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”All alive are fitting.” 「生きてりゃ適者です。」

2015-07-08

長瀧氏やWelchといった過剰診断論者はどこがおかしいのか〜世界や韓国の甲状腺がんの増加に関して〜

さて前回のエントリでも書いたように福島県甲状腺調査での小児甲状腺がんは多発が明らかになりました。

当事者への詳細なインタビューはDAYS JAPAN7月号にもあるので、ぜひ一読をお勧めします。

DAYS JAPAN 2015年 07 月号 [雑誌]

こういう状況になっても相変わらず無責任な「過剰診断論」をばら撒こうとする人たちがいますが、そういう中でも専門家を名乗りつつやっている方々は特に悪質と言えるでしょう。

たとえば長瀧重信氏。

官邸HPを利用して、あたか福島の例が過剰診断であるかのような印象操作をしていますが、情報も偏っている上に、論理的にもかなり歪んでいます

http://www.kantei.go.jp/saigai/senmonka_g78.html

たとえば以下のくだりをみてみましょう。

甲状腺癌と診断され、手術される患者の数は確実に増えているにも関わらず、甲状腺癌の死亡率は減少していません。少なくとも手術される患者の増加に比べて死亡率の減少は、はるかに緩やかです。その結果、「手術しなくても死亡しない患者」が手術されているのではないか、という考えも出てきました。

一読して、なにか変だな、と感じませんでしたか? それは妥当な反応です。

まずここで「死亡率」という言葉が使われていますが、文章の中では一切定義されていません。もちろん「率」というのは母数が明らかにならなければ意味を成しませんが、ここでは甲状腺がん患者の話をしているわけですから、二つの可能性があります

1. 人口当たりの死亡率(国や自治体などの人口を母数とする)

2. 患者数当たりの死亡率(ある範囲患者を母数とする)

なぜか死亡率は1.の定義しかないようなことを言っている人もいるようですが、LancetだろうとNEJMだろうと患者を母数とした死亡率(mortality)を用いた論文普通にありますから、なにかの勘違いをしているのでしょう。

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0140673613608971

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1412278

ではまず1.の解釈で上の部分を読んでみましょう。

甲状腺癌と診断され、手術される患者の数は確実に増えている」

うん、甲状腺がん患者が増えていると。

「にも関わらず、甲状腺癌の死亡率は減少していません。」

なるほど患者が増えて、人口当たりの死亡率が減少しない…と。おや…?

それ、「にも関わらず」じゃなくね?

普通に考えて、甲状腺がん患者が増えた時、人口当たりの甲状腺がん患者の死亡率が減らないのは、別になにも不思議ではないですよね。

ここに逆接を使うのはおかしいわけです。

長瀧氏はこの「減らない」ことを理由に『「手術しなくても死亡しない患者」が手術されているのではないか』という主張を引き出していますが、「手術しなければ死亡する甲状腺がん」が増えていても人口当たりの甲状腺患者の死亡率は「減らない」のですから、「減らない」は理由になっていないわけです。死亡率が「減らない」ことからはこういった判断はできない、ということです。

では2.で解釈するとどうなるでしょうか。この場合少し様相は違ってきます患者当たりの死亡率で考えると、「手術しなくても死亡しない患者」が増えている場合は死亡率がその分「減っていく」ことになります患者数は増えても死亡しないわけですから、当然ですね。ですからこの場合死亡率が「減らない」ことを判断理由とすることができるのですが、結論は逆になってしまうのです。死亡率が減らないということは、「手術しなくても死亡しない患者」ではない、ということになります

このように、「死亡率」をどちらに解釈しても、長瀧氏の論理破綻してしまます

なぜこうなってしまったのでしょうか?

その理由はおそらく、

その理由として、1985年頃には、主として症状のある患者、見たり触ったりして発見される癌が手術されていた のに対し、その後の医療技術の発展により、症状のない人でも超音波検査、針生検による細胞診で診断されるようになったかであると考えられています。まさ に早期診断、早期治療の結果です。

とあるように、甲状腺がん患者の増加について真の増加を一切排除し、検診や過剰診断に帰してしまおうとする姿勢にあると思われます

世の中にはそのような主張をする人物もいますが、コンセンサスにはなっておらず、せめてそういう議論がある、というのが最低限のところでしょう。しかもその議論をきちんと追えば、過剰診断を主張する論理にはかなり難があることもわかります

では今度はそのへんを見ていきましょう。

ココが変だよWelchの過剰診断論

さてまず、過剰論者が持ち出すこちらの総説を見てみましょう。

Overdiagnosis in Cancer

http://jnci.oxfordjournals.org/content/102/9/605.long

ここで過剰診断は以下のように定義されています

Overdiagnosis is the term used when a condition is diagnosed that would otherwise not go on to cause symptoms or death. Cancer overdiagnosis may have of one of two explanations: 1) The cancer never progresses (or, in fact, regresses) or 2) the cancer progresses slowly enough that the patient dies of other causes before the cancer becomes symptomatic. Note that this second explanation incorporates the interaction of three variables: the cancer size at detection, its growth rate, and the patient’s competing risks for mortality.

要約すると、

過剰診断とは症状や死につながらない病気を診断することで、がんの場合は1)決して進行しないあるいは退行するがん、または2)非常にゆっくりと進行し、症状が出るまでに患者が別の原因で死亡するようながん。ただしがんのサイズや増殖速度、患者の死亡リスクとといった要素を合わせて考慮しなくてはならない。

ということになります。この定義は概ね納得のいくものといえます

ところがWelchらの議論は、だんだんおかしな方向に進んでいきます

たとえば誰かさんも好きなこのグラフ

f:id:sivad:20150707172809j:image

Welchらはこのグラフパターンで過剰診断を判断できると主張するわけですが、そも「死亡数」しか考えていない時点で、「症状」も勘案すべき過剰診断の定義からすでに外れてしまっています

またたとえばこういうグラフがあったとします。青ががん患者数、赤がそれによる死亡数です。

f:id:sivad:20150707172810j:image:w360

これはパターンとしては明らかにBの過剰診断にみえますが、実際にはがん患者数(10000→30000)に比例して死亡数(100→300)も増えており、A「真の増加」です。つまり患者当たりの死亡率がもともと低い場合、こういったパターンでの区別意味をなさないわけです。

彼らはまた米国甲状腺がんグラフを出し、この論理人口当たりの死亡率が変化しないから過剰診断だと主張しています

f:id:sivad:20150707174116j:image:w360

しかデータをきちんと見ると、それはあまりにも粗雑な単純化であることがわかってきます

まず人口当たりの死亡率ですが、こちらに生データがあります

http://seer.cancer.gov/csr/1975_2012/browse_csr.php?sectionSEL=26&pageSEL=sect_26_table.06.html

これをみると、女性では減少傾向であるのに対し、男性では逆に増加していることがわかります

これらを足して「変化がない」とすることは果たして科学的といえるでしょうか?

