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2016-07-23

涼しい趣味展

趣味展である。

今日は朝から小雨がパラつき、湿気で蒸すのは確かだとしても温度はけっこう低く、半袖ではちょいと肌寒い感じがある。ちょっと遅めの9時50分頃に古書会館到着。荷物を預けた後に行列最後尾に列ぶ。9時56分頃開場。帳場の時計は、3〜4分進んでいる。これを基準にしているようだ。

扶桑書房の棚。チラチラと見ていくが、今日は雑誌がいつもより多い印象で、あれこれと抱え込むという感じでもなく。11時半に昼食に抜け、その後チラッと見てから今度は友人とお茶しに抜ける。また夕方ザーッと見てから最後にお会計。その頃にはすっかり雨も止み、涼しい曇り空。

で、最終的に購入したのは以下。

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後藤宙外「明治文壇回顧録」(岡倉書房)昭和11年5月20日凾欠1000円

斉藤昌三「書斎随歩」(書物展望社)昭和19年3月19日カバ付1500円

木村毅明治文学を語る」(楽浪書院)昭和9年5月12日凾付800円

菊池寛「若杉裁判長 他五篇」(春陽堂ヴェストポケット傑作叢書)大正10年11月20日2版500円

「文芸倶楽部」第1編(明治28年1月)口絵目次欠痛400円

「文芸倶楽部」第2編(明治28年)口絵目次欠痛水ムレ400円

本当は紅葉やらなにやらも抱えていたのであるが、結局それらを手放してこういうラインナップに。横光利一の限定版「日輪」3000円なんかも安かったのだろうが手放してしまった。この中では、例えば「明治文学を語る」など面白い装幀。背クロースの平は紙で、パッと見絨毯みたいな柄であるが、エンボス加工がしてある上に赤の印刷がしてある箇所は膠処理?がされていてなかなか凝っているのが面白い。

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書斎随歩」の本体はカバー裏。カバー裏には少雨荘の見取図が印刷されている。大戦末期の隠れたしゃれっ気。

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前田愛「近代日本の文学空間」(平凡社ライブラリ)カバ帯400円

保昌正夫他「昭和文学の風景」(小学館ライブラリ)カバ帯200円

これらは、お茶して古書会館へ戻る途中に田村書店の外ワゴンを覗いて買ったもの。昼過ぎには200円くらいの新しめの文庫がドサッとあったのでそこから。

それと写真中央のものは、

倉田啓明綺想探偵作品集「我が屍に化粧する」(盛林堂ミステリアス文庫)限定300部

先日出たばかりの倉田啓明の作品集。話題の盛林堂ミステリアス文庫の1冊として出て、300部は瞬殺で完売だった模様。献呈していただいた編者片倉氏に感謝です。

一癖どころか二癖三癖もあるこの作家、これまでは亀鳴屋の作品集「稚児殺し」が唯一のものであったけれども、あれも既に10年以上前の出版。しかも今回は、単行本未収録の作ばかりをセレクトとしたという。

実態がなかなか掴みづらい、著書が既に稀覯書である等々の理由もあるが、倉田本人が贋原稿詐欺で逮捕されたり、芝居に首を突っ込んだり、主義者の群に紛れてみたりと、断片的な情報からはあやしくて得体の知れない胡散臭さが常につきまとい、歴史の闇に埋もれていた。ある意味で、昭和も70年を超えた現在、毒花の腐臭やニセモノのニセモノ性といった胡散臭さにこそ、他に慊い思いを抱く人を惹きつけてやまない倉田の磁力が磁力として発揮されているのかもしれない。倉田については、だから、今までごく限られた探求者をしか生みださなかったことも道理であった。毒花の放つ腐臭は常に人を惑わし途方に暮れさせ、花弁の悪趣味な毒々しさという韜晦の前で退散を余儀なくさせられる。

が、解題を一読すればわかるようにこの度は従来の情報を整理結集させたうえで、探求を重ねた編者が更に倉田へと一歩迫り、収録された各作品を読むことによって亀鳴屋本を補完する形で倉田の実態を浮かび上がらせるようなものとなっている。本書は今後、倉田啓明探求者のマスト・アイテムとなるであろう。

2016-07-18

七夕そして澁澤龍彦没して30年

ここのところタイミングを逸したり、金欠だったりして古書の方はまあこれといって何もないのであるが、それでもまあ明治古典会七夕古書入札市には赴いた。

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生憎、土曜日(一般下見2日目)は途中から雨ではあったが、盛況のようす。まずは今回実際に手に取って見たかった三島由紀夫の「剣」原稿99枚揃、最低入札価格500万円というシロモノから。

