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2015-04-03 アイリスとともに 2014年 房総の4年目後半

2014年

見ないまま今日の嵐に散る桜、母は知るや

アイリスの巻

             f:id:logo26:20150330172342j:image

「いつもの月命日」

早生の子の黒厨子をしづじづと蓮の始めて開く七月

油断して触れてしまひし罪科の輪 修正きかぬ変わらず痛む

父の死の十一日と息の生日 文月十四日無駄に拘る

意味不明の亡き子のくちぐせ「ふみふみ」に今も親しむ使ひてもみる

ただここに意識のあるを頼れども事実か知らず浄土も無からむ




「あの世とこの世、これから何が」

風に乗り泣き声聞こゆ遠き日の吾が子の涙ざんざと浴びたり

とりあえず歌に詠むべし優しさをあの世からまた貰ひたる日を

逆縁の挽歌を集め悲しみをばらまく行為吾が止むべきか

うたかたの体と存在真実を知らぬまま生きやつぱりと死ぬ

ただいまと孫得意げに叫びゐるドアの開くを信じて四歳

自らの経てきし悲しみ戸惑ひの孫に近づく兆しある憂さ

戦後より兆したるらむ自意識と教養そろへて老女歌人

原爆の目前なりし生日を冷えし部屋出でしばしねこじゃらし

電子機器トイレも家もまあ許す 四季を生きたし毛皮一枚に




「言葉に羽を」

万葉の恋心詠む ああ吾も人を恋ひたき素質のありき

こんなにも理路ないがしろ梅雨晴れの野に出で豆摘み鍋を拭き上ぐ

卒業す 心とやらの痛みなど梅雨の湿度にしつとり馴染み

調理には土器がよろしく 手仕事に染色 機織り 縫ひて 釦つく

ごまかしてそれはそれなどふざけをるわけにあらねど羽化するかとて

そこここの破滅の兆し勘違ひなれとぼんやり したり無視したり




「野の花の国へ」

二千十四年人に起こりし不吉さが我が身縛りて眠りもならず

降りわたる声ひぐらしと知らざりてこの世の外のごとき渓谷

平成の四半世紀を蝉時雨ふるこの街に泣くこと多かり

ひと叢の白粉花の赤揺れてコスモス一輪背伸びして白

遺影つれ浮かれ気分に旅の空向かひ風とて機体煽らる

朝五時の高空にある光源の満月朝日いづれにもあらじ ==??

樹々高く夏を悦ぶ野辺の花遠きアルプス非情に光れり

歌書のいふ実存象徴写実主義いづれにぞわが不能傾く

過去未来我慢の日々を与へらるる贖罪として受容せんとす




「落ち穂拾い」

重陽のあとの朝顔色褪めてにらの直線弾けむと白 ==いたるところニラの花

響めきて行軍のごと雨きたる地球の恵み食み尽くしたり

液晶のネットの向かう優し気に溢るることば空なるとても

からころと踊る秒針しぼられて閉ぢるほかなきハイビッカスの秋

鳥よりも速く飛びつつモダーンなる時計ANAにて買はむと焦る

限りある時計の文字の回る間に宇宙膨張 無を侵しゆく




「長月尽」

秋分の移ろふ気配わづかにてなほ豊かなる緑の国なり

湾岸の倉庫の並びの機能性究まりそびゆ人間倉庫

黒ズボン ホワイトシャツのマッチ棒動く夕べの窓煌々と

降り出して赤坂トンネル天井より生えし葉むらに雫光れり

白鷺も機体の白も日光を全てそのまま返す青空 

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風船葛とともに 2014年秋めくまで 21:20

南風激しい、心臓には悪いらしい、ペースメーカーある母

フウセンカズラの巻

                f:id:logo26:20150330172345j:image

皐月の思惟」

回りゆく地球の仕組み止むなくてたちまち暗し緑と茅花と

老い人の植ゑゐる何かたちまちに人参なすびモロコシも出づ

吾といふ竜巻襲来ダンゴムシの団居(まどゐ)の夢を壊してしまひぬ 

日に幾度すいとガラス戸よぎる影尾のみ見わけて猫の道なり

星なくて機体ぽつんと光る夜墨一色の蓋あるごとし

実際は空一杯に星々の燦然と照る粒子に満ちて

そんなことが明日起こるとは知らぬまま蟻も子供も時の往くまま

文明の滅びの跡を覆ふとふ蔦ハイウェイの壁に清けし

しげりたる蔦のみどり葉ながれ落ち新宿変容 固きがやはらに

隣席の男タブレットを急かせゐてときに見やりぬ皐月の緑を

予報士の回す地球に都市と海 砂漠と森の静かならざる

移り来て三年の庭についに来ぬプリマドンナよもぢずり一花

待たるるを知りしやもぢずり不可思議の旅経たるらむこの庭に下る

歌会に寄り合ふ頭グレーのみ文化支へてややに気取れる

吾もまた気取れるひとり気合入れカットとマニュキアローズ香らす






「欧州旅行」

長病みの夫には死出の旅なるか追ひ立てられて運命に遭はむ

相剋の已まざる吾とこのをのこ ここに至れば別れえざらむ

青空に水平線なす雲の彩キカイの記憶に変幻委ぬ

シベリアより日本海超え山の国 くねりて細かき畑の色の差





「白い本」

もの書くと少女ながらに定めたり次第に上達するを信じて

わら半紙綴じて表紙に布を貼り言の葉書きし最初の詩集

母の語る里芋甘藷栗すべて蒸篭にふかして秋の子どもら

命尽き別るる刻限「惜しまるる人たれ」と聞きて六十年を経つ





祥月命日15年」

巡り来る同じ問ひかけ 隔絶のひと日如何にぞ過ごせしものか

赤銅の皆既月食 けふの心 永き交信ふと終へむとす




「あてどなき言葉」

パン屑をたれか落とせしこの床に 拾ひて思ふヘンゼルなるらむ

垂れてくる髪を左右に止めたれば麗子像のやうになりたる額

意味不明のつちのこ空に見つけたり秋空いつばい伸びて疑問符

侵入され遠慮なく打つ蟻や蚊を 吾も保身に走る大雨





「今年の秋」

ワイン飲むアセトアルデヒドに毒されて 葡萄の粒に満ちる生命を

咲きかけの百合とつぼみのある一本買はば数日吾が幸ならむ

B B C 天気予報に日本が日々話題なり台風禍続く

 

ジャスミンにひしと絡める朝顔をはずす秋日の過ぎゆく香り





神無月過ぐ」

神無月 神の居ぬ間の日の速さ不満はあれど退屈はせず 

ひとつきは孫悟空の乗る雲なるやヒッチハイクしていつそ暦買ふ

露草とヘブンリーブルーは兄弟か 空の涯の色濃きと薄きと





「おもわず苦笑」

鈴蘭のオーデコロンなどよからむか銀色斑入りの髪伸ばさむと

戦後より萌したるらむ自意識と教養そろへて老女歌人

五ヶ月児鼻に小さき皺寄せて寝返り成功たまらぬ笑ひ

コーヒーを知り初めしころ眩暈するほど強く甘くて一目惚れせし

和やかにニアミス避けて尊厳死がラストスパート夫婦の話題

あの頃に「お祭りマンボ」流行りたるわけ気になれどカラオケ中なり





「まじめに人生」

どれほどの人の知るらむ「人も蟻もすべて星の子」輪廻のさなか

実篤の言葉浮かべり美しく並ぶ瓦に雨の光りて ==「仲良きは美しきかな」

太極拳お腹の前の空間に両腕上下に自(じ)が魂抱ふ 

語りかけるマルセリーノに主の応へ給ふを書きぬ初めての詩に ==スペイン映画「汚れなきいたずら」

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牡丹とともに 2014年行ったり来たり 21:27

すぐに忘れる母は、わたしを待っているだろうか

牡丹の巻

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「初ビートルズ1」

吾を駆るリズムとサウンドしたたれる緑の道なりファウストもどき

眼に緑初ビートルズつむじ風倦みし心もこの世を愛す

ビル群の並ぶ空の端CDにポールかレノンか浴びて運ばる

笛吹市の古き民宿夢のごと湯より戻れば葡萄冷えゐき

ゼブラゾーンの真上に濃淡分岐あり左右の空より陽と雨と落つ

名にし負ふ泰山木の花色の匂ひてをらむ燕飛び交ふ

香り降る木下の道を酔ふて過ぐたれを待ちてやかく焔(ほむら)立つ 

キャンパスを巡る花房薫香のニセアカシアといふはまことか

呼ばれたる心地に見つく朝顔の青き目見(まみ)なり見つめ合ひたり

南瓜の葉陰の家居声そろへ雀のうから屋根を楽しむ



「初ビートルズ2」

ずらずらと懊悩這ひ出でホラーめくスマホ忘れは制御失ふ

氷上をすべるかのバスやすやすと時空わたりて悩み変わらず

義妹らと袂分かたん頼りたる弟(ひと)の死にたる深みを見詰む

花を観よ桃はいかがと旅立ちを促す文言読みてうなだる

見下ろせる蟻のマンション隙間なる路の細くて驟雨に翳る

増設の首都高の道断たれゐてフラッシュバック阪神瓦解図

東京の地下を降りゆくほどにG増せばや思ひ哲学的に

月代(つきしろ)の昨夜はちらりと覗きしに熱海に重き海と空なり

五月雨に空なく海なくあを色を恋ふるまなこに緑山迫る

ずしずしと雨戸叩かれこもり居て『砂の女』めき梅雨の始まる




「初ビートルズ3」

百年はもつべき家を重機もてはや轟かす悲鳴エントロピー

思春期の扉ひらけば猪突なり恋のシステム張り巡らされゐる

あんなにも支配されゐて恋まみれ早乙女花にも生の策略 ==とは「へくそかずら」

奔りたり知らざるままに生殖の一途のあとの寂しくはなし

侮れぬ激辛ラーメン失へる味覚もどりて鬱より救はる

ゆつくりと動けど垂るる汗の塩ひと舐め旨きわが太極拳

省くべき炭水化物摂るべきは豆腐と野菜一キロ減量

コーヒーも敵はぬ睡魔に沈みつつふとも病の水井さん思ふ

黒道さんダークに詠ふ人なれど短歌サイトの指導穏しき

一本の強き念ある歌となせ雛の口腔燃えたつを見よ

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鬼灯とともに 2014年 迷い道坂道 21:32

皺だらけの顔に、突然瞳が光るときある

ほおずきの巻

                  f:id:logo26:20150330172347j:image

「今年のTokyo」

どこへ行く地震ある島逃れむにテロや疫病難民溢る

終活」の一なる遺言固まれるいつでも来いと旅のプランを

タワーのみ都会の墨絵に紅を差すお台場まわる秋雨一日

金あれば増やさむとてかビルが建つガラス透きゐて非在の楼閣

渋谷の夕きらめく雨に影黒き人らいづこへ 吾に宛てあり ==次男のライブへ

くつきりと水平線なす雲の彩メモリの限りに変幻捉へむ

腰ともに右足一歩前に出て衆生救ふと十一面観音





アイスマン居たるところ 1」

正午より西へ西へと飛び行きてドイツに至るまで昼の空

深夜より飛び立つならば夜の側スーパームーンに訊ねたきこと

果たせざりし約束重く子の遺影傍へにおけど空のいづこに

映さるるアイスマン独りクレバスに果てたる背なの悲しく小さき

五千年のアイスマンなれば学者らの手袋白く解凍しゆく

互ひにもオオカミらとも戦ひし指の何かをなほ掴みゐる

アルプスの峰と背骨の幻に氷河にありしをデジタル化さる

命かけ出でし旅なり抑へきれぬ笑顔にて夫ミュンヘンに立つ

タクシーの運転手にも饒舌なる夫をこのまま置きてゆかむか

無口なるは悪しきふるまひ弾丸のごとく若きら子音を放つ




アイスマン居たるところ 2」

呼び名にてひるまず「ミリー」と呼ぶ吾の変化いぶかし歳かと可笑し

レンタカー左ハンドル十年ぶりアウトバーンを日々生き延びて

訛りあるドイツ語多きサービス業はだ色雑多にわれもその一

懐かしといふべき街に日常の憂れひ忍び来彼は彼なり

嫁といふ言葉あらぬに諍ひし義母の香のして柔軟剤は

広島の泥流ロビーを圧したりホテルの客ら動きを止めぬ

樹々喬き花野の国なる七十年「イスラム国」とふ闇の口開く

古稀めざし欧州ブランド靴鞄こころ強くとコートもあがなふ

それぞれの願ひ叶えて離陸すもモスクワ上空Uターンとなる

見逃さず不運来たるか固唾のむやがて息のむ高級ホテルへ





アイスマン居たるところ 3」

空港は透明なる城くるま椅子に回廊めぐりて夫すべりゆく

窓ぎはの席あり難し貼りつきて小窓に写す空またそらを

硝子体に棲みつく飛蚊日の差せる視界に元気つい遊びゐる

夕空の上弦の月高きまま窓の後ろへみる間に移動す 

大気中を自転プラスの速さなる吾らに月は置きさらる

雲あらぬ真闇を凝視びつしりと星ありたるはまぼろしなるや

雲井より村落の灯の遠々に見られゐるとは夢思ふまじ

明時(あかとき)の心細さよ三角の白光ひとつ翼の先に

作られたる機内の夜に倦みて窓少し開けば射抜く神の矢

海面へ滑り込むかの危ふさを航空母艦羽田と呼ばむ

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柿の実とともに 2014年 ついに魔女の一打に襲われるまで 21:40

私が動けなくなったと聞いて、母の気力も弱ったのか

柿の実の巻

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「暗い歌」

カーテンの向かうは雲の世界にて時流れつつ深閑とせり

どうしやう君との関係この先の難聴の日々生きむと母は

死ぬ前の最後の旅と名づけたき明日よりの刻道しるべ無し

贖罪も悔ひも涙も終はらねど落雷ひとつなづきを打てよ

また温き今年の立冬 同期会写真に映るここまでの幸

終の家「海抜2米」危険なり線路向かうの借家にせましを

空を掃くパンパスグラスさびれたる産業パークの野分とあそぶ





履歴書

鳴り響く汽笛に人らかけつけて幼き頃にも「人身事故」ありき

青森に着きたる車窓に雪ありて新品コートにはしゃぎてわれら

熊笹をふちどる霜のま白くて福知山音頭調べの優し

生け垣のくちなし薫る霧ふかき盆地に少女病弱なりき

広島の七つの河をまたぐ虹ともに見たる人疾うに身罷る


待ち合せ 駅より前に うつかりと 

降りてしまひし 新妻も 

神戸駅にて 降りたる夫も 会ひたさの 

絆信じて 歩み来る

架線下なる 路の雑踏 左右より 

はたして出会ふ 初の子を 

身籠りしころ ==長歌もどき


大阿蘇の煙と白川流れゆくわが愛憐の城下町なり

ミュンヘンは来るも去るもトンネルをくぐりまた入る暗渠なりけり

平野から箕面の山へ至るまで三号線ぞひ民家ひしめく

区別無き小都市 吹田 池田 箕面 ほどほど麗し阪急線もある

出しのきく阪急そばの甘み好き白ネギも少し増やしてほしき

銀波なす内房線のススキ穂の消ゆる蘇我駅アナウンス忙し






「こぼれ種」

松男的短歌の「私」青虫や木や島なみの事象の一なり ==渡辺松男の詠い方

肌色の白と黒との混合のパレットを見きミュンヘン雑踏

男女問はず美形を撮るか描くかして壁に掲げむ花の絵のごと

秋闌けて小窓をたたく夜半の風エフ分の一に訪はれゐる

くろぐろとかぐはしき畠 目も舌も耕すも幸あした豊穣

朝顔にまみれて我は山男地を噛む蔓を渾身ひき剥ぐ





ぎっくり腰になる直前、神ならぬ身の」

子の妻に煙たがられて我からはメールもせぬが彼女もくれず

霜月の菊よろばひて頼みなるゼラニューム咲く口紅色に

彼も吾もこの惑星の昏きより時の筏に滝へと向かふ

この青き球のめぐりの莫大のすべて致死なる眼を剥く寂寥

その先の曲がりて見えぬ明日の日へ引きずられ往く少し好奇心





「晩年来ると」

老年の次の晩年唐突に出会ひ頭の腰痛一打

病み疲れ夜の底に聞くエンジンの唸りて一台ややしてバイク

眠れざる痛みの極月昏々とそうか冬至へ向かふ暗さだ

午後二時のはやも傾く陽の中に短き眠り朔旦冬至





「競合」

沖縄の知性策略優れたる緑の生物繁茂する森 ==ゆっくりと「歩く」大木

目に見える世界の屋台に不思議にも数字の骨組み言語もあるらし

モンステラ葉を裂きぬつと押し寄せて日光争奪小窓のジャングル

看護師先端技術こなせるを要求されて腕メモだらけ




「歳晩」

からからの枯葉保てる橡の森に照れる夕つ日茶色を生かす

朝夕に交はすメールの育みし同い年なり老いて得し友

易からぬ時を刻する肌えにも若き友見ゆ光るまなこに

歳晩の静寂ゆるがすエンジンの響き過去より悲しみ連れ来

ひたひたとどんづまりまで行き暮れて落葉の山道ひんやり下る

為すべきを子らは黙して為すならむせめて渾身わが生の句点

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2015-04-01 柚子とともに 2014年房総に3年過ぎて

