Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

日経新聞3/31(日)

音で視覚補う「感覚代行」とは(17面・サイエンス)

非常に興味のある内容。
「盲目の人が特殊な装置で音を聞いて視覚を補う研究」についての記事だが、よく分からない。
サングラスに小型のカメラを付けた機器とあるから、これのことだろうか。(2009年の記事)

日本発の技術が、世界に大きな反響を巻き起こした。“触らずにモノを認識する” 視覚障害者用感覚代行機「AuxDeco(オーデコ)」だ。これまで視覚障害者、特に全盲者がモノを認識するには、じかに触ったり、白杖のようなもので探りながら行うしかなかった。しかし、額に取り付けるオーデコは、カメラがとらえた映像をコンピュータで画像処理し、輪郭だけを取り出し、電気刺激にして額に表示する。“触らずに、わかる”ことは、視覚障害者にとって、とてつもない出来事なのだ。

ちょっと商品名がダジャレっぽいので、どの程度科学的に正しいのかよく分からないが、実際に商品として出ているのだから、ニーズに応えているということなのだろう。
また、記事で解説を加えている下條信輔・米カリフォルニア工科大学教授は、別のインタビューで次のように、サングラスタイプの機器ではない、他の事例を挙げている。

ニール・ハービソン[Neil Harbisson]というイギリスのアーティストがいます。彼は色覚異常なんですが、色の波長を特定のルールに従って音に変換する「感覚代行装置」を作ってもらって、しかもその装置を自分の後頭部に埋め込みました。


ここで挙げられているニール・ハービソンは以前TEDでプレゼンをしているので、リンクを貼っておく。
http://www.ted.com/talks/lang/ja/neil_harbisson_i_listen_to_color.html
これを見てもやはり眉唾な感じを受けてしまうが、面白いし、実用化がさらに進むと喜ぶ人はたくさんいるだろう。
下條教授は知覚心理学認知神経科学の人で、(感覚代行についてメインで取り上げられているわけではないようだが)著書も面白そうではあるので、少し読んでみたい。

サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 (ちくま新書)

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サバイバル・マインド―見失われた未来へ

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読書欄

昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来

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昨日までの世界(下)―文明の源流と人類の未来

昨日までの世界(下)―文明の源流と人類の未来

「ぼくたち人類にはどのような社会が適しているのかという難問に、真正面から答えた力作」と聞けば当然読みたくなる。店頭でも見かけて、興味はあるけどボリュームが…と思っていたら、日経掲載書評でも「正直な所ダイジェスト版が欲しいと思った」とあった。ただし、最終章で「食事」について扱われていると知り、そこだけ読んでみたい。(先進国での食事が、塩分摂取量過多という指摘のようだが…)


「かけがえのない存在の突然の死のあと、漂流しつづける家族の物語」とあるが、この名作っぽいタイトルと、清水良典(義範ではなく良典の方)が「圧倒的な技量」と手放しでほめる小説的な巧さのある小説ということで、ものすごく久しぶりに山田詠美読んでみたい。


キャパの十字架

キャパの十字架

歴史検証、謎解き、サスペンス、ノンフィクション、解放の瞬間が訪れるラストと「一粒で五度美味しい」と評されているが、こちらも、ノンフィクション作家の黒井克行が「同業者として真実追求の姿勢に脱帽、そして執念を感じずにはいられない」と褒める内容で、絶対に読みたい。沢木耕太郎も学生の頃に面白く読んでいた。


方言漢字 (角川選書)

方言漢字 (角川選書)

全国共通と思われがちな漢字にも地域差(たとえば、寿司、鮨、鮓など)がある。そういった方言漢字を追った本。近年パソコンの普及で漢字の画一化、標準化が進んだと言うあたりの話にも触れられているようだ。気になる。

田島貴男 弾き語りツアー最終日(3/29(金)渋谷さくらホール)