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400字詰原稿用紙が半分に折られて製本してあった。製本といっても、よくあるように折帖仕立てではなく、ホントに安っぽい製本でとても最低落札価に見合うようなものではなかった。まあそれはいいとして、中身。三島由紀夫というと、原稿も楷書で直しもないというようなイメージがあるようだが、そんなことはなく、とりわけ今回のこの原稿はあちらこちらに推敲の跡があって、それが面白い。「剣」の原稿は市場に出て来たのは今回が初ではなかろうか。しかしこの不況にあって500万円とは。またガリマールから出ている「潮騒」仏訳本の26部限定後ゴネ製本の特装本。これは前にも同じ装幀の「午後の曳航」が出ていたことがあるが、背が革装で平はゴムのような素材でモダンなもの。これ、革装とかならまだしもなのだろうが、却ってモダン装幀評価下げているような気もする。その他、例えば深沢七郎の成績表とか、森茉莉の出版記念会の芳名帳(意外と来場者少ないなあ)なんかを見て回り、次に目玉商品を展示している階に移る。

例えば北村透谷の「楚囚の詩」、しかもである。表紙にハンコが捺してあるが、これが昭和初期に古書として同書が初めて掘り出された本であることの証拠。これがあの古書界では伝説の本かと手に取ってしみじみと見る。実物を手にするのは初めてだが、ペラペラな小冊子、先日買った「日本唱歌集」みたいな感じの本である。それから、同じく透谷だが、献呈署名の入った「蓬莱曲」。透谷の署名本は極めて珍しい由。しかも朱筆でしてあり、献呈先を消して所蔵者が名前を書き足しているというもの。所蔵者といっても戸川残花だからいいのだが。漱石「行人」戸川秋骨夏目金之助名義献呈署名本、尾崎翠第七官界彷徨」、小栗虫太郎原稿反古等一括、乱歩の原稿(文庫本収録時の改作のようで、文庫の切れ端がついている)、寺山修司短歌入り「新鋭歌集」等々をじっくり見て回った。やっぱり、こういうものは直に見てみないとよくわからないものがある。

無論、ワタクシといえばあれこれと手に取って見て来ただけで入札はしていない。

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15日の土曜日は、山の上ホテルに「澁澤龍彦没後30年を迎える会」に参加してきた。お誘い頂いたものではあったが、澁澤と旧知の作家たちや関係者、担当編集者たち、それから澁澤山脈に連なるであろう作家、またその周辺の人たちと、なんでも総勢170名以上の参加があった由。18時半、山の上ホテル銀河の間で立食形式で催された。

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まずは世田谷文学館館長による挨拶、乾杯のあとは高橋睦郎巖谷國士平出隆麿赤児……と関係者のあいさつが続く。ここでご歓談タイムが入ってから、澁澤龍子や担当編集者たちのスピーチ、そして、四方田犬彦、谷川渥、東雅夫といった面々によるスピーチが続いて行く。とりわけ担当編集者諸氏によるスピーチには、ワタクシは初めて耳にするようなエピソードなどもあって、それだけでも十二分に楽しめた。

澁澤が逝った1987年8月にワタクシは何をしていただろうか。太宰くらいは読み始めていたが、もっぱらファミコンとTV(風雲たけし城とかTBSドラマとか、フジの深夜番組とか)ばかりの、ひねくれた中学生であって、その後の素地があったかもしれないが、澁澤のしの字も知らなかった。名を知るのは高校生、実際に読むようになるのは大学生になってからである。サド、ジャリ、ユイスマンスの翻訳から入った最初は変わった仏文学者くらいの認識であったが、古書店で見かけた桃源社版『黒魔術の手帖』には衝撃を受けた。真っ黒な装幀、一分の隙もないスタイリズム、あんなにオブジェ欲をかき立てられたことはなかった。中学時代はご多分に漏れず「誰でもかかる太宰病」ではあったが一種の流行感冒のようなものであって、本当に「文学」にはまっていったのはだから、中身よりも装幀=外形であったのだ。まず書架に列べたい本、次に中身、という倒錯。それからは、専ら古書目録がワタクシの教科書であり、眠くなる文学史の本には目もくれずに造本、装幀本位で古書をほしがるようになった。未だ澁澤本が高嶺の花であった頃の話であり、いまから考えると馬鹿値で重版本を嬉々として買って読んでいたものだ。