たとえばこちらの総説ではWelchらと違って、検査を原因とするには無理な点についても詳しく議論されています

Worldwide Increasing Incidence of Thyroid Cancer: Update on Epidemiology and Risk Factors

http://www.hindawi.com/journals/jce/2013/965212/

(i) Large tumors are also increased

(ii) The incidence of large size and advanced stage cancers is not decreased, as expected when early diagnosis is more frequent

(iii) Only the papillary histotype of thyroid cancer is increased

(iv) Increased incidence is not proportionally distributed for age and gender (secular trend is greater for females and a birth cohort pattern is present)

(v) Improved accuracy of cancer registration should have produced similar effects also for other tumors

(vi) Mortality rate

(1) stable mortality rate may result from early diagnosis and better treatment counteracting the effect of the increased cancer number

(2) thyroid cancer progression is very slow and increased incidence would affect mortality only after decades

(3) recent data indicate that mortality is increasing, specially in males

小さなサイズのみならず大きなサイズのがんも増えていること、進行したがんも減っていないこと、「甲状腺がん」といってもいろいろな種類があるわけですが、なかでもなぜか乳頭がんのみが劇的に増加していることなどなど。

これらの重要な要素を無視して、あの極度に単純化したグラフから過剰診断を言おうとするのはさすがに乱暴だと言わざるを得ません。

実際WelchらはJAMA米国医師会雑誌)やJAMA Otolaryngol Head Neck Surgでも同様の主張を繰り返していますが、ここでは

this conclusion is premature(この結論は早計である

http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=203371

あるいは

In the article by Davies and Welch, “Current Thyroid Cancer Trends in the United States,” the authors draw some questionable conclusions and make potentially dangerous suggestions. (著者らは疑問のある結論を導き、潜在的に危険示唆をしている)

http://archotol.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1888656

などという辛辣コメントがついています

さてWelchらは韓国甲状腺がんについても過剰診断キャンペーンを張っています

Korea's Thyroid-Cancer “Epidemic” ― Screening and Overdiagnosis

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMp1409841

こちらでもまたおなじみの例の死亡率が変わりませんグラフを出してくるわけですが、そもそも韓国甲状腺がん人口当たり死亡率に変化がないのか、という点にすら疑問があります

Standardized Thyroid Cancer Mortality in Korea between 1985 and 2010

http://synapse.koreamed.org/DOIx.php?id=10.3803/EnM.2014.29.4.530

こちらの分析では、

Thyroid cancer mortality increased until 2000 in Korea. It started to decrease from 2000.(韓国では2000年までは甲状腺がんでの死亡率は増加、それ以降は減少している)

とされています

またWelchらはスクリーニングが行なわれた地域発見率が高い、ということから過剰診断を主張しようとしていますが、甲状腺がんは発病すればすぐに重篤な症状が出るような疾患ではなく、増加しても成人では症状が出るまでに相当な年数がかかるわけですから、増加の過程においてスクリーニング発見率が上がるのは当たり前で、これも理由になっていません。

韓国甲状腺がん、実際のところ

確かに韓国での甲状腺がんの増加は非常に顕著であって、当然ながら現地の研究者も詳細な分析をしています

こちらでは1962 年から 2009 年までの韓国での甲状腺がんについて分析していますが、やはり検査の増加では説明できない多くの要素が見て取れます

Changes in the Clinicopathological Characteristics and Outcomes of Thyroid Cancer in Korea over the Past Four Decades

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3704118/

韓国で成人に対する無料または安価な検診プログラムが開始されたのは99年。それまでも増加傾向は続いていましたが、2004年を超えたあたりから特に急激な伸びが見えるようになりますしか韓国でもやはり増加している甲状腺がんの大半は乳頭がんで、甲状腺がん全般が均一に増加しているわけではありません(FIG.1)。

また、1cm未満や1-1.9cmのがんの数は急激に伸びていますが、かといって2004年まで2cm以上のがんもやはり増え続けており、やや減少に転じた2004年以降も小さいがんが増えた分ほどの減少があるわけではありません(FIG.3)。

f:id:sivad:20150707203944j:image

さらに時代別、大きさ別に甲状腺がんリンパ節転移(LN:lymph-node involvement)と甲状腺被膜外浸潤(ETE:extrathyroidal extension)を整理したこのグラフを見ると、転移1999年以降の1cm未満のがんおいてやや減ってはいますが、それは90年以前からの減少傾向以上のものではなく、1-2cmでは変わらず、2cm以上では増えています。浸潤にいたっては1cm未満でもほとんど減らず、1-2cmにいたってはやはり増えています

f:id:sivad:20150707203533j:image

無論、転移したり浸潤するようながんは進行しないがんなどではなく、症状が出ないがんとも言えません。

韓国では小児の甲状腺がんも増えています

ちょうど昨年、福島県立医科大らが主催した「放射線甲状腺がんに関する国際ワークショップ」でも、「韓国での小児甲状腺がん最近調査結果」と題する現地韓国研究者からの発表があったので、少し見てみましょう。

http://fukushima-mimamori.jp/conference-workshop/2014/08/000143.html

さて福島甲状腺検査では「数十倍のオーダーで多い」とされた小児甲状腺がんですが、韓国でも2001~2010年で2.5倍に増加しているそうです。

しかアジア最大がん治療センターを持つといわれる韓国サムスン医療院1995~2013年における小児甲状腺がんの診断経緯をみると、エコー発見されたのは12%に過ぎないことがわかります

f:id:sivad:20150707204510j:image

このように、韓国においても甲状腺がんの増加は検診による見かけのものではなく、「真の増加」であることを示すデータがいろいろと出ています。もちろん検診によって発見が早まる効果否定できませんが、それは真の増加を否定するものではなく、過剰診断を示すものともいえないわけです。

こちらをみると韓国の手術基準甲状腺がんサイズ1-0.5cmで100%、0.5cm以下でも92.6%と日本に比べると積極的なようですから

Practical Management of Well Differentiated Thyroid Carcinoma in Korea

https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrj/55/6/55_K08E-188/_article

たとえば隈医院のように成人の転移浸潤のない微小がんについて経過観察の選択肢を設ける、というような考慮はあってもいいかもしれません。しかし大半が過剰診断であるかのような主張は症例レベルの検討を無視した極度の単純化によるもので、まともな医師科学者であれば与しないでしょう。

さてこのような増加の原因については、まだはっきりとはわかっていませんが、いくつかの示唆はなされています

一つは、ワークショップの発表でも触れられていたように、CTの回数増加が疑われています

たとえばこちらによると、米国ではCTの回数が年10%程度ずつ、韓国では年11~31%ずつ増加しているとされています

CT Radiation Dose Optimization and Estimation: an Update for Radiologists

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3253393/

またこちらは韓国大学病院小児救急科でのCT使用に関する論文ですが、

Trends of CT Use in the Pediatric Emergency Department in a Tertiary Academic Hospital of Korea during 2001-2010

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3484298/

2001年から2006年までにトータルで92%の増加を示しており、しかも部位別にみると顔面骨に対するCTは3188%(!)と、極めて急激な増加を示しています

先のワークショップでは韓国では遺伝的バックグランドとして欧米よりも感受性が高い可能性にも触れられています特に韓国で多いとされるBRAF遺伝子変異については、前回書いたように鈴木眞一氏の学会発表でも福島発症例で割合が高いことが示唆されており、関連が気になるところです。

また先日の裁判根拠とされたように、十分なデータではないもの原発からの距離と甲状腺がん発症に相関がみられるとの報告もあるようです。

http://www.asahi.com/articles/ASH685SK9H68PTIL02K.html

Cancer Risk in Adult Residents near Nuclear Power Plants in Korea - A Cohort Study of 1992-2010

http://jkms.org/DOIx.php?id=10.3346/jkms.2012.27.9.999

現実実験室のように管理されているわけではありませんから、こういった複数の要因が絡み合った結果なのかもしれません。

悪質な過剰診断論者にご注意!