2014年

92歳の母 回復して普通食

柚子の巻

        f:id:logo26:20150330172400j:image

「振り返る」

母と居る正月吾に娘あり 銀髪整へ美しくする

吾が想ひなにかが世とはズレがちを「おっちょこちょい」と父の呼びたる

年新た父娘(おやこ)並びて「春の海」奏せし図あり 振り袖延べて

野の花の絵のくすみたる薩摩焼 祖父の還暦祝ひの湯呑

江戸城の絵図CGに興されて栄華の極み火災無縁に ==江戸城は火災で消失したとか



「末裔」

四十二の誕生日まで母吾を遠く歩ます虚数の軸に ==1月生まれの子の年齢を数える

寒の日の時止まるほどしんと晴れ 無事なるはずの子が思はるる

護られてまた護りたし子の一生 邪魔せぬほどに託したき老い

楽しかったと思い出話 ツイッターに心わが読む次男の人生




「世の常の」

新年の六日のうちに人の世に積もるくさぐさニュースは伝ふ

可能性いくつありても出逢ひたる一瞬までを無知のままなり

けふの日をともかく生きたる証とし斜線一本暦を進む

睦月尽 少し事故って破壊せし柵はともかく気のゆるみゐき ==典型的なオートマチック事故

忘れたり計りたりしてくねくねの血圧線の記録も五冊

執着の気持ちは事実だろうけど「愛」だなんてそれはまた別




「テレビの世界に」

満月が夜警のごとく仕事終へジオラマ地球親方が出る

モルディブの珊瑚の海に花びらの魚ら気ままに楽しげに見ゆ

インド洋に造化の妙あり 魚らの永久に遊べよ明日を知らず

断崖の無数の巣より大小の鳥急降下ししゃもの群へ

産卵せしししゃも 砂地に累々と身は食まれゐる白頭鷲に




「冬を咲くもの」

ミニ薔薇の足もと飾る白すみれ 冬雨もしばし一番に咲け

ランタナのとりどりの色負けん気の香りよ黒き粒子は固し

庇からたわわに白き冬の花 枯れ葉をとりて見栄えよくする ==冬庭のおなじみ




「春に拘る」

初春と書きて 寒の入りとなるゆえ 寒中見舞ひ 雪なれば出す

春のみの国なきものか 詩を書かばプールと雪と秋麗恋はむ

人間の見果てぬ夢よ自足とふ春の便りをいつまでも待つ

今更に夢といふものあらねども何故かあくせくせずにいられず

 ==上の歌を推敲した結果




「猫の道」

猫道を行き交ふ速度かれらにも生のなかなかややこしきらし

心配は今の空腹 明日の日を思わぬところ猫ふとつぱら

明日の事思い煩ひ耐えられぬ人の不安の頭でっかち

日に数度すいとガラスをよぎるものここは猫族専用の道

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冬の実とともに 2014年立春と大雪 15:52

体も脳も衰えるものだ 老いの道

冬の実の巻

        

               f:id:logo26:20150330172352j:image 

立春

春立つや寒波傾(なだ)るる西空のもやの帳(とばり)の月とふ裂き傷

隣屋に実る黄のもの 冬鳥の活計(たつき)支ふる意図かは知らず

まばらなる箏曲の会 究めたる人の爪音耳に飛びこむ

何思ふ猫族なるや一日を忙しそうに暇そうに居る




豪雪警報」

半島を小湊線に乗りてゆく吾を吾がみる雪の空より

白に白 梅を夢見て横切れる房総半島ディーゼル一両

吹きつのる「暴雪」一路 駅ごとに雪原深し遂に停まりぬ

果敢にも房総半島突き出せるその薄さもて太平洋へと

百羽ものスズメの如きが雪の田に下りて集ふを車窓に見て過ぐ




「入院付き添い」

鶴舞にそびゆる病院 低岡(ひくおか)の稜線遠く四方(よも)囲みたり ==つるまい

鷲らしき形が渡る青き空久しく雪に覆われて居し

田の雪が氷となりて夕つ日に撫でらるるごと静けく光る

雪ほとび小湊沿線 田も畑も水と氷のあはひ鈍色(にびいろ)

竹群は斜面に群るる家止(とど)め養老川を守るがに立つ 




「平成の四半世紀」

使ひ残す父のノートの時たちて夫の闘病記録となりたり

亡き父のノートに残る空白にひ孫友理のまるまるが続く

生み捨てしやうなる別れ サボテンのごとく自然は汝れを育てし

かりそめの縁(えにし)となりぬ 遺伝子のプールに夫婦の撚り糸消ゆらん




「如月半ば」

和菓子屋に春はきたれり臘梅の香りの暖簾くぐりて入る

美しき靴のみ買ひて痛む足人魚姫たち日々に苦しむ

「おめでとう」「御馳走さま」と老夫婦久方ぶりに労り合ふらし

こたつ無き部屋にがさごそ歌や詩を綴りて 来るや来ざるや待つ春




「仕組み」

聳え立つ都庁の窓の複雑に城郭めきてガラスに対峙す ==いつまでも未完の歌です

予報士は地球を回す 都市と森 砂漠と海の静かならざるを

巡る季の花咲きかつ散る 静寂にほど遠くして一生過ぐらむ

シェールガスなど無き国に津波あり「クリーンエネルギー」の闇人知に余る




「春の手触り」

音なくて雨降りゐたり 静かにも春を見上げて庭辺の千草

春の色僅かのみ見てサボテンが無沙汰して居し母へのみやげ

酔ひたしも美酒とふものに 半月の翳りて弥生落ちゆく宵は

ヴィオロンの弓と化したる春一番 ケープルの弦(げん)奏でて過ぎぬ

ぽつぽつと新芽の赤きバラのつる「こっちへおいで」とわがまま正す




「老いにも春」

ゆるゆると背中曲がりて歩む影いくたりも見る窓辺の路地に

羽ばたきて遂に消えたる子をはじめ 母の理解を越えし息子ら

哀惜にあらぬ感動の涙なる 君の短き一生のすべて

爪のみが最後にいまだ美しとせめてエナメル光らせてみる




「動物の生き」

風にのり弧を描く影 鳶か鷲はばたきもせぬ大き眼に

ポメラニアンのひもつき散歩の影に似て茶色の猫の独立独歩

人により生まれしめはた死なしめて馬塚ありて牛は喰はれぬ

生物を噛むための歯も美のひとつ ヨン様人気のなかなかをかし

剥き出して脅すためとも笑顔とも 歯列綺羅めくアニメのヒーロー

白き歯の笑顔の魅力に抗し問ふ 剥き出せる歯のそもそもの意味




「春来る」

にぎやかに街灯満月並みて照る 春の吾が庭猫も踊らむ

春衣パンプスの音軽やかにいちやうの木下新芽を見上ぐ

やはらかき雨の夜明けて春の陽よ 畑も小鳥もそはそはとする

渋滞のバス内自力出せぬゆえひとつ息して歌帳をとりだす

桜色舞ひし歌会去年は夢 白の早咲き雨に濡れゐる ==大島桜

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侘助とともに 2014年残骸の山築き続ける 16:03

半刻の散歩、ひさしぶりの天然

侘助の巻

            f:id:logo26:20150330172359j:image

「春への愁い ーー 赤の波長」

仕方なしかく夕暮れて雪原に赤の波長を受けて立つ

春雨の庭の千草をあすは摘むセシウム少々含まむとても

入選の歌を読み終ふきざはしを鬱二日分転がり落ち来

共感とふ思考のパターンのレール上の小石のごとくはじかるる歌

五割がた成し遂げたることある吾と思ひ返して養命酒飲む

孤独死の義母のセーター吾の着て諍ひとほく温しと思ふ

世の常の心配しても祈りても確かなること神の沈黙

「愉しまむ歳を忘れてこの春を」たれの言葉か頭に光る

水仙辛夷に白き光満ついくつにならば飽きるやあらむ

けふの日をともかく生きたる証しとし斜線一本暦を進む




(真実を未来に恃む)

天才らの脳とビッグバン明かす日に間に合はざりて死ぬに死ねざる

大気層をまとひ疾走する地球 ダークマターと重力の加護

存在の真実探る吾が視界 おぼろにぞ見ゆ社会も情も

囀りの外の面に満つる朝風呂の吾がほどけゐる鳥かごの中

累々と鍋にじゃがいも死体めくベジタリアンなら霞喰ふべし

死に方が気になる古希が目の前に「やっと死ねる」と待つ境地待つ

軽薄に過ごしし女真実を追ふ者となる子の去りてより




(命断たれて)

青年の逝けば涙の苦さより歌の雫とこぼれしそもそも 

自がみちを子の往く知らず「太極拳いつか見てね」とわが始めたる

頑張ると思ふにあらず約束の二筋の道おのづと辿る

エストロゲン減りて惹かるる太極拳たゆとふ武術動く禅なり

止めどなき老いの変容呆れつつ抱く心の核十余年

生存せる子が発信する「さあ寝よ」と時刻同じに日本にい寝て

幾夜さか悪夢あまたを見たること夜具ひきかぶる間際なだれ来




(恋路)

灰色のいや増す空の下なれや恋は煌めく最強の武器

ため息とハートの瞳 もし歌も溢れ来るなら恋とふ病

哀れなるほど限りなく人恋ひの詩の生まるるよ生命の根より

幸せを信じゐたるらむ若き日の夫の呉れたるシネラリア青

恋ふること本性ならめ さはあれど恋の文化に愛とふ偽り

直情に自他を巻き込む性愛の愛にあらねば結べぬ絆

似て非なる恋と愛にも幾ばくの重なり合へる恩寵ありしや

諦めし片恋ひの数 散じたる夢 多けれど惜しまぬ記憶




早春へ)

地を嚼んでゐる昼顔の長き蔓 引き剥がしては太く束ぬる

きうり草群れ咲く見れば早春のほんに小さき白き花なり

お馴染みの庭のものたち顔出すも後生の花の玉芽見えざる ==ハイビスカス

鳥たちの歌ひつ千切りつ まつはれる大島桜 地にも散り咲く 

儚しと思へど五弁の白き花拾ひて集む その柄に紅あり

風ありて揃ひてしなふ浅緑 川端柳しばし右向き

河口へと流るる花びら 一刻ののちまた汐に押し戻さるる

するかせぬ春雨の音窓辺なる薔薇若芽より雫落ちんとす

東京の土地に棲み分く人と樹々 自然係の給金如何に




(逡巡)

歌会に半日座せば駅よりは徒歩二千歩に夕闇帰る

切り岸に追ひつめられし刻を耐えへらへら生くるこれは剛さか

群青の春夜の月に見られゐる熟年夫婦互ひにうんざり

もし吾の勝ち残る日は吠ゆるべし孤独と自由なにより自由

もし自由得たるに八十路過ぎならば秋風にただ浚(さら)はれてゆく

もし今し自由なるとせよ 沈思せばわが無意味さに溺れ死ぬらむ

「ただ今の寸暇を磨くべし」などと御託無用の自由を怖る

今のみの時の砂なり こぼれゆく指の随(まにま)になづき倦むまで

虚ろなるどこも痛まぬ五感もてぐいと出でゆく春日の中へ





「春に浮かれて」

うんうんと地よりわきたつ緑児を雨とお日さま交互にあやす

やはらかき雨の夜明けて春の陽よ畠も鳥もそはそはとせり

九分咲きの桜トンネルたださくら歌なせぬ身の木瓜を盗みぬ ==花泥棒

七階ゆ桜や緑みはるかす 靄ひてつづく丘陵までを

青空に花珠(はなだま)延べてゐし桜 けふ楼閣ゆ探す雨中

ヒヨ一羽気弱そうなる眼の動き八つ手の小さき実がランチなり

更衣の季 出し抜かれては藤色や若緑なるうすもの買はず

皐月へと向かふ陽のもとどう見てもTokyoのビル色褪せてゐる

___

菜の花とともに 2014年 チャレンジばかりはする 16:11

春の野の花を摘む、すぐにしおれる

菜の花の巻

           f:id:logo26:20150330172353j:image

「文句の多し」

この不快胃酸逆流ならむとて半身起こしてい寝ればどつぼ

斜めより世を眺めては歌でなしと失笑さるる変人にてそろ

すり減りし三年来のスニーカーまだ履けるかもと思ひてみつき

祖母譲り外反母趾遺伝子が変形させたるわが赤き靴

不満顔の母を説得買はせたる安物家電わが長く使ふ ==母は施設に

店先に「勉強して」と値切りゐし母なりレジも消費税もなく

葛西辺り不在の人に胸元を強く圧さるる消えるといふ事 ==弟との死別

後の世に平和あれども美醜あり君関わらぬことばかりなり ==子との死別




「かみさまに見捨てられて」

苧環の虫のふんほどの種送る 再婚したる友の身の上

かはいさうでたまらぬ胸に「ノオ」とのみ あのこあんまり自立しすぎて

果敢なしや子供なりし時過ぎ行きて天眼鏡で見る子の写真

取り返しつかぬことのみ 緑 赤 橙色も点灯する部屋

いつか来る雨だれこだれ 柿の木を柿薮にする方法知りぬ

きりくりと乾ける音に蠢きて働き通し外付けHD

オルゴール思はす「ピン」を聞くけふも 安心元気アップル老女 ==愛機?はマッキントッシュ

タイムマシン過去の書き換え可能とす 再度の労苦の当ては無けれど ==マックの機能の一つ

                     

ドラキュラに血を抜かれつつけふも吾コンビニの客それだけの者

若き日のあまりの遠さ あちこちに小さき梗塞脳に起こしき

三番目下から二番目どちらなる違反作業の左脳に疲労

一度しか使はぬ回路すぐへたる名無し草など神にはあらね

夜一時睡魔を待ちてやれやれと夢も見ぬらし海馬の混乱

必須なる老眼鏡の輪郭の中に暮らして躓く外界

後朝の猫の恋路の邪魔をしてドンタク無心無欲を欲す

トランポリン飛んでも撥ねても逆縁を家事の流れをシミュレーション

「何処にて踏み外したる」大失態「気落とす勿れ敵失もある」

みな好きと思ふこの世の閉塞の中間隙に白き自由

泡宇宙千変万化にクロアチアをかしや粘菌阿弥陀籤など

憎むもの富の取り合ひ 無為でゐるしかなき吾の脳をあはれ

けふ吾の言葉の泉涸れはてて南東よりの風湿り初む

経験則男を死なす女吾 雨くる前に枯れ葉を袋に

「あたしはね男をだめにするらしい」赤実と白き花もつ十両

悲しがる理由も忘れセレナーデひとふし聞きてリンパ正さる

柿若葉を切るとふ無惨十年の修練何も産まぬも無念

今回もわざわざどうもと断られ素人作品あまた仕舞へる

人気無く遂にここまできたからは汚き手もても販路獲得

そのあげく踏み入らんとするけもの道「おう」と応へて手探りの闇

星印自ら付けしを貧粗なる歌と嘲はれ笑ひて帰る

定型は残すとしても急流のごろごろ石を転がし泳ぐ

薬害か日々増す眠気 このままに死の世界まで崩れゆくかに

何かしらがつんと頭に当たりたる 尖るな吾よ鋭くなくてよし

まあいいか眠たい寝たい足だるい体が重い頭ぼんやり

足元に小花群れいゐて空元気 さんざ笑ひてふと寂しけり

あつさりと諦めはせじ 吸う息を前頭葉に流せば涼し

パソコンの能力過信 無害にて小さく清らに人形でも欲し

一生の最初で最後 願はくばかつとなりても静まり諦む

コスモスよ君はどうする 老い以外苦になるもなく過ぎ去る五月

夜を込めて海鳴りの音 体内へ耳傾けて蝸牛も巻貝

戸外より不可解の音 出産後女の脳は母に変わるよ

心配を押し退けむとて念じゐる 空木卯の花豆腐におから

果物を満たせる夏日冷蔵庫 消化と居眠り同時に起こる

冷や冷やとせる心もて 柿若葉薔薇の青葉の隠れ家にゐる

いつもならあり得ぬことを諾ひて瞬時驚くしかし忘るる

二日間失意に慣れて 鬱の胸ぬくもりきたりつまんないことさ

人はみな壊れてしまうかみさまに見捨てられたる不完全物

死ぬまでを生きねばならぬ 赤き実となる片隅の小花にもなれず

長詩でも物したる気に おのれへの好奇心なりかぶきものめく

挽歌より始めたる歌かくなりて仕方なしともあな面白し

改行と同時に無より現るる数字が吾のおゐどを叩く ==番号付き機能を用いたら

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桜とともに 2014年終活が心を占める 16:19

運の良い母だと思ったり可哀想だったり

桜の巻

              f:id:logo26:20150330172354j:image

「依然として破れ鍋に綴じ蓋」

朝夕の不満だらけが不満にて自省すれどもぬるりとどぜう

かく妻に疎まるるわけ何故作る吾を頼る夫天涯孤独なり

吾が不満と隷属のわけ分析す地霊のごときマグマ危ふし

夫の弱みついに握りて牛耳ればどつちもどつち的夫婦なり

本心を言へと言はれてパニックに斜め左に視線さまよふ ==嘘をつく時左を見るとか

         

