評価できる大阪・教育条例

日教組支配を打破し、教育再生を目指す「大阪維新の会」の教育政策は評価できる。本来は、国が教育権を確立するリーダーシップを発揮すべきだ


【ポイント】
 当研究所は「日本の根本的改革の為に」の中で7つの方針を提案し、国力の基本のひとつに「教育力」をあげています。そうした視点で、橋下徹大阪市長が率いる「大阪維新の会」が示す「船中八策」の教育改革を検証します。2月に開かれた大阪府議会に松井一郎府知事は「教育基本条例案」「職員基本条例案」を提出しました。「船中八策」は、こうした条例を法制化するとしています。同条例は学力テストで全国最低レベルだった大阪の教育再生の一環であり、日教組などの左翼教組に支配された教育現場の正常化を目指すもので、国歌の起立斉唱を義務付け「同一の職務命令に3回違反すれば標準的な処分は分限免職」するとしています。橋本市長も市議会に起立斉唱を義務付ける条例案を提出しました。これらは学校の日教組支配を打破し、教育力を向上させる方策として大いに評価できます。


【視点】

●教育荒廃の元凶は左翼教組支配にある

教育荒廃は、教育行政の責任の所在が不明確で、学校現場が日教組など左翼教組に支配されてきたことに一因があります。日教組と妥協を重ね、馴れ合い教育行政を続けてきた文科省の責任が大であることは言うまでもありません。こうした悪弊にメスを入れるのが安倍晋三内閣の教育再生策で、教育基本法の改正を始め多くの成果をもたらしました。しかし、未だ道半ばです。その最たるものが、学校現場の左翼教組支配を容認している点です。そのことによって子供たちの公徳心と学力が著しく低下しています。これは全国学力テストの結果、左翼教組の闘争が激しい府県ほど子供の成績が悪かったことで明白なところです。
現行法においては、地方における教育行政は教育委員会が仕切ることになっていますが、教育委員は非常勤で、実質的には教育長がトップの教育委員会事務局が牛耳っているのが実態です。教委事務局がどのような職員で構成されているかと言うと、教員からの出向者が少なくありません。そして左翼教組が強い地域では彼ら職員は左翼教組の意向を受けて動きます。
なぜなら、人事においても教組の発言権を強力で、逆らうと出世ができないどころか、僻地に飛ばされたりするからです。それで教組が教委職員を操り、教育行政を左右してきたのです。表向きは「教育の中立性」を言いつつ、裏では左翼労組が学校支配を行ってきたのが、わが国の教育現場の実態と言わざるを得ません。つまり教委制度はレイマン・コントロール(素人による支配)の名の下に事実上、「治外法権」化され、それが学力低下や偏向教育を生み出す構造腐敗を招いてきたのです。その典型例が2008年に教員採用をめぐる汚職が発覚した大分県です。
同事件では県教育委員会ナンバー2の教育審議監だった幹部らが教員の不正採用に関わり逮捕されましたが、教員から引き上げられる県教委職員のほとんどが大分県教組出身者でした。この教育審議監もかつて県教組大分郡支部執行委員を務めていました。大分県教組の教員の組織率は約90%という全国有数の「日教組大国」です。そうした力を背景に教組が教委を牛耳り、日教組の組織維持のために不正な教員採用システムを作り上げていたのが汚職事件の実態だったのです。それは筆記試験では多数を合格させ、面接で絞り込んでいく過程で、日教組と同じ思想をもっている人物や教組教員の親族などを合格させていくといった不正採用で、これをもって日教組の地盤固めを行っていたのです。
大分県下ではジェンダーフリーや国旗国歌反対などの反日・偏向教育も盛んに行われていました。県下82小・中学校のうち全員もしくは大部分で国歌斉唱できたのは9校(11%)のみです(大分県民間教育臨調=07年3月調べ)。大分県の学力テストの結果は小学校(6年)で全国44位と最下位レベルです(07年度)。大阪府日教組や全教(共産党系)が強く、学力テストでは大分県よりも悪い45位でした。