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2016-06-24

梅雨の窓

今日は昼過ぎには雨、夕方やんで夜また雨といったような予報。蒸す、しかし気温自体はそれほど高くはないので、電車でも喫茶店でも冷房ガンガンたかれると寒い、といったような塩梅。梅雨の時期である。そんな中の窓展。注文品はない。9時40分古書会館到着。50分過ぎ、古書会館が開いてズラズラと会場入口まで列ぶ。10時、開場。

あきつの棚はどうなのか、前回フィーバーだったかわほり堂はどうなのか等々の思惑を抱きつつ、まずはあきつの棚へ向かう。あるようなないような。前田曙山、武田仰天子村上浪六あたりの口絵欠小説本がここでも数冊見受けられたが、500円ならば買っても1000円では食指は動かない。今回良かったのは村山槐多の本だが、これはあきつ棚ではなく他の書店の棚から買った物であった。正午ちょっと前まで見て、帳場に本を預けてから友人と昼食をとりにいき(丸香のうどん)。茶店で一服してからまたじっくり見て、会計。最終的に購入したものは以下。

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篠原嶺葉「心の誓」(東盛堂書店)大正6年1月10日初凾欠口絵欠貸本印700円

     同後編大正6年4月15日初凾欠口絵欠貸本印700円

なぜか篠原嶺葉は紅葉の弟ではなかったかという意味不明な思い込みをしていて、買っておこうと買ってしまった(無論、弟ではない。弟子。弟子の記述から「子」が脱落しているのをそのまま弟と思い込んでしまったらしい)。もうよくわからない家庭小説は買うの控えようと思っていたのだが。

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黒岩涙香「精力主義」(隆文館)明治45年6月20日3版裸美200円

村山槐多「槐多の歌へる其後」(アルス)大正10年4月18日初版凾欠1500円

田山花袋「椿」(忠誠堂)大正15年11月15日再版裸300円

甲賀三郎「姿なき怪盗」(新潮社)昭和10年6月20日初版凾欠少痛800円

「精力主義」と書いてエネルギズムとルビがある。涙香の批評やエッセイなど寄稿文だったり講演だったりを集めて一冊にしたもの。藤村操論なども収録。この本、寺内蔵書の蔵書印があった。最近出回っている例の口である。花袋のやつは、「紅葉山人訪問記」が入っているので、ちょいと読みたくて購入。「姿なき怪盗」は御存知新潮社の新作探偵小説全集の一冊。岩田専太郎の挿絵が数葉入っている。槐多は「歌へる」よりも「其後」の方に短篇小説やらなにやらが収録されているので、こちらの方を欲しかったのでちょうど良い。凾欠だがお値段もお手頃。

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大町桂月「青年時代」(大倉書店)明治41年6月1日初カバ欠美300円

城北隠士「日米開戦夢物語」(中央出版社)大正10年6月7日初裸線引700円

越智治雄明治大正の劇文学」(塙書房)初凾300円

「青年時代」は啓蒙書みたいなものだが、明治40年代の青年と性欲とか青年と読書とかの言説として面白いかと。それから、「日米開戦夢物語」は今で言う架空戦記ものといえようが、猪瀬直樹がなんかの著作で引用して使っていた記憶があり、あれ、この本はと買ってみたもの。

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会計後、一休みしてから早稲田へ向かう。早稲田演博の図書室でちょいと必要な文献をコピーし、ついでに気になっていた「あゝ新宿——スペクタクルとしての都市」展を見てくる。蜷川幸雄演出した「思い出の日本一万年」の記録映像が開場で流されていて、これはちょっと他では見られないと思う。といっても断片、かなり画質の悪いモノクロ映像だが、元はオープンリールのビデオとかだったのだろうか。

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先日新刊書店で買ったもの。

日本語文体論 (岩波現代文庫)

日本語文体論 (岩波現代文庫)

2016-06-19

五反田展と夏日の土曜

暑い。まだ6月も半ばというのに30度越えの気温である。これが7月半ばならわかるのだが、暑い。昨日は、五反田展に行って来た。

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まずは1階を漁っていく。「キネマ旬報」「映画芸術」が山ほどある。映芸もけっこう集めた筈だが、あれこれ持っていたかなあというのを2冊ほど。するとそこに月の輪書林さんが声をかけてくれた。月の輪さんは、今回の目録に「人魚通信」創刊号5000円を掲載していたのである。「人魚通信」とは、約10年ほど前に、神保町古書バーである「人魚の嘆き」に集っていた古書仲間をメンバーとして創刊した古書趣味雑誌。雇われ編集は何を隠そう不肖ワタクシで、創刊号は200部、2号は500部で2号で休刊という3号雑誌にすらならなかったもの。しかし3名の注文者があって、無事欲しい方へ収まったとの由。目録では「麒麟」なんかと列んでいておおーと思ったことであった。