【セットリスト】

  1. ふたりのギター
  2. 夜とアドリブ
  3. ファッションアピール(新曲)
  4. EVERYDAY EVERYDAY(新曲)
  5. フィエス
  6. 太陽を背に(新曲)
  7. 一撃アタック(新曲)
  8. 神々のチェス
  9. 大車輪
  10. Glass
  11. 或る逃避行
  12. サーディンの缶詰め
  13. プライマル
  14. カミングスーン

(アンコール)

  1. 接吻
  2. 好運なツアー


良かった!本当に良かったです、今回のライヴ。
今回、着席タイプでの弾き語りツアーということで、どんなライヴになるのか、期待よりも不安の方が大きかった。振り返ってみると、不安は大きく以下の3点。

  1. 田島貴男に弾き語りスタイルは合わないのではないか?
  2. 直前に行われた鎌倉との差をどう出すのだろうか?
  3. これまでと比べて頻度が多過ぎるので逆に不安。(ツアーの意味は?)

これらの不安がすべて払拭された良いライヴだった。
それぞれの不安がどのように払拭されたのか3つを順に書く。

弾き語りというスタイル

そもそも、「ひとりソウル」というスタイルをある程度確立しつつある今、改めて、それとは異なる弾き語りに何故手を出すのか、がよく分からなかった。また、自分は、それほどバラード曲には惹かれないため、(全くの思い込みですが)バラード曲が多そうな弾き語りというスタイルに関心が低かった、という個人的な要因もあった。
しかし、弾き語りスタイルは大成功だった。第一に、乗り方が分からない新曲を発表するには、歌詞やアレンジをじっくり聞いてもらえる着席スタイルが適していたという点。第二に、(これも重要なことだと思うが)客側が観客の少なさをそれほど意識しなくて済むという点。そして、演奏技術の上達ぶりを示すには、これ以上ないスタイルだ。
ここでは一点目についてだけ書く。実際、これまでの新曲発表時と比べても、相当、歌詞の内容を聞き取ることができて、それがライブ全体の好印象に繋がった。
新曲の歌詞の内容は簡単に示すと以下のようなもの。

  • 「ファッションアピール」:(世の流行も知った上で)お気に入りのファッションを身につけて街に出て気を引く楽しさ。2013年型ポップス宣言の歌。(語り継がれるエヴァーグリーンよりも短期間でも人を惹きつけるものを求めているのでは?)
  • 「太陽を背に」:思い・言葉だけじゃなく、実際に現場で汗を流して働くことでしか、変えていくことのできないものがある。スコップ団リスペクトの歌。
  • 「EVERYDAY EVERYDAY」:一日一日続けていくことで、少しずつ体がそれを覚えて前に進んでいける。ジョギング奨励の歌。(一面的に捉えれば…笑)
  • 「一撃アタック」:気になる相手に猛烈アタックを仕掛ける恋の歌。

全曲とも何より歌詞が聞き取りやすいのがいい。新曲を会場で聴いた全ての人の心に何かしら伝わったものがあると思う。個人的には、これこそ「ポップス」の条件。「太陽を背に」以外は、平凡でも極端でもないという意味で歌詞のバランスも良かった。
「太陽を背に」は、MCでスコップ団のことをひとしきり話したあとでタイトルを発表。そのときに、2009年夏ツアー時に、オバマに影響されて作った「希望のバネ」を聴いたとき、歌詞の内容も曲調も「フォークっぽい」感じがして、田島貴男に合わないと思った気持ちが蘇った。
が、歌詞の内容がモロにスコップ団リスペクトの歌であるにもかかわらず、しかも弾き語りという「フォークっぽく」なるはずの状況にもかかわらず、かなり、かっこよく聴こえた。これは、もしかしたら、アレンジ込みで聴くと良い曲なのかも。ただし、歌詞だけを見ると、ややスコップ過ぎると思う。
一方で、同じく個人的な体験をもとに作られた「EVERYDAY EVERYDAY」は、生まれたきっかけとなったジョギングにそれほどこだわっていないところが良いところ。これは名曲の予感。