よくもまあ肌に若さの欠片なく夜明けひとつに皺深くなる

見慣れたる吾が顔に似て見知らねどトゥルーミラーに秘密のお喋り

 ==スマホアプリ:非鏡像を見せてくれる

          

肌と肉のすべてにありし性感帯還暦辺りの脳サボタージュ





「たおやめぶり」

涼やかに立夏となりて莢豌豆花びら白きを付けて茹でたり

柿若葉の向かうを行き来せる猫の一心不乱わが無聊にて

奈良あたりひとり旅せば歌に溺れ言葉となみだ胸を割くらむ

たれの絵の手弱女に似む 白薔薇五月雨に吾が清けく切りぬ ==夢二など

楚々などと言はぬつもりに苧環のうつむく色を四角に保存

サクと切る紫紺の茄子の肌の色 緑がかれる白さと思ふ

我が煮炊きおざなりなれど愛づるもの地より生れたるなべての緑




「嬉し哀し」

わがうからみな肌白く丈高し形質ともに凌がれ嬉しむ

四歳となれる孫よりそそがるる愛の心の大なり純なり

愛すれば純真なる愛返しくるる幼も犬も哀し痛まし

四十年代に未来学あり現実となりし西紀の未来にロボット

若人に無沙汰を詫びていまさらに悔いと面影この八の日に

汝れ消えて命の限り泣き喚く声の限りに共に叫ばむ

君にとり誰に相談したとてもどん詰まりなるそれが変はらぬ

君とてもできる限りはいそしめどそもこの道がT字路とはね

T字路を左折か右折あへてせず己が路より美しきはなし




「ただに光陰」

肌の色の黒から白へ変はるなど意外に速し三世代もせば

壮年でおさらばも良き老残の階段の前男盛りに

柿若葉の光るを喰ふ虫をらぬらし薔薇の新芽に黒点動く

季のものの描かれ美(は)しきカレンダー月々めくりポカンと終り

今生の別れなるかと去り難し半世紀ぶり友と出逢ひて ==たとえば同窓会で

夢になほ吾が求めゐる家なにぞ 仮の宿りをまた後にして

久しぶりの夢にてもなほ探しゐるその家を吾が知らぬかも知れず




「自然は歓びを」

パソコンを開きて度に息をのむ手塩にかけし木香薔薇 白

遮音壁に房短くてたたわなる山藤を見き ひと日を夢む

更衣の季また出し抜かれ藤色や若緑なる薄もの買はず

どつと咲き花弁どうと散り零し今はお澄まし桜の若葉

雷ありて五月の蒼を薄墨の美しき濃淡たちまち覆う

列島を覆ふ緑は十八歳さかりの色に吾が多幸感

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鈴蘭とともに 2014年 たくさん詠った、のは確か 16:33

習字や絵をかきたいのに出来ないと母は嘆く

鈴蘭の巻

                   f:id:logo26:20150330172356j:image

「都会から鄙への帰路 ーー 首都高い往く」

東京の地下の深きにインフラの秘密の迷路作られてをり

ガックリと長い黒髪垂らしたる顔なきものの座しゐる車内

都へと集まる栄華 揺れながら名も無きものら希望にすがる

アイフォンベンツの看板 レース編みのビルさへありて大樹をみおろす

コンクリに落暉眩しきレインボーブリッジいつか地下へといざなふ

歌会の帰路の次元は観覧車乗るか見るのか老いの好奇か

海底にトンネル掘るとふ力技たれかのサウンド享受して座す

旗雲が風速七メートルになびく空ゆうべ騒立つ灰青の海

木更津に入るや緩む美意識の家居低くて青田の中に

都にはあらぬ緑の集合体 天地の生気 形を得たり

髪にひげ 坊主頭も柔らかに愛でゐる緑野 たなごころにて

無事に二人産まれて後に五たりの水子の弟妹白紙のごとく

ひたすらにわが焦れゆく森の樹の香ぞ著るからむ伊勢のあたりは

その赤き十七夜月おさらばの挨拶のごと地球を見下ろす

コンビニのおのれ励ますかに高き声受け吾のくぐもれるかな




「六月の花」

雨粒を並べし茎の延びる先 ジャスミン咲けり白嬉しげに

梅雨のころ赤きつぼみのジャスミンの命の咲けばはかなく白し

紫のコスモスならずニゲラなり実から種生るさまゐとも変 ==クロタネソウ

馴染みなる野草出で来ずコスモスに葉の似たる花 今夏の客人

苧環のはりがねの茎ビンと揺れ花殻さはに種撥ね飛ばす

雨となる今宵を待ちて向日葵のたね深く植ゆたつぷり降れよ




「六月の顔」

わが顔のゲジゲジ眉を阿修羅像お持ちのやうに見奉るも

「イケてる」のつもりでゐたる吾の聞く悪しき母とぞ子の記憶には

侮れぬ激辛ラーメン 救はれし鬱に味覚を失へる寡婦

宿世より因縁あるかにこの下司を護りたるつけ地獄にて払ふ

八の字に眉を集むる夫の癖「普通の顔で!」と敵取るなり




「記憶の街々」

笛吹市の古き民宿夢のごと 湯よりもどれば葡萄冷え居き

広大なる市原市にもピンポンと鳴りて全域スモッグ警報

薩摩にも祇園祭のコンチキチ口開けて見き戦後の子らの

みちのくへ独り旅せばむね割かれ溺るるごとく歌とならまし

三角地に可愛く畝の立ててあり葱の出づるやひとり居なるや




「月を思う」

五月尽 西空低く眉月のつの字に傾ぐ「あらば明日まで」

宵ごとに三日月高くなりゆきて夏至過ぎの闇徐々に深まる

夏至あとも日長の夕べいつまでも月のカケラと割れたる記憶

寝る前に立ち待ち月を見に出でつ 指を幼にぎゆつとにぎられ

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2015-03-19 お茶の花とともに 2013年房総に2年ののち

2013年

母の手作りのものいくつも

お茶の花の巻

       f:id:logo26:20081217141435j:image

失望の年?」

年末に初夢宝くじ少し買ひしばかりに失望の年

ただ白き紙美しく括られて今年も荒野広がるペイジ

ふたつほどがつがり抱きローソンへ晴れ着のはたち敏捷のさま

オリオンをキリリと飾る冬空を覗けばまろし青き夜の底

北海に泳ぎてありし紅鮭の冷凍パックなり一瞬にして

手すさびに薬指にてアイフォンの魔法の画面するりと捲る




「あの人この人」

同ひ歳の師の歌書隙のあらざりてこれはいかんと身仕舞正す

戯れに夫の我がため買ひくれし文字一つ無き砂漠の手帖

メル友も寝つきたるらし二十五時ブログもサイトも口を閉ざしぬ

北風の何と言ふ子か角々でぎしぎし遊ぶ古家をめぐり ==北風小僧のかんたろう




「運の尽き」

運尽きて糧を得る術断たるれば節約すれども貧へとすべる

災ひの熾きにいぶされ往(い)なしつつ生命は失ふかがよふ力

わたくしめ独語が専門無口にて独り言すらあらぬ独活(うど)にて

スマートさ軽さ明るさ重さなく独活と言はるる能なき生まれ

そもそもが軽き我なれせめてもの洒脱にたたく軽口もなし




ミントグリーン」

昔子に買ひしポトスの葉先から雫あふれて命黄緑

わが与ふ寒の水にも喜びてミントグリーンのポトス長らふ

夫とわれ心無きかに罵りてミントグリーンのポトス困惑




「小学生」

朝日子に大きプリズム差し出せばへやの宇宙に虹を浮かせり

平行四辺形の面積 底辺に高さをかけてマジックのごとし

工作の木の本立てに丸窓を糸鋸とやらに母と開けてし

絞り染めの糸を解けば紅の中瞳開きて無辜の白花

道路より雪の階段ポストまでいくつか降りて昔津軽




「寒のクレマチス

寒の空に見たき望月なほ七日 冬の鈴蘭もどきも待つか ==スズランに似た白クレマチス

冬のため変異させたる鉄線花 寒の日々こそ鈴蘭めかす

冬の軒に蔓をめぐらすクレマチス白き花びらこれ見よと反る

金色に艶めく蜜柑 冬ざれし土塀にたわわ花束のごと

山茶花の雪洞(あんどん)仕立て六尺余 稀なる花つき交番横に




「白い建物」

手入れされ窓静かなるマンションと隣る墓苑の然るべき石

レインボーブリッジに白き石の群れ意匠凝らしてしみひとつなし

屋上まで高層ビルに乱れなく心貧しきわれは悲しむ

大寒の車窓に流るる松並木無駄なき自然の清き枝ぶり




大寒

大寒十三夜月しみじみと何もなき庭眺めてをるらん

子に詫びることのみ浮かぶ大寒の小望月照るはみだすごとく

「わが仲間細胞たちよ今はしも死にゆく刻ぞ」引き連れ去りぬ

日あたりに烏のむくろてらてらと見事な織りの羽根をたたみて

春を待つ笹鳴き聞きし生垣に団欒なからむ吹雪く今宵は




大寒の白クレマチス

大寒より蕾開きしクレマチス末枯(すが)れたる葉の黒きを配して

かそけくも花の生垣二週間 冬クレマチス白く地に敷く

真白さの雪のひとひらずつ散りて冬クレマチス春立つ日まで

四季のなか放り込まれて十五度の寒暖の差に人の厭詛や

夏と冬日々交替もよからむか寒さに感謝暑さ有り難し




「冬クレマチス更なる進化」

クレマチス大寒咲きあり立春にはなびら舞ひ初め蕊のみ残る

花弁散り黄の雄しべ失せ ふと見ればぽんぽんのごとなほみなぎりて

雌蕊より白き花珠生(はなたまあ)れいでて冬クレマチス命渾身

ふはふはとまろきが三つそれぞれに涸れし花弁の支へを受けて

 

時過ぎて冬クレマチスの冠毛の疎らになりぬ箒のごとく

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柿変化とともに 2013年 大胆な試みもあり 15:35

