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pithecanthropus collectus(蒐集原人) このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016-03-12

3/22新刊『無限の本棚』が出るむげ〜ん。

すっかり放置しっ放しで、たまに更新されたかと思えば宣伝ばかりになってしまっている当ブログ「蒐集原人」なのですが〜、凝りもせずまた宣伝のために更新するのです!

f:id:pontenna:20160312134734j:image:leftとみさわ昭仁の書き下ろし新刊が、3月22日にアスペクトより刊行されます。タイトルは『無限の本棚 手放す時代の蒐集論』というもので、小学生のときに酒ブタ(日本酒のキャップ)を集めることからコレクションの道に足を踏み入れたぼくが、以後、ミニカーやら漫画本やら古鍵やら顔出し看板やら廃盤レコードやら人喰い映画DVDやらの様々なコレクション活動を経てゆくなかで見つけ出した、前代未聞の蒐集論です。

皆さんは、何かをコレクションする人というのは、「蒐集欲」が強い人だと思ってますよね? そして「蒐集欲」というのは、すなわち「物欲」であるとも思っていることでしょう。ところが、そうではなかったのです。

自分で物を集めることも大好きだけど、それ以上に、何かを集めている人を見るのが好きなぼくは、コレクションにまつわる本なら手当たり次第に読んできました。でも、蒐集の本質を解き明かしてくれている本は1冊もありませんでした。本書では、おそらく史上初めて「人が物を集めたくなるときの心理」を分析し、蒐集欲の本質を解き明かしています。

ぼくはことあるごとに「エアコレクター」という概念を提唱してきましたが、いまひとつわかりにくかったこの考え方も、本書を読めば納得がいくことでしょう。ぼく自身もよくわかっていなかった。でも、2012年に自分の理想とする古書店「マニタ書房」を開業したことで、すべてが見えたのです。

2012年に美術出版社より『人生のサバイバルを生き抜く映画の言葉』という本を出して以来の新刊となります。『人生の〜』は最初に20世紀フォックスと美術出版社による企画ありきの本だったので、あまり自分の著書という感じはしません。その点でも、今回の『無限の本棚』は、54年間の人生を通じて考え続けてきたことをすべて書き切ることができたので、感慨もひとしおです。

人生のサバイバルを生き抜く映画の言葉

人生のサバイバルを生き抜く映画の言葉

無限の本棚: 手放す時代の蒐集論

無限の本棚: 手放す時代の蒐集論

2016-01-14

2015年度映画ベストテン

昨年公開された映画の私的ベストテンを「映画野郎メルマガ」2016年1月8日 vol.380に寄稿したけれど、無料メルマガなのでこちらにも同じものをアップしておく。

01位:グリーン・インフェルノ
02位:マッドマックス 怒りのデス・ロード
03位:カリフォルニア・ダウン
04位:ピクセル
05位:皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇
06位:野火
07位:ストレイト・アウタ・コンプトン
08位:バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
09位:チャッピー
10位:キングスマン

■総評:
 イーライ・ロスがやってくれた!『グリーンインフェルノ』は人喰い映画の復権だけに留まらず、野蛮の逆襲エンターテインメントとしても一級の輝きを放つ。見どころは大麻にまつわる脚本の妙。どこまでも瑞々しいジャングルと、その中に立つ人食い人種ボディペイントによる緑と赤のコントラストは、映画史に残るビジュアルイメージだ。
『マッドマックス 怒りのデスロード』はオールタイムではそれほど上位には入らないが、2015年度の映画としては不満点を探すほうが困難な作品なので、この順位に置いた。
『カリフォルニア・ダウン』はアトラクションとしての映画を徹底的に追及した仕上がりで、可能な限り大スクリーンで観るべき映画。
 今年は『スライ・ストーン』『ジェームス・ブラウン』『ラブ&マーシー(ブライアン・ウィルソン)』など音楽映画が豊作だったが、なかでも『ストレイト・アウタ・コンプトン』でトドメを刺された。
『スター・ウォーズ フォースの覚醒』は、よかったけれどベストテンには入らず。とても期待していた『孤高の遠吠』は、本物の不良少年たちの輝きをまるで活かせていない演出にがっかり。『クリード チャンプを継ぐ男』も楽しみにしていたが、これは〆切りまでに見られずじまい。もし見ていたら『キングスマン』はベストテン落ちしたかも。

2015-06-29

むせび泣く、夜のJブルースとエロ歌謡

ろくすっぽ仕事もしないでDJ道楽にウツツを抜かしているわたくしだが、久々に自分主催のDJパーティーをやります。明日。えっ、明日? 告知すんの遅いよ!

