そんな単純な話じゃない

そうそう、天神コア紀伊國屋にもおいてなかったよ。

ヒステリック・サバイバー

ヒステリック・サバイバー

まあキャナルのあそこよりはずっと本読む人向けの本棚だったけどね。今までなら、こんな状況に「もし手にサブマシンガンがあれば乱射していた」なんて書いたかもしれないが、間違ってもそんなことしちゃいけないし、思ってもいけないと思った。
・・・読んでしまったから。
いじめについて - 深町秋生の序二段日記のブクマコメントに"スポーツしろよ"なんてのがあった。おいおい、部内での虐めがクローズアップされたばかりじゃんか、学校の部活:smallにしても地域のクラブにしても新菜*1のスリーポインターが描く放物線ほどはキレイなもんではないよ、と思うがブクマに過剰反応してもしようがないかなとも思う。
話はそんな単純なものではないのだ。
単純といえば、この本の帯やカバーに踊る"バトルロイヤル"や"筋肉バカvsオタク"の言葉もあまりにも単純すぎる表現だ。一口にバトルロイヤルというのにしたってWWEが提供するエンタメ純度が高いものと、そこに"ストロングスタイル"だの"王道"だのの思想が絡んだものでは丸っきり別のものとなってしまう。さらに後者はさらにこの物語の本質から遠く離れている。確かにこの物語に多くのインスピレーションを与えたrebとVoDokaの事件は"ジョックスvsギーク"色が非常に濃いものだが、主人公の和樹が日本人にはのどかなジャガイモ畑しか思い浮かべることのできないアメリカの町で体験した事件も、そして、帰国後に巻き込まれたさまざまな抗争も決してそうではない。これは単に第3のグループの存在の問題だけではない。"vs"で両者を対立させれば何かを語った気になれるほど両陣営は一枚岩ではないし、登場人物(半藤のぞく)はまるでマジック・ジョンソンやディオン・サンダースのようにその時々でめまぐるしくポジションを替えて行くのだから。そして、そのポジションチェンジ=立ち居地の揺らぎが話をより複雑に、より哀しく方向へと導く―いや、誰も導いてはくれず、ただ転がって行っていく。


読みながら僕はマジで震えた。本当にぶるぶると怯えた。メソメソと泣いた。だからもうこの本の話はしばらくしたくないとも思う。でもこの文はどうしても書かなくてはいけないんだ。
※もしかしたら『ヒスサバ』理解に役立つかもしれないもの

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*1:女ヤオ・ミンという表現は人気先行という嫌味