金曜行動の日に(続)

秋の夜の金曜関電前行動の日.出掛けは雨模様で傘をもって出たのだが,雨も上がり,少し遅れて加わってきた.参加者はいつもと同じくらい.100〜150人か.皆と声を合わせながら,いろいろ考えるところが多かった.
福島の今: サイト『福島 フクシマ FUKUSHIMA』は福島の現実を伝える.最近の記事では,「汚染水より深刻 使用済み核燃料の取り出し――収束作業の現場からⅡ」,そして「汚染水流出 その危機の本質」が読むものに大きな問題を突きつける.もし今国会で秘密保全法が成立すれば,このようなサイトはどうなるか.田中龍作ジャーナル「原発は秘密指定される」にもあるように,原発関連の情報発信は秘密事項に指定され「福島 フクシマ FUKUSHIMA」のようなサイトは閉鎖の圧力がかかるだろう.もちろんそのときは,心あるものの連携で,圧力を受けたサイトを守り,閉鎖されればまた他で現れるような,そんなことまでの心づもりが必要な時代になってきた.もちろん,秘密保全法を阻止すべくいろいろな試みがなされているし,こちらもなし得ることはしたい.反対運動そのものが,次の段階をきり拓く.
若いスポーツマンへの広瀬さんの呼びかけ: 『COUNTERPUNCH』に,「a letter to all young athletes who dream of coming to tokyo in 2020」(東京五輪を夢見る若いアスリートへの手紙)として「Some Facts You Should Know About Fukushima by TAKASHI HIROSE」(福島について知っておくべき事実,広瀬隆)が掲載された.東京五輪の賛成反対はいろいろあってよい.しかし,事実として出来るのか,これが問題である.結論として言えば,開催は不可能である.そのことを広瀬さんは事実をもって語りかける.この手紙がもっともっと広がることを願っている.
アメリカ国債のデフォルト問題: アメリカ大統領と共和党の間で10月17日までに妥結が出来なければ,アメリカは国家として債務不履行国債の支払いは行えず,デフォルトに陥る.
このアメリカ国債が紙切れになる事態が現実化している.アメリカ国のデフォルトである.共和党の一部には,アメリカのデフォルトを拒まない勢力がいる.デフォルトすれば,日本や中国が保有する膨大な国債を帳消しにすることが出来るのだ.いわば,思いきり借金して計画倒産するようなものである.だから,なかなかオバマとの妥協ができない.時間が過ぎる.倒産する直前ほど身近なものから借りまくるというのはよくあることだ.アメリカはその状態に陥っている.
アメリカは現代のローマ帝国.崩壊をはじめたローマ帝国である.この間までは「凋落をはじめた」と言っていたのであるが,いまは「崩壊をはじめた」である.そうではないだろうか.実体経済の裏づけなく政治力と軍事力を背景にドルを基軸通貨としながら,そのドルを一国の都合でどんどん刷りまくる.どんな経済モデルを使って未来を予測しても,これでは必ず破綻する.今回はその場しのぎが出来たとしても,それはよけいに傷を大きくして次の崩壊を引き起こす.ローマ帝国の崩壊は避けられない.
日本国は600兆円ものアメリカ国債をもつ: 日本政府は決して公にはしないが、日本国は数百兆円に上るアメリカ国債保有している.これが塩漬けになっている.日本の消費税は5%になってから年間ほぼ10兆円であるから,消費税60年分である.3%の増税なら,なんと100年分のアメリカ国債である.消費増税が必要なら,なぜアメリカ国債をまず現金にしないのか.絶対にマスコミはいわないことであるが,この問題は従来から知られていた.少なくとも,福島復興と福島第一原発の事故処理のために,この債権を現金化すべきだという意見は前からあった.日本政府は,この債権には一切手をつけず,それどころか逆に消費増税に走ってきた.
日本が保有する600兆円のアメリカ国債が紙切れになることが現実の問題になっている.そのとき,誰がその責任をとるのか.福島の核惨事と同じである.誰も責任はとらない.そして日本はローマ帝国の崩壊とともに,紙切れとなった600兆円の塩漬け米国債を抱いて崩れるのではないか.「抱いて」と書いたが,実はアメリカ国債の証券は日本政府の手元にない.預かり証を渡されているだけである.アメリカもまた日本を信用していない.売られては困るのである.それに従順にしたがっている日本政府.
