児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

欺罔による準強制わいせつ罪

 身分を偽ると準強制わいせつ罪だというのですが、お金を払うつもりがなくて児童買春した場合には、準強制わいせつ罪にはならないんでしょうか?

東京地裁平成20年 2月 8日 準強制わいせつ被告事件
  (3) 以上のような各事実によると,本件各被害者においては,被告人の行為について,部分的にはアナウンサーとしての適性を見るためにした行為であると誤認していた部分も存在するものの,判示第1及び第3の各事実について認定したわいせつ行為,すなわち,接吻をしたり,乳房をもんだりさらには大腿部や陰部を触るなどの行為そのものについては,いわば,被告人から就職について有利な扱いを受けることの見返りとなる行為であって,それらが被告人のわいせつ意思の発露としてなされる行為であること,すなわち,これらの行為のわいせつ性についての誤認は存在せず,かつ,本件各被害者においては,外形上,それぞれの任意の判断に基づいてこれを受忍する意思決定をしたことがうかがわれる(第2被害者の場合,前記で見たような,被告人の言動の中には,同被害者のストッキングを脱がせて足をソファーの上に乗せさせるなど,外形的に見て,あたかもそれが職員の採用にあたっての面接等にあたる行為であることを装ったように見える部分もあるが,職員を採用するための正規の面接等の行為がカラオケ店の個室等において行われることは通常考えられないことであるし,その前後における被告人の言動から見ても,それは面接などといった職員の採用を担当する者としての権限の行使という外形を持つものではなく,また,現に第2被害者においてもそれを正規な面接等の行為と誤認したものとは考えられない。)。
 しかしながら,準強姦罪及び準強制わいせつ罪は被害者の性的行為に対する意思決定の自由を保護するものであり,これらがそれぞれ強姦罪ないし強制わいせつ罪と異なるのは,その手段として,暴行・脅迫が用いられるか,それ以外の手段が用いられるかに過ぎない。
 そして,準強姦罪ないし準強制わいせつ罪における抗拒不能は正常な判断に基づく意思決定ができない状態をいうものと考えられるところ,相手方に対して自己の身分等について虚偽の事実を告げるなどした結果,相手方が具体的な事実関係について誤認を生じ,その結果として,性交渉やわいせつ行為を受忍する意思決定をした場合等においては,こうした判断の前提となるべき事実に誤認があるのであるから,その判断は正常な判断とは言えず,したがって,このような欺罔行為によって被害者が錯誤に陥る場合も,準強制わいせつ罪における抗拒不能に該当しうるものと考えられる。
 もっとも,わいせつ行為ないし性交渉をともなう関係の当事者間において,それぞれの意思決定の前提となる事実(各当事者の身上等を含めて)について各々が完全に正確な認識を持つとは限らず,そこに何らかの誤認が存在することは,社会生活上,あり得べき事態と言え,そのような誤認が相手方の言動で生じた場合に全てが準強制わいせつ罪等になるとは言えないであろうが,本件で認定した前記各事実によると,本件各被害者はその就職活動という,その後のそれぞれの人生ないしは生活のあり方に重大な影響を及ぼすような場面に立っていたこと,また,被告人は本件各被害者が現実に就職を希望していた企業の人事担当者であることを装い,判示のような各種の言辞を申し向けたのであり,その結果として,本件各被害者は被告人の意向を受け入れることによって,自己の就職という希望が叶えられるという具体的な事実関係につき誤認を生じていたのであり,かつ,被告人の言動は当初からこうした誤認を生じさせるために,極めて具体的に虚偽の事実を語るものであったと認められる。さらに,本件の各犯行場所は,まんが喫茶(判示第1の犯行)ないしはカラオケ店(判示第3の犯行)の各個室であり,前者はカーテンないしパーテーションによって区画された空間であって,外部と完全に遮断された区画とは言えないけれども,一応,内部にいる者どうしの間のみで会話等のやりとりがなされる区画であり,後者はドアと壁によって外部とは遮断された機密性のある区画と評価できることに照らせば,このような区画内で被告人から本件のような経過でわいせつ行為に及ぶ旨の言辞を申し向けられた場合,むしろ,これを拒絶することの方にそれなりの心理的な抵抗感をともなうことが推測される。
 こうした事情を考慮すると,本件各被害者は,事実を誤認した結果として,準強制わいせつ罪でいうところの抗拒不能な状態にそれぞれ陥ったものと考えるべきである。