生の手触りまざまざと母は生きえて

柿変化の巻

            f:id:logo26:20081223223504j:image

「机に拠る」

鈍色の空はさながら冬の底望む気持も失せて日の過ぐ

絵描きらの腕も及ばじ色の海デジタル画面に溢るる具象

パソコンの画面に虹を捉ふるは視覚細胞数字を見るのか

わが歌に習ひも性も現るる不注意にして愚かしきミス

佐太郎の抒情の歌をごくごくと呑みこみいつか芽吹き青かれ





「応需短歌〜佐藤佐太郎の真似」

梅待月 上弦八日目 冴え冴えと 青き夜空の中天の路

小さきもの集めてひとの喜びの木切れや小石宝石お札

動物の眠りに落ちてしばし不動 ガラスの眼(まなこ)開け動き出す

ひとつ鴨水脈(みお)どこまでも乱されぬ江津湖に春は名のみなるらし

恋に落ち活性化せる脳のさま すべてMRIにて見通されている




「上総国分尼寺跡地 かずさこくぶんにじあとち」

上総なる国分尼寺の回廊を桜吹雪とともに歩めり

かそけくも耳に鮮やか鈴揺れて東大寺にも澄み渡らるむ==東大寺の灯籠の4分の1というもの

黄金の鈴を連ねて春嵐吹けば光りて灯籠の楽

上総なる国分寺の塔ベンガラの七重(ななえ)賢し黄砂まぼろし==国分寺

民の幸を仏に拠りて恃みたる聖武天皇千二百年前

恃みしは仏の加護なり黄砂にて運ばれたるや唐土の思想

天平国分寺の塔 民のためといくつ建てられ戦に焼けし




庶民の暮らし」

猫まんま醤油かつぶし平成の御代にふえゆく下層の暮らし

どうしてもエスカレーターに乗れざれし天然パーマの祖母は雲居に

英国にEU可否の論議ありて口に指当てしんと聴く人ら

笑ひ過ぎ涙こぼれてなほ可笑し いとけなきかな孫にも起こる

二歳児の眠気と食ひ気照れ笑ひカレーライスに顔を突っ込み




「過去よりの声」

不意に濃く懐かしさ湧きて汝が気配なれば暦に由縁を探る

十年を遥か過ぎきて干涸びし世の浮き草の葉裏のその痕

ひたすらに澄みし声なほ耳にある寡黙なる子がふいに歌ひて

春の日に届きたる文はつこひの人の婚 汝が基(もとい)喪はる==推測だが




「春の花咲く」

ときわはぜ 今年も保護の対象にて同じ角度に朝日に向かふ==目につかぬほど小さな薄紫

梨花咲きて佳き言の葉に綴りたき憧れ満ち来白絹の艶

ぼさぼさの柔き花弁に頬紅をほのかつけたるごと春紫

図鑑の絵そのままに咲く宝鐸草(ほうちゃくそう)二つ花房庭に下向く

隣り家に最後のひとつもちりぢりに散る八重椿ほの赤にして

はやみっかむざむざ過ぎるわが皐月 シロツメクサの何ぞ香れる




「デジタル脳」

1. 風のごとスクリーンセーバの映し出す色の変転あやかしと見る

2. 万の色を視神経へて脳内へ認識せしむ何ぞゼロと一

3. 二進法に神経伝導伝わりて可能範囲に七色に舞ふ

4. そのわけは知らねどそうと知りてのち世の深層に心捕はる

5. 視神経の受け取る波長は光よりの屈折反射種々あるひとつ

6. シナプスの受ける刺激が電位の差起こせばイオン伝導可能なり

7. 軸索を行く電流のオンとオフ 前頭葉にて認識査定

8. 海馬保存されしひとつの組み合わせ「青色」と呼ぶ 一文化日本

9. 「あお」と聴く母の声音と指の先 繰り返さるる神経接続


「超マクロ

10. その莫大 砂粒すべての数よりも銀河は多し離れ合ひつつ

11. 音の無き宇宙を飛びて来る光 脳は彼方も正しく見るや

12. 永劫のごとき遥けさ ハッブルプランク捉ふるその色は真か

13. わが百年一四八億年の先っぽに ダークマターとダークエネジー知る


「超ミクロ」

14. この心身の空疎なること宜なるか原子ひとつはほぼ真空なり

15. たとふれば教会にいる蠅ひとつ原子核とせば電子は外に

16. 物質と反物質の生まれてはぶつかり消えてエナジー放つ

17. 無から無へ在り続ける間(ま) なにゆえか永劫の中不均衡残る

18. 熱されて量子飛躍あり 定まれる軌道をひょいと色エネジー発す

19. 雲の如き軌道の海に電子あり 光年老いずひた走るあり

20. エイチツーの成れる原理は何ならむ 二つの電子の軌道触れ合ふは


「物質生成」

21. 電磁波自己組織化というものか次第に絡み合ふ元素たち

22. 育ちたる宇宙は元素表にある化学物質を生産したり

23. 星と山 草 動くもの脳髄も同じき元素の組み合わせなり

24. 電子舞ひて原子は流る 寄り合ひてこの身を成せりしばしの日数


「量子は別世界」

25. 光とは質量ゼロの電子なるや 干渉波実験に電子を飛ばす

26. 量子らの有り様不定 観察によりてのみ確定すペア量子しかり

27. スピンするペアの粒子は距離あるも双子のごとく心通わす

28. 絡み合ふ量子ふたつの特性を 神にも等しき計算機とせむ

29. ゼロと一の情報二つを共有し可能性すべて計算し尽くす

30. エンタングルメントする二量子に情報托しコピーを作る

31. 肉体と言へど原子の情報より成れるゆえ即空間移動も可

32. サイコロを神は振らずと片や言い 神を推測するはならじと片や

33. 絡み合ふ量子に遠隔操作あれば超光速信号あらねばならず

34. この証左にボーア量子論凌駕せり アインシュタインと神の全知を


「風のアインシュタイン

35. 知見の差かくもありしか この銀河以外知らざりしとふアインシュタイン

36. 弦のごと振動止まざる粒子の相 聞こえぬ音か見えざる色か

37. 不確かなる電子の位置なれ わが次元確かと思ふ謎なる大雑把

38. 質量を与ふる粒子(ヒッグス)の存在は確かとなりて正しき途上

39. 水素二個の核融合を果たし得て西暦二千年星を生じさす

40. 原子核をぶつける装置 ビッグバンブラックホールを生じさす意図

41. 天才の知恵と苦心の未だとほく解き尽くすなく大千世界


遺伝子

42. 遺伝子細胞核に幾重にも折り畳まれて精緻の引き出し

43. 詳細を文明こぞりて追ひ求む 進化のひきがね突然変異

44. 美しき仕組み知るべし 細胞の機械のごとく全知のごとく

45. 肝胆と照る小望月サテライト人工衛星) 大気の海の底を測りて

46. 宇宙への地球の渚薄けれど底方(そこひ)に群れてわれら儚し


地球の自然」

47. みじか歌にけふの驚き発見を無理にも詰めたし自然のメカを

48. 陽は火なり 一億五千万キロの彼方より核融合の恵み小春日

49. 庭に来る日を待ちし姫踊り子草 ちりめんの葉の陰に紫

50. 紫は自然好みよ 青と赤自在に混ぜて濃きも薄きも

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よめなとともに 2013年元気だったかも 15:46

嬰児と引き上げてきた若き母

よめなの巻

        f:id:logo26:20081217141555j:image

「家族の像」

山羊さんの届くこと無きお手紙を唄ふ子の瞳はいつも濡れにき ==白ヤギさん黒ヤギさん

子の妻を娘と思ふ吾が心 それも疎まれひとり死ぬらむ

紫陽花のピンクとりどり呉れし嫁 緑の葉陰のその手美し ==母の日

夫はつね直球なりし何事も しかるに秘球飛び来て凡打す

天下一品」京都の麺に狎れたるを「東京ラーメン」駅前も美味

五井駅の「東京ラーメン」しやつきりとをみなの作る薄口スープ

歌一つそこそこできて さあご飯作ろうと立つ善き日の厨

かゆみには抗ヒスタミン 炎症に副腎なんとやら貰ひにやつく ==皮膚過敏発症




「姫松葉牡丹再生」

一本の芽立ちも惜しみ残す庭にやがて緑の絨毯敷かる

律儀なる花と詠まむに名を知らず 報はれざりて牡丹色なり

遂に五月枯れたるままの茎の先赤らみ初めぬ 抜かざりて良し ==一年後に

きつと出る 無闇に確信してをりし 緑の針と命あらはる

疎遠なる友に縁あり教へらる 去年(こぞ)は知らざりこの草の名は ==40年ぶりに

堪忍の姫マツバボタンその策を我は知るなり秘かに詠ふ




「麗しの皐月

わが庭の小(ち)さきものたち青冴えて ことに露草 黄の色誇る

虫も飛ぶけふ聖五月 白花をかかげて十薬ナースのごとし ==どくだみ

夏も冬も負けず静かに伸びし葉をくちなしなるかと思ひて愚か ==種子をなにか植えた

筍の爆発力を身にもらひ ふと不幸せ忘れたるかも

これからは笑ひて生きむ柿若葉 己が光の中冴え渡る

うつとりと空を映せる水張田(みはりだ)の黙(もだ)す深さを走る小波




「構造」

苦しくも充実求め生きし子の無一物にて残す白骨

柔らかきよひらの毬(たま)の中空に構造確かにピンクの花の柄 ==あじさい

父の字の残る手帖を充たしゆく 来ざりし時をわが片歌に

海を見る窓に たゆたふ歌いくつ読みて忘るる そこにある蒼 ==苦心甲斐無き歌作

わが内に異形なるもの生れ初むや 耳より溢れ口には出さず ==大丈夫か?

二の腕と小指の力学太極拳 攻防転々脳裏に描く ==なかなか奥深い太極拳




「聴く」

ラジオより幼き脳に聞こえしは敗戦国の言葉と心

夕食時ラジオの流すヒャラリコを待ちたる時代空を見詰めて ==笛吹き童子

ミュージックならず講談浪花節ラジオ生活戦後日本

下宿してラジオのFM炊飯器心に希望青春なりし

英国にEU可否の論議ありて口に指当てしんと聴く人ら ==市民の集中力




「若きら」

小雨けふ心揺れたることもなき 世慣れぬ猫と眼を合はせしが

若き猫「あれ」と言ふがに雨の夜半我を見詰めぬ 心あるかに

つややかなる眉と睫毛の気配のみ瞳は見えず早乙女(さおとめ)の立つ

はたちほどのうなじとほおのたをやかに素顔の娘あり人目嫌ひて

電車移動しつつパソコン開け本も膝に並べて若きの居眠る




「6月、新朝顔

梅雨らしき恵み沁み込む地の上にふつくら伸びて朝顔の蔓

あさがほのたまゆらの青に包まるる家に目覚めて漂ひ歩く

颱風の風とおぼしき風圧は梅雨前線発 雨の先触れ ==上空に、丁々発止の空気の流れ

紫の新朝顔(にいあさがお)の無心なるをはや撃ちしだく台風五号

灰色の空のいづこに陽のありし夏の早がけ朝顔の彩(あや) ==台風一過たちまち晴天




「ミルクの連想」

給食のスキムミルクの思ひ出をちびちび飲みて眠りを招く

人の為す収奪行為 枯れ草を食ませ雌牛を乳房と化して ==どんな権利あって人は、、、(福島

絞められし雌鳥の腹に卵数多(らんあまた) 大から小へ工場めきて ==幼時に見た

悲しみに打ちのめされて泣くときは死人のごとく大口を開く ==世界のニュースに観る

人前で泣かざる子供なりしこと誰にも言はず 今は泣き虫

笑ひたき泣きたき気分 躓きてヘハヘハ動く二歳の口の辺




ネジバナ花言葉

捻れゆく階層ひとつよじ上り雲の果てまで負の連鎖ある

もぢずりの心「お慕いしています」言はせる男あれば出てこい 

ねじり花登りては咲き延びる茎殊勝ならざる右巻き娘

毒づけど可愛さ余れる螺子花の希有の螺旋をほれぼれと見る




梅雨明けて」

梅雨明け新月七夕猛暑日の実現願う夕立予報

七夕の笹葉に映ゆる色紙は昔々の母の手作り

宝子の最後の写真をつくづくと美しと思ふ古りし日のまま

歌の題「硝子の心」のみ覚ゆ自死三万の始まりしころ

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無名の菊とともに 2013年 努力する 16:08

一月一度の訪問と母の笑顔

無名の菊の巻

            f:id:logo26:20081228182413j:image

「父の命日 夏盛り」

思ひ出しくるる人なき命日を父は白百合のごとく笑へる

無念なる娘なりしと嘆かひて父は逝きしか思ひてへこむ

シベリアゆ運良く帰国したる父の手帳に残る椰子の実の歌

内側に金魚や花火描かるる硝子の風鈴いくつ壊しき




夏模様

室内は35度なり硝子戸の向こうはせめて熱き風吹く

お屋敷の離れの書斎 三面の硝子戸作り模したる吾が屋

エコカーテン人の為すとてゴーヤ植え豆に胡瓜とわが不統一

瑞穂とふ国をさはさは風の行く韮(にら)の花茎ついでに揺らして

匠らの石灯籠を打出せる万遍の鑿(のみ)やはさ醸(かも)しく




「誕生日 時の流れを見回す」

67歳のなほ残れる日 息子らのそれぞれ足れる境涯を祝ぐ

如何なれば急に皮膚過敏起こりたる髪一本の触るれば発疹

なにゆえにかかる秘密を堪え忍ぶわれは阿呆かDV被害者

小突かるるも平静よそほい店を出づ降りくる罵声仮面は深く

ヌテラとふチョコレート塗る黒パンのドイツの暮らし吾が好みたり

肺炎に臥しゐし頃の母の爪すべて抜けたり今のわが歳

世に生れて脳と体の撚りなせる心の探求なほ百年と

初旅は朝鮮半島の夾竹桃 原爆の日も終戦の日も ==生後10日目の旅立ち

戦とふ抗へざりしシステムに命断たれてひとりひとりは




「不真面目」

川あれば笹舟に似る小舟もて都路たどる更級の姫

葉の端を折りてたためば笹の皿 ぽとりと水に放せば舟なり

三日月の形は舟とたとえらる 惑星たちと遊ぶ航跡

またやった修正せずばならぬ線 液もリボンも尽きたる夜半に

トイレなら世界に冠たる革命も日常となり掃除ややこし

ガス管の保護用テープを爪研ぎにするな野良猫こちらも切実

水の中土の中なら息絶ゆる者とふ不思議ひとり吹き出す




「あの時 東京猛暑

返事無く会ふを諦め去りしドア 炎暑の東京最後のチャンスを

暑きゆえ白装束にて訪へば「ああお母さんですね」家主の言ひき

わが願ひ君に会うことのみなるについでの如く為してしまひぬ

過ぎし日を愚かなる吾と知るなれど「予見できぬ」と言い訳なほも





「食というアイデンティティ

初体験松屋の牛丼Uの字のカウンター席に臆せず座せり

牛丼をかきこみてふと上げし眼に白きワイシャツぐるりイケメン

「人に良き」もの「食」なると新知識ゴーヤ呑み込みおおよそ納得

納豆に飢えつつ海外生活の要は「メシ」なるアイデンティティ




「老老敬す」

喜寿までの艶やかなりし母の面は 麻酔注射に痛み薄らへど

卒寿なる母の鼓動を支へきて「機械の寿命なほ十八年」

皺々の母の笑顔に会ひてのち動かぬ顔を思へば震ふ

大正とふ遠きところに母生れき 写真婚にて良人を得たり

嬰児(みどりご)を守らむ一途に引揚げの旅を耐えしと母の十八番(おはこ)は

先立てる父と弟わが息子 卒寿の母と生かされ長き

夕風と熱の争ふ終戦日あしたの莟開き切るやら

蝉のうた尊きことば聴く墓前 汗は不動の脊を零れ落つ

ナマンダブ合はす手は汗涼し気に甚平姿の弟笑ふ 

砂粒のすべての程も在る銀河 昼夜を問はず空には光 

昔母に贈りたる傘わがさしていつもの独り葛の香に佇つ

MacOSが選びし写真花と孫のスクリーンセーバー無限に流る

明日からのおニューが待たるMacBookPro共に歩まむ文明の先へ

おおここに隠元和尚またここにおはしましたか隠れんぼお上手 ==インゲン豆の収穫、貴重

風冷えて法師蝉哭く シリアにて残虐あると遠く近くに



「首都高い往く」

梅林は氷雨にけぶり小暗きに紅白の色眼裏に咲く

春雨の高速渋滞ゆつたりと首都の隅々(くまぐま)桜白々

吹っ切れし如く加速しゆくバスに残る幻影花曇る日に

ビル工事するにもひとつ乱すなき首都の川面に花影傾ぐ

仄白く小雨に滲む梨の花 畝はくろぐろ彼方へ続く

満を持する都の緑園若葉とふ贅を尽くして人ひとり見ず

これほどにビルやトラック作りなす 自然にもどす術無きままに

匂やかにつつじ配して若葉あり 何やら薫り来気密のバスにも

ビルの谷にあるべき点景卯月尽(うげつじん)青葉並木と玉なすつつじ

屋上までビルの手入れの尽くされて心貧しきわれを悲しむ

天空の鏡面ビルに映るバスの窓にわが顔あり見詰め合ふ

空調より燻(くゆ)る白煙をちこちの屋上を立ち靄(もや)に同化す

都心ビル上半分がかき消えぬ ぬか雨の空仰げばまさに 

新宿へ高速バスに着くや遭ふ鳥に餌をまく老ホームレス

雀らの知る由もなき誰の撒く餌により生くるひとときなるか 

新しき浮浪者と見ゆスーツケース二つ並べて黒くはみ出す

頭抱へ都庁の角に居る男身じろぎもせぬ大き鞄と

アウトロウにあらぬを不運に襲はるる「普通の人」の無宿始まる

僅かなる紙幣を持ちてリュック負ふわれ新宿を彷徨ふひとり

何処へか山手線に運ばるる人らの瞳と服装窺ふ

自然的辺地に住めば荒れし野と人の暮らしぞ醜く残る

お互ひを映し合ひたる鏡面ビル昏まりゆけば孤立して照る

歌心たゆたふままに忘れゐき 外は黙せるひと色の海

けふは湾を静かに充たす水なれば物質めきてなほ魅せらるる

水と大気の接面に霧わき止まず羽田も見えずいづこなるここ

梨棚と稲田広がるひとところテレビの残骸山なすモノクロ

玄冬のバスに思ひし夏のいろ 緑重たく今を流れて

九十分バスに揺すられ幼らのみんな眠りぬ母の腕(かいな)に

安穏と命托して顔も見ぬ 一期の同舟手袋白し

わが用の甲斐無きものを果たさしむ涼しき声の運転手に謝す

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3本の菊とともに 2013年 酷暑の夏 16:18

常温の施設にて天然と切り離されて母は

3本の菊の巻

        f:id:logo26:20070701063525j:image

「人体発火」

戦(いくさ)とふ抗(あらが)へざりしシステムに命断たれてひとりひとりは

茹(う)だる日も朝に露草夕べには白粉花のありて半月

覚悟して玄関開く 温気(うんき)むつと南国の葉も茹だりしなだる 

節電より我が身大事とクーラーをつけては矢張り消してまたつく

年ごとに温室効果の進む果て人体発火もありうべしなど

 

室温は三十一度 風吹けば涼しと感ずる蒸発効果

介護の家族抱えて家々にいつか同じき塗炭の日あらむ

冬よりも「夏の風物詩」性に合ふカラフル単純南国育ち 




「子らの現状」

産後鬱長引く嫁と暮らす子はしなう真竹のごとくなりたり

コンビニでこの瞬間にベントーを摂る子の姿現にツイッター 

不憫なる愛(かな)しき子らのこの今を誰に托さむ生きよこの今

がつつりと心ぶつけて確かなる足場得たるらむこの子に恃む

天の青とふ名の朝顔 青年の死のごと開き切れずに残暑




「夏の混線」

銀河とは砂粒すべてばらまけるほど空にある 見えずともある

晴れやかに東の空に差し出でし 少し日焼けて葉月望月

驚きの胡瓜の甘さ 苗を植え水は天から吾はもぎしに

黒雲は驚かさむとて雷光を放ち放つも高気圧克つ

柿の葉がひとつ頷く 風にあらずさらなる頷き つひに雨粒

雨粒のつひに落ちぬと詠みて待つ我が謀りごと夕陽が笑ふ

まつすぐに屋根打つ滝の轟音も疾く遠ざかる盛夏の雨は




「お題:隙」

びつしりと引き出し占むる何ものか濡れて無機質夢に見たりし

椿の葉うらうら照れるその裏に毛虫隙間もなく無防備に

三世代の車四台隙間なく並ぶ箱庭夕べの積み木

カーテンの隙間の枝にひよいと来て見らるる知らず隙あり鶲




「識る」

「人に良き」もの「食」なると新知識ゴーヤ呑み込みおほよそ納得

納豆に飢ゑつつ海外生活の要は「メシ」なるアイデンティティ

欧州に住めば納豆食べたさの麻薬のごとくいつかいつかと

声帯の震ひて響くひと節の天与の輝き魂魄(こんぱく)にて識る ==歌のオーディション番組にて





「想像の恋」

諦めし片恋ひの数積もりゆき夢の絵柄に影さす小道

待ち合はせする仲ならず駅口に偶然装ふ勇気もなけれ

琴の弦と裾と折々擦れ合ひて音波寸秒天使の遊ぶ

茄子の畝トマトの葉陰い往く猫 ミニサバンナの空をふと見つ ==恋い猫




「秋彼岸の頃」

還暦は再スタートとうろつきて諦めの渕深くして古稀

曼珠沙華古りし御堂を包み込むひたぶるに直(ちょく)笑ひはじけて

 

