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2016-05-27

和洋会でてふてふ捕獲

和洋会古書展。初日。

閉場1時間前くらいに会場到着。ザッと見ていくものの、今日はいつもよりも黒っぽい本がある棚が多い印象。もうちょっと時間かけて見ていればもっとあったかもしれないし、予算の関係でなくなく手放して買わなかった本もある。で、注文品であるが、楠瀬日年「候べく候」(梅田書房)限定300部署名入4000円はハズレたが、ほか2点は当たってしまって、いいのだが、かなり使って仕舞って金欠。

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菊池幽芳「己が罪 前編」(春陽堂明治44年12月27日33版

    「己が罪 中編」(春陽堂)大正元年8月20日30版

    「己が罪 後編」(春陽堂明治45年4月10日26版3冊揃5000円

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注文品のひとつ。「己が罪」装幀富岡永洗。口絵木版は、前編が永洗、中編が阪田耕雪、後編が武内桂舟。重版揃いで口絵も欠け無くまあまあの状態であればよい買い物かなと。もうだいたい流行り物であったところの小説は入手したか。「不如帰」だの「金色夜叉」だの「己が罪」だのこの辺の家庭小説近辺は元版で持っておきたかった。

それから、もうひとつの注文品。

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谷崎潤一郎春琴抄」(創元社)昭和8年12月初版帙欠背痛3500円

文部省音楽取調掛編纂「小学唱歌集 初編」(大日本図書)明治22年10月4版少痛500円

春琴抄」は、目録に背が切れてると書いてあったがこれまた酷い状態。「春琴抄」は背の製本テープというか製本が弱く安い場合はまあそれなりであることの明示でもあるわけだ。だから仕方ないといえば仕方ないけれども、背の製本テープを剥がした感じで見返しのみで背表紙が繋がっているというこれで3500円はないでしょ、この状態じゃせいぜい……と思ったが、しかし、ワタクシ的には価値ある本であった。というのも、あとでよくよく確認すると「初版」、「春琴抄」は手許に2冊あるが初めて入手。「何を言ってるの」と思った人はそのうち詳しく説明するのでしばし待たれよ。

それから、なんといっても今日ちょっとうれしかったのが「小学唱歌」である。「君が代」「てふてふ」「蛍」などが入っているが、初版は明治14年11月24日。「新体詩抄」が翌15年の発行だから、歌詞であるとはいえ、日本の近代詩歌の在り方を考える時の重要な資料であるともいえる。初版ではないが、まさか元版かと思ったらそうだったので、500円とちょっと高かったが購入。

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塚本邦雄「驟雨修辞学」(大和書房)初版凾300円

塚本邦雄定型幻視論」(人文書院再版凾300円

井上順孝神道入門」(平凡社新書)カバ帯150円

「ポリタイア」17号特集・回想の三島由紀夫300円

塚本も、やはりこれくらいだとよい。「驟雨修辞学」が、「カデンツァ」時代の未発表歌集で安く欲しかった。「定型幻視論」は既に持っているが、安かったのでこれは線引読書用。

しかし、思わぬ出費になってしまった。趣味展でもないのに万越えしてしまって、今月はかなりの金欠。

2016-05-21

春の趣味展

趣味展である。

いつもながら、朝イチはワタクシにはキツイ。しかし趣味展と窓展のみは朝イチにいかなければならないわけで、生活習慣を破って早朝家を出るのであるが、そもそも朝方に寝る習慣が一日だけ特別にスムーズに眠れるわけもなく。ドロドロの寝不足で向かうのである。平日の朝はいまだ通勤時間帯でありラッシュの電車に揉まれながら、最悪のコンディションで臨む趣味展。今日も開場15分くらい前に到着し、列に並ぶ。

そして10時開場。なんであろう。ここ数年で変わったのは、開場と共になだれ込んで我先にと走り込んでいく人がいなくなってきたということだ。早足ではあるが、血走って体当たりしたりダッシュで滑り込むような手合いはいない。ワタクシの場合、前に40人は入っているわけで、今更走ったところでなにも変わらない。

そして今回驚いたのは、扶桑書房の棚がいつもの2倍近いスペースを有していたことだ。会場にいらした扶桑さんにうかがったところでは、今回は文学堂から引き継いだ荷の最後で、加えて前に仕入れた関井光男旧蔵書なども残りを全部出したという。その代わり、補充はほぼ無しということであった。90分ほど扶桑棚をあれこれと渉猟し、その後、一応会場全体をザーッと回ってから、徹底的に吟味して三分の一くらいをリバース。予算は無限ではない。鴎外「かげ草」初版背痛1500円とか「文芸倶楽部」の風葉「寝白粉」掲載発禁号1000円等々、戻す。帳場に荷物を預け、昼食に向かう。昼食後、再度ザッと見て会計。買ったものは以下である。