横浜地裁平成16年 9月14日
 なお、弁護人は、被害者らは、わいせつな行為をされること自体を理解・容認しており、その動機に誤信があったに過ぎないから、刑法178条の「抗拒不能」に該当しない旨主張するが、その解釈論は独自の見解で到底賛同できないうえ、弁護人は被害者らが被告人が優れた医師で治療的行為をされているものと誤信していたこと(さらにはわいせつな意図に気付かなかったこと)を自認しているのであるから、失当というほかない。すなわち、前記認定のとおり、被害者らは、本件各欺罔時、13歳ないし16歳の素直な性格の少女らで、いずれも被告人の指導を受けていたが、合格実績や著名大学卒、海外留学、先端研究などを吹聴する被告人の言動を信じ込んで塾長で優秀な医師として強い畏敬の念を懐いて心服しきっていたうえ、第1の被害者は悪性腫瘍や癌等の病気への強い不安感を懐かされ被告人の診療に依存せざるを得ない心理状態に陥っていたこと、他の被害者らはいずれも受験生として成績向上を強く望んでいたため成績向上のための特殊な治療的な行為であると信じ込んでしまったことなどから、本件各行為の外形的な認識はあっても、被告人にわいせつ目的などはなく正当な診療・治療等の行為を行うものと信じ込まされていたものと認められる。そうすると、いずれの被害者も、被告人のわいせつ目的を疑ったり、性的行為を拒むことが著しく困難な状態にあったことは優に肯認することができるから、前記「抗拒不能」の状態に当るものと認めるのが相当である。

東京地裁昭和62年 4月15日
 四 終わりに、判示の事実関係を前提として、被告人の行為が準強制わいせつ罪及び準強姦罪を構成することについて説明を付加しておく。
 刑法一七八条にいう抗拒不能は、物理的、身体的な抗拒不能のみならず、心理的、精神的な抗拒不能を含み、たとえ物理的、身体的には抗拒不能といえない場合であつても、わいせつ、姦淫行為を抗拒することにより被り又は続くと予想される危難を避けるため、その行為を受け容れるほかはないとの心理的、精神的状態に被害者を追い込んだときには、心理的、精神的な抗拒不能に陥れた場合にあたるということができる。そして、そのような心理的、精神的状態に追い込んだか否かは、危難の内容、行為者及び被害者の特徴、行為の状況などの具体的事情を資料とし、当該被害者に即し、その際の心理や精神状態を基準として判断すべきであり、一般的平均人を想定し、その通常の心理や精神状態を基準として判断すべきものではない。刑法一七八条は、個々の被害者の性的自由をそれぞれに保護するための規定であるから、犯人が当該被害者にとつて抗拒不能といいうる状態を作出してわいせつ、姦淫行為に及び、もつてその性的自由を侵害したときは、当然その規定の適用があると解すべきである。
 これを本件についてみると、被告人は、警察から依頼された医師であると名乗つたうえ、言葉巧みに売春と性病の検査を受ける必要があることを説き、その検査を拒否すれば警察に不利な報告をしたり、警察による公の捜査が行われたりして名誉や信用が失墜すると告げ、さらに、最悪の場合には逮捕されることもありうると暗示し、そのため被害者は、ひたすら被告人の言葉を信じ、これに従うほかないと観念して検査に応じたものであるから、被害者が被る危難の性質、程度、被告人の言動の巧妙さ、被害者の年齢、性知識、家庭環境などを考えあわせると、被害者が心理的、精神的な抗拒不能に陥つていたと認めるに十分である。また、被告人は、性行為による治療行為についても、手指を挿入する検査をした結果、性体験のない者としてはおかしい反応があつたとか、性病のおそれがあるとか告げて不安を募らせ、医師が男性器を挿入して性病を治療するのが一番効果的であると告げ、そのため被害者は、その言葉を信じてこれに応じるほかないという気持に追い込まれたものであるから、これまた被害者が抗拒不能に陥つていたことは明らかである。最後に、性体験のなかつた被害者が性器への手指挿入や性行為という検査、治療を受け容れ、そこに打算、好奇心その他の動機の介在を疑う余地がないという事実自体、被害者が心理的、精神的に抗拒不能に陥つていたことの何よりの証左であることを指摘しておくべきであろう。結局、被告人は、このような被害者の心理状態を利用して巧みに被害者を抗拒不能に陥れたうえ、わいせつ行為及び姦淫行為に及んだものであつて、その刑責は否定すべくもない。