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その名も、むせび泣く、夜のJブルースとエロ歌謡ということで、このところ集めていたJブルースの名曲と、エロ歌謡をいろいろお聴かせします。エロ歌謡ってのがどんなのかは、まあ、だいたいわかるとして、Jブルースってなんでしょう。それは出演DJ陣の各自判断にまかせます。ブルースの心を感じる邦楽ならなんでもありなんだなー。シブかったり、エロかったりする音楽が飛び交う夜になることでしょう。

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■会場:
  薬酒Bar(高円寺)
  東京都杉並区高円寺北3-1-14 山本ビル2F
  (高円寺駅北口 中通り商店街 1階ニューバーグが目印)
  tel 03-5356-8185

■料金:
  Charge:500円+1ドリンク以上のご注文をお願いします。
  おつまみは持ち込み自由のフリーフード制!

■タイムテーブル:
  19:00 DJフクタケ(東映系サントラやさぐれブルース特盛り!)
  20:00 とみさわ昭仁(濃厚Jブルース、サックスぶりぶりで!)
  20:45 水島D(和物ロックンロールとJブルージーサウンドを!)
  21:30 鮫肌文殊(他じゃ聴けないエロレコードの数々!)
  22:15 とみさわ昭仁(エロ歌謡ふたたびのラストは縄責め!)
  23:00 終了予定

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2015-06-10

らくがおエディ

中古レコード店でインパクト大な落書き付きレコードが販売される→拡散されてTwitter上で売れていく案件が発生

ねとらぼで勝手にニュース扱いにされたが(べつに怒ってない)、こんなもん出てきたらそりゃ買うっつーの。おれはこういうのすぐ買っちゃう前科あるしな!

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ツイッターでの反応とか見てたら、「誰かと思ったらやっぱりとみさわw」みたいなコメントがあって笑った。おれのパブリックイメージってやっぱりそういう人なのか。まあしょうがないネ。

中身はエディ・ハンティントンの『Meet My Friend』。80年代後期のディスコでやたらとかかっていた、ひたすら軽いノリの曲。今後DJやってていまいちウケが悪いなと思ったらこれを取り出そう。卑怯な飛び道具として。

D

2015-02-19

イクときは一緒だよ

2月7日、阿佐ヶ谷ロフトAにて「珍書ビブリオバトル」なるイベントが開催された。

ビブリオバトルとは「知的書評合戦」とも呼ばれるゲームで、数人の出場者が自らセレクトした本を携えて順番に登壇し、5分の持ち時間内でその本を紹介する。原則として、スライドやレジュメなど、事前に資料を用意してはいけない。出場者のトークによるアピールだけでその本の魅力を伝えるというわけだ。

その後、お客さんとの質疑応答を交わし、次の出場者にバトンタッチする。こうして、すべての出場者が本のアピールを終えたら、どの本がいちばん読みたくなったか、全員の挙手で決定する。「珍書ビブリオバトル」とは、読んで字の如く、その珍書編である。

第1部は、一般からの出場者4名が戦う。続いて第2部は、第1部での勝者に珍書四天王を加えた5名が戦って、そこから総合チャンピオンを決定する。

さらりと「珍書四天王」なんて書いたが、社会評論社でヘンな本ばっかり作ってる珍書プロデューサーのハマザキカク氏、洋書の珍書(略して洋チン)を専門に販売する千駄木どどいつ文庫の店主イトー氏、円周率が延々と100万桁印刷されているだけの本で有名な暗黒通信団のひだまい氏、そして人喰い人種と飲尿療法の本の品揃えなら日本一というマニタ書房店主とみさわ昭仁の4人のことだ。おれも入ってるのかー。

