京都市はこのほど「市駐車施設基本計画」の見直し案をまとめた。駐車台数の増加を目指した従来の方針を転換し、「歩くまち・京都」の実現に向け、公共交通の利用促進に協力する商業施設には必要台数の基準を引き下げたり、民間駐車場に対し自動二輪駐輪場への転用を促すなど、市街地の駐車場を抑制していく。
■設置基準引き下げ 二輪に転用促進も
 市は1996年度に初めて策定した基本計画で、自動車交通の増加に対応するため、約4万9千台の駐車場増を打ち出した。中心市街地では民間、公共合わせて2千台増え、現在、約2万6千台分の駐車場がある。
 来年度から本格化させる四条通東大路通の歩道拡幅など「歩くまち・京都」の実現のため、駐車場を減らして車の流入を抑制していくことにした。新計画では、店舗の規模によって定めている駐車場の設置台数基準を緩和する。具体的には、公共交通で訪れた買い物客に割り引きセールを行ったり、送迎バスを運行する商業施設に対し、設置台数を引き下げる。
 また、事務所や工場の設置台数も引き下げ、通勤をマイカーから公共交通へと誘導するほか、民間駐車場に対し、市街地で不足する自動二輪専用の駐輪場への転用を促す。駐車場新設を計画する事業者に自粛を求めることも検討する。市は3月9日まで新計画に対する意見を募っている。問い合わせは市歩くまち京都推進室TEL075(222)3483。

京都市は歩行者と公共交通優先の施策「歩くまち・京都」をPRするため、ポスターを市内の地下鉄駅などに掲示を始めた。
 市は新年度から四条通東大路通の歩道拡幅などの取り組みを本格化させる予定。市民の協力が不可欠なことから、1月23日に制定した「歩くまち・京都憲章」を紹介したポスターを張り出した。ポスターは1万3千枚製作し、サイズはB1など三種類。影絵で京のまちを描き「歩いて出かけたくなる道路空間と公共交通を整える」との憲章文を掲載している。地下鉄駅構内から掲示を始めており、順次、市バス車内などにも張り出していく。

両記事では,京都市における歩行者及び公共交通優先施策の取組について紹介.2010年1月23日付の本備忘録で取り上げた同市の『「歩くまち・京都」憲章』及び『「歩くまち・京都」総合交通戦略』.両記事では,これらに基づく,実施手法を紹介.
第1記事では,『「歩くまち・京都」総合交通戦略』において,「都心において,必要以上の駐車場の整備を抑制することや,空間の占有に対して適切なコスト負担を求める施策は,自動車交通の流入を抑制する効果」があるとの認識に基づき,「公的施設や大型商業施設の駐車場も含め,京都にふさわしい駐車場施策を構築」*1すること反映した取組の一つとも整理ができそう.第2記事は,同『戦略』において.「パークアンドライド等の利用促進を図るコミュニケーション」*2としての取組.
何れの方法とも,「脅迫」「指導」「情報提供」「利益誘導」に分類される「直接顧客に働きかける方法」*3にも準じた手法とも整理ができそう.ただ,このような直接的な誘導手法を補完しつつ,「顧客を取りまく物理的,社会的環境を操作することによって,間接的顧客をコントロールする方法」*4ともいえる,現代風でいえば「良識ある選択アーキテクチャーの構築」*5もまた,これらの憲章・戦略の実効性確保には不可欠とも考えられそう.今後の同市で採用される具体的な実施手法は,要経過観察.

*1:京都市HP(市の組織都市計画局各課の窓口歩くまち京都推進室広報資料)『「歩くまち・京都」総合交通戦略』(京都市,2010(平成22)年1月))21頁

*2:前掲注1・京都市(『「歩くまち・京都」総合交通戦略]』)2010年:28頁

*3:森田朗『許認可行政と官僚制』(岩波書店,1988年)63頁

許認可行政と官僚制

許認可行政と官僚制

*4:前掲注3・森田朗1988年:63頁

*5:リチャード・セイラー,キャス・サンスティーン『実践行動経済学』(日経BP社,2009年)243頁

実践 行動経済学

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