東京高裁平成15年 9月29日
 1 刑法178条にいう「抗拒不能」とは、心神喪失以外の理由で社会一般の常識に照らして当該具体的な事情の下において物理的、身体的あるいは心理的、精神的に抵抗できないか、又は抵抗することが著しく困難な状態にあることをいい、また、「抗拒不能にさせ」るとは、暴行、脅迫以外の手段を用いて前記の抗拒不能の状態を作り出すことをいうところ、これには欺く行為により被害者を錯誤に陥れて抵抗することが著しく困難な心理状態にさせる行為も含まれる。そして、抗拒不能にさせる行為か否かは、行為者及び被害者の年齢、性別、社会経験の程度、殊に欺く行為により錯誤に陥らせたという場合においてはその行為の状況などの具体的事情を基にして、当該被害者に即した心理的、精神的な状態を基準として判断すべきである。(中略)
 2 そこで、関係証拠によって認められる前記事実関係を踏まえて、本件について検討する。
  (1)〈1〉 原判示第1の事実についてみると、当時女子高校生であったBは、被告人が相当年配の男性で、しかも、自校の英語教師であるAの恩師であり、間違ったことはしない立派な人物であると信用し、一人で英語の個人レッスンを受けるため被告人方を訪れたところ、被告人は、同女に対し、英語上達につながるリラックス法があると言葉巧みに説き、これも信用させ、併せて強い口調も交えて、被告人の言に従えば英語が上達できるものと信じさせ、同女をして、これを拒否すれば被告人に英語を教えてもらえないし、失礼に当たるとも思い込ませ、わいせつな行為をする意思があるのにこれがないと装い、被告人から渡された服に下着まで脱いで着替えることが、リラックスのために必要であると誤信させ、そのように着替えさせるなどし、被告人のわいせつな行為に心理的に抵抗することが著しく困難な状態に陥らせたものと認められる。
   〈2〉 また、原判示第2の事実についてみると、当時女子高校生であったCは、被告人が自校の英語教師であるAの恩師で、心理学の修士号を持ち、変なことはしない尊敬できる人物であると信用し、一人で英語の個人レッスンを受けるため被告人方を訪れたところ、被告人は、同女に対し、トーフルで好成績を得る英語の勉強法につながるリラックス法があると言葉巧みに説き、これも信用させ、併せて強い語調も交えて、被告人の言に従えばトーフルで好成績を得られるものと信じさせ、わいせつな行為をする意思があるのにこれがないと装い、同女をして、被告人から渡された服に下着まで脱いで着替えることが、リラックスのために必要であると誤信させ、そのように着替えさせるなどし、被告人のわいせつな行為に心理的に抵抗することが著しく困難な状態に陥らせたものと認められる。
   〈3〉 さらに、原判示第3の事実についてみると、当時女子高校生であったDは、被告人が自校の英語教師であるAの恩師で、すばらしい先生であると信用し、Aに勧められたこともあって、一人で英語の個人レッスンを受けるため被告人方を訪れたところ、被告人は、同女に対し、英語の上達につながるリラックス法があると言葉巧みに説き、これも信用させ、被告人の言に従えば英語の上達につながるものと信じさせ、わいせつな行為をする意思があるのにこれがないと装い、同女をして、被告人から渡された服に下着まで脱いで着替えることが、リラックス法のために必要であると誤信させ、そのように着替えさせるなどし、被告人のわいせつな行為に心理的に抵抗することが著しく困難な状態に陥らせたと認められる。
  (2) このようにして、被告人は、Bら3名をいずれも「抗拒不能にさせ」たのであって、その上で同女らに対して原判示の各わいせつな行為をなした被告人には、同女らに対する準強制わいせつ罪が成立することは明らかである