緑陰のさびれし御堂を埋め尽くし赤き一念地を這う炎

彼岸過ぎ 柿の一葉(いちよう)染まり初む 柿と林檎を買へば重たき

毎週のペインクリニックへ通ふ路 楓(ふう)の移ろひ語り合ふ時 ==母とのそんな2年があった




「憶いの数々」

自(じ)が声か胎児の鼓動聴きにしか 迷ひ吹つ切る情只ならず ==妊娠初期に突如オキシトシン噴出

君の腕の甘い茶色の腕時計 似たもの欲しくて買って眺める ==けっこうセンスのある子だった

あやまればすむことならずわがこらをかなしませたるわれをゆるすまじ

弱音吐くメールは一度 まさに手を差し伸べる時逸したる者 ==インフルエンザだったらしい

タオルケット歯ブラシパジャマ 一夜のみ泊まりて遺す君の痕跡 ==最高の時1996年

幾年を音信不通か 日々遠き時の過ぎ行き数ふるを止む

いつまでも点滅するを遠巻きに涙のボタンに触れぬやう居る

悲しみを封印したる歌以外茶々をいれては好事家ムード

苦の声の多き命の時すぎて解き放たるを浄土となむ呼ぶ




祥月命日

完璧の体と心捨てて往く その算段のやや楽し気に

溶け合ひてしまふみたりの息の面輪 あの子この子と面影追へば

飛翔する朱鷺(とき)を竹にて編む男の聴くはぱみゅぱみゅプログラマーなりし==ドキュメンタリー




神無月の雨」

苦しさに目覚め幾度も診察を思へど朝は行かぬ算段す ==胃酸逆流かと思われる

秋雨のかくも叩ける軒の端を覗きもせずに医者を諦む

一様のザの音深し 神無月の止まぬ雨の夜篭りて聴けば

幾千の小さき想ひ歌として日々に泡立つ 失はるるまで

身巡りのすべて無用となる定め 凡百の身のすでに戸惑ふ




「それぞれ」

ショートカットの似合ふでもなく歳古りて 奢りの黒髪来世に托す

雀ヒヨ鶲(ひたき)も寄りて遊ぶ庭 ふと飛び立ちぬわが気配して

椰子の実の歌のすべてが書かれあり シベリア時代の亡父の手帳に ==散々改作して

命なほいつまでと訊く母卒寿 負けん気のみに明日へ向かふ ==老いて生きるのも辛い

人生の驚きは何 吾が問ふにドイツ人の夫 即答「アイキドー」

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紅葉とともに 2013年 結局空振16:27

会えば繰り返される昔の話を聞く

紅葉の巻

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「霜月の庭」

側溝の沃土にずらり朝顔のこぼれ種の芽 カイワレもどき

紫蘇の香(か)を抱き 引き抜く重たさの 無数の根の張り土を抱きて ==茂った紫蘇を引き抜く

霜月の草引きをれば日々草 改良されて希望の新芽 ==冬に咲こうと

漆黒に赤と金光らせ芋虫の棲む薮枯らし 根の長きこと ==芋虫直径1cm以上、根5m以上

土色の柘榴(ざくろ)の外皮を押し開く 勾玉光りて水の層なす




「霜月の鳥」

カーテンの隙間の枝にひょいと来て見らるる知らず隙あり鶲

必殺の吾が一撃は羽虫打つ 狙ひ違はず台風来る島

美観などなきこの辺り ときわはぜ猫の往来など見つけたり

ひこ生えのオシロイバナを抜く晩秋 なんと芋つき旨さうに見ゆ

小春なり明日は強風かもしれず チシャの新芽を啄(ついば)む小鳥よ




「うろうろ」

朝夕に小説読まば楽しきに吾も書きたく努めて苦し 

小説を読むと書くとの違ふこと ひきずらるると支配するとの

助動詞の古文活用迷ふ日々 現在形か過去か完了

読みくるる祖父の間違ひ指摘せしと語り草なる絵本覚えず

若ければ嫋々たる歌詠みしはず リルケの青き便箋恋ひて

母なるに未だに足るを知らぬとは 言ひ聞かせては甲斐無く歩む




「夢がなければ」

投稿せる科学の歌の五十首を役目の一人(いちにん)読みたるか否

立冬ハイビスカスの枝を切る 明日咲くつぼみ花瓶に預く

をみなごの幸福談義遥かなる 今語り合ふ古りし友垣

「肉太に生きむ」子の眼に覚悟ある 命を削る仕事と知るも

カレンダーを買ふは霜月 半世紀も繰り返したる希望飽かなく




「幻の家族」

来年の暦母へと 霜月も半ば過ぎたり吾が日も疾(と)くて

話し合うこと可能なる日々 数えらるるほどかも 母を訪なふ ==卒寿

傍らに琵琶湖にそよぐ葭叢(あしむら)を眩しみ見たる人は往にけり

失ふと思ふだに膝頽(くずお)るる それが家族であるべき定義

吾が去りて悲しき子らの家の夢 夕べ影絵のドアは閉ざさる

夢にわが飛び往く家の黒かりき 一目見んとて忍び歩けり




「夢の後始末」

カリカリの鰯のメザシわがうちをよく巡るらむ 分子となりて

辰の年 昭和最後のお年玉切手四十円二枚 封筒に貼る

屋根掠め貼り付くごとき満月顔文字描こうか 「にー」とせし秋

                ==長男が描いた次男の「にー」とした顔、保育園のころ

いつまでのデイサービスのバス いつか吾も乗るのか 福祉絶ゆるか

陽だまりの西洋朝顔いつまでも元気なれども撤去と致す

びつしりと引き出し占むる何ものか濡れて無機質 夢に見たりし

ばらせるかかけつこ全く駄目なりし 隠したままじやずつとルーザー




天体と樹」

温さなほ朔月(さくげつ)近き師走にて陽光浴びて星屑を浴ぶ

目覚むるに来る日来る日が極楽のやうなれば不安の兆す青空

菫色と思ほえるまでの空の色師走半ばの日本上空

黄葉して道はいづこへ友の住む丹波の里に由良川生るる

 

今年また無事に黄金公孫樹なり根元に屈み円錐形を撮る

黄金の鳥か扇子か飛翔さすいちやふの末裔ドレス振るひて




短歌思案」

歌人ら集まるなれば小春日に地図にて調べ補聴器つける

白寿なる歌詠み居ます冬空の千年松のまつかさのごと

歌の端の零(こぼ)れんとして透き徹るガラスのペンもつ青いインクに

賀状には短歌三昧と書き置きてさて嘘つきの鏡の顔見る




「美しいこと」

瑠璃色の丸き茶碗よ こんじきの小笹揺らしてカリンと儚し ==失ってしまた美しいお茶碗

ヘッドフォンをやうやう買ひしクリスマス 滝に飛び込み音に打たるる

柔らかに太極拳は空を打つ足裏(あうら)に受けて満つるものもて

白雪の重ければなほ朱(あけ)の実の赤ひとすじの光を放つ

女には所詮うからを愛すのみ至上の恵みしたたるばかり

ドイツ語の面白さ是非教えたく白墨踊らす吾のありたり




困惑

生れしゆえ生きゐる吾のニヒルにて 定め越えたる君安寧ならむ

三十年今から生きると決めてみる ひとつ始めてもう捻挫となる

まやかしか「ここにあった」と見つけしに使はむとせばあれ?あれはどこ

ここかしこ暦大小掛け替えて楽しき行事 知らぬが花と

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2015-03-17 赤いさざんかとともに 2012年となる

2012年

三月より持ち直した母なり

山茶花の巻

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「あらたまの力」

あらたまの空に光はみちみちて溶け入るごとく重心揺らす ==太極拳

冷気すら快きまで息熱く太極拳に自他を去りゆく

烏らが車道を低く飛ぶ背なの漲るパワー翼龍として

落日の富士の稜線オレンジのタワーも照らす赤き満月

跳ね返せそんな先輩無視しろと鬱の息子に言うじっと心に ==以前にある時




「いたわり」

故知らず吾(あ)より生まれしその縁し天より来しごと 早や戻りしも

唐突に幼きころの表情の明かりの如く甲斐無く浮かぶ

「あれこれの君の仕草」と詠みかけて歌とならねど消せぬ言の葉

この雲は定めか否かはらからにかかるもせめて君が手添へよ

吾(あ)をも見き 秀づるゆえの当然の優しき視線他をいたはりて




「白川の源泉」

白川の源泉といふ深き水あるとも見えぬほどに透きたる

からたちの棘と思ひて白秋を歌ひをりしに柚子の木なると

ひとときを母と過ごせる帰るさの暮るる坂道「父さん」と呼ぶ

手のかかる母となれども正月を物忘れして笑ひ合ひて過ぐ

母の手になる花瓶にはすすき穂のさやさや流るいつも窓辺に




エネルギー

小さくも辛夷よ拳握りしめ沈丁花には負けぬとばかり

馬の瞳に空の映りて脊な震ふ 二本脚らの心を読むらし ==題詠「馬」

跳ね回る仔やぎ仔うしの喜びの末は知らねど「遊べよ仔馬」

天馬でも天女でもよし運びてよ海の藻くずと身はなるとても

塗る程にたるみし肌の手に負へずせめて笑へと強ひるもをかし




大寒の雨」

元旦の震度4より癖となり古家を揺する風も疑ふ

地の揺れか雨の雫かみしみしと鳴るその次を畏み侍る

歯医者にて泣き叫びいる幼子よ小さき喜びあれよ明日は

つひに降る 凍月(いてつき)巡る間乾きしが大寒の土静かにも濡る

大寒をまたぎ氷雨の濡らす枝ヒヨの宿りも川面に傾ぐ

淋し気にふと空を見る清けき眸愛しくも見ゆ鄙の若人

   



「隣人の恵み」

購ひし枯れ木の如きつる薔薇に語りては剪る赤き芽の上

我が窓に赤き柄の葉のかかり来はかのゆずり葉と隣人に聞く

ヤーコンはアンデス産の不思議の実 外は里芋 梨のさくさく

抜き立てを「ほら」と賜ひし根深葱1枚剥けば香りてま白

香り立つ深葱どつと鍋にいれ卵落として一人の昼餉

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山茶花姉妹とともに 2012年生き延びている 16:48

我より23年いつも年上

おしゃべり山茶花の巻

       f:id:logo26:20070610192620j:image

「悪妻」

苦虫のやうなる夫の背を掻けばわれの手求め熊と蠢く

夫とわれ占星術の獅子と獅子譲るができぬ三十年戦争

真似事に手相占ふ もし夫に先立つとせば憤死なるべし

二十年死を傍らに生くる夫脅し文句の「明日やも知れぬ」

医師の唸りつつ視る心電図つひにわれもと秘か喜ぶ




「この概念」

尊厳死さふみなすべき汝が最期 意に染まぬ生肯んじえぬと

つひにこの概念に遭ふ 部屋うちへ西日しみじみポトスを照らす

負けならず さうかさうかと誇らしくわが頷きて合点するけふ

揺り椅子に一日読書に音楽に時におなかに語りかけてし

あの夏はカッターシャツの君なりき七年ぶりの白き邂逅




苧環の露」

苧環のくるくる巻きの葉の中にたっぷりと露 みどりの薔薇

ほのかなる街灯受けて苧環の若葉に夜も乗れる白珠

さめざめと優しき雨の止みてなほ苧環ひと葉にひとつの光り

家々の影の黒きに春めける矩形の窓の童話の黄色



「2012年の立春

立春と思へば軽きスニーカー梅は見えねど笑みのほころぶ

らふばいと知らざりし枝(え)の黄の照りを傘閉じ仰ぐ花と雫と

春や春 山たたずみてさ緑の傾(なだ)るる先のせせらぎの音

雪の朝扉ひとつの先にある白き野に出づ仔犬の如く

凍り付きわが眼疑ふ画面いくつ祈り足らぬか平成の日々



「世にまたとなき」

子の職は実験音楽家 空(くう)揺する波に楽器は 要らぬと書きて

つひに立つ孤高の響き 伝へ合ふ波のうねりは無音でもよし

究めたき世にまたとなき超絶音 ギターと声の駆けのぼるまま

綿雪にふり積もられて白鷺の永久の眠りを知るは月のみ

漆黒の真中に月のあけし穴洩れくるごとく雪は放射す




弥生の祈り」

仏の座氷雨にもあれ恵みとしひとふし延ばす弥生咲かむと

霧晴れてその名ゆかしき仏の座ひとつ紅咲く触るれば散りぬ

十五分の車中に遊び書きすればかすかに雨の育む春あり

菜種梅雨傘のマークと十一度天水貰へよ鉢花を出す

弥生の忌手を合はすれどふさわしき言葉のあるや頬濡るるのみ




「稀にはあらむ」

ぐずぐずと細かい歌は止めにして大風呂敷を広げたき野辺

今夜こそ大満潮なる繊月の笑みの上下に並ぶ惑星

薄やみの川に潮の盛り上がる雲の上なる満月の圧

少ししか無いのかまたは二十年の残余であらばじつくりいけるが

なにゆえか悲しき生の束の間に楽しき刻の稀にはあらむ

房総のひねもす唸る風の日に明日は我が身の弥生の噂



「春雨」

土砂降りの朝の駅には冴え冴えと本物の傘花と溢るる

濡れ縁に腰を下ろして春の陽にたださらされてけふは猫なり

雨止めば雀とヒヨが豌豆とブロッコリーの畝分け合ひて食む

薮椿いまだ在らずも日だまりに空の色せる花の群れ居る ==オオイヌノフグリ

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庭梅の実とともに 2012年春から夏へ 16:57

少女のような老母に会いたい

庭梅の実の巻

        f:id:logo26:20070610190709j:image

「過敏」

黒き眼に口笛軽く吹きやるに淋しきひとを犬も無視する

足袋の揃ひて待てり琴爪の幽かに立つる春の波音 ==箏曲「春の海」

まだみつきしか経たぬのにはや倦みて暦破るも物憂き鼓動

弥生尽 風に抗して樹も我も斜めに構へカフカの線描 ==フランツ カフカの自画像?