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尾崎紅葉「此ぬし」(春陽堂明治23年9月1日初版痛1000円

尾崎紅葉「片ゑくぼ」(春陽堂明治明治28年1月21日再版口絵欠1000円

尾崎紅葉「隣の女」(春陽堂明治28年5月15日3版口絵欠500円

尾崎紅葉「冷熱」(春陽堂明治29年4月17日初版口絵欠美1500円

尾崎紅葉「草紅葉」(冨山房明治36年11月15日初版カバ欠奥付傷300円

図らずも紅葉フィーバーになってしまった。棚には、浪六や弦斎、桜痴の口絵欠本が300〜1000円くらいでゴロゴロ。弦斎や浪六あたりだと口絵がついてもそのくらいの価格。買ったところで読まないし場所も食うしで紅葉に絞ったのである。しかもお気づきであろう、「此ぬし」「片ゑくぼ」は先日扶桑目録で注文して買ったばかりなのである。それよりかは痛んでいるとはいえ、同じものががくりと安く出ているので逡巡しながらも悔しく買ってしまう。本来、「隣の女」は桂舟、「冷熱」は永洗の木版口絵がついている。

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菊池幽芳「夏子(愛と罪)前編」(春陽堂明治38年10月13日初版凾欠口絵欠少痛

菊池幽芳「夏子(愛と罪)後編」(春陽堂明治39年1月1日初版凾欠口絵欠少痛2冊揃800円

柳川春葉「生さぬなか下巻」(金尾文淵堂)大正2年5月1日初版凾英朋口絵2葉2500円

口絵欠で揃800円というのはもう1セットあったが戻した。「夏子」は本来ならば清方の木版口絵がついているもの。一方、「生さぬなか」の方は英朋の木版口絵2葉しっかりとついている。本体も非水による木版装幀。凾、本体と色鮮やかな装幀である。

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森鴎外「審美綱領 上巻」(春陽堂明治32年6月29日初版400円

森鴎外「人種哲学梗概」(春陽堂明治36年11月25日再版300円

「審美綱領」は上巻のみ2冊あったので、比較的綺麗な方を買う。鴎外さんは、あと「黄禍論」のやつも欲しいのだけれど。

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松崎天民「記者懺悔 人間秘話」(新作社)大正13年9月25日初版凾欠背汚300円

永井荷風「新選 永井荷風集」(改造社)昭和3年4月1日16版200円

谷崎潤一郎「新選 谷崎潤一郎集」(改造社)昭和3年1月20日初版300円

久保田万太郎「歌行燈その他」(小沢書店)昭和16年1月17日初版凾付美800円

雑誌「ホゝヅキ」3号(昭和13年1月)200円

こんな感じである。宮尾しげを伊志井寛らの同人誌「ほおずき」は、前に1冊買って持っているが、これで2冊目。しかし、いろいろと中に張り込まれているはずのエフェメラが全て欠。

そういえば、昼食に出る少し前に、カゴに入れた自分の戦利品を床に置いてちょいと横を向いていたら、60がらみの男性が堂々とカゴの中に手を入れて本を盗ろうとしている。「ちょっと、あなたなにやってんですか」「あ、いや、ただ置いてあるのかと思って…」「いや、カゴの中に入っているんだから人のでしょ、何やってるんですか」というと、少し離れてから急に逆ギレして「何だとこのバカ野郎」ときたので「何がバカ野郎だ、おい、ちょっと待て」とすごむと逃げていった。まったく酷い手合いである。怒鳴れば引っ込むと思っている。装は問屋が卸さない。今までこういうこと繰り返してきた常習犯なのだろうな。あれは。

まあ、そんなこともあったが、収穫としてはホクホクであり予算であった1万円もちょっとだけオーバーしてしまった。生活を考えなければならない。

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その後、マンキツにて仮眠してから両国のシアターXへ向かい、三島由紀夫作の「邯鄲」「卒塔婆小町」を観る。

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2016-05-16

五月の雪国に紅葉

ちょいと所用で地元繁華街に出たついでに、久々によく行く古本屋を覗いたらオッというものがあったので購入。

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濱谷浩「雪国」(毎日新聞社昭和31年3月30日初版カバ凾欠1500円