東京高裁昭和51年 8月16日
しかしながら、刑法一七八条にいう抗拒不能とは、性交やわいせつ行為を拒否することが社会通念上不可能な場合であれば足り、抗拒不能に陥った原因の如何を問わないと解すべきである。そして原判決は、原判示第四の事実において、「同女にいわゆる後倒法、鈴振りなどの施術をして催眠状態にし、更に、真実治療に必要な施術を行うものと誤信している同女を、いすにかけた自分のひざの上にあおむけに寝かせ、片手で同女の目を押さえ、ひざで同女の体をゆするなどして、身動きのできない状態にして抗拒不能に陥らせたうえ、他方の手で同女のセーターをまくりあげ、じかに両乳房及び乳首をもむなどのわいせつの行為をし」たものと認定したうえ、これを準強制わいせつ罪に該当するものと判断しているのであるが、右事実においては、催眠状態と同女がとらされていた姿勢とがあいまって抗拒不能の状態にあったものと認定していることは判文上明らかであって、右のような事情が刑法一七八条の抗拒不能に当ることはいうまでもない。

青少年条例違反4罪で懲役1年6月執行猶予4年保護観察(立川支部H21.7.1)

 産経新聞中日新聞は保護観察を報道していません。聞こえなかったのか?
 「妊娠させた」というのは罪となるべき事実ではなく量刑理由ですよね。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090701/trl0907011539003-n1.htm
中高生にみだらな行為 元巡査部長に有罪判決
2009.7.1 15:37
 14〜17歳の女子中高生4人に18歳未満と知りながらみだらな行為をしたとして、東京都青少年健全育成条例違反の罪に問われた元警視庁町田署地域課巡査部長(27)の判決公判が1日、東京地裁立川支部で開かれた。岡村英郎裁判官は懲役1年6月、執行猶予4年(求刑懲役1年6月)を言い渡した。
 判決によると、被告は平成19年2月から20年9月にかけ、東京都豊島区や新宿区のカラオケ店で、携帯電話のゲームサイトで知り合った中高生に対し、学生と身分を偽りみだらな行為をし、うち1人を妊娠させた。

少女とみだらな行為、元警察官に有罪判決 地裁立川支部 /東京都
2009.07.02 朝日新聞
 女子中高生とみだらな行為をしたとして、都青少年健全育成条例違反の罪に問われた元町田署巡査部長(27)の判決公判が1日、地裁立川支部であり、岡村英郎裁判官は懲役1年6カ月執行猶予4年(求刑懲役1年6カ月)を言い渡した。
 判決によると、被告は07年2月から08年9月にかけ、新宿などのカラオケボックスで当時14〜17歳だった少女計4人とそれぞれ18歳未満であることを知りながら、みだらな行為をした。岡村裁判官は「警察官としての責任感がみじんも認められない」と断じたが、少女と示談の意思があることを考慮し保護観察付きの執行猶予判決とした。

少女にみだらな行為 元警察官に有罪判決 地裁立川支部=東京
2009.07.02 読売新聞
 女子中高生4人にみだらな行為をしたとして、都青少年健全育成条例違反の罪に問われた元町田署地域課巡査部長(27))の判決が1日、東京地裁立川支部であった。岡村英郎裁判官は「警察官に対する社会的信用を失墜させた」として懲役1年6月、保護観察付き執行猶予4年(求刑・1年6月)の有罪判決を言い渡した。
 判決によると、被告は2007〜08年、携帯電話のゲームサイトで知り合った、当時14〜17歳の女子中高生計4人を、有名私立大学生を装ってカラオケに誘い、18歳未満であることを知りながら豊島区や新宿区内のカラオケボックスでみだらな行為をした。岡村裁判官は、「いずれも著しい精神的苦痛を与えたほか、被害女子の一人は、妊娠・出産して進学をあきらめており、被害はとりわけ大きい」と指弾した。

少女とみだらな行為 元巡査部長 有罪判決 地裁立川支部
2009.07.02 中日新聞社
 【東京都】十四〜十七歳の少女四人とみだらな行為をしたとして、都青少年健全育成条例違反の罪に問われた元警視庁町田署地域課巡査部長(27)=起訴後に懲戒免職処分=の判決公判が東京地裁立川支部であった。岡村英郎裁判官は、懲役一年六月、執行猶予四年(求刑懲役一年六月)を言い渡した。

