土居豊さん著「ハルキとハルヒ 村上春樹と涼宮ハルヒを解読する」刊行記念イベントレポ・筒井康隆さんのハルヒへの思いも紹介

映画「阪急電車」のロケを西宮北口駅で目撃&「生」の字復活 - きーぼー堂
映画「阪急電車」のロケを小林駅で目撃&門戸厄神駅の非実在広告とベンチ - きーぼー堂
西宮北口駅カリヨン広場に映画「阪急電車」ロケ地マップパネル&スヌーピーの居る駅 - きーぼー堂
映画「阪急電車」PRヘッドマーク&謎のカメラ電車 - きーぼー堂
5月5日に映画「阪急電車」がテレビ放映されたので、以前書いた記事を貼っておきます。



土居豊さんの「ハルキとハルヒ 村上春樹涼宮ハルヒを解読する」刊行記念トークイベントが、5月12日(土)19時30分から、ジュンク堂書店西宮店内カフェクローチェで開催されました。参加整理券の売れ行きはどれほどかと気になっていましたが、結構席は埋まっていました。


甲山タイガースさん、まさたかさん、CIPHERさん、みっくん、西宮流の方、神戸新聞社のNさんなど、知った顔がかなりw


参加者には、ちゃうけさん制作のハルヒ聖地巡礼マップ全4種類がランダムで配られました。


Ustream中継もされていて、その映像は以下で見る事が可能です。60分ほど。
http://www.ustream.tv/recorded/22528880


ハルヒに登場する喫茶店・珈琲屋ドリームの細海マスターと、巡礼マップの作者ちゃうけさんも開始30分後からゲストで登場。細海マスターからはドリームでの谷川流さんのエピソード、ちゃうけさんからはメロンクリームソーダのメニュー化への道のり、マップ作成の苦心談など、興味深いお話を伺えました。


そこもいずれ紹介はしますが、直に映像で見た方が面白いと思うので今回は省略します。



結構遅く来たのに、真正面に座る事が出来ました。右の花は「西宮流」からのものです。


「ハルキとハルヒ」はどう見ても教科書なデザインなのも当然で、出版社は岡山の大学教育出版、教科書を作っている会社。
大学教育出版の編集者の方も登場し、アカデミアソサイエティーシリーズの第5巻で、サブカルチャーを扱うのは小社として初めてで、当社のラインナップに一石を投じるものとして、大変有意義なお仕事をさせて頂いてありがとうございました、と語っていました。

土居さんの嫁の佐々木がw


以下土居さん単独での部分のまとめです。


・「ハルキとハルヒ」というタイトルは先に講演で使ったが、角川に許可を得ようと連絡した時。


角川書店の方が『ハルヒとハルキ』というタイトルを聞いて、『えっ!そのハルキというのはまさかあの・・・!』まさかと言うのは、春樹と言えば村上春樹じゃないですか今や。でも角川書店の中では『ハルキ』と言えばやっぱり違うんですよね(笑い起きる)違う春樹さんの事を思い浮かべてしまったらしくって、「だったら困るんですけど・・・」、と(笑)」


(最初に質問を振られたのは、面識のある、神戸夙川学院大学サブカルチャーを研究している原先生。)
原先生:1995年の阪神大震災を受けて、「地震のあとで」(1999)「アンダーグラウンド」(1997)とタイムラグがあるが、村上春樹原発事故を受けた作品を書くだろうか。

土居さん:村上春樹は、常に10年ぐらいのスパンで物事を書いている人。彼の原点は早稲田の全共闘運動にあり、それを書いたのは10年後で、本人はカフェバーが忙しかったと言っているが、恐らく自分の中でしっくりおさまるまでにそれだけかかったのだと思う。


神の子どもたちはみな踊る」という短編集で彼なりに阪神大震災を総括した物を書いているが、今回の3.11の影響を受けた作品を書くとしたら、10年とは言わないが結構間を開けると思う。


村上春樹は「極北」という小説の翻訳を最近したが、3.11の事をイメージして翻訳しているのではないか。


(次の方の質問)涼宮ハルヒシリーズのファンは非常に行動力の高い方が多いと思う。1992年のアウラの消失以降、虚構の世界に入り込んでそちらを現実化しようという考えが多いと思うが、涼宮ハルヒのファンの方でも聖地巡礼者だったり、こういったイベントでも、現実を自分の楽しめる方向に変えよう、現実を虚構化しようというのは、他の作品のファンには見られないと思うが、涼宮ハルヒシリーズのどういった点がそういう物を作り出しているのか。


