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2016-08-27

曇天鏡花漱石

ポツポツと雨の降ったり止んだりの曇天の土曜。

新宿紀伊國屋に向かう。今日から紀伊國屋フォーラムで開催される「「天守物語」成立100年記念特別展 宇野亞喜良 × 山本タカト」に行って来た。

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予め、今回出版された山本タカト宇野亜喜良の挿絵装幀版の「天守物語」特装版というのを予約していたので、それを取りに行ったのである。本は、右開きの日本文が山本タカト挿絵、左開きの英訳版が宇野亜喜良挿絵となっており、貼凾入りで三方朱染になっている。

で、会場にて商品受取り、会場の作品を見て回る。

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泉鏡花天守物語」(パンエキゾチカ)限定600部記番挿絵画家署名入5400円

その後、踵を返して神保町へ。扶桑事務所へ向かう。

今日も賑やかであったが、猫がいたので確保。

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夏目漱石吾輩は猫である」(大倉書店)明治39年11月10日8版カバ欠背補修汚2500円

猫の上編は既に1冊所持しているのだが、それは9版。何が違うかというと、8版までは「上編」の文字がない。9版以降にそれが入るというもの。今まで知らなかった。ということで、思わず買ってしまう。

比較してみると、明瞭。表紙は同じだが扉や背表紙が異なる。右側が9版、左が8版。「猫」はもともと第1回で終わる筈だったのが好評を得て続くことになり、結局は全三巻で刊行されたわけだが、作者もはなからこんな長篇になるとは思っていなかったであろう。

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余談だが、今回の8版を手にして、紙の束をカルトンで挟んだような装幀だなと思ったことであった。所持していた9版が表紙から本文用紙がそれほど飛び出していないのはカットされたためなのかどうか。いわゆる上製本というと、厚表紙でガッチリ本文の束をカバーしているような印象だが、この本に限っては、表紙がそれほど厚くなく、本文用紙よりも表紙サイズが小さいためにそういう印象が強いのであろう。しかし本来、装幀というより装釘ってこういうものかもしれない。まず核となる本文用紙の束、そして表紙。その意味でも、この時代に(ヨーロッパ本の影響大だろうが)橋口五葉のやったこの装幀は、装幀とは何ぞやということをいろいろと改めて考えさせてくれるものであった。

2016-08-26

残暑の窓展

本日は窓展の初日。いつものように朝イチに駆けつけるつもり、であった。しかし気がつくと13時過ぎ。ここのところ残暑の湿気と冷房によるのか身体がだるくってあまり調子は良くない。で、このざまである。まあ致し方ないと、ダラダラ仕度して出発。

16時半過ぎくらいだったか、会場到着。

ゆっくり会場を見て回る。あきつ書店は無論だが、けやき書店、かわほり堂の棚が安くて黒っぽいものも多く、あれこれ興味深かった。で、最終的に買ったものは。

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夏目漱石「社会と自分」(実業之日本社)大正2年3月30日6版凾欠1000円

稲岡奴之介「新聞記者」(駸々堂明治34年3月23日初版、口絵欠300円

末松謙澄・二宮熊二郎訳「谷間の姫百合」1巻(金港堂)明治21年2月背補修300円

ドラクロア「芸術論」(創元選書)昭和14年9月18日初版カバ200円

長谷川町子サザエさん」3巻(姉妹社)昭和32年1月1日初版100円

相馬庸郎「子規虚子碧梧桐」(洋々社)カバ帯200円

漱石のこの講演集は持っていなかったから。重版凾欠でまあまあ綺麗で千円ならというところ。奴之介はちょいと面白そう。本来は木版口絵がついているがこれは欠。それでもまあまあの状態で300円ならば。日清戦争後の羽織ゴロがどんな感じで描かれているのが興味があったため。ドラクロアは、別に「日記」の翻訳が同じ頃に出ておりそれなら所持していたが、こちらのは知らなかった。三島由紀夫の昭和20年代初頭の愛読書で、三島は2分冊になった創元社版ではないものを読んでいたようなのだが、一応おさえておきたい。「谷間の姫百合」は、もちろんバルザックの小説ではなく、バーサ・クレイのDora thorneの翻訳。バーサ・クレイといえば「金色夜叉」の元ネタの作家。1巻と2巻があったが、本来は4冊揃らしい。参考のため1巻のみ購入。