「性欲を興奮させ又は刺激する」についての裁判例

 判例は意外にないんですよ。くだらない主張ですし、現物の写真を公開できないので、公刊物では公開されていません。
 普段から子供達が上半身裸で生活している国で、6歳にどんなポーズを取らせても、被告人以外の性欲を興奮させ又は刺激するものではないと主張したのですが。

大阪地裁平成14年4月26日
2 弁護人は,(1)本件のような写真は「性欲を興奮させ又は刺激する」との要件を満たさない,(2)写真を焼き付けず現像までを行ったにすぎない本件行為は製造に当たらない,(3被害者及びその母親の承諾があり,犯罪成立を阻却する,などと種々の主張をしている。
しかし,(1)本件写真は,判示のとおり,単なる裸体でなく両脚を開かせ性器を露出させた露骨な描写をしており,一般人の性欲を興奮させ又は刺激する内容といえる。
(2)撮影行為それ自体で既に被撮影児童の心身に有害な影響を与えており,十分に可罰性が認められる。そして,撮影によって記録として作出されれば,現像や焼き付け等はその後行うことが比較的容易であり,現像あるいは焼き付け前でも流通が可能であっ七,児童一般の心身の成長に悪影響を及ぼす危険性もあるといえる。なお,本件では,現像まで行われているところ,撮影,現像及び焼き付けは製造の一連の過程というべきであり,撮影及び現像を製造行為と認定した。
(3)本件児童は僅か6歳であり,真摯な承諾があったと評価することは困難であるし,児童ポルノの製造等が描写された児童の心身に有害な影響を与え児童一般の心身の成長に重大な影響を与えることに鑑みこれを処罰する法の趣旨に照らしても,犯罪成立を阻却するとは考えられない。弁護人のその他の主張も理由がないことが明らかである。

阪高裁H14.9.10
論旨は,①原判決は,本件ネガにつき,単なる裸体ではなく両脚を開かせ性器を露出させた露骨な描写をしており,一般人の性欲を興奮させ又は刺激すると判示しているが,被害児童は6歳であって,このような児童の姿態からは,どのようなポーズを取らせてみても,一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものとは解されず,本件ネガが児童ポルノに当たるとはいえず(控訴理由第9),②被告人も,本件ネガが一般人の性欲を興奮又は刺激されるものであるとの認識はなかったから,被告人に故意があるとはいえないのに(控訴理由第10),本件ネガが児童ポルノに当り,被告人にもその認識があったとして児童ポルノ製造罪の成立を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認ないし法令適用の誤りがある,というものである。
しかしながら,捜査報告書(「差し押さえにかかる証拠品ネガフィルムの焼付けについて」,原審検甲5,6号証)によれば,被害児童は当時6歳の女児であるが,被告人によって撮影された被害児童の姿態は,幼女のあどけない自然な裸の姿ではなく,寝そべって両足を開いたり,足を立てて座ったりして,ことさら性器を露出するなど煽情的なポーズをとっており,これが鮮明に撮影されているものであるから,一般人の性欲を興奮又は刺激することのある態様のものと認められ,本件ネガが児童ポルノに当たることは明らかであり,また,上記のような被害児童のポーズを被告人がとらせたものであるから,これを撮影した被告人に児童ポルノ製造の故意があることも明らかであり,被告人に対し児童ポルノ製造罪の成立を認めた原判決に事実誤認ないし法令適用の誤りがあるとは認められない。論旨は理由がない。
平成14年9月10日
大阪高等裁判所第1刑事部
裁判長裁判官瀧川義道
裁判官平澤雄二
裁判官奥田哲也

目的(販売 提供目的)の立証

 補強証拠が要らないところですから、被疑者に語らせるのが手っ取り早いですよね。

供述調書の一例
私は,自分が保存していたDVDが18歳に満たない女の子のセックスシーン等が映っている,世間でいうところの
   児童ポルノかつわいせつ
ということをわかっていて,こういった画像データを記録したDVDを販売する目的で自宅に持っていたことに間違いありません。