「春たけなわ」

春を名乗るおおいぬふぐり 大小の白き花らも目覚めし野辺に

突風の揺する闇にも春の香は満ちてあるらむ挽歌直すに

大樹なる紅しだれ梅 古き家に笠をふはりとかざしいるかの

枝垂れ梅その花籠に捉へられチツチキ啼かむ目白となりて

花の屋根十二単の絨毯を息(こ)の墓詣で卒寿の母の




「大震災遭遇」

去年弥生十日の夜に引っ越せる千葉の煙突明々として

引っ越しの荷の揺るるまま逃げ出してコスモ石油の爆風を受く

絶望の極みに笑ふ渋滞にいまだ知らずも死の物質を

舌下錠を常備する夫 頑固者のせめてその日の安らかなるを

命生み是非無く奪ふ自然かと弥生に知れば涙も出ず




「庭の野草

かく小さき名も知らぬ草 白や青うす紫の花を秘めをり

カタバミも命の限り咲くものを黄の色思ひ指を差し止む

雑草を引かむと土にしゃがむ時微小の花の濃紫映ゆ

苧環の種ほど小さき葉の横に一ミリほどの白き花 ==苧環の新葉は本当に小さい




「見る間に緑」

花のあといづこも光あは緑 木下の人の何か美し

遅かりし花も緑へ変はりくを珍らかとみる 季(とき)を流れて

鳴子百合しげる廃屋たが植えし葉陰に白き鈴あまた下ぐ

水田は鏡と光り梨棚の花は揃ひて白く平らか




「新しい歌会へ」

特急券無しに済ますは可能かと貧の危ふさ鈍なる知恵に

東京へアナウンスの声何語なる「も一度プリーズ」地団駄をふむ

一巡り東京湾のふちをゆく往路はビル街帰路は羽田へ

海底へチーターしなるごと迷い無きバスにわが運ばれて行く ==句またがり

ふわと浮くリムジンバスのクッションは駆けゆく虎の背なもかくやと





「Tokyo」

高速より世界のTokyo眺めゆく皇居の堀も後ろを覗く

群れとして働き蟻の連係に作りし都市は夢の実現

奥底の隅田川より幾重にもスカイタワーまで富の集積

高速の高さに新緑湧き出でてビルの窓なる小さき人影

ビル群は身震ひするやに際立ちて銀杏の新芽街路を飾る




「あの頃」

外は雨ややこでありし子のそばに大人の思ひ充たせし春夜

いまさらに性愛の意味諾えり愛する人に贈る歓び

あの頃の血を吐く歌を夜の雨と推敲したりわが生き延びて

塚本と聞けば泣きたし喪ひし子と楽しき日過ごしたる街

布引きの滝の飛沫を浴びし日の手もつながねど緑滴る

豆粒の点になるまで慕ふ影愛の証の無かりしを泣く

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山ぶどうとともに 2012年喜びもあり 17:06

母の姿は末路の我なり

山葡萄の巻

           f:id:logo26:20081217141210j:image

「閑暇」

ひとつずつ夏の花種思案中今年どうやらひまわり蒔ける

クローバーのふと匂ひきて遥けくもタイムスリップ野遊びひと日

山陰の汽車の旅こそ眠られぬ窓に果てなく荒波歌ふ

かけ声と出車(だし)の眦(まなじり)忘れ得ぬ昭和三十年のねぷた祭りに

海上を蒼風(あおかぜ)わたる 充ち満ちて無窮の声のあるかのごとし

人の輪を君も求めし ドラマにも親しき仲間共に働く



老婆心

初老われミスドのコーヒー飲みをればおかはり黙ってもってきてくれる ==ミスタードーナッツ

華麗にも若き歌人の詠む痛みわれらは過去にとうに慣れたる

老ひ人はいささか痛み知るなれど明日はまた未知をののき歌ふ

散乱の夢とむくろを踏みしだき軌道はずれず行くやら日本




「金色の大満月

日は陰り南の庭にすず風の流るる頃合ひ西日は黄金

夕七時高く孤独に満月の星を隠してただ澄みし空

斜めなる月の軌道がかろうじて満月見する絶妙楕円

ETの大満月に向かふ影 最終便の光点滅 ==映画「ET」の名場面



「新樹」

さらさらと傘に音する小糠雨 薄き白布を新樹にかけて

紫と赤の花よりもたらされ薄みどりなるこのさや豌豆

万緑と言ふべき柿の若葉陰きらり幼きかなへび動く

早緑(さみどり)に洗い立てなる草も木も凄まじきまで大地の化学

きらきらとヘデラの繁みに花咲くは新樹のしたのこもれびなりし

母の日のブラウス持ちて青葉道 曲がりし背なの隠るるやうに

鉄塔はいづこのものぞ新緑の波わたりいく高電圧線

豊かなる川面に新樹の映ゆるさま早苗もそろひ輝き渡る




「孫歌」

婆ちゃんの長寿と愛に意味ありと学者の説けば孫歌詠まむ

「オバアタン」出会ひて笑ふ二歳児の別れのときは眼呆然

孫歌に障りはあらめさはあれど愛の歌には変わりはあらじ

この赤き髪はたれ似と問はるるに心秘かに吾なりと思ふ




「月と日」

まどろめる伏月仰ぐ早出にて卯の花零しに追ひかけらるる

二十四年水無月とおか朝八時下弦の半月ひとりし仰ぐ

雨の夜を豊かに濡れし庭のもの朝日子ありてすべて為されし

陽のリングあの新月も嘘のごと望月白く空木に照れり ==世紀の金環食

台風の靡かす雲のなお残る青と新緑強く塗りたし ==早くも台風




「世を眺めて」

犯罪は社会の罪と思ふわれ困惑しいる言ひ募る人に

技術はや日進月歩といふなれど必然のごと失業増やす

白骨のひとつだに無し黒髪の一束恋ふる声三陸に

足元の砂崩れゆくもがくほど支へ失ふ間一髪の浜 ==溺れた記憶

満州を逃るる崖を落ちて往く愛馬の声を父は忘れず



「親と子」

親よ 子としばしの遊び童心にもどり楽しみ分かち合ふべし

携帯を手放さぬ親 ゲームとふ気晴らし得るまで子とは淋しき

忙しさに父母邪険なるときあらめバアバはキミの遊び友達

暖かき二歳のからだわが胸と膝にぴつたり収まるを抱く

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花柘榴とともに 2012年 暑き日々なり 18:10

14年間そばに暮らし、もう4年間離れている

母の花柘榴の巻

         f:id:logo26:20070610191523j:image

モンステラの意気」

モンステラ出たとこ勝負の葉の形やぶれかぶれの自由の夢か

文才も美貌もなくば何をして三十年をわが満たさむや

我が歌はよほど地味らし共感を呼ぶさえなくて振り捨てらるる

ともかくも日々懸命に自を責めて限界までをねじれ咲くまで

もぢずりのきつと小庭に生えくるをねじねじと待つ忍ぶ心に



「人付き合い」

流産せし友黙々と腕回しプールについに遠泳二キロ

有明の月なほ高く南西のドイツの空に八時間の差

旅不安 二度と会ひたくない人とニアミスとなる一度ならずに

日曜日隣りに笑う声あればお節介にてわがほつと笑む

電話口めんだう気なる息の後ろ さへづり止まぬ孫とふ雲雀



「野のもの」

潔(いさぎよ)き赤の花もて道野辺に見回すごとくふいに立葵

露草の花びらほどの翅をして青蜆蝶ひとり去りゆく

死の顔は雀も人も遠きこともどれぬ道をまぶた落として

砂浴びの雀らのうち一羽のみいびりだされて野垂死にまで

なべて葉は斑入りや良しと会ひたきは半夏生かな野道のいづこ

野良猫の一生(ひとよ)も登り下りあり「猫坂」とふを書き残しやる



「どんな人」

うちのボスこまつたなあが口癖で部下がそのうち原因排除

出しやばらずお喋りをせず性(せい)なるか母の教えかなほ縛らるる

月も見ず五感使はずパソコンに憑かれし女こそこそ生きる

花束と呼ばんか鉢に大輪の後生の花の七つの歓喜

仏桑華(ぶっそうげ)風が落とせる一花の初々しきを髪に挿すべし

サイエンス文学少女目覚ませし不思議粘菌南方熊楠(みなかたくまぐす)



大暑を待つ」

何の木か諸説ある棘 梅雨さなか白き花もつ柚子か金柑

墓掃除しつつ謝る優しかりし父の怒れる最期の眼差し

お互ひに罠にかかりしなにの罠 夢見し心地のはるけき昏(くら)さ

大暑まえめうに涼しく小雨のみ無くした帽子いくつか浮かぶ

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ざくろの花とともに 2012年しだいに慣れる 18:19

しだいに施設に慣れた老母

ざくろの花の巻

           f:id:logo26:20070605231304j:image

ひまわり1」

よき夢を 土のお布団そつと押し松葉牡丹のひげ根を寝かす

卯月より卯の花咲くまで抜かず置くキラン草似のほたるなんとやら ==トキワハゼとのちにわかる

かたばみと謎の藤色雑草に盾となるべしひまはりの群れ ==向日葵の生垣計画

ひまはりの抜き捨ててありいづこより悪意はくるやわが咎なるか



ひまわり2 ラプソディ」

階段を駆け上がりゆく紅顔の子の後ろ影永別の駅

逝き果ててやつと向日葵どつと植ゆ稀代未聞(きたいみもん)の垣根六尺

向日葵はわれらが標(しるべ)あてどなき母もつ少年じつと見上げし

隣人には今年も変人ヤブカラシ露草ドクダミひまはり茂る

常の風台風にも耐へわが与ふ少しの水を待つひぐるまの

向日葵の茎をゆつたり巻く蔓にピンクの朝顔日々ひとつ咲く

はなびらのやうなる月を恋ふのやら秘かにも立つ夜の向日葵


ひまわり3 生首」

ひまはりの下向く花芯熟れし実を地に落とすため食べられぬため

かく重き花首かかげまた曲ぐる向日葵の茎一握り以上

ひぐるまの黄色縮みてさも重きまろき花芯を下より見上ぐ

花首の俯くを切るその茎の意思ある剛さこの向日葵は

花鋏の切り残す茎数本の繊維に下がるサンフラワーの顔

敵将の生首取りてぶら下ぐる滴る重さ向日葵の頭(ず)の

花の顔みっつ馬穴をうっちゃりぬ無駄に曲がりし茎にはあらぬと




「真夏の空を」

文月から葉月へ炎暑続く日も刻よ余りに疾く去るなかれ

空中の蒸気冷ゆれば夜露あり小さき草々今朝も増えゆく

公園の炎と化したる樹のところ独りを歌ふ初蝉弱し

数分の通り雨過ぎ人も葉もはぐらかされてわづかの雫

まだ咲かぬ青き朝顔まだ生れぬ雲の嶺恋ふ梅雨明けすぎて

空の青見上ぐるたびに癒さるるとふ子の言葉わが青を着る ==twitterに読む

遠く住む子は夏空の紺碧をひとり折々うつとり見上ぐと

後ろよりもしもしの声振り向けば知らぬ顔する携帯会話

舟を陸に上げたる黒き波の山 異様の刻印まざまざとあり ==テレビの映像




「不二なる旧盆」

よその人をときに母より頼りたる君の心をお盆に知らさる

忌日にてひとりか不二かデニーズのざはつきの中桃ゼリー食む

竹取の媼は今も宝子と不二なる日々を笑ふて詠ふ

高きより撃つ熱風に乗り魂(たま)は身に近々と屋内吹き抜く

悔ゆるとも濯(すす)げぬ罪の重さゆえ浄らなる人嘆くも妬(と)もし

後ろよりひしと抱きつき離れざる愛深かりし大き父の背




子ども

汽車で行く昭和三十年青森へ鹿児島からは二泊の煤なる

タンゴトン電車をそう呼ぶ二歳児の世界は素敵に充ちている

幼らに試してご覧とわが言ふは失敗織り込みはげまさむとて

母の尾にじゃれる仔猫は叱られてほどなく捨て子となるを知らざる





「八月末」

喉元の違和感憂さのゆえならずけふ診断はドライマウス

予報では三十一度まだましとバスで涼みて銀行その他

雨雲の不意打ち白き雨脚に道の黒々濡れてまた晴れ

天津風秋立つとやや思はせて驟雨の一閃こころ横切る

八月の終りの満月日に近し涼風こおろぎ空腹の我



ひまわり 4終焉」

ひまはりの葉の上にある緑色めうな形はつがふカメムシ

風止みて向日葵めうに静まりて油汗して我は団扇手

この一本が宇宙ならむ虫身をゆすり蠢く 白き紙魚(しみ)のごときが

花球の奥にひつしり黒き眼のいたづらめきて弧をなす種は

モンスターの枯れし下葉は小言好き誰か居るかにざははとそよぐ

速やかに葉月も流れカハラヒワのみんな逆立ちひまはりつつく

カハラヒワの太き嘴ややピンクちゅるると嬉しひまはりの宴

河原鶸ひまはりの種子残しゆくたらふく食べてあとは眠れよ

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栗の毬とともに 2012年夏過ぎる 18:24

哀れ 母の老いたること

栗のイガの巻

       f:id:logo26:20081217141236j:image

「夕涼」

夕まぐれ畳に伏して灯も点けぬ孤独も良きか月と虫の音

涼風にブラインド揺れ白々と透ける月影 こはどこの国 

どの部屋に行きても窓にこおろぎの囁く夜となる宇宙ノイズ

満月を見上げその位置描きみるけふ球面に溢るる日光 ==月が近い夜



「三世代」

二歳児もエノコログサの穂の柔さ感じたるらしふたつ引き抜く

オリンピック見たるゆうくんかけっこ好き腕を泳がしどこでも全速

「ゆうくんは男の子だから」たどたどとしかつめらしく二歳児の口

「お袋」というでもなくて唐突にあんたと呼びくる末っ子二十歳

二年生の通知表に書かれたる「無口無関心争ひ好まず」如何なる我か




「秋彼岸に思い出す」

盂蘭盆会みな仏ゆえ恨みなく集へる笑顔火影まはりに

思ひ出づる少女雑誌の感傷の朝(あした)のはまべ黄のフリージア

朝顔の凋むはかなさこの赤の色を限りと種を残さず

両の手の幸水梨に噛み付けばおもおも張れる甘露の袋

去年遇ひし水引草の咲きたるは十月なりしか花茎は紅(べに)



「違和感」

梅雨に咲く小さき白花アゲハ来てほほづき大の緑の球生る ==のちに金柑とわかる

ベランダの花は外向き天窓の真下に咲かば空を見上ぐや

半分の空占むる赤 予兆めく巨大鉄床(かなとこ)せみくじら雲

泣き暮らし涙も涸るるこの日頃ドライマウスにドライアイとは




「夏の名残り」

向日葵の幹に足添へへし折れば海綿のごと芯は濡れいて

鯖雲のあまねくだんだら仰ぐ目に空白くして雲青く見ゆ

律儀さを歌に詠むにも名の無くば報はれざりて牡丹色なり ==ミニマツバボタンとのちにわかる

一本の芽立ちも惜しみ残す庭にやがて緑の絨毯敷かる

露草も抜きて夜寒の時雨月あした晴るれば横様に咲く

戯れにひねる俳句に季重ねといふ壁ありてうたの自由



「秋の朝顔

咲かぬまま茂る朝顔みどりなす葉の投ぐる影白秋の頃 ==夜の街灯のせいらしい

諦めて切り置きし蔓の初花の色忘れまじヘヴンリイブルー ==heavenlyblue

露草と不思議に同色はつ花を十月咲かす朝顔のあり

十月の赤に黄の斑の蕾立つ祖父のカンナは本気に咲くらし

酷暑過ぎ息吹き返すばらの葉に虫のたかりてぱらぱらと落つ

木犀の風巻きおこる線路沿ひ泡立草の花穂は尖りて




「涼音」

左手も弦にふれつつ琴爪を構える今しひと声を待つ ==「ヨオイ」のひと声が合図

ひんやりと風のふとあり草引けば耳の後ろに百舌鳥の高らか

小童(こわらわ)の声やはやはと澄み透る公園に請ふ慈悲ぞあれかし

風と雨の拭ひて秋空さうさうと濯ぐがごとしこの乱し世を ==台風のあと

庭に出て雨戸ひくときガラス戸に映り込む月間近に眺む

くきやかに槌音冴えて雲もなし新築の家冬へと急ぐ

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金木犀とともに 2012年秋をゆく 18:32

母娘というより戦友のように

金木犀の巻

         f:id:logo26:20081217141147j:image

「不祥事」

海底のトンネルなれば仰ぎみる ありうるなれどまさかと打ち消す

沖縄に後生の花と名付けられ現世の庭に血の色の美し ==ハイビスカスの異称

負の遺産そのままにして政争の泥沼どしゃ降り猫バスも来ず

 

知らぬ犬よ叫び絶え果て爪痕はドアの表に抉られ残る

哀れ友よ女ひとりに与へらるる宿世の行方受け止めかねつ 



追憶サイト」

限りなく思へしメモリわづかなり追憶サイトの写真取りやむ

秋の夕 薄雲に紅刷かれいて優しき指の存在(ひと)ぞあるべし

函館のまちの輝き独り観てかへりし青年十三年前

二千八年挽歌以外をおろおろと歌ひ始めぬわが老ひづきて




「青き朝顔

珍しくなにか嬉しきことのあるそれが嬉しき秋の朝顔

五つ目の「大洋の青」小さく咲く 冬中育ち生垣となれ ==oceanblue

天の青ただ爽やかと思ふうち悲しうなりぬ秋風の中 ==heavenlyblue

名にし負ふ天上の青 霜月の寂しき色と横より眺む

冬立つも窓の向こふに淡青のヘヴンリィブルー咲けばたのもし ==立冬

百舌の声降る庭のすみ点々とスノーポールの芽立ちさみどり

夏蒔きし何かの花の細き葉がひそかに並ぶ立冬の庭




晩秋の樹々」

混植の生垣に春香りたる卯の花の実はこの赤か黒か

ほの黒きネズミモチの実花札に見たる時より風情好まし ==花札にあるか?