結局のところ、世界的なまた韓国における甲状腺がんの増加には真の増加が関わっていることは否定されておらず、検査による発見数増加があったとしても、それが「過剰診断」であると示されたわけでもない、というのが現在における妥当見解といえるでしょう。

すなわち韓国甲状腺がん増加を過剰診断と単純に断ずるのはそれ自体偏った不正確な知識というべきですし、ましてやそれを福島甲状腺検査と関連付けるかのような言動は悪質なミスリードしか言いようがありません。

先日書いたように福島甲状腺検査におけるプロトコルはすでに考えられる最大限まで過剰診断・過剰治療配慮した形になっており、それでもこれだけの小児甲状腺がんが出ているという状況をよく考えるべきです。

そういう中で、症例レベルの検討すらしていないWelchらの極端な単純化批判的に読むこともできず、安易な過剰診断論を振りまく「専門家」らの行為は、今や“make obviously dangerous suggestions”といっても差し支えないものでしょう。

2015-05-22

福島の甲状腺検査で過剰診断論が退けられた理由

さて、先日の第19回「県民健康調査検討委員記者会見では甲状腺がん悪性ないし悪性疑いの人数が平成26年度の本格調査では15人、先行調査では 112人、計127人(良性1例、低分化がん3例含む)*1になったことが明らかになりました。

特に本格調査に関しては前回なかったものが今回出てきたことになり、極端な誤診の可能性を除けば新たな発症のおそれを退けることは難しいでしょう。実際今回のとりまとめでは「数十倍のオーダーで多い」という表現が加わり、事態の切迫度を示しています

甲状腺がん「数十倍のオーダーで多い」(甲状腺評価部会中間とりまとめ)http://oshidori-makoken.com/?p=1094

2015.5.18開催【第19回「県民健康調査検討委員会】関連ツイートまとめ http://togetter.com/li/823211

では先行検査の分は「過剰診断」といえるかというと、そう単純ではありません。

第6回甲状腺評価部会では過剰診断論が議論されましたが、「甲状腺検査に関する中間取りまとめ」に検査治療方法についての変更はなく渋谷健司委員の主張する過剰論はここで事実上却下されたといえます

https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/107582.pdf

その後も過剰論を燻らせる人物もいるようですが、ここでぼんやりした一般論ではなく、福島のケースをもとになぜ過剰診断論が退けられたのかを見ていくことにしましょう。

渋谷委員の論が受け入れられなかった理由は、大きく言って二つあります

1.検査治療に関する具体的な指摘が皆無であったこと

2.すでに過剰診断・過剰治療に対して最大限の配慮がなされていること

1.検査治療に関する具体的な指摘が皆無

たとえばLancetに渋谷氏が書いた文章(correspondence:コメントのような短信)をみればわかるように

Time to reconsider thyroid cancer screening in Fukushima http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2814%2960909-0/fulltext

福島甲状腺検査の実際の方法症例について、 なにをどのようにすべきなのか、という具体的な主張がまったく見られません。プロトコルを再考すべきというわりに、具体的なプロトコルについては一切触れようとしない。これでは現実福島での問題資することはありません。

これは氏に続いて過剰論をにおわせようとする方々にも共通な点ですね。


2.すでに過剰診断・過剰治療に対して最大限の配慮がなされている

こちらは実際には1.の理由といってもよいでしょう。変えるべき基準が見つからないから指摘もできない、というわけです。以下に具体的な状況について見ていきましょう。

まず前提となる点をいくつか。

・そもそも大規模な甲状腺検査自体必要ない?

こういう立場の方もいるかもしれません。これは原発事故がなければともかく、事実原発事故が起き、不当な被曝が生じ、チェルノブイリ事故における放射線被曝で甲状腺がんの増加がはっきりしている以上、甲状腺への影響についてきちんと検査治療を受ける権利保証されねばなりません。ここは議論余地はないでしょう。

チェルノブイリ甲状腺がんの歴史と教訓 http://togetter.com/li/578876

・被曝量が少ないから検査必要ない?

たとえば甲状腺治療ではもっと高用量を使うが発がんしないから大丈夫だとか、チェルノブイリでは高線量だったとか。

まず「甲状腺治療では高線量」論は上記のような疫学的結果を無視していますし、第一、日本甲状腺学会による「バセドウ病131I 内用療法の手引き」をみると

http://www.j-tajiri.or.jp/old/source/treatise/070/RI_guideline.pdf

「若年者に131I 内用療法を行う場合は,甲状腺癌の発生の危険性を小さくするため,大量の放射性ヨードを用いるべき」

「131I 大量投与により残存甲状腺組織がより少量となり癌の発生母地が減少することによると考えられる」

とあり、高用量での治療では細胞組織のもの死滅するが、低用量ではむしろ発がんリスクが高いことを指摘しています

またチェルノブイリ事故の例では高線量だった、という主張ではよくベラルーシのゴメリ州高線量地域などが引き合いに出されますが、以下のような低線量地域ブレスト州でも甲状腺がんは明らかに増加しており、低線量だから増加しないという主張は正しくありません。

f:id:sivad:20150419223651j:imagehttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15221314

f:id:sivad:20150419223652j:image:w360https://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01-08/ext02.pdf

また上記のまとめや牧野淳一郎氏の被曝評価と科学的方法 (岩波科学ライブラリー)にもあるように、 チェルノブイリ事故においても被曝線量の評価は二転三転しており、被害が明らかになるにつれて数倍も引き上げられてきた歴史があります

さらにリスク係数の過小評価等も加わって、事故後4年の1990年では甲状腺がんの増加について2〜3桁の過小評価になっていたことがわかっています

1990年時点での甲状腺がん発生予測がすごい http://togetter.com/li/452452

まり、「推定」とはそういう精度のものであるという認識必要です。福島場合、study2007氏の見捨てられた初期被曝 (岩波科学ライブラリー)にあるような事故後の評価体制問題もあり、今後線量についてはさらに混迷するおそれがあります

・低線量ではDNA修復があるから大丈夫

のような珍説もあります。いわゆる閾値あり説で疫学研究の結果には反しますし、そもそもDNA修復について勘違いをしている可能性が高いです。確かに細胞DNA損傷に対して修復機能を持っていますが、この場合の「修復」はDNAを完全に元の形に復元できるという意味ではありません。むしろ修復の過程でも遺伝子変異ゲノム不安定性が生じる、つまり修復自体に発がんリスクが組み込まれているというのが正しい認識です。「損傷―修復イベント」は増せば増すほど発がんリスクは増すわけですから閾値なしモデル矛盾はないのです。

たとえば以下のような資料が参考になるでしょう。

植物における量子ビーム誘発突然変異分子機構解明に関する研究 http://www.ige.tohoku.ac.jp/rinkai/project1-7.html

別の染色体DNA損傷が、正常な染色体にも影響を与えることを確認 http://www.natureasia.com/ja-jp/jobs/tokushu/detail/325

では

甲状腺検査の実際

を見てみます

福島県立医科大学における福島県甲状腺検査について http://www.fmu.ac.jp/radiationhealth/workshop201402/presentation/presentation-3-1-j.pdf

いわゆるABC判定ですが、二次検査が行われるのはB判定以上ということになります

B判定は『5.1mm以上の結節や20.1mm以上ののう胞を認めたもの等』とされています。ではこの基準は「過剰」といえるでしょうか?