真実そういう目的が無かった場合に、こういう供述をしてしまうと、裁判でも目的を認定されてしまう可能性が高いので、弁護人との接見を待って供述するなど、慎重な対応が必要です。

「自己の性的好奇心を満たす目的で」というのは、性器接触行為の児童買春罪の要件ですが、その目的の立証は

私の性的好奇心(性欲)を満たす目的で性器等を触ったことに間違い有りません

と供述させることが最も多いというか、それ以外の立証を見たことがありません。実際そうであれば、えん罪でもないので、訴訟上の問題になることもない。

第2条(定義)
2 この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。

 仮にこの点を否認したとして、被害児童との関係などから、他の正当な目的が認められないときは、状況証拠から「自己の性的好奇心を満たす目的で」は認定されると思います。
 お金払って性器等を触るというのは、医療用のモデルさん(練習台)とかですかね。それなりの契約があるでしょうし、児童を使うことはないでしょう。

「裸を透視できます」メガネ販売 警察「詐欺だ」

 日本で言えば、迷惑条例違反(卑わいな言動)の不能犯でしょうか。
 なお、児童の赤外線盗撮(透視)が児童ポルノ販売で摘発されたことがあります(大阪地裁)。

http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0704&f=national_0704_006.shtml
  そこで同紙の記者が「春夏秋冬いつでも使用可能。特製のメガネを掛けるとどんな衣服でも透視できる」とウェブサイトでうたう業者に客を装って電話連絡。するとこの業者が販売している商品にはサングラスとコンタクトレンズの2タイプがあり、価格は高いもので2000元であることが判明した。業者は「夏が来たので購入者が増えている。特に男性が多い」と説明。
  記者が後払いは可能かとたずねると「このメガネは禁制品でウラでの販売しかできないから先に料金を支払ってほしい」と要求された。これに対して同省の海口市公安局は「技術的に難しいので詐欺だと考えられる。市民には注意してもらいたい」と呼びかけている。

判決確定前の被告人の旅券・執行猶予中の人の旅券

 執行猶予中の人は、「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者」として数次旅券が出ないし、判決書を求められますよね。よく地検の記録係で同席します(判決後に弁護人からもらっておけばいいのですが)。
 控訴中上告中の人は、確定するまで無罪推定を受けますので、「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者」にはあたりません。
 なお、これは日本国側の話であって、相手国が入れてくれるかは別問題です。入国させるかはその国の自由裁量なので、大使館領事館に聞くしか有りません。

旅券法
(一般旅券の発給等の制限)
十三条  外務大臣又は領事官は、一般旅券の発給又は渡航先の追加を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合には、一般旅券の発給又は渡航先の追加をしないことができる。
一  渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者
二  死刑、無期若しくは長期二年以上の刑に当たる罪につき訴追されている者又はこれらの罪を犯した疑いにより逮捕状、勾引状、勾留状若しくは鑑定留置状が発せられている旨が関係機関から外務大臣に通報されている者
三  禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
四  第二十三条の規定により刑に処せられた者
五  旅券若しくは渡航書を偽造し、又は旅券若しくは渡航書として偽造された文書を行使し、若しくはその未遂罪を犯し、刑法 (明治四十年法律第四十五号)第百五十五条第一項 又は第百五十八条 の規定により刑に処せられた者
六  国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律 (昭和二十八年法律第二百三十六号)第一条 に規定する帰国者で、同法第二条第一項 の措置の対象となつたもの又は同法第三条第一項 若しくは第四条 の規定による貸付けを受けたもののうち、外国に渡航したときに公共の負担となるおそれがあるもの
七  前各号に掲げる者を除くほか、外務大臣において、著しく、かつ、直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
2  外務大臣は、前項第七号の認定をしようとするときは、あらかじめ法務大臣と協議しなければならない。

(一般旅券の発給をしない場合等の通知)
第十四条  外務大臣又は領事官は、前条の規定に基づき一般旅券の発給若しくは渡航先の追加をしないと決定したとき、又は第五条第二項の規定に基づいて渡航先を個別に特定して記載し、若しくは有効期間を十年(一般旅券の発給の申請をする者が同条第一項各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、五年)未満とすると決定したとき(第四条の二ただし書の規定に該当する場合において一般旅券を発行するときを除く。)は、速やかに、理由を付した書面をもつて一般旅券の発給又は渡航先の追加を申請した者にその旨を通知しなければならない。