土居さん:確かにハルヒファンは遠方からの舞台探訪者をはじめ行動力があるが、それがハルヒファンに限ったものなのかは分からない。


私がハルヒに接したのは、並んでいるファンの方には大変恥ずかしいのだけども、消失の映画が初めて。いきなり消失を見るのも無謀だが、たちまちハマってしまった。まるで自分の学生時代がそのまま描かれているような、何か物凄く感情移入出来る部分があった。私が谷川先生の年代に近い事もあり、何かノスタルジーをかき立てられるものがあった。


多くのファンが感じている事だと思うが、非常に幅広い年齢層であり、皆さんどこに思い入れを感じているかは、これからの研究課題かも知れない。


1Q84は、これが村上春樹の晩年(と言っては失礼だが、お年なので)の代表作になると思う。世の中にはアンチ村上春樹が仰山居て、「ただのラノベ」呼ばわりする人がいる。それは二つの点で間違っている。


1、読めば分かると思うが、1Q84というのは非常に重層的で、色々な次元の話が積み重なっているいわばミルフィーユ小説。その一部分を取り出して、綾波長門的な女の子が出て来てラノベやないけとか、ヒロインが必殺仕事人やないけとか一部分を見て批判するのでは無く無く全体を読んで判断して欲しい。


2、「あれはラノベやんけ」というのは、ラノベというのはしょうもない物だという前提に基づいている。ライトノベルは玉石混交だが、それは一般文芸でも同じ事で(芥川賞を取っても何だこれというのもあり)、下に見るのは間違っている。

                                                                                                                                  • -


最後に、「ハルキとハルヒ」で筒井さんの本に触れているので本を贈ったところ返事を頂き、涼宮ハルヒにも触れられていて興味深いもので、私信ではありますが、涼宮ハルヒを考える上でとても貴重な物だと思うので、という事で内容が紹介されました。

貴書 ご恵贈頂きありがとうございました。
涼宮ハルヒシリーズからは、多くの示唆を貰っております。
特に「消失」はそれまでの3作を見ていなければ、ハルヒとはどんな人物なのかが分からないという意味で、優れたメタフィクションです。
この作品に刺激されて、小生「ビアンカ・オーバースタディ」を書いています。ご好評頂ければ幸いです。
谷川氏の作品は何よりもSF的結構が完成していて素晴らしいものばかりです。

というものでした。


筒井さんが「『群像』(2007年7月号)の東浩紀との対談で、シリーズの中では『涼宮ハルヒの消失』が一番面白いと語っている」というのは聞いていたのですが、それは読めていません。
ビアンカ・オーバースタディ」の挿絵に筒井さんの希望でいとうのいぢさんを起用した事も、ハルヒから受けた影響が窺えますね。

気になる4話以降については「構想している。ビアンカの妹で、
ハルヒ』の朝比奈みくるのような可愛い女の子が登場するので、絶対楽しいはず」と期待を持たせた。

筒井康隆:「若い人を喜ばせたい」 最新作「ビアンカ・オーバースタディ」でサイン会(まんたんウェブ) (ウェブ魚拓)
・・・とも語っていますしw

トーク終了後は、その場でサイン会となりました。
「ハルキとハルヒ」は両者の共通点、阪神大震災が与えた両者への影響の考察などの他、「涼宮ハルヒの聖地西宮」についてと、短いですが高校時代の谷川さんを知る人の証言も掲載されていますよ。実は私は村上春樹作品は「レキシントンの幽霊」「トニー滝谷」「パン屋再襲撃」「氷男」辺りの短編しか読んだ事が無いです。



2012年8月下旬に西宮でハルヒに関する展示会を行います【関西新文化振興会】 - きーぼー堂
↑このイベントの打ち合わせのため、本日5月19日は関西新文化振興会の第5回全体会合に行って来ます。土居さんもメンバーです。


2ちゃんねるに拙著『ハルキとハルヒ』刊行記念イベントの報告がアップされてました! | 文芸ソムリエ・土居豊の「世の中テイスティング日乗」