まず「20.1mm以上ののう胞」ですが、子ども首にこのサイズののう胞があれば圧迫感などの自覚症状も出始めますし、触知も可能でしょう。この大きさはスクリーニングとは関係なく見つかるものといえます

そして重要なのが「5.1mm以上の結節」。

成人でいうところの微小癌は1cm以下のものを指しまから、これはサイズとしては小さいものといえます。では過剰か?というとさにあらず。先の渋谷氏文章でも引用された、過剰診断を論じている総説

Thyroid cancer: zealous imaging has increased detection and treatment of low risk tumours http://www.bmj.com/content/347/bmj.f4706

を見てみましょう。

こちらの”Guideline recommendations”には

Thyroid nodules ≥5 mm and with ultrasound features suggestive of thyroid cancer and nodules in patients with a family history of thyroid cancer or a history of radiation exposure should be investigated by fine needle aspiration biopsy

まり放射線被曝歴がある場合には5mm以上の結節は生検すべきである、と書かれています

福島場合二次検査でもまずは詳細な超音波検査血液・尿検査で、すぐに生検するわけではありませんから、過剰どころか足りないくらい。つまり、過剰診断を問題視する立場からみてもむしろ基準は緩められているといえます*2

では最も重要

・手術例について

はどうでしょうか?

福島甲状腺検査での手術の適応症例に関しては少し前のものですがこちらに資料があります

手術の適応症例について http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/90997.pdf

術前診断では、腫瘍 径 10mm超は 42例(78%)、10mm以下は 12例(22%)であった。また、10mm以下12例のうちリンパ節転移、遠隔転移が疑われるものは 3 例(5%)、疑われないもの(cT1acN0cM0)は 9例(17%)であった。

この9例のうち7例 は気管や反回神経に近接もしくは甲状腺被膜外への進展が疑われ、残りの2例は非手術経過観察も勧めたが本人の希望で手術となった。

なお、リンパ節転移17 例(31%)が陽性であり、遠隔転移は 2 例(4%)に多発性肺転移を疑った。

*3

鈴木眞一氏は第3回甲状腺評価部会においてガイドライン準拠して治療を行っている旨を述べていますが、

http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-3766.html

手術の適応症例について

https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/90997.pdf

上記の手術例および資料を見る限り、甲状腺腫瘍診療ガイドライン2010年版CQ20

甲状腺微小乳頭癌(腫瘍径1 cm 以下)において,ただちに手術を行わず非手術経過観察を行い得るのはどのような場合か?」http://www.jsco-cpg.jp/guideline/20_2.html#cq20

準拠しているとみてよいでしょう。

術前診断(触診・頸部超音波検査など)により明らかなリンパ節転移や遠隔転移甲状腺外浸潤を伴う微小乳頭癌は絶対的手術適応であり,経過観察は勧められない。

福島での手術例は1cm以上で(成人でいう)微小癌に当てはまらないものか、術前診断において転移や浸潤があるもの、つまり絶対的手術適応が基本となっているわけです。しかもこれらが成人ではなく、より進行が激しいとされる子供において、すでに計103名出ているのが現在の状況ということです。

*4 *5

医院解説にもあるように、甲状腺の潜在癌の議論基本的に成人の1cm以下の微小癌についてのものであり、これらの中には進行しないか、極めて進行が遅いものがある、という前提に基づいています

甲状腺の微小癌Microcarcinoma of the Thyroid http://www.kuma-h.or.jp/index.php?id=44

したがって1cmを超えて成長しているものや、診断時に転移浸潤している、つまりすでに「進行している」ものについては潜在癌の議論自体適用できません。それどころか、成人の例では診断時に転移嗄声のある微小癌は特に高リスクであるという報告すらあります

Symptomatic versus asymptomatic papillary thyroid microcarcinoma: a retrospective analysis of surgical outcome and prognostic factors. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10426589


さて仮に福島甲状腺検査が「過剰」であるとするならば、渋谷氏の論考にあるように、これらの検査治療基準を再考・変更しなければならないわけです。

ところがここでみたように、福島甲状腺検査基準はすでにこれ以上緩めると絶対的手術適応のがんでさえとり逃してしまう、というギリギリのところに設定されています

確かに以下にあるように、子供甲状腺がんはきちんと治療すれば、生命予後は成人と比較して一般によいと言われています

小児甲状腺癌あるいは小児濾胞癌は成人例に比較して予後差異存在するか? http://www.jsco-cpg.jp/guideline/20.html#cq2

しか対処が遅れて転移や浸潤が進行すれば切除の範囲が広がるなど治療の侵襲性は増加しますし、後遺症リスクも増えます。神経に達すれば声を失う場合もありますし、甲状腺全摘になれば一生ホルモン剤の投与が必要となります特に転移を起こしてしまうと放射性ヨード内用療法が行なわれる可能性が高くなりますが、この際は必ず全摘 になってしまます

また鈴木氏は福島症例ではBRAF変異という遺伝子型が多いと報告していますが、

福島県の小児甲状腺がん症例について現在わかっていること http://fukushimavoice2.blogspot.jp/2014/11/blog-post.html

この変異型は遠隔転移した場合に放射性ヨードが効きにくいなど、予後が悪い可能性を指摘する報告もあり、予断を許さない状況です。*6

Association between BRAF V600E mutation and mortality in patients with papillary thyroid cancer. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23571588

BRAF V600E遺伝子変異甲状腺乳頭癌の予後に与える影響について http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2013-05-22

甲状腺検査受診率が伸び悩んでいる状況で、具体的な指摘もなく、なんとなく過剰診断を匂わすような専門家発言はなんら患者のためにならないどころか、よりいっそう受診対応を遅らせ、侵襲性や後遺症予後リスクを増すだけだといってもよいでしょう。

まとめにあるようにチェルノブイリ事故での甲状腺がんにおいても、被曝量の過小評価スクリーニング説などが飛び交う中、症例における転移の多さや進行度から実際の増加であるとの指摘が相次ぎ、結局はそれが正しかったという歴史があります

実際の症例をきちんと検討することが子供患者を守ることにつながります。その意味において、検査責任者としてこれまで実地に症例検討してきた鈴木眞一氏から甲状腺手術は専門外の大津留晶氏への交代は非常に問題が多いと考えられます

実際に質疑においても大津留氏は症例についてまともに答えることすらできていません。

福島の小児甲状腺がん疑い例含め126人に〜鈴木眞一氏は退任 http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1915

これでは事態悪化させるだけです。

国連人権理が勧告するように、きちんとした情報公開がなくては信頼は生まれようがありません。その点残念ながら県の姿勢はむしろ逆行しつつあるといえるでしょう。

受診が低調になっていく間にも、がんは進行していきます。いかに口先で誤魔化そうが、がんには通用しないのです。


追記:

発見例にこれほどの転移浸潤があるということは、今後検査の中で見つかってくるがんも相当な割合で今現在「進行中」と考えるべきでしょう。その受診を遅らせることの意味を、具体的な指摘のできない「なんとなく過剰論者」はよく考えてもらいたいものです。

さらに今後の問題として、「再発」における遠隔転移や、また絶対数としてはさらに多くなるおそれがある成人の甲状腺がんに備える必要があります疫学者の津田敏秀氏が指摘するのもこのあたりの問題でしょう。

第27回日本内分泌外科学会総会にて鈴木眞一氏の発表があったようです。

非常に重要データになっています。以下。

福島の小児甲状腺癌=第27回日本内分泌外科学会より

http://togetter.com/li/831629

DAYS JAPAN7月号に甲状腺検査評価部会に対する直接のインタビュー記事掲載されています

http://www.amazon.co.jp/DAYS-JAPAN-2015%E5%B9%B4-07-%E6%9C%88%E5%8F%B7/dp/B00XVHUFQ8


若年性(45歳以下成人)甲状腺がんにおいてもリンパ節転移が死亡リスクを高めるという報告が出ました。

Presence and Number of Lymph Node Metastases Are Associated With Compromised Survival for Patients Younger Than Age 45 Years With Papillary Thyroid Cancer

http://jco.ascopubs.org/content/early/2015/06/15/JCO.2014.59.8391.full

日本語記事

http://www.cancerit.jp/33993.html

*1:低分化がんは予後が悪いと言われており、状況は深刻です。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11717536 http://togetter.com/li/632205