直前に行われた鎌倉のライヴとの差

鎌倉ライブに行った人の話を聞くと、重複曲が多かった点で少し残念とのこと。しかし、鎌倉との差は、とにかく新曲4曲に尽きる。今回、そこに田島の「ドヤッ!」が詰まっていたので、そこを評価してほしい(笑)。
例えば、「一撃アタック」は、アルバムバージョンはアマゾンの密林の中をロープで移動して美女をさらっていくターザンのイメージ。にもかかわらず、演奏されたのは、カリブに浮かぶ小島の白浜で釣り糸を垂らす老人のイメージと全く異なる。自分でも言っていたように、変態アレンジから正統派アレンジに変える努力が聴く側に全く伝わらないので、何のことやら…となってしまう。「ファッションアピール」も、会場限定シングルで聴いたものと、演奏された弾き語りバージョンに、かなりの差があったので、他もそうなのだろう。そして多分「太陽を背に」は、オリジナルバージョンがさらにカッコいいのだろう。そのような、聴き手が全く感じ取ることのできない努力を詰め込んだセットリストは本来誤っているんだけど、先走り気味の田島貴男らしくていいと思う。

ライブやツアー頻度が多い中での今回のツアーの意味づけ

上でも書いたように、今回のツアーの目玉は新曲だが、それ以上に驚いたことは、「接吻」以外は東芝時代の曲を封印していること。(「夜をぶっとばせ」すら演奏していない。)さらに、一曲目と本編ラスト曲、さらにアンコールラスト曲の3曲すべてが前作『白熱』からの曲だったこと。
シングル発売を4月、アルバム発売を6月に控えた状況でラストに聴く「カミングスーン」の、これ以上ないタイミング。
次のアルバム『エレクトリックセクシー』が相当変わったアルバムになるということで、『白熱』を総括してリセットするような意味が、今回のツアーでは大きかったような気がする。そして、この感じは、『Rainbow Race』から『Desire』の頃の大ジャンプと重なる気がして、個人的には新作が楽しみで仕方がない。毎回アルバムはファンクラブ限定で1ヶ月ほど前に発売しているはず…。それを考えると、今のタイミングでファンクラブに入っておくのが得策なのかも…。

その他

  • 「Glass」がとても良かった。ファルセットがよく通っていた。
  • 「夜とアドリブ」は、歌詞が変更されたバージョン*1で初めて聴くことができた。
  • 「神々のチェス」は、おそらく初体験だったこともあり、聴けて良かった。そして名曲。
  • 「フィエスタ」は、弔いの曲にしては明るすぎるアレンジだったが、それが逆に海外の曲を聴いている気にさせた。
  • 「カミングスーン」の“2億話”は、小学生っぽいのでやめた方がいい(笑)
  • なお、この日は、前日と違ってマイクが入っていたということで、そのせいか田島のパフォーマンスが上がったらしい。(しっかりせい!)


ということで、ミッド・フォーティーになっても成長を続ける田島貴男の努力が確かに感じられるライブで、かつ新作への期待が非常に高まるような、本人の揺るぎない自信を感じられるライヴだったと思う。夏のツアーの最終日が渋谷公会堂というのは、多くのファンが心配しているように、(さくらホールも満員にならない)現在のオリジナル・ラブには、かなり高いハードルに自ら挑戦した格好になっているが、きっと新作が多くの人にアピールする傑作になっているはず。そして、もし曲だけで足りない場合は握手会(イメージです)をしてでも渋公を満員にしてみせるという自信と気概が感じられるいいライヴでした。
最後に、3列目という素晴らしい良席をお譲りいただいたTさんに感謝。

*1:8/26の池上本門寺ライブで久しぶりに演奏されて以降「津波」という言葉を使わなくなりました。詳しくは→http://d.hatena.ne.jp/rararapocari/20120803/airOL