槙の葉に丸き深紅のふと見えて番のごとき緑の玉つく

腕太きさくらもみぢの一本が道に火灯すやるき無さげに

駅前のさらしな通り閑散といちやうの黄にもなほ緑あり

時雨きて光る車道にカラカラと桜紅葉の落ちて色冴ゆ




「喪ったもの」

失ひし二千四年の歌を探す電子の海に浮きつ沈みつ

悲哀より零(こぼ)れたる歌また掬(すく)ひ紐に結わえて指の冷たし

いかばかり砕けたるかと旧友のことばますぐに津波のごとし ==長男を知る旧友

玄関に毛玉のやうなる仔猫いてその日の嫌悪すべて許しつ ==次男のツィート

ヤブ医者に中耳炎の子を強ひし我 愚かなりしを遠く謝る ==次男のこと




「落としもの」

潮流のまなかの島よ災ひのひとつひとつに路の尽きゆく

遠流にて果てたる高貴の才覚の遺せし野望定家へつなぐ

平安の絹の衣をかづきつつ望月ひとり忍びて雲間

「雨は雪に変わる」切なきメロディの呼び覚ますわがイヴのお話





「拾いもの」

老年の夢みる未来まづ古家買ひて友垣媼ら棲まむ

新宿の母とふ人か吾(あ)を見付け良き気あるとて嘘とも思へず

何を待ち時の流れをわが生きる本もニュースも過ぎ去る翌日

不可解のこの世のさまざま耐えきしは今ぞ涅槃に安らはむがため

重き鉄は地球の芯にて磁場の元 なれど呼吸は錆をもたらす

白々と砂粒に似る星たちとクオークとの差異ゼロいくつつく

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烏瓜とともに 2012年首都をい往く 18:38

改めて母がその生を愛おしんで生きたこと

カラスウリの巻

        f:id:logo26:20081217141449j:image

東京湾アクアライン」

国道をバスは飛ぶがに白富士の右に左に遠く佇ちつつ

無謀にも東京湾を跨ぐ橋 風に煽られバスの耐へゆく

海をみて可愛い青い色なりと呟く己が心いぶかし

南風(はえ)にあれど未だ冷たし窓外に鴎の一羽飛びて進まず

底浅き東京湾に小舟止め潮の引く間を人ら働く

事故の報ヘリコプターは蚊のごとく淡く紅さす富士を横切る

幾たびも通ひたりしに思はざる富士は常にぞ我に添ひたる

樹海越え懐深く倭の国を見渡しやまぬ峰と思ひぬ




「アクアライン海底トンネル

虎のごとうねりてバスは海底に地震を怖るる毛穴の縮む

渋滞のトンネルをゆく車の列 日本列島に身を委ね居て

海底に閉ぢ込めらるる定めかと迷妄勝るにふと日の中に

川崎の工場の煙盛んなるを吉とするべし富士は消えたり




「都心の眺め」

ビル群ははるひに光り三角のいちやうの芽吹き幾何学の街

こんもりと緑濃くする神田川ボートハウスのペンキや床し

潮満ちて風の絵筆は白線を無数に描き川の溢れつ

暮らす窓 働ける窓 走る灯の反照わづかに神田川淀む

都会とは他所行きの顔 卑小なるねぐらに躱(かわ)すその美と速さ




「宵の新宿都心」

長月の十三夜ころ絵巻物めきて光の塔の群れ立つ

星見えぬまで摩天楼 玲瓏と光の元をいづこより得る

鮮らけき都心のビルの夢見時 滅びの前のマンハッタン




「帰路」

京葉道東京ベイを巡りゆき帰路は羽田へ 歌会(かかい)の旅路

新旧のタワーの漸次窓に立ち湾の埋め立て矩形連なる

まどろみて東京遠望二つながらタワー並べて木更津は暮る

名月を待つ七時すぎバス内を映す鏡となれる窓かな

山の影落ちる十六号線日の暮れて眩しくスーパー全容示す

文明の器とシステムに運ばれて吾は呆然と対価を払ふ

五井駅に更級日記の頃はもや文月四日の望の月の出

月の出をネオンの中に見つけたる眼ほどに携帯写してくれず

宵闇を金色燦然昇りゆく月速きこそわれらが自転

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ヒヨドリジョウゴとともに 2012年 歌の旅だった 18:44

母は施設でも描く、わずかの天然を

ヒヨドリジョウゴの巻

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「日本」

白き薄き花弁に紅さす山茶花を口ずさみつつ垣根を曲がる

書に倦めば夏は畳にどつたりと冬は炬燵にもぐる日本

女学生弓引く日々の黒袴ぴたり畳みて寝圧しの準備

ふるさとと言ふには淡き七輪の炭の香 畳屋 新茶を煎る香

  

山ふかき兵庫に行きて関東の人驚きぬ吾は逆にして




銀杏の頃」

冷え込みし冬空の下振り返る黄色に温(ぬく)き輝く公園

この季(とき)ぞ五井駅広場こがらしに万朶と黄の鳥賑はひ立てり

黄金の五井駅前となりしかな風といちやうの切りなき乱舞

空色の川の巡りの野の上に風強ければ機影静止す




「血縁」

待て待てと追ひかけゆけば転ぶまで逃げて幼児の鈴ふる笑ひ

諦めし物理の夢の誇らしく理科の友とふ名を子に与ふ ==孫の命名

やつと一つ釣れし小魚焼きたてを親子で分けし白き河原に

物差しを失ひし親敗戦の子の自由あり終戦生まれ

生垣の中に小鳥のひそやかに団欒らしきご馳走は何




「老いる日々」

待ちぼうけ海路の日和ざわざわとをつとかつまか生き残り賭く

老眼に許してをりし隅々の塵灰色に西日の射角

新しき命は生るれ 去るわれら長寿百年めざせどいつか

瞼閉ぢなほしずしずと湧きこぼる冬涙雨金柑に降る




「百円バス」

考へは休むに似たりバス降りて光なき空おろおろ歩む ==cf. 馬鹿の考え休むに似たり

電線の警告空が発しいて見回してみる霜寒の朝

蔦の葉の紅の図案をつい眺め信号赤にわがバス逃す

生温(なまぬる)き凩激し人絶えて乗り合ひバスを待つ月忌日




世間

政権右傾化支ふる若き声ネットの中の居場所しか無き

カラオケの箱根の山に轟ける唄声の快わがはまるやも

雪と雨のあはひのミスド小女子の小声の会話嗚咽へと変はる ==ミスタードーナッツ

天空の鏡面ビルに映るバスの窓にわが顔あり見詰め合ふ ==ビルの谷の首都高速

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2015-03-06 枇杷の花とともに 2011年 怪奇の年なり

2011年

老母、意識混濁を脱する3月

枇杷の花の巻

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「兎も角も兎年」

あらたまの年はしらくも風に乗りめじろせきれい舞ふ無重力

兎も角も明けたる年の空のみはどこかほがらに鳥さえ歌ふ

堪へかねてつひに落ちたる悲しみの結晶のごと雪は白かり

   


「ラビリンスクイズ」

北へ行き風邪ひきになりゴミの日と勘違ひして儲けたる今朝

ラビリンスクイズ好みし昔われ浮き世迷路に小みかん食す

 

当然の結果と言ふべしくねくねともがき来(こ)し今 烏賊(いか)料理でも

うんうんと頷いて読む寒の句ら逃げも隠れも出来ぬ日々

生き御霊(いきみたま)美(は)しき記憶に紫の母をやがては吾(あ)も偲ぶらむ

==母と別れることになる

この葉こそ暑き寒きも常緑に偶(たま)さかの斑(ふ)の白く輝く==桜蘭らし??




ネガティブポジティプ」

曇りのちふと空晴れて眩しさを仰ぐ間もなし風と雪来る

いくつかの節目のあともぱつとせぬそのくり返しなれどポジティブ

何もなきベランダも佳し木と泥と時々花のさらば混沌

冬空になどかすじ雲長きさま見上ぐるに蚊の如く飛ぶもの ==飛蚊症

若きらのつむり傾け眠る機の揺るるがままに黒き濃き髪




「みんなガンバレ」

あちこちに押しやられてはまごつけど一つ確かに真理のこの身

それぞれに負けるなと言ふ母と夫弟と息らその妻子らに

その日のみ結婚の日がダントツの幸せだったそれもなほ吉

闇覗きつつに対峙す引っ越しの無秩序夫に試さるる日々

次々に波頭厳しく迫り来て左右に凌ぐ孤身のジャンプ




「自然の癒し」

弥生へと向かふ末日枯枝のパールづくめに祝ひの微光

カラカラに耐えたる二月末日の深夜かそけき慈雨に満たさる

うた心思ふ暇なく如月の冷気を吸えば春の香もする




「ゆきやなぎ」

針先で突つきたる白 刻々と雪の花こそ春の蕾ら

忘れ雪過ぎし朝(あした)の枝元に目覚めたるかに雪柳の眼

かにかくに陽は落ちつつに眼裏(まなうら)のオレンジの色温し静けき




「憂慮ばかり」

悲しみの明日の蕾ふるえつつ吾(あ)を待つ知らせ咲かず散りてよ ==踏んだり蹴ったり

千年の震災をなほ生き延びし人等をやがて待つ死はいかに ==引越の日の東日本大震災

別れむと幼なの肌に寄り添へば友情の香の開く心や ==一歳の孫

一つずつ作りし荷物ひとつまたひとつほどきていかなる日常




「千年の災ひ」

約束の地とぞ思ひて着きし日に地と海と火と凄まじきまで

千年の災ひなれどたやすくも消ゆる命か母なる地球

被災者の言葉の健気聞くだにも知らず知らずに涙流れ来

カキ菜とふ天ぷらうまかろカキフライの美味なることは承知してるが

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シャガとともに 2011年を転がる 22:01

子どものように母は「来てね」と

シャガの巻

            f:id:logo26:20070701063329j:image

「大移動を果たして」

電話力知力体力積年の我慢力生く大移動かな

黄ばみたる手紙に母の心配を読むけふもまだ不孝の止まず

歌ふには事実の無惨 音の数三十一の美し気なる

ありさうで突拍子もなき生温き夢の世界へ昼寝などして

良き過去にあらざりて さて落武者のよろける幅も無き道を見る




「初めてまみえる景色」

人工の放射能吹く風の地に移りし決意ガチンコ運命

山稜の見えぬ眺めに棲み着くと小さき竜巻数秒を舞ふ

渺々と平らなる地に北を指す山の端なくて迷子の暮らし ==どこまでも平野

町並みは廃屋またはニューホーム小佝痩身路地に老人

雲の壁つなみかと見ゆ 頭上にはザトウ鯨ののしかかるかに

死にし子の空はいかにぞ冥かりし玻璃戸危ふきカラっ風に遭ふ



「庭の爽やか」

引っ越しの残せる痛みかばひつつ野原横切りたんぽぽ元気

鉢のまま運ばれて春 露草の瞳の色は他に無き深さ

イクメンの子の押すバギー ライフまでローズ匂へる生垣沿ひに

越してきたカンナ露草あをあをとさらなる日々へ作る思ひ出

すずかぜに白き山吹 ゴーヤ苗の細きらせんを巻き付けやりぬ

水面澄む早稲の水田いつよりか房総の地に人の住み初む

風荒るる枯れ野なりしに水張田の整然として空をも揺らす




「我が家と呼ぶ」

自らを愛することがどうしても人のスタート逆説なれど

ふと浮かれ新所帯めき購へる家具鮮らけく余生なるかな

老年の小さき喜びイエローの書斎と名付けモンステラを置く

ひよつとして夢を叶へし我なるかガラスの部屋モンステラある

穏やかに明けたるけふもやがて風びうぶう唸るガラスの家に

風の凪ぐ午後三時すぎ音も絶えただ陽の白き長閑の世へと



「悪あがき」

 今で言うアラフォーの頃、夫に若い女と浮気され、女(あざみという毒々しい名であったが)がいよいようちに夫を連れ出しにまで来た。

 そして自分が若いことを盾に、悪アザキやめたら、と私に言う。

 私は真面目に悪あがき、と訂正した。あざみも悪あがき、と訂正した。

 しかしまた間違う。また訂正する、それをくり返すあざみ。

 包丁を手にしての話である。

 ともかく悪行尽きて夫はお払い箱となり、死病にもとり憑かれ、平屋で古くて安くて都市ガスでネット接続を条件の貸家へ引っ越すはめになった。勿論ほぼ田舎である。

 まあしばらくは罵り合いつつこの世にいるのだろう。十年だろうか。

 けっこう焦ってくる。絶望してくる。諦めるほか無い。

 何かができる、社会の中で何者かであり得る、専門家になる、何かを後世に残す、夢の夢がパチンとはじける。すがるよすがもないのだ。

 しかし、ここ十年勝手に短歌めいたものを作っていたので、せめてこんな凝縮活動を試すことにした。

短歌とふ一首の独立こそ独自 凝縮されたるため息の花」

「小説を書くは退屈 詩はどこか放恣 句作は覚悟の薄し」

「せめてこの恨み節ならお得意と なけなしの利休鼠の雨の日々」

「口をつき言葉になれど眼はかすみとことん突き刺す焦点見えぬ」

ーー問題はしかし我の情けない人格にある。

「間違いはあの分岐点 しかしあのままでも堕落俗物の坂」

「世を外れ何も要請されぬまま望みも意気も閂の文字」

「どう言えば申し開きがたつものか神のみ前に怠惰の理由」

「成し遂げしなく 役割も果たさずに 役にも立たず放浪もせず」

ーー死を切実に感じる。次の瞬間が今際のときであるかもしれないのだ。

「この歌が最期の思惟であらばあれ 歩みの果ての愚言述べたり」

「もし明日に死の待つとせばこの今を惜しむも愚にて無念の遅さ」

ーー通りを歩くと、あちこちに後期高齢者の方々が独り住まいらしいのを多く見かける。

「どうだらふ老婆あれこれ見つつ行く終の姿の品定めして」

ーーにもかかわらずふと、この夏一番の朝顔の花に出逢うと、同じ生物の美の喜びを感じる。その能力にはまだ衰えはないようだ。

「朝一番 赤紫の朝顔の初姿見し バスの窓より」

 このバスにもお年寄りのみが乗っている。

 仕方ない、年貢の収め時とはなるのだ。

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かきどおしとともに 2011年情けないまま 22:12

白い小さな頭を撫でる、母の頭を

かきどおしの巻

            