*2:また米国甲状腺学会による、小児甲状腺結節・がんの初の治療ガイドラインにおいては、小児においては小さくても悪性の場合がある等の理由からサイズ基準にならない旨が記載されていますhttp://t.co/QmcfhlPwS7

*3:ちなみに術後病理診断はざっくりしていますがこちら。「術後病理診断では、腫瘍径10mm以下は15例(28%)かつリンパ節転移、遠隔転移のないもの(pT1a pN0 M0は 3例(6%)であった。甲状腺外浸潤 pEX1は37%に認め、リンパ節転移は74%が陽性であった。」

*4:ちなみにこちらの総説では、進行の早い子ども場合には1cm以下でも微小癌の定義は当てはまらないとされていますhttp://d.hatena.ne.jp/sivad/20130311/p1

*5:また一部の人が引き合いに出そうとする韓国ではこちらの論文によると成人も含め1 - 0.5cmで100%、0.5cm以下でも92.6%が手術対象となるようで、福島甲状腺検査での手術基準とは相当にかけ離れており、直接比較するのは難しいでしょう。Practical Management of Well Differentiated Thyroid Carcinoma in Korea https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrj/55/6/55_K08E-188/_article

*6:BRAF変異は成人に多いが、地 域やヨード摂取量によっても変動し、詳細なメカニズムはわかっていない。https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/98/8/98_1999/_pdf

2015-02-11

NATROM氏はどこで道をあやまったのか〜なぜ1994年報告書はMCS(化学物質過敏症)や臨床環境医を否定しなかったのか〜

さて間が空いてしまったので簡単におさらいしましょう。

まずNATROM氏によるこういった暴言

https://twitter.com/NATROM/status/344020644603764737

化学物質過敏症は臨床環境医によってつくられた「医原病」だと思う。

http://d.hatena.ne.jp/sivad/20130704/p1

からまり、いま議論しているのは、NATROM氏がMCS(化学物質過敏症)および臨床環境医を否定する根拠を述べている、2002年のこちらの文章に関してです。

http://members.jcom.home.ne.jp/natrom/consensus.html

ここでNATROM氏は、EPA(Environmental Protection Agency:米国環境保護庁)や米国医師会(AMA:The American Medical Association)が出している以下の報告書が、MCSや臨床環境医を否定的に書いていると主張しています。

Indoor Air Pollution: An Introduction for Health Professionals

http://www.epa.gov/iaq/pubs/hpguide.html

しかし一読してわかるように、氏が否定根拠としている”claimed””suspected”は、医療において症状を述べたり、臨床推論したりする際に普通に使われる単語であって、特に否定的意味はなく、以下のような氏の主張はまず英語レベルでの誤読であることがわかります。

アメリカ医師会らの報告書は臨床環境医学の主張するような多種化学物質過敏症概念を支持しているわけではありません。だから、claimed(〜と主張されている)やsuspected(〜だと疑われて いる)という表現になっているのです。

またこの周辺の訳は以下に記してあるのでざっとお読みください。

http://d.hatena.ne.jp/sivad/20130912/p1

これに対して氏が書いたのがこちら。

http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20130907#p1

さてNATROMさん、当の文章を読まずに、参考文献ですらない文書を持ち出して、いったいなにがしたいのでしょうか。

理屈を追ってみると、どうやら、過去否定的だったのに、1994年に急に擁護的になるはずがない、といいたいように読めます。が、いやいや、そこにいたる経緯を知りたければ、当該文書にある参考文献を読むべきなんじゃないですか。

たとえば報告書

MULTIPLE CHEMICAL SENSITIVITY (MCS)For the health professional:の項で引用されている文献、

Miller, Claudia S. "Chemical Sensitivity: History and Phenomenology". Conference on Low Level Exposure to Chemicals and Neurobiologic Sensitivity, Agency for Toxic Substances and Diseases Registry, Baltimore, MD, April 6-7, 1994.

*1

には1994年時点でのMCSに関する流れがよくまとまっています。もちろんこういう報告書総合的な状況を勘案して書かれるもので、現在でも研究途上のMCSについて、当時状況を一変する画期的発見があったわけではありません。

しかし、1994年報告書の少し前に、ある非常に示唆的な出来事があったことはきちんと記されています。

上記の1994年報告書米国環境保護EPA米国医師会AMAといった複数組織が合同で書いていますが、そのまさにEPA内部でMCSが発症していたことが、1991年頃に明らかにされたのです。

該当箇所を引用して一部訳してみましょう。

f:id:sivad:20150201165345j:image:w640

皮肉にも、数年前にEPA(Environmental Protection Agency:米国環境保護庁)は27000平方ヤードの新たなカーペット、塗装、改装スペースをワシントンDCのWaterside Mall本部に設え、MCSについて直接に学ぶ、ありがたくない機会を得ることとなった。改装後に約二百名の職員がシックハウス症候群を発症、さらにそのう ち数十名がMCSを発症したのだ。これらの職員は、改装前には何の問題もなかったたばこの煙、臭いエンジン排気やその他の微量の曝露に耐えられなくなったと訴えた。*2何名かはもはや働き 続けられないと辞職した。何名かは職務を変えるか、新たな職務を得て在宅勤務となった。何名かは、EPA提供するカーペット、消毒剤、芳香剤などを排除し、窓を開けて換気できる特別性のオフィスに移動した。

さて、これらの職員たちは、臨床環境医による謎の暗示によってMCSを発症したのでしょうか? もちろんEPAはそうは考えなかったわけです。

ここより、EPAはMCSに関するNASNational Academy of Sciences:米国科学アカデミー)の会議への出資を行い、またEPA自身によるMCS研究にも乗り出すこととなります。

これらは1992年頃には進行中の事態だったでしょうから、たとえば1992年のAMAの文書にはまだ盛り込むことはできなかったのでしょう。

こういった経緯を踏まえた上で1994年報告書を読めば、なぜEPAらがMCSや臨床環境医を否定できなくなったのかは、もはや明らかでしょう。

もちろん数十名のEPAの職員がMCSを発症したからと言って、その機序が一気に解明されるわけではありません。しかし、人生生命を大きく左右する重篤な症状の患者を次々に目の当たりにした時、機序が明らかになるまでなにもしない、というわけにはいきません。

たとえば現在問題となっている子宮頸がんワクチン副反応について考えてみましょう。*3

副反応の機序については、いくつか示唆される報告はあるものの、まだまだ全容はわからない。新たな病気には治療法のエビデンスも当然ない。ではわかるまで放置する? 機序がわからないなら心因性にしてしまえばOK?

いいえ。人間病気の解明というのは数十年、あるいはそれ以上かかっても不思議のないプロセスです。水俣病ですら、その機序はまだはっきりとはわかっていません。

そんな中で、もちろん、患者との信頼関係協力関係の中で慎重にですが、可能な範囲で症状を緩和する対処法を手探りででも進んでいかなくてはならない。それが医療というものです。NATROM氏はどうやらそこがまるでわかっていないようです。

EPAは身をもってそれを体験し、MCSの存在と複雑さや、臨床環境医も含めた多様な視点による取り組みの重要性に気づいたということでしょう。

さてNATROMさん、これで1994年報告書文章としても、歴史的経緯からも、MCSや臨床環境医を否定したり排除はしていないことがお分かりになったかと思います。

あなた良心ある医師であるならば、2002年以来、もう12年以上も患者さん方を苦しめ続けている誤った言説について、誠意ある対応をなさったほうがよいのではないでしょうか?