●政治の責任を明確にする大阪の試み

こうした大分県の例で明らかなように、教委は左翼教組に牛耳られ、教育行政が少なからず歪められてきたのです。そこで日本の教育を危惧する専門家からは、教育委員会制度を廃止し、首長の一部局として責任体制を明確化させて教育行政を透明化し、教委に代わって民意を反映しえる諮問機関を創設して教育の再生を図るべきといった提案が出されていました。
本来、義務教育は国が責任を持ち、教育基本法に基づいて「国の教育権」を確立すべきです。そのうえで地方においては首長の責任体制を構築していくべきです。しかし、安倍政権後、国がまったく動きません。そこで業を煮やして地方レベルで教育再生策に乗り出したのが、「大阪維新の会」の取り組みです。大阪で教育条例を制定しようとする背景はこうしたところにあります。
橋本市長は当初、「首長が教育目標を設定する」とする条例案の制定を目指していました。そうしないと責任体制が明確にならないからです。しかし、これには文科省が現行法に抵触するとしてクレームを付けました。それで今回提出の条例案では首長は「教育委員会と協議して教育振興基本計画の案を作成する」と修正しています。これなら法に抵触しないと文科省もお墨付きを与えています。教育振興基本計画は安倍政権の教育基本法改正によって新設されたもので、国と都道府県、市町村に策定を義務付け、自治体が教育行政に積極的に取り組む体制を作ろうというものです。しかし、いかんせん教委が主導権を握っていますので、大阪府としては首長が教育振興基本計画の作成に加わることで、首長の責任体制を明確にしようとしたわけです。ひとつの試みとして評価できます。
また「基本計画は、大阪府議会の議決を経なければならない」として政治主導を打ち出し、基本計画案の作成に当たっては学識経験者の意見を聴き、さらに府民の意見を反映するための適切な措置を講ずるとしています。これらは教育行政の透明性を高めるためです。教委の無責任体質を打破するためには、教育委員は目標の達成状況を自己評価し、知事はその結果を踏まえ、委員の罷免を判断できるとしています。これは教育活性化を促すことにもなり、評価できます。


●国歌不起立教師に厳罰は当然だ

大阪案は教職員を含む職員の処分と評価を職員基本条例で規定し、国歌の不起立教員を念頭に「同一の職務命令に3回違反すれば標準的な処分は分限免職」としており、これも評価されるところです。
校長の職務命令に違反し、国歌斉唱時に起立しない教員がおり、それを放任しているのは許されることではありません。それを何度も繰り返し学校の規律を乱しているのに処分が曖昧にされ、子供たちに悪影響を与えているのです。ですから違反には処分を明確にしておき厳粛に対応するのは当たり前の話です。
これに対して左翼教組は「3回違反で免職」は最高裁判決から逸脱すると反対していますが、これは判決を取り違えた愚論です。最高裁は今年1月と2月、職務命令を合憲とする判決を下しました(これで最高裁で8回目の合憲判決で、合憲は定着しているといえる)。そして、これを破る教員に対する懲戒処分については戒告までは基本的に懲戒権者の裁量の範囲内と認めました。そのうえで判決は、単純に戒告の回数だけで重い処分にするのは違法との見解を示しました。ここだけを左翼教組は強調していますが、判決の全体像を見るべきです。
ですから最高裁判決に従えば、処分を行う際、機械的に戒告から停職や減給に移らず、研修や指導など教育を徹底し、人事などで厳しく対処する必要があります。このため従来の大阪府教育基本条例は職務命令に2度違反した教師を自動的に停職にできるとしていましたので、見直しを迫られました。そこで今回の条例案は「同一の職務命令に3回違反すれば標準的な処分は分限免職」としていますが、「すぐさま処分するのではなく改善されるまで研修する。改善されなければ現場復帰は認めない」(橋下市長)という姿勢で臨む方針に転換しました。これは最高裁判決が容認する範囲内と言ってよいでしょう(左翼教師は裁判闘争を続けるでしょうが、イデオロギー集団とは闘うしかない)。
いずれにしもて大阪の条例は左翼教組の学校支配を打破し、教育再生への突破口として期待される内容です。以上から当研究所としてはこれを評価し、「船中八策」にあるように同条例の法制化を支持します。ただし法制化まで進むなら国の教育権を確立し、教委を廃止するなど新たな仕組みを検討する必要があることを付記しておきます。


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