で、結論から言うと、わたくしが優勝してしまった。自分がいちばん驚いている。

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▲優勝賞品の人参焼酎『珍』。お酒をもらってとてもうれしそうなおれ(写真提供:Tokyo Biblio)。

はっきり言って、勝てるなんてこれっぽっちも思っていなかった。なにしろ相手が手強すぎる。トークもあんまり得意じゃない。なによりアドリブが苦手だ。どうすりゃいいの。とりあえず笑ってもらおう。勝ち負けのことは考えず、ただお客さんにウケさえすればそれでいいや。そう考えてエントリーする本を決めた。このあいだ読んでゲラゲラ笑ったこの本を──。


■『よーいドン! スターター30年/佐々木吉蔵』(1966年/報知新聞社)

特殊な職業、特殊な立場の人が書いた伝記が好きだ。牛を育てて80年の人とか、山口組三代目田岡組長のお嬢さんとか、ニット界の貴公子とか……。これらの本を読むと、普通に暮らしているだけでは絶対に知るはずのないことを知ることができ、おおいに好奇心が満たされる。

ある日の古書市で見かけたこの本も、そのタイトルを見て心奪われた。『よーいドン! スターター30年』。すなわち、陸上競技のスタートラインでピストルを空に向け、ドンと号砲を鳴らす役目。あれを30年もやってきた人の自伝なのだ。どう考えてもおもしろいに決まってる!

f:id:pontenna:20150216185821j:image:left著者の佐々木吉蔵は大正元年、秋田県北部の片田舎で生まれた。小さい頃から虚弱体質だったが、父の勧めで運動に目を向けるようになり、やがて陸上競技を始めるようになった。

吉蔵は通学のために毎日駅まで走り、冬も深い雪道を走った。中学を卒業後は花岡鉱山に就職したが、そこでも坑内に通じている150段ある階段を毎日駆け上がり、駆け下りた。こうした生活は自然と吉蔵の足腰を強くしていった。

その甲斐あって、昭和4年の青年陸上競技会明治神宮大会に出場すると、100メートル走で11秒1という記録を出す。翌日、吉蔵の名前は新聞の活字になった。

着実に実績を上げていった吉蔵は、昭和11年、ついにベルリンオリンピックへの出場権を勝ち取る。だが、そこで吉蔵はとてもショッキングな光景を見た。

自分は、いつものようにスターティングラインの手前に手をついているのに、他国の選手たちは石灰で引かれた白線の上に手を置いていたのだ。なかには、ピストルが鳴るのを待つ間にじわじわとラインより前へ指をせり出しているヤツもいる。これはいったいどうしたことか!

不信感を胸に抱いたまま走り出し、結果として2位でゴールすることはできたものの、この一件は吉蔵の心に深く刻まれた。それ以来、彼は走ることよりもスタート時の公平性に強いこだわりを持つようになり、選手生活を続けながらも、並行して審判員の活動に取り組むようになるのだった。

審判合図員、つまりスターターになった吉蔵は、最終的には陸上競技連盟の常務理事になり、審判部長にまで登り詰めた。スターターとしては最高の舞台、昭和39年の東京オリンピック「男子100メートル決勝」のスターターを務めたのも、この吉蔵なのだ。

本書の冒頭には、そのときの様子が吉蔵自身の筆で描写されている。これがまったくもって見事な文章なので、以下に引用してみよう。

「ヨーイ」
 そして八人の選手の動きを同時に見た。
 腰がゆっくり上がってゆく。一秒四たって八人のすべてがとまった。微動もしない。私は右手をいったん全部伸ばし、徐々に下げはじめた。人さし指が引き金にふれる。
 ──私はいつ撃ってもよいのだ
 なにかが私を誘惑した。
 ──しかし、待つのだ
 さらに十分の一秒が過ぎ、私の指は引き金にずるずると引きずられそうになった。もう少し待たなければ完全な出発はできない。
 ──もう少し……
 長かった二度目の十分の一秒。もうだめだった。私の脳髄に「撃て!」という指令が怒濤のように襲いかかった。そして私の指はこれ以上待てなかった。
(中略)
 台を降りた瞬間、体内から燃えるような熱気が生じ、私の体をあっという間に汗びっしょりにしてしまった

この筆致、まるで官能小説!

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