司法修習生も就職難?、大阪弁護士会の求人集め苦戦

 都市以外に散れという方針じゃなかったっけ。
 大阪も一地方都市となって、今後も需要増も見込めないのに集めてどうする。
 奥村が修習生だったときは、事務所訪問も不便な修習地だったので入れてくれるところに入りましたけど。

http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20090703-OYO1T00564.htm?from=top
 従来、弁護士志望の修習生は法律事務所に就職して「イソ弁(居候弁護士)」となり、経験を積んでから開業するのが通例だが、修習生の増加に伴って勤務先が見つけにくくなった。
 このため、同弁護士会は07年3月、初めて集団就職説明会を開催。この時は38事務所が参加した。その後の4回も20〜34事務所がブースを設けたが、今回は16事務所と、初回の半分以下にとどまっている。
 一方、説明会への参加を希望する修習生は約180人に上り、うち約160人が半年後に就職を控えた12月の修習終了予定者。07、08年は数人だった「ソクドク」が、今年は激増する可能性がある、という。
 対策として、同弁護士会は3月、ベテランの事務所で半年間、実務を学ぶ制度を新設。メールを使って相談に乗るシステムも整えており、今後も支援策を打ち出す方針。
 就職支援を担当する田中宏・副会長は「弁護士全体の信頼が損なわれないようレベルアップを図りたい」と話している。

パチスロ店内で,パチスロ機に針金を差し込んで誤動作させるなどの方法によりメダルを窃取した者の共同正犯である者が,上記犯行を隠ぺいする目的をもって,その隣のパチスロ機において,自ら通常の方法により遊戯していた場合,この通常の遊戯方法により取得したメダルについては,窃盗罪は成立しない(最決H21.6.29)

 おとりみたいなメダルの評価で判断が左右したようです。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090702100919.pdf
事件名 建造物侵入,窃盗被告事件
裁判年月日 平成21年06月29日
法廷名 最高裁判所第一小法廷
2 原判決は,以上の事実関係を前提に,被告人の遊戯行為も本件犯行の一部となっているものと評することができ,被害店舗においてそのメダル取得を容認していないことが明らかであるとして,被告人の取得したメダルも本件窃盗の被害品ということができ,前記下皿内及びドル箱内のメダルを合計した486枚のメダル全部について窃盗罪が成立する旨判示した。

3 しかしながら,以上の事実関係の下においては,Aがゴト行為により取得したメダルについて窃盗罪が成立し,被告人もその共同正犯であったということはできるものの,被告人が自ら取得したメダルについては,被害店舗が容認している通常の遊戯方法により取得したものであるから,窃盗罪が成立するとはいえない

検察官求刑10月、被害者求刑実刑で、宣告刑懲役10月執行猶予4年(金沢地裁H21.7.3)

 執行猶予の場合は検察官求刑そのままの刑期の場合が多いのですが、そういう結果になっています。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090704-00000286-mailo-l17
神坂尚裁判官は「ささいな態度に立腹し、暴力をふるった悪質な行為」として懲役10月、執行猶予4年(求刑懲役10月)を言い渡した。
 判決によると、被告は同市内の無職の男(21)=同罪で執行猶予付きの有罪判決=と共謀。3月10日夜、市内のコンビニエンスストア駐車場で男子生徒の態度に腹を立て、乗用車で連れ回し、顔を殴るなどして2週間のけがを負わせた。

遺族が「両親にも罰を」と陳述 茨城9人殺傷

 責任が分散すると、被告人の責任が軽くなってしまいます。

http://www.chunichi.co.jp/s/article/2009070301000572.html
茨城県土浦市の9人連続殺傷事件で殺人などの罪に問われた被告(25)の公判が3日、水戸地裁(鈴嶋晋一裁判長)で開かれ、被害者の遺族が意見陳述で「最大の原因は(被告の)両親にある。両親にも罰を下してほしい」と述べた。