恐慌 きょうこう crisis‖Krise[ドイツ]‖panic‖Panik[ドイツ]
資本主義的商品経済にしばしばくり返されてきた経済的な攪乱 (かくらん),麻痺 (まひ),破綻 (はたん) 状態を指す。原語に 2 系統あり,そのうち,クライシスはもともとは病気の危機的峠を意味し, パニックはギリシア神話の牧神パンの気まぐれのひきおこす狼狽 (ろうばい) を意味していた。それゆえ,パニックは資本主義経済の市場機構に生ずる急性的崩壊現象にあてはまり,クライシスはそれをも含めより構造的な経済危機に妥当する用語であって, 恐慌という訳語は,文脈によってその両方の事象を含みうる。典型的な姿においては,恐慌は好況から不況への転換を媒介する景気循環の一局面をなしていた。第 2 次大戦後 1960 年代にかけての持続的な経済成長のなかで,経済恐慌はすでに歴史的に過去の事象となったとひろく信じられていたのであるが, 73 年末以降の長期世界不況の進展に伴い,ふたたび恐慌の歴史と理論に大きな関心がよせられつつある。