参考:

ちなみに氏は英国の、またぞろ1994年の文献を持ち出してきています。何度もいいますが、もう少し新しい知見を追いましょうね。たとえば英国なら2000年イギリスアレルギー環境栄養医学協会(BSAENM)が報告書を出しています。

Multiple Chemical Sensitivity: Recognition and Management. A document on the health effects of everyday chemical exposures and their implications

http://www.bsem.org.uk/uploads/BSEM%20MCS%20Report.pdf

EXECUTIVE SUMMARYの4を見てみましょう。

The genuine nature of MCS has been recognized by officially commissioned reports from independent scientists in the USA and the UK, who have concluded that it is a valid diagnosis and a sometimes disabling condition, although all have stressed the need for further research.

MCSの本物の性質は、米国英国とでそれぞれ独立した科学者らによる公式報告書において認識されており、MCSが有効な診断であり、時に重篤な疾患である結論しているが、すべてにおいてさらなる研究必要だと強調されている。

そういうことですね。

2014-05-28

放射性PM2.5としての原発フォールアウト(セシウムボール)を考える

さて原発事故後の鼻血現象に関して、フォールアウトの影響を考える際、私は以前より鼻粘膜の炎症の可能性を指摘してきましたが、

http://d.hatena.ne.jp/sivad/20110906/p1

その後フォールアウト内容物にサイズ的にPM10~PM2.5particulate matter, 粒径10μm以下〜2.5μm以下の微粒子)に相当する不溶性・放射性のセシウム(等)粒子が含まれていることが明らかになり、粘膜における動態をより詳しく考えることができるようになりました。現在セシウムボールと呼ばれているようです。

Emission of spherical cesium-bearing particles from an early stage of the Fukushima nuclear accident(http://www.nature.com/srep/2013/130830/srep02554/full/srep02554.html)

東電原発事故によって放出されたセシウムホットパーティクル(http://blogs.yahoo.co.jp/satsuki_327/40880543.html)

先日も小線源放射線治療専門家である西尾正道医師らがその重要性を指摘していたようですが、これによって原発フォールアウトは放射性PM2.5と捉えることができ、生物学的な影響を考える際には、γ線水溶性線源とは異なるその動態を考慮することが必要不可欠になります

今回は放射性PMであるフォールアウト粒子の生物学的な動態を、類似のケースをもとに考えてみます

が、まずその前に、なぜ放射性物質生物学的な動態がそれほど重要なのか、について簡単に説明してみましょう。

皆さんは、放射線放射性物質の被曝による炎症で組織がダメージを受ける場合、そのダメージは放射線エネルギー(あるいはそれ由来の活性酸素)による組織破壊だと思っていませんか?

これはごく部分的はいえるものの、被曝による炎症という現象全体を正しくとらえているとは到底言えない理解なのです。

被曝と生物学的影響の関係

では実際にはなにが起こっているのか。

http://finance.yahoo.com/news/sngx-soligenix-sgx942-good-candidate-160000772.html

より図を引用ます

f:id:sivad:20140528191851j:image

これは放射線治療または化学療法の際に副作用として粘膜炎が起きる仕組みをあらわしたものです。

上の部分に、左端のノーマルな状態から、被曝を受けて変化していく様子が右向きに描かれています。見て分かるように、左から二番目、つまりRadiationを受けた時点では、組織の損傷はほとんどありません。この段階はInitiation、つまり炎症のトリガー部分にすぎないわけです。もちろんdamageはありますが、それは組織損傷の「本番」ではないのです。

しかし、これによってInnate responseつまり自然免疫系にシグナルが入ります自然免疫系とは、いわゆる獲得免疫の前に働くもっと基本的免疫システムで、マクロファージや好中球といった免疫細胞が主役を担います。これらは特異的抗体を出すわけではなく、異物の侵入を示すようなシグナルを受け取ればそこに集合し、自分組織ごと攻撃するのです。

これがAmplification「増幅」です。これによって集合した好中球やマクロファージ組織ごと攻撃を開始し、「粘膜炎」「潰瘍」といった炎症による明らかな損傷が生じるわけです。これによってバリアが破壊され、外部の雑菌等が侵入することでさらに炎症が悪化することもあります。これらのプロセスで異物や死細胞を除去できれば、炎症はやがて沈静化、組織再生に向かいます

このように、被曝による炎症において、その損傷の大部分は自然免疫系の攻撃によるものなのです。

すなわち、生物学的な動態や条件が異なれば、被曝による影響も当然異なってくるわけですね。生物学的影響を考えるには生物学的動態の反映が不可欠なのは、このためです。*1

粘膜上の不溶性微粒子の動態

では、フォールアウトが不溶性の粒子であることは、γ線被曝や水溶性線源と比較して、生物学的にどのように異なるのでしょうか。放射性ではないものの、PM10PM2.5の成分のひとつでもあり、フォールアウトの成分にも含まれるシリコンケイ素, Si)の微粒子についてみてみましょう。

シリコンはシリカ(二酸化ケイ素)の形で、日常的にもたくさんの製品に使用されており、化学的にも安定、そもそも人体にもある程度含まれている成分で、毒性はほとんどないと考えられてきました。

しかし、これがPM10~PM2.5といった不溶性の微粒子になった場合、吸引すると肺に慢性、場合によっては急性の炎症を生じ、典型的には珪肺と呼ばれる症状をきたすことがわかっています

なぜ不溶性微粒子になると生物学的動態や影響が変わるのか?それは以下のように考えられています

Reactive oxygen species (ROS) and reactive nitrogen species (RNS) generation by silica in inflammation and fibrosis

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0891584903001497

より図を引用ます

f:id:sivad:20140528191849g:image

不溶性の微粒子が粘膜に付着すると、粘膜上のマクロファージ(肺粘膜にも、鼻粘膜にもマクロファージはいます。その他にも好中球、樹状細胞らが粘膜上の自然免疫を担っています)がこれを貪食し、異物として分解しようとします。この際、マクロファージ細胞内で粒子を分解しようとすると同時に、周囲に炎症性のサイトカインや、他の免疫細胞誘引するケモカイン蛋白質を分解するプロテアーゼ活性酸素などを放出し、炎症反応を拡大していきます

しかし、こういった不溶性の粒子は分解できません。この場合、炎症反応は止めることができずに継続し、たとえ貪食したマクロファージが死んだとしても、誘引した別の細胞が貪食して炎症反応は続いていきます。この反応が大きければ組織の損傷は大きく危険な急性の症状になりますが、比較的弱い炎症も継続することで肺の組織を徐々に破壊して「線維化」し、本来機能を失わせていきます

f:id:sivad:20140528191850g:image

また、シリカ自体の影響も複数の可能性があるようですが、一つのメカニズムとして、2価鉄をトラップすることでヒドロキシラジカルを生じ、マクロファージの炎症反応を促進していると考えられています

さらに、吸引した肺粘膜の不溶性粒子は、貪食細胞によってリンパ組織にも移動することがわかっていますリンパ管はやがて静脈に合流しますので、結局は全身に移動可能ということになるわけです。

Histopathological Changes in Enlarged Thoracic Lymph Nodes during the Development of Silicosis in Rats(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9717672

また詳細な機序は不明ですが、シリカ微粒子によって活性化したマクロファージによって自己免疫が引き起こされる可能性も示唆されています

Occupational exposures and autoimmune diseases. (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11811933