田村泰次郎「わが文壇青春記」(新潮社昭和38年3月20日初版カバ500円

写真集「雪国」は、「裏日本」の生活を撮影したもの。風俗的にも面白いが、例えば夜の雪原などを撮影したものなど、粒子が粗い感じでそのテクスチャーの感じがよく一度実物を手にしてみたいと思っていたのだが、ちょっと痛みがあるけれども手が出る価格で目の前にあったのでいってしまった。データ表が挟み込まれている。田村泰次郎のは、あれこれは文庫化されていないよなと買ってみたもの。大学時代から「肉体の門」の時代までの回想記。

その後別の用事で都内に出て、夜帰宅してみると、こないだ届いた扶桑書房目録速報で注文した本が届いていた。早い。

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尾崎紅葉「此ぬし」(春陽堂明治23年9月1日初版印少虫喰3500円

尾崎紅葉小栗風葉「片ゑくぼ」(春陽堂明治28年6月20日4版口絵欠2000円

目録では、風葉のお安いところとか柳浪とか注文したのであるが、2点ほど。「此ぬし」は、どちらかというと本文が整版印刷であり金属活字を用いていない袋とじ和本の印刷製本のままであるということで装幀への興味から。「新作十二番」の一冊。なんといっても口絵木版は芳年美人画である(ヒロインの龍子)。装幀も凝っている。表紙は、何というのか恥ずかしながら知らないが、エンボス加工というか空押というか加工の上に多色刷木版。表2に著者名とタイトル版元が刷られ、1頁目は「文選」の引用というか版面をそのまま木版にして印刷したもの。2〜3頁目に1葉ずつ口絵があり、右側に龍子の絵が来て左側に犬。

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これがまた、指輪に胸元には黄薔薇とハイカラだが、画像で見えるだろうか。髪の毛の生え際の微細な処理もさることながら、着物の柄である。黒地に膠(?)を刷ることによってマットで黒の柄を表現している。また、龍子のまわりの余白部分はこれまたエンボス加工のようになっており、1冊の書物の口絵として懲りようがすごい。奥付には、著者、発行者と列んで同じ大きさで彫刻兼印刷者として安井台助の名がある。

「片ゑくぼ」は、年方による木版口絵は欠だが、表紙自体が口絵のような赴きがあり(多色刷木版による美人画)、しかもかなりの美本。2000円ならば買い得であろう。

しかし、なんで僕はいま尾崎紅葉の本などを買っているのだろう。

2016-05-15

下町展と長谷川敬

土曜日、古書会館に行く前に古書いろどりに立ち寄る。

いろどりにて、花笠海月さんよりご自身の参加されている短歌研究同人誌「Tri」3号と、この度出された「『詩世紀』における長谷川敬(赤江瀑)」を頂戴する。感謝です。「Tri」については前にもここで紹介したことがあるけれど、今回はなにより後者。

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赤江瀑=(本名・長谷川敬)については、正直よい読者ではない。しかし、三島関連で興味を持ってあれこれ見て来て、1950年代ホモセクシャルをモチーフとする詩を長谷川が書いて発表していたことは知っていた。角川文庫「オイディプスの刃」の中井英夫による解説で、赤江瀑が「詩世紀」同人であったことについて触れているけれども、数年前だったか、古書目録でその存在を知ったのが端緒であった。といっても、ネット検索で少しあれこれと知ったくらいであって、詳細については何も知らなかったのである。

今回、花笠さんがまとめた本書は、早稲田の服部嘉香(よしか)が編集発行をつとめた「詩世紀」全号を実見し各号を紹介しつつ、長谷川敬の詩作を追いかけたもの。いわゆる同人誌ではあるが労作。なかには三島由紀夫をモチーフとした詩作もあったりして、昭和20年代後半において「禁色」がもたらした種々の意味でのショックというのは、こうした各方面にも影響をもたらしたのだろうなあと思ったことであった。アドニス・カルチャーの圏内にある仕事としてこちらも興味がある。花笠さんは、以前ワタクシと共に「アドニス」の総目録と解説を発表したことがあるが、その地道ながら着実な探索を続ける氏による今後の更なる追求が楽しみなところである。入手については、古書いろどりへ。

で、その後、下町古書展に閉場30分前に行き、ザーッと回って3冊ほど購入。

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金田一春彦他「ことばの昭和史」(朝日選書)カバ帯300円

佐木隆三「越山田中角栄」(現代教養文庫)カバ帯200円

上野英信天皇陛下万歳」(ちくま文庫)カバ帯200円

それから、拙稿「谷崎本書誌の余白に——「谷崎潤一郎先生著書総目録」追補のために」が「日本古書通信」5月号に掲載されております。お目にとまりましたらご笑覧のほど。

日本古書通信81巻5号(2016年5月号)

日本古書通信81巻5号(2016年5月号)