2階へ。ザーッと回って、今日はもう神保町でやっているぐろりや会には間に合わないなとじっくり見る。赤いドリルやおどりば文庫や澤口書店など、1冊200円300円祭かというほどに、安くて面白そうな資料や本がけっこう目についた。そうしてまた必要でもない本が増えていくのである。結局購入したのは以下。

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堀内新泉「故郷を出つるの記」(成功雑誌社)明治43年7月20日再版裏表紙欠200円

尾崎紅葉紅葉集2巻」(春陽堂明治42年10月25日再版凾欠300円

田中智学国体の権化 明治天皇」(国柱産業株式会社書籍部)大正10年6月1日14版200円

巖谷小波「我が五十年」(久山社:復刻叢書)凾欠200円

「変態心理」大正14年10月号200円

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朝日ソノラマ」(昭和35年1月)200円

映画芸術」(昭和43年1月号、44年9月号)各200円

映芸は1階で買ったもの。他は2階である。「我が五十年」は「これ復刻のように綺麗だな」と思ったら復刻であった。元々は大正9年5月に東亜堂から出た本だが、「復刻叢書 日本の児童文学理論」というシリーズで復刻されたらしい。こういう復刻本があるのは全く知らなかったけれども、硯友社まわりのことなども記してあって前から安く欲しかった。「紅葉集」はこの2巻を以てコンプリートだが、凾欠。凾付で揃えているので、また探さないと。堀内新泉の立志小説は、まあ安いので参考用に。読むことはないだろうなあ。表紙にドドンと貼られた図書館ラベルは、長野県神科村自彊図書館のもの。神科村は現在消滅してしまった村だが、当時、この本を読んで村を出た若い村人などいたのであろうか。「故郷を出つる記」読んで上京し、失敗して村に戻ってきて改めて湖処子「帰省」なんかを読む、とか。

朝日ソノラマ」は実は既に所持しているが、思わず。ソノシートが6枚綴じ込まれた雑誌で、スパイラル綴じになっているので、そのままレコードプレーヤーにかけられる。この中に各界著名人1960年の抱負を述べたソノシートがあり、それに三島由紀夫が入っているのである。「変態心理」はゼーゲル夫妻の批判記事が興味津々。ゼーゲル夫妻追っかけている人はいないのだろうか。智学の本は、これ国柱産業株式会社というのは国柱会の運営でこういう株式会社組織にしていたのだなあ、と知る。

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そして土曜日。ぐろりや会には間に合わず。田村書店の外ワゴンを覗いて、扶桑書房に立ち寄り、その後久々に日本特価書籍まで行って古書を購入。夜帰宅してみると、マケプレやらヤフオクやらでの本が届いていた。

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イェシュケ他編「初期観念論と初期ロマン主義」(昭和堂)カバ1300円

稲垣志代「夫 稲垣足穂」(芸術生活社)昭和46年10月4日初カバ300円

富島美子「女がうつる」(勁草書房)カバ帯840円

「游魚」2号375円

「游魚」3号574円

上から特価、田村、オク、マケプレという順。お勉強用。ポチポチ「夫 稲垣足穂」なんかを読んでみたが、しかし稲垣足穂の評伝書いている人っているのかしらん。関係者も次々と亡くなって、もう手を着けていないと間に合わないような気がする。

それから人に教えて貰って注文したのが雑誌「游魚」。この雑誌自体全く知らなかったのだけれども、なんといってもこの2号と3号は、松田修の私家版歌集「靠身文書」および「装飾古墳」を完全再録。これは、ということで購入。

游魚〈NO.3(2015)〉

游魚〈NO.3(2015)〉

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最近気になる本。

死刑執行人の日本史―歴史社会学からの接近 (青弓社ライブラリー)

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唐牛伝 敗者の戦後漂流

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石川三四郎と日本アナーキズム

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東京戦後地図 ヤミ市跡を歩く

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三島SM谷崎 (フィギュール彩)

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太宰治ブームの系譜 (未発選書 26)

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曾根崎艶話

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