この問題に言及したのは,かつての橋本龍太郎首相であった.1997年6月23日,コロンビア大学での講演において聴衆から「日本が米国債を蓄積し続けることが長期的な利益」に関して質問が出た際,橋本は「大量の米国債を売却しようとする誘惑にかられたことは,幾度かあります.」と返した.そして,アメリカ経済が与える世界経済への影響などを理由にあげた上で「米国債を売却し,外貨準備を金に変えようとしたい誘惑に,屈服することはない」と続けた.しかし,大量の米国債保有する日本の首相が「米国債を売却」への言及をしたことが大きく注目され,ニューヨーク証券取引所の株価が一時下落した.そして彼は,2006年7月1日,東京都新宿区の国立国際医療センターで腸管虚血を原因とする敗血症性ショックによる多臓器不全のため死去した.早すぎる68歳の死であった.
また,この問題に立ち向かったのが中川昭一財務金融大臣であった.その死の顛末は「中川昭一元財務金融相「変死」にちらつく米国の影」などを参考にそれぞれ自分で調べてもらいたい.
運動の転機: 脱原発運動も転機を迎えている.
小泉純一郎氏もまた脱原発である.彼がおのれの思想として脱原発を言うのなら,まずかつて進めた郵政民営化規制緩和などの新自由主義政策についての総括というか反省が先だろうと言いたい.ところがそれはない.ならば,小泉流脱原発では,TPPはそのまま進み,日本の農業は最終的に崩れ,モンサント式の遺伝子組み換え食品が行き渡り,混合医療が一般的になって国民皆保険は崩れ,一定以上の医療は金持ちしか受けられなくなり,日本郵政の金融部門は破綻し,その金融資産はすべて外資のものとなり,アメリカ国債は紙切れとなり,その一方で消費税は10%を越え,若者の多くは正規職に就けず結婚も出来ず,地方都市の商店街はシャッターが降りる.この荒涼とした世のなかで,原発は止まる.これが小泉流の脱原発ではないか.
これは私の,脱原発運動の内部での小泉批判である.小泉氏が脱原発の統一行動の輪に入ることは大変いいことだ.脱原発の一点で統一できるものはすべて参加する.議会選挙があれば候補も一本化する.そのうえで,内部での批判は大いにやる.小泉氏に,行動の統一・批判の自由を実践する度量があることを願っている。
日本の運動そのものが転機に至っているともいえる.これまでのように,政府に意見を言い,圧力をかけ,あるいは誓願し,政策を政府にやらせようとする運動,そして,政府のやろうとすることに対し、それに反対する運動.これがこれまでの運動であったし,実際のところ,何ごとも運動はそこからはじまる.しかし,安倍政権がTPPに反対と言って当選すれば賛成し,農業五項目は守るといいながら交渉がはじまればその約束も投げ捨て,出来てもいないコントロールができているといってそんな大嘘を平気でつく.安倍政権がこのように大嘘つきのあまりな政権になったのは,それだけ彼らの側に余裕がなく,アメリカからはせっつかれ嘘をついてでもやるしかやりようがなくなっているからである.
そうであるのならば,われわれは安倍政権に何かを要求するのではなく,これを倒し,われわれ自身の政府をうち立て必要な施策をわれわれが実行する.そのような政治を実現する運動へ,舵を切ってゆかねばならないのかもしれない.これはまた,これまでのようにどこかで議会につながるような運動から,より直接民主主義的運動への転機でもある.その回路はまだ見出されていない.また,その前提となる「行動の統一・批判の自由」も運動の中に打ち立っているとはいいがたい.しかしいろいろなところにその芽がある.見守りつつその現場にいて考えるようにしたい.
等々考えながらの金曜行動であった.来週は大阪北十三でデモ,再来週はまた関電前行動が予定されている.時間がとれるかぎり参加したい.継続は力である.