           f:id:logo26:20080106182928j:image

相克の分析」

天に地に彼を気遣ふ人あるに哀しみの根や母者を恨む ==彼のねっこ

苦のあらば生の手触り赤々と難に出逢へば覇気もて罵倒す

この重き病ひ悲しむむしろ苦を求むとばかり五十年を経つ

たれに言ふみな老ひゆけばかの秘密投げて捨つるか墓所もなき身は

キリストの求めしイバラたれゆえに苦悩あまりて神は立ちいづ




「回避行動」

見渡せど閉ざさるるのみ夫連れて袋小路に明日はあらねど

夜も果てて家族の縁(えにし)かりそめに結びしものを哀れ愛しむ

愚かさを憎む夫なりひたぶるに怒りき妻の謝らざる時

どうなさる薬も医師自殺さへ逃亡も無理ただ核の雨

襤褸被く(ぼろかづく)夫を護るにしくは無き微動だにせぬ我は鋼鉄




「原因と心理と結果」

たまたまの脳の接続 女(をみな)へと生の全てを預けて愚か

何故ならば自分を追ひ詰め武士(もののふ)の捨て身を試す死の切っ先に

母よ母汝が子を護れ癒すべき天(あめ)の力は夢にすぎねど

母恋ふる幼なの情の癒えざりて深く潜める脳の歪みに

これまでと叩き付けらるその先に脳は意外の出口を示す

道無きと見えしところに思はざる綱は投げらるそれを掴めと




「結果の反転」

道尽きて遍(あまね)きおのれ悟り得て堂々迎ふる越境の刻

自を去るはまもなくなれど太極に迎えらるらむ 静かに語りぬ

懊悩の果てに得たりし超越もたちまち墮するだだっ子の性

悟りにも癒されまじとかく深き自虐の仕組み哀れその脳

不幸をば言い訳とすや他人の非を言い募ること普通とは言へ




「はるばると来たぬかるみ

正しさを言ひ募り他を貶むる言を三十年馬耳なる耳に

言い募る汝が言聞きてそを捨つる極意三十年毒舌何ぞ

真のところ測りかねてきしその気質幾年ともに不幸の日々を

わが欲と汝が慾かつて重なりしことありしに世に届かざる

叶ひたる夢もあれどと叶はざる夢をなほ追ふ吾ぞ愚かしき

我が欲は愚かしきほど限りなく汝が慾は小どこか卑怯




「力関係」

父の死は母の望みのせいなりと言ふ意味も吾を軽んじたきゆえ

隷属を悲しきまでに堪えたると二人ともにぞ思ひいるかも

なにゆえのこの隷属の悲しきに段ボール箱を蹴るこれでもか

おっととは妻に命令する者か上下の発生体力の差のみ

隷属に甘んじ悪口に動じぬを強さと誇る正しきやわれ

激やせの夫の診断震災PTSDまあそれもあり




「せめて自愛」

悩ませぬ日とてなき夫物わかりよく優しくば自由も恋はじ

負けん気か負けて諭すか「自由など遊び暮らして夢と消ゆるを」

自由無き介護の日々が課せられし定めにて我が救はれいるや

すでに吾も病持つらむ 痩せし背に夫の若き日戻り来る今

複雑に絡まる世界のなりたちに違はずすべて無明なるらし

さにあれど楽しき思ひ出ひとつほどあるか いくつかあるにはあれど

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セージとともに 2011年混迷深し 22:22

明日また往こう、母と話に

セージの巻

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「せめてみじか歌」

そこここに街に影行く一人居の日々のたつきの古き編みかご

憧るる自由の朝は来るや来ぬ 淋しかるとも生命は光らむ

格言にあらず詩となれ どこかふと言の葉の露やや燐めくと

これの語に意味はた価値も輝きも無きと知る身の草引き屈む

何を得し珠のひとり子生れたれど花咲かむとし散らせしもある

幾月も供花の歌なく水無月の命日くるを知るや明眸




「命あふれて」

南瓜の緑と黄に覆はれて次が待たるる隣人の畠

梅雨晴れの白きてふてふ おほわらは丹精の葉にお邪魔しますと

につくしと花食ひ虫を落としては赤児のごとき脆さもあはれ

キアゲハの母の見つけしからたちを護りたき我れ赤児を落とす

アゲハ次の日にも来 五十ほど柔き葉の上よろばひて産む




「ただ穏やかな日々を」

今この日安穏なればあしたもと願へど雲のゆるらに流る 

孤愁すら恵みの日なるにふと浮かぶ何かに怖れ遠く逃げたし

笑ひ合ひて朝夕過ごす願ひさへ容易ならねば諦めし数

子と夫に意味を問はるる短歌とは民の心の削ぎたる記録




「相談相手は弟」

前向きの弟なるをわづかなる残余なるとぞじゃれ合ひし頃

子育てや愛や仕事や結婚を蔑(なみ)し社会と無縁に生きし

運命を信じし軽さ難題を乗り越えざりしわが愛弱き

もう自虐やめませんかと言ひくれし人とも会はず逆縁幾年

手応えはビタミン剤のせいであれ一時だけは心泡立つ




「外の世界」

ブラインドを透かし眺むる陰影のとぎれとぎれて人等束の間

家々に時に喧噪もれくるも誰かの我慢に崩壊免る

空港へ涙構はず急ぎしに勇気崩れて葬儀に行かざり

海と空あはひに架かる大橋をひた走るバス 色無き世界を ==東京湾アクアライン

濃淡の利休鼠のあはひへと船は消えゆく吾は水底へ

海底に閉じ込めらるる定めかと地震怖るるにふと日の中に出る




余震に遇いつつ終の住処か」

その一瞬予期せぬことの起こりしが「日本沈没」すでに予期あり

無謀にも東京湾を跨ぐ橋風に煽られバスは堪えつつ ===東京湾アクアライン

小舟より東京湾の底に立ち働く人ら潮の引く間を

なぜか良きガラスの家はしっくりと隅々までも惜しも我が家

見比ぶるきうりや茄子の花の色それぞれに佳し葉も怜悧なる

庭に生ふる柔きイネ科を踏みて舞ふひとり稽古に蚊もくる夕べ

借景の桃や柿の葉無花果は白き我が家の品よき飾り

笑ふがのかぼちゃの葉には大きさもこれほどなるべし花真っ黄色




「愛のわけ」

ひとときを母と過ごせる帰るさの暮るる坂道父さんと呼ぶ

昼寝より目覚めし孫は枕つかみ即片付けぬ園のしつけか

見渡すに子ら健やかに設計図違わず生ひて水瓜を齧る

孫一歳また遊ぼうね我が言ふにこつくりしてみせ見返りて行く

この愛の理由(わけ)は思はずいつまでも待つうらうらと土曜日の駅

集ひ来て挨拶交はす声々の駅舎に高く明るく響く

理不尽に砕かれて往く日々のこと子らは嘆かず母を巣立てば




「今昔」

阿蘇の野に若きら座して他愛なきじゃんけん遊びふと思ひ出づ

才長けし吾なりしにと悔ひいるがこれぞ非才の証しなるべし

浮かれ唄眺むるばかり視聴者の一生も僅かそこそこ気楽

戸も開けず籠るふたりに細々とたつきの柱個人年金

ブランドの腕時計もう用無しとソーラー電池を要に動く

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錨草とともに 2011年死に往く人 22:30

温かい母の体

いかりそうの巻

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「飽くなし、飽きもせず」

自が生の底汲み尽くす貪欲を飽くなき希求羽搏かしめよ

何首まで呟き漏らす夫寝ねてかすかに埃舞ふ電脳画面

しんみりと散らし書きする独り居の夜半に欲しかる美声のメロディ

家内を拭き清むる日僅かにも美の顕はるる鏡の世界

独り寝の淋しくもなき身の内の唯真実の美しきを請ふ

飽きもせず苦労のあるかしみの浮く手に柿の額少しまろばす

寝足りしか脳のやる気にわが赤き後生の花も咲き継ぐ意気地

けふは夏至希望の坂を登りつめ明日はとぼとぼ冬至へ向かふ




インターネット無し」

ネット無くつながり無くてヒグラシの真似したくなる調べ独りに

友三人あることの地の温さゆえ泣きごと言ひて花比べなど

過ぎ去れば戻せぬ時をぼろぼろと価値などなきと知りつつ使ふ

紅つけずしらが隠さず背を伸ばしクリームだけのせめて闊歩す

くちなしの白さ重さよ馥郁と香のたつらむに雨足しげし




「歌と挌闘」

ふとみると十日も詠まぬ心もて右往左往のこよみの印

軽薄に涌き出づる詩句 えい、ままよ胸深く居て書かねば非在

日常の歌を詠まむとエッセイのごとく書き継ぐびっしり頁に

感覚を研ぎ澄ます旅するならばあしたの浜辺渓谷もよし




「庭のすべりひゆ」

公園に彩りなせどわが植えしすべりひゆゆえ窓より笑まふ

忘れ得ぬ日に言霊はきらめくにすべりひゆ見て哀れ忘るる

からたちの花の小さきに驚きて旋律のなほ愛しまるかも ==島倉千代子ではありません

花白きからたちの歌棘の先まろき金色せつに待たるる ==北原白秋です

庭草は我が子らのごとそれぞれの形を成して日照りに負けぬ

死ぬほどの苦しみならばよく堪えしそれまでの日を褒めてやりたし

文月末歳を重ねて宝石のばらまかれいる庭すべりひゆ




「父の墓」

弟の病み嫁の病み思はざる径へ踏み込み平野へ下る

またも発つ彼方の岸へわがうからいづれ目見ゆと想ふ小夜月

向かふべき岸辺はあるや菩提樹の木下(こした)涼しく物理の涯てに

お盆近く父ひとり居る熱き穴 縁者すべてに呻吟続けば==弟の最期の笑みを見たころ

熱風にさらされ悲し誰ひとり心頭滅却できもせず南無

父の墓に烈火の草抜き汗飛ばしうは言のごと怪しき会話




「晴れやらず」

人間にもの事の意味わかるはずなくば得てして不幸を招く

朝九時の西側の陰さはさはと海風まとひ太極に舞ふ ==庭で太極拳

百人の自死せぬ日なくアナウンス聞く駅の端 熱風おどろ

山之辺の吾子の墓にも熱風の吹くや涼しき精霊遊ぶ

不幸なくば傲慢軽薄限りなく情け知らざる我となりしか

苦をひとつ乗り越え待ちし台風の雨終はる頃ガタガタが来る




「東京湾アクアライン」

息子よりメール応答なきときは無関心より不穏の理由

いち人に命預けて心急く高速バスは燃ゆる地球

利用する羽田空港普段着に 時には妬(と)もし旅の華やぎ

水枯れむ小庭(さにわ)思ひて急かるれどバス待つ足にねんざの兆し

空港に夢溢るるを見つつ吾(あ)は食欲もなき夏のからぶり

忙はしさに長く見ざりし夕空にビルの頭のごとき淡月 ==高速バスより見る

湾にやや白波立ちて銀色の鴎と機影風に乗りゆく

菅笠(すげがさ)の媼(おうな)汗拭き休みいる草はらにわがまなざし憩ふ




「白い朝顔

青白き涙の色を思はする朝顔咲きてけふまた雨らし

写しおかむ 赤のはずなる朝顔の青白なれど待ちわびたれば

陽と雨とこもごもの朝 露草の紫匂ふ青きらびやか

去年(こぞ)までは桜と竹の家に居て 重力のごと蝉は時雨れき

ジイジイと一匹の蝉聞きてよりさらには増えず樹のなきこの地

柿の木の切り株ありて細き枝(え)に葉は繁りたる 紅葉ぞ待たる

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小菊とともに 2011年に別れて 22:38

この母といつ永遠に別れるか

小菊の巻

           f:id:logo26:20081217141646j:image

「弟逝く」

夏来れば誕生日あり死ぬもあり弟死にたり今年の盆に

百合と笑顔の父と一枚の写真に浮かぶ互ひの祈り

晴れし日の夕空星の光り初む群青色を好みたる人

その淡きあまりに淡き花色のホテイアオイの薄紫の

思ひ出は大き水がめ 金魚ゐて祖父と眺めし薄紫よ

朝すでに積乱雲の貼り付きて倒れ来るかの二次元の空




「とつおもいつ」

右耳にけふはミンミン珍しく ジイイは普通われは蝉の樹

寝転べば畳の固さ垂直の底の四方は平らかにして

薮椿切り絵の中で褪せもせず新聞紙なのに夢かと咲きて ==平二郎の切り絵

夏の旅恋してた頃麦わらの洒落た帽子を風が奪った

かすかにも夢見の世界 先代の皇后とかにて言葉を交はす

そこそこに幸運なりしを台無しにして賜りしおごらぬ心

千本の竹刀の素振り師の曰く時に神様降りて虹色

朝顔の絡みし蔓をほどくごと机上のケーブル敬して分つ




「夏の終わる気配」

どこか似た笑顔のままの弟の空に浮かびて今なほたよる

目覚めねどしばしの別れ 夏来れば花さるすべり必ずや遇ふ

その朝に目覚めぬ我に涙する人あるまじも彼方待たるる

虫の音のふいに美し霊祭り彷徨ひいるや涼風吹けば

秋や立つ 風の音には驚かね虫の一声聡くも聞きぬ




「共同生活」

牡丹色にエノコログサの茂みよりひとつ光りぬ松葉の細く ==ヒメマツバボタン

牡丹色ねこじゃらし等のジャングルに声を揚げたる希望か花か

おんぼろの車に寝転び閉ぢこもり雨水流るる夫との暮らし

散らし書きどうでもいいか さりながら更級日記を読めばをかしも

日々来たるヤモリの腹の消えし窓おおかまきりはカンナに居るや




台風

ひとつ咲き二つ目が咲く翌日に紅濃くちぢむ隣りの白さ ==酔芙蓉 不思議な咲き方

歌はねば消えていくのみ刻々の千切れ雲さん切り取りますよ

あれやこれ胸騒ぎして閉ぢ籠る暗き部屋々々台風を待つ

台風が屋根をどどつと撃つ中に蝉の一声深夜にありぬ

大風の雨戸揺らすに家の無き人等の濡れていづこにぞいる ==孤独なホームレス

暗雲のまたかかり来と吐息すも花の輝き大風に克つ

黒雲を薙ぎつつ青と白雲の速度をまして輝く侵攻





「秋の彼岸

彼岸すぎ夏を見送る花鋏百日草の色は末枯れず

関西に卒寿の恩師研究になほ勤しめる人生の秋

収穫の苦瓜ふたつ恐竜のやうに抱きて裏声ホホイ

月まだし十六夜にしてつくつくと鳴くもしばしや絶え果つるらむ

程よきは歌の形か波打ちて心とよもすもの長からず




「心萎え」

心萎え空も仰がずコンビニの高き声にも無言にて過ぐ

ああそこに紅(べに)の水引いたづらに回転しつつ真白く笑ふ

何となくひともと庭に茎あるを手折る間際の紅の水引

からたちに畏れ屈みて白秋も歌はざりし香未知の香をかぐ

   


供花

返歌してネット歌壇に遊ぶ間に汝(な)へ供ふべき菊は咲きつつ

幻と玉の体は消え果てて白骨(しらほね)となりたるしらじらと

空色に塗りたる屋根をいただくはそのまますっととび立つ準備

母われの無闇に言の葉つづるのは真なる何か現はるるかと

得も言へずゆかしき面の健気さを報はれをらむ天のうてなに

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黄菊とともに 2011年歌と生きる 22:45

母の細胞は縮んでいく

黄菊の巻

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対話

珍しく音聞かせたる風鈴は北国生まれ冬めく風に

軒端からそろそろ風鈴ドアノブに吊るせばコンとノックしてくる

ポーチュラカ霊気を浴びて甦る どうするつもり根は切ったのに

おじさんが「気持悪いよ暑すぎて」トンカチしたり雑草抜いたり




「秋思」

心憂くワード開けばひらりとぞイルカの出づる瞳賢し

夜に聞く屋根の雨音安らぎの深き息する柔き夜具うち

夢を見てたれにぞ告ぐる夢のごと憧るる人けふも現はる

言えぬことあれば歌にもできぬゆえ漏らす言の葉じぐざぐと舞ふ

空広きネットの窓から見る茜 旗雲ならむ布のいく筋 ==ブログに見る写真




「秋風」

房総に山も紅葉も見えずして銀のすすきと黄菊のみなり

海に生れ裏街道をヒイフウと獣めく風この雨戸まで

かがみつつ裏道帰る シャッターを鳴らす夜風とコートの抗ひ

もみぢ降る おはりの時は鋭さのゆるびたる指乾ける音す

北風が朝の小窓に貼りつきて千の声して轟きうがつ




「回想」

二晩の旅の夜汽車の座席より転がり落ちし姉弟ともども ==鹿児島より青森まで昭和29年

弘前の港なりしか桜とふ美しきものあるを知り初む

リンと聞く短冊もろき風鈴津軽の音よ風強まりぬ 

春や春山たたずみて さ緑の土手に光れる津軽の小川

朝霧の彼方へかすむ電柱も物思はせし登校の道 ==山陰の町

遠きころ更級日記の姫君の物狂ひてのち哀れ世を知る ==源氏物語への物狂い

不思議かな房総半島平らなる石器時代の果てなき空はも ==昔の上総の国




「ゆうくん」

カレンダーの裏や紙切れ孫の書くひょろひょろの線有り難きもの

ゆうくんが天使の声で初めてのモチモチオイデ言ってくれたる

その声の可愛く嬉し夕空になべての悩み放り捨てなむ

ゆうくんと心を交はす言葉にて 普通なれども特別なりし

小柄にて言葉遅しと戸惑ひて敏き子なるをわが老婆心




「退職者」

アメリカのドラマの続編来春と 退職者にて過ぐるまま待つ

陽射しなき部屋に幾年住みたるか はなはだしくも黴は笑ひて

秋深み照り翳りする縁側に残り毛糸を鉤針に編む

戸も開けず籠るふたりに細々とたつきの柱個人年金

ブランドの腕時計もう用無しとソーラー電池を要に動く




「秋のイメージ」

アベリアと金木犀の路 母を看に白に紅さすむくげを曲がる

母を看に急ぎし坂の夕星とアベリアの香の思ひ出セット

年々に咲きてぞくれし紫の桔梗一もと置き去りにせし

人群るる動物園は夕映えてガラス越しなる獅子の遠き眼




「冬への観察」

住まい/

灰色の気を美化しよう真っ白い大根を煮るまだまだ我慢だ

冬の蚊の棲みつきてより幾日か遠慮がちなる羽音オスらし

穏やかに日差しは降るも霜月の雀の仕草 明日は来るやら

平屋建て方位斜めのマッチ箱 陽は四方より魔法を使ふ

北窓に西日は赤く隣り家の反射光とし東にも差す



自然/

見事にも庭一面のやぶからし 霜に枯るるや名残惜しとも

シベリアの虎の咆哮かくやもとケーブル揺する冬の切っ先

黄の帽子かぶるセイタカアワダチソウ 疎らに立ちてちかごろ小ぶり

アキアカネその名の由来これなるか赤の深さよ悲壮なるまで

青白き朝顔すでに抜きたるをなお芽の出でて継子扱ひ



自分/

退屈を知り初めてより引き込まれ裏目表目寝ねもやらずに ーー編み物

歌誌のはや11冊なり来年へ心預けて暦を集む ーー結社の月刊

真ん中に突っ立ってみる バス停の小道に刺さる腕組みの影

メモ帳も最後の余白 苅られたる実りの色の残す田の彩

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柿もみじとともに 2011年やっと終る 22:50

白髪の母は運のよい人である

柿もみじの巻

         f:id:logo26:20081217141105j:image

「近き思い出」

けふの幸こそ忘れまじ満月を見て交はしたる親子の眸

仏桑華(ぶっそうげ)と呼ぶはなにゆへ緋の色の最後の心ふたつ開きぬ

藍色冬至前後の沈みたる空の夕星頼りの光

             

大洗海岸の波営々と寄するを人ともの言はず見き ==亡き弟と

金木犀匂へるころも夜々母に待たるる身にていはゆる名月




「遥かな思い出」

緑山に向かひ手を振る 三人(みたり)して昼餉を共にしたる嬉しさ ==息子3人と過ごす

墓山に庭石菖(ニワゼキショウ)の淡き海 影か光か頷き浮かぶ

滝道を行く母の背のなだらかに美しかりし去年の秋

末っ子の初めての語は「アナ」なりし棒を差し込む木のおもちゃの名

寒の入り逃げも隠れもできぬまで四方の氷の袋小路

僧ひとり橋のたもとに錫の音の時雨をつきて耳にはいり来

雪の中兼六公園新婚のそぞろ歩けば縄目正しき




「初冬の庭」

待ちかねし銀杏も散りて地の黄色 赤く溢れて山茶花すでに

切りも無く顔出す雑草小春日に莟もつある「あなたはだあれ」

かの人の世には知られで遺したる言の葉いくつ惜しまるるかも

ネギ人参キャベツと炊かむ昆布出しに自然の甘さあえて肉なし

日差し得て庭のいのちと過ごせしが醜き空となりて頭痛

俯きて草引く耳にたれか来る靴音めきて固き枯れ葉の



「日常」

濃き赤の最後の莟開きしが巻き戻しのごと仏桑華閉づ ==花期長いハイビスカス

陽も澄める部屋の朝ドラ午後ならば泣くなどせぬを堪え性なき

歩道にて白鶺鴒とすれ違ふすたすたつつつ行人われら

言い交はす家賃の支払ひ忘るるな命ずる人と実行役とで

自死したる娘を理解する術やある父はさまよふ電子の海に

人間にもの事の意味わかるはずなくば得てして不幸を招く

冬至まで辿り着きたる雀らは庭に残れる葉を食むらしき

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