広告の証人たち」として、見城徹幻冬舎)、村崎和也(元有斐閣宣伝部)、紀田順一郎(評論家・作家)、渡邊隆男(二玄社会長)の各氏にインタビューしています。


出版の新聞広告についての本は、包括的なものとしては、尾崎秀樹・石川弘義『出版広告の歴史 1895年―1941年』(出版ニュース社、1989)がありますが、戦後については類書はありません。ただ、新聞広告の華ともいえる一面の「三段八割」広告については、森田誠吾編『三段八割秀作集』(精美堂、1972)があり、大いに参考にさせていただきました(この本の現物は〈聖智文庫〉さんの目録で手に入れました)。執筆にあたっては、とうこう・あいの社員およびOBに聞き取りを行なったり、当時の新聞や雑誌の記事、関係者の回想などを参照しました。『世界幻想文学大系』(国書刊行会)や『植草甚一スクラップ・ブック』(晶文社)のように、版元に所蔵されている広告スクラップを見せていただいたケースもあります。


本書は、とうこう・あいがクライアントとなる「企業出版」として企画されたものであり、会社の歴史など一部の記事は幻冬舎メディアコンサルティングの編集部が執筆しています。その意味で、100パーセントぼくの著書とは云い難い面もあるのですが、なるべく広く目配りするように心がけたつもりですし、読み物としてはいちおうのレベルに達しているのではと思います。というか、そう評価されると嬉しいです。また、通常の書籍と同じく書店に並ぶことでは同じですし、200ページで1429円+税という買いやすい定価になっています。タイトルと装丁がマーケティング系っぽいので、書店では出版関係の棚よりは、広告の棚に並んでいるようです(〈ジュンク堂〉新宿店ではそうでした)。これも、読者の層が限られている出版コーナーに置かれるより、広告本として扱われることで意外な売れ方をしてくれないかなー、などと皮算用しております。


この企画は、昨年8月に幻冬舎メディアコンサルティングのTさんから持ち込まれたものです。Tさんはぼくのブログの愛読者で、旬公の描くモクローくんのイラストをデスクトップに貼っているという奇特な女性です。熱心かつ有能な編集者で、原稿についても細かく読み込んでくれ、クライアントとのやり取りもほとんど一人で行なってくれました。なかなか資料がそろわず、原稿を書きあぐねた時にも、いろいろ励ましてくれました。感謝します。それと、『本とコンピュータ』の同僚で、現在はフリーで翻訳や編集をしている松井貴子さんには新聞や資料の探索など、めんどうな作業を引き受けていただきました。三人で大宅文庫に行き、大量のコピーを取ったことも、いまとなってはいい思い出です。