放射性PMとしての原発フォールアウトも、不溶性微粒子として、基本的な動態はこれと同様なものが想定されます。放射性であることで活性酸素の生成を通じて、さらに強い炎症促進能を持つ可能性が高いでしょう。

これらの機序と合わせて、環境PMの増加が鼻血の頻度を増加させること自体はすでに報告があるため、双葉町疫学的な結果と合わせても、フォールアウトによる鼻血増加の可能性を否定するのは無理筋というものです。

Airborne environmental pollutant concentration and hospital epistaxis presentation (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15533154

いわゆる「美味しんぼ問題」の基礎資料となるべき疫学調査存在について(http://bylines.news.yahoo.co.jp/kawasakikenichiro/20140520-00035486/)

ただ、以前も述べたように、鼻粘膜の炎症による鼻血そのものは、命に関わるような深刻なものとは考えにくいといえます鼻血とともに粒子が出てしまうなら、なおさらです。

しか問題は、そういった放射性PMにさらされているということにあるのです。

放射性PMの与えうる健康影響

先に述べたように、被曝の生物学的影響において、被曝に対する生物側の反応はもっとも主要な要素です。ところが、ICRP代表される被曝影響のモデルは、不溶性粒子やマクロファージに関するこのような知見に追いついておらず、その動態を反映できていません。不溶性粒子は吸収されないか、いずれ排出されるので問題なし、としているわけです。「想定外」というやつですね。

当たり前ですが、生物学的な動態を反映していないモデルでは、その動態に関する生物学的影響を考えることはできません。

したがって、放射性PMによる生物学的影響については、PMに関する環境医学の知見を参考にしながら、実際の健康影響をつぶさに見て対処することが必要になります

従来のモデルでは説明できない、関係ないと思われているような症状も、こういった動態を考慮すれば生じうるかもしれないのです。

たとえばウクライナでは、「低線量」であっても、セシウム137汚染の度合いに応じて子どもの肺気量の減少や気道閉塞が報告されています

137Cesium Exposure and Spirometry Measures in Ukrainian Children Affected by the Chernobyl Nuclear Incident (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2866691/

こういった影響は特に放射性PMの関与が疑われるものでしょう。

その他にも低線量域での白血球の減少*2や、ウクライナ政府の報告書にあるような種々の症状は従来のモデルでは「考えにくい」のでしょうがモデルの不十分さを逆手にとって「ありえない」かのような姿勢をとるのは医学としても科学としても本末転倒といえるでしょう。

Exposure from the Chernobyl accident had adverse effects on erythrocytes, leukocytes, and, platelets in children in the Narodichesky region, Ukraine: A 6-year follow-up study (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2459146/

ウクライナ政府報告書(第3章、第4章)の日本語訳(http://blogs.shiminkagaku.org/shiminkagaku/2013/04/34-1.html)

国連人権理事会がすでに勧告しているように、基本的血液検査は当然として、このような想定しうるあらゆる健康影響に関して、低線量地域であっても希望すれば十分な健診を受けることができる体制を整えるべきであり、またフォールアウトや土壌汚染レベルとの関連も精査されるべきだといえるでしょう。

鼻血問題は、放射性PMという原発フォールアウトの性質と、従来の被曝モデル限界、そして健康影響の精査の必要性をあぶり出してくれたといえます


参考:

その後「NHKサイエンスゼロ シリーズ 原発事故(13)謎の放射性粒子を追え!」で取り上げられ、「セシウムボール」という呼称になったようです。上記のような生物学的動態についてもきちんと考えていくことが必要ですね。

http://togetter.com/li/760376

PMの動態に関する現在の知見はこちらにある程度まとまっています

微小粒子状物質健康影響評価検討会報告書

http://www.env.go.jp/council/former2013/07air/y070-24/mat01.pdf

7.1.3.2. 体内動態

呼吸器系に一旦、沈着した粒子は呼吸器系がもつ種々の機構により移行、除去される。鼻汁、粘液線毛輸送、咳、くしゃみ、肺胞マクロファージ等による貪食と貪食後の移動、嚥下、痰、上皮細胞による飲作用、間質への浸透、血流中への移行、リンパ系への移行等の機構がある。また、粒子の物理・化学的性状(溶解性、形状、粒径等)や生物学的特性(タンパク等との結合、細胞内での動態等)も動態には影響を与える。

*1:こちらのような評価http://preudhomme.blog108.fc2.com/blog-entry-249.html生物学的に無意味なのもこれでわかりますね。

*2:好中球の減少は造血系の障害だけが原因ではなく、自己免疫によって生じることもある

2014-02-01

子宮頸がんワクチン副反応と、アジュバントによるマクロファージ性筋膜炎について

さて、先日の1月20日子宮頸がんワクチン副作用に関して以下のような厚労省の見解が発表されました。

接種後に長引く痛みやしびれなどが報告されている子宮頸がんワクチンについて、厚生労働省の専門部会は20日、副作用の原因や治療法を論議、接種時の痛みをきっかけに、緊張や不安などの心理的要因や生活環境などの社会的要因が、身体の症状として現れたとの見解で一致した。

共同通信

これに対して全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会は

「多様な症状に苦しむ被害者病態と被害実態を正しく把握し検討したものとは到底受け止められません」http://shikyuukeigan.fem.jp/2014/01/120.html

のように抗議声明を出しており、また日本消費者連盟

「そもそもワクチン副作用ではないかとの疑念を意図的排除し、副作用かどうか真摯検討しようとする姿勢が全く感じられない」http://vpoint.jp/education/11042.html

と強く批判しています

マクロファージ性筋膜炎(MMF)」の症状と酷似?

ここで特に注目すべきは、実際に30名以上の副作用患者を診察した国立精神・神経医療研究センター病院小児神経科佐々木征行医師見解です。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000033872.pdf

http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20131028164258980

佐々木氏は資料においてさまざまな可能性を検討していますが、特に

酸化アルミニウムを含むA型・B型肝炎ワクチンによって起きる可能性がある「マクロファージ性筋膜炎(MMF)」の症状と酷似している

との見解を述べています

酸化アルミニウムグラクソ・スミスクライン社の子宮頸がんワクチンサーバリックス薬液に「アジュバント」つまり免疫反応を高めるための物質として添加されています。また配合は違いますが、メルク社の子宮頸がんワクチンガーダシルにもやはり含まれています

ワクチン添付文書

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002c06s-att/2r9852000002c0e2.pdf

この「アジュバント」、実は検討部会でも、信州大学医学部内科学第三講座の池田修一参考人によって言及されています

池田参考人 ええ。だからアジュバント関連関節炎とかワクチン接種後関節炎としてはかなり重篤なものが出ているのだなというふうに拝見しました。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000014833.html

ところが検討部会の委員らは、アジュバントの影響についてこれっきり完全に沈黙してしまます検討部会では薬液の影響ではないとしているようですが、アジュバントは明らかにワクチンの「薬液」です。

マクロファージ性筋膜炎(MMF)」とはなにか?

