デモクラシーの掛け声がさも勇ましく高潮する裏側で、人間世界の暗い業、望ましからぬ深淵も、密度を濃くしつつあった。 『読売新聞』の調査によれば、改元以来、日本に於ける離婚訴訟の件数は、年々増加するばかりとか。 大正四年時点では八百十三件を数えるばかりであったのが、 翌五年には九百五件に上昇し、 次の六年、九百五十一件にまで跳ねたなら、 七年、とうとう千百四十二件なり――と、四ケタの大台を突破して、 更に八年、千二百十八件を計上と、伸長にまるで翳りが見えぬ。 (タバコを吸う夏川静江) なお、一応附言しておくと、上はあくまで訴訟を経ねば別れ話が纏まらなかった事例のみの数であり、離婚そのものの総数は、…