では、佐々木氏の指摘した「マクロファージ筋膜炎」とは、どういう症状なのでしょうか。

この症状は英語ではMacrophagic myofasciitis(MMF)と呼ばれています公式に報告されたのは比較最近で、1993年フランスで見つかったのが最初だといわれています。全身または四肢の筋痛、関節痛、発熱、強い疲労感などが特徴的な症状として知られています生検の結果、筋膜にマクロファージそれに随伴してリンパ球が集積していることがわかり、このように呼ばれるようになりましたが、近年では運動遅滞、成長障害、認知障害、筋緊張低下症など、中枢神経系への影響も報告されています

Pediatric macrophagic myofasciitis associated with motor delay.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16866298

Long-term follow-up of cognitive dysfunction in patients with aluminum hydroxide-induced macrophagic myofasciitis (MMF)

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22099155

マクロファージはいわゆる白血球ひとつで、貪食細胞とも呼ばれます。体に病原体が侵入した際に真っ先にかけつけ、病原体を食べてしま細胞です。その意味では体を防御する細胞なのですが、近年ではその攻撃能力自分に向いてしま場合があることがわかっています

たとえば脂肪組織肝臓膵臓などに侵入して炎症を起こすと、メタボリック・シンドローム糖尿病になってしまます。血管内壁を攻撃して動脈硬化を起こしたり、脳に侵入して神経疾患を起こすこともあります。同様に、MMFでは筋膜に侵入して悪さをしている、ということですね。いわゆる諸刃の剣、というやつです。

ではここからは、アジュバントマクロファージ性筋膜炎の関係を明らかにした論文

Macrophagic myofasciitis lesions assess long-term persistence of vaccine-derived aluminium hydroxide in muscle

Gherardi, et al (2001)

http://brain.oxfordjournals.org/content/124/9/1821.full

をもとに概説しましょう。図や写真は、すべてこちらの論文から引用になります

さてこの論文の著者らは、原因不明のMMF実態を探るべく、1997年から1999年フランスにおけるMMF患者の調査を始めます

そこで、ワクチン接種の情報が得られた患者50人について検討すると、全員が水酸化アルミニウムアジュバントを使ったワクチン接種を受けていることがわかりました。年齢は12から77歳まで、接種から生検までの期間は3か月から96か月まで。いずれも非常に広範にわたります

f:id:sivad:20140201165128j:image

組織の様子は以下のように、やはり筋膜にマクロファージおよびリンパ球が集積していることがわかります

f:id:sivad:20140201160751j:image

Aはヘマトキリン・エオジンという色素での染色。筋外膜(下部の赤いところ)の上に、ぎっしりとマクロファージリンパ球が浸潤してることがわかります(淡いピンクに青っぽい粒)。BはマクロファージのマーカーCD68で染色(赤)、CはT細胞のマーカーCD3での染色(赤)です。

さらに電子顕微鏡で、組織を詳細にみてみます。それが以下のモノクロの図。

f:id:sivad:20140201162209j:image

Aでは上下の筋膜の間にごちゃごちゃとマクロファージらが入り込んでいる様子がよりくっきりわかりますが、もっと目を凝らすと、奇妙な構造が見えてきます。それがBで、浸潤したマクロファージの中になにやら黒いカタマリが散見されます。この構造MMF患者さんでは調べた40人中40人見つかりましたが、皮膚筋炎および筋ジストロフィー患者さん80人ではゼロでした。

著者らはここに、ワクチンに使用したアルミニウムとの関連を疑います

そこで、組織の浸潤マクロファージX線成分解析にかけます。するとドンピシャ

f:id:sivad:20140201163409j:image

Alの高いピークがみえます。やはりマクロファージにはアルミニウムが蓄積していたのです。

核反応解析で組織でみても一目瞭然、

f:id:sivad:20140201163547j:image

細胞の周辺のマクロファージ領域のみ、Al、アルミニウムの集積が認められます。一番下のはP、リン分布で、これは当然ながら全体にみられます

マクロファージは血中の鉄をとりこんで蓄積する性質がありますが、同様に他の金属も集積する場合がありますしかしそれがどういう影響を及ぼすのかは、まだよくわかっていないのです。

またこの時、筋肉や血清のアルミニウム濃度を測定してみると…

f:id:sivad:20140202155618j:image

MMF患者筋肉ではアルミニウム濃度が大きく上昇していますが、血清では通常値と変化ありません。したがって、血清の測定ではMMFかどうかの判断はできないということになります

ここまでで、MMF患者さんでは筋膜にマクロファージが集積しており、そのマクロファージアルミニウムを蓄積していることが明らかになりました。

じゃあワクチンアジュバントの水酸化アルミニウムでこんなことが起こるの?となるのですが、人体実験するわけにもいきませんので、ラット実験してみます

酸化アルミニウムアジュバントを含んだHBVB型肝炎ワクチンラットに打つと…

f:id:sivad:20140201163824j:image

やはりヒトと非常によく似た形で、筋膜へのマクロファージの集積が起こりました。

これらのことからワクチンアジュバントの水酸化アルミニウムマクロファージ性筋膜炎MMF引き起こし得る、といえるわけです。

くりかえしますが、サーバリックスおよびガーダシルアジュバントには、水酸化アルミニウムが含有されています

子宮頸がんワクチン副作用MMFだけで説明できるかはともかく、この状況でアジュバントの影響を無視するのは、どうみても科学的態度とはいえません。

検討部会は「心身の反応」なる不明確な主張をしているようですが、それこそなんの根拠も示されていません。

佐々木池田医師の主張のように、アジュバントおよび水酸化アルミニウムの影響をただちに検討、調査するのが、検討部会のとるべき方向であり、患者の救済および薬害の防止における科学社会的姿勢だと断言できるでしょう。


追記:

以下のように部会資料においてアルミニウムについて触れている部分があります。が、上記の知見からアルミニウムの影響を除外できないことがわかります

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000035213.pdf

1.発症時期は症例によって様々であり、発症後の症状の経過にも一定の傾向がない。

2.子宮頸がん予防ワクチンにはアジュバントとしてアルミニウムが含まれる。しかし、専門家によれば、動物実験の結果からワクチンの筋注による血清中のアルミニウム濃度の増加はわずであると推定されこと、アルミニウムは急速に体内から排出されることからアルミニウム中毒によるものとは考えにくいとされた。

3.サーバリックスにはアルミニウム以外のアジュバントが含まれるが、サーバリックス有意に報告頻度の高い副反応は検出されていない。

反論:

1.→上記論文にあるように、症状の分布ワクチン接種後から非常に長い期間(3〜96か月)にわたる。またMMFだけでなく複数の自己免疫疾患なども報告されている。

2.→上記論文より、血清中のアルミニウムではMMFかどうかの判断はできないことがわかる。筋組織またはマクロファージにおける蓄積を確認する必要がある。また筋膜のマクロファージにおけるアルミニウムの蓄積に関しては通常の代謝経路では判断できない。

3.→上記のように、アルミニウム関与の可能性は排除できていない。ガーダシル比較しても、ガーダシルにもアルミニウムが含有されており、やはりアルミニウムの関与を排除できない。


ちなみに薬害オンブズパースンにより、グラクソ・スミスクライン論文に対して以下のような疑義が提出されているようです。

子宮頸がんワクチン」(HPVワクチン)の費用対効果に関する見解

http://www.yakugai.gr.jp/topics/topic.php?id=853

また、ケースレポートではありますが、免疫吸着療法(血中の自己抗体を除去する手法)によてHPVワクチン接種後のacute cerebellar ataxia (ACA) が寛解した例が報告されています

https://www.thieme-connect.com/DOI/DOI?10.1055/s-0033-1333873

HPVワクチンのエビデンスと費用対効果、副反応に関する疑義についてはこちらが詳しいです。

Tomljenovic & Shawの論文「ヒトパピローマウイルス(HPVワクチン政策とエビデンスに基づく医療−両者は相容れないのか?」

http://tip-online.org/index.php/news/70-news20131108

参考:

予防接種ワクチン分科会副反応検討部会

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000035220.html

委員名簿

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000035212.pdf

東京新聞

子宮頸がんワクチン中止訴え、都内で国際シンポ 「アルミ副作用原因」専門家指摘

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014022602000121.html