サザエさん」はまあ何の気なしに買ってみたのだが、終戦後の世相を映していて実は興味深い。昭和23年の夏時刻法によるサマータイム導入やら、シベリア抑留ネタやら帝銀事件ネタやらが入っていた。しかし奥付には昭和32年重版表記無いのだけど、国会図書館のデータを見ると初版は昭和23年8月。重版だのに重版表記をしないのだなあ。

しかし蒸し暑くてぐったり。

2016-08-18

夏の渋谷東急

暑いといろいろと気力が奪われる。

先週11日は、山中湖三島由紀夫文学館での「こころで聴く三島由紀夫V」での「卒塔婆小町」リーディング公演に参加。ちょうど「文学の森フェスタ」というお祭りの一環としてその最終日にリーディングがあったわけだが、その前には三島文学館杯の剣道大会やら、同じく三島文学館主催のボディビル大会などがあった。三島の名を冠したボディビル大会は、実は史上初ではないのかと思う。

で、同じく11日は毎年恒例、東急渋谷での古本市の初日でもあった。ということで初日を逃し、まあ落穂拾いでもという感じで12日に渋谷へ赴く。ザーッと見て何も買う物がなく、せっかくだからと文庫本を1冊のみ購入。中村書店の棚には、日夏耿之介の署名本がゴロゴロし、「署名本の世界」「初版本講義」といった本も普通に列んでいたが、価格は無論それなり。

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その後会期中に、ちょっと都内に出たついでに再度覗く。すると、前回は気がつかなかったのか、補充がなされたのか、2冊ほど購入。カーモードはちょっと読んでみたかったので、安めに購入出来てよかった。

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阿部昭編「葛西善蔵随筆集」(福武文庫)カバ350円

ティボーデ「小説の美学」(人文書院)凾帯500円

カーモード「終りの意識」(国文社)カバ1400円

一緒に写っている創元社の本は、別にネット古書店で見つけたもの。

大谷晃一「ある出版人の肖像」(創元社昭和63年12月1日カバ2000円

これは創元社の矢部良策の伝記でもあり、創元社という関西での文学出版がどのようにして成り立っていったのかを追ったドキュメントにもなっている。矢部家の内部資料等を用いた随一の資料本。一応発行元は創元社だが、奥付の発行日の脇に「私家本」と印字されている。どういう経緯で頒布されたのかは知らないが、ここ半年以上ずっと探していた本、ようやく入手。

2016-08-05

夏は暑い

先日、月曜日だったかに届いた扶桑書房目録で注文した本が届いた。今回の目録はいつもの狢報瓩箸楼曚覆蝓⊆命身任埜狭討覆匹盻个討い襦明治期の外装付の本があれこれと出ているが、まあ今の相場と比べるとかなりの良心的価格(といってもワタクシのような貧乏書生にはもちろん手が出ないが)で列んでいる。

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長田幹彦「祇園囃子」(新小説社)昭和9年4月20日初版凾欠5000円

森田草平「寂しき人々」(青年学芸社)大正3年10月15日3版2000円

「祇園囃子」はいわずもがな、竹久夢二木版装幀裏表紙には大文字焼きが見えるというもの。夢二死の年の出版でどのくらい関わっていたのかは知らず。幹彦としても祇園もの集大成的な位置づけにある本であろうだろうなあ。かつてこれは持っていたいと1万2千円くらいでこれより程度の悪い凾欠本をそれでも安いと買って持っていたのだが、金欠時に売却してしまったことがあった。

それからもうひとつの「寂しき人々」は森田草平著。むろん、ハウプトマンの「寂しき人々」であるが、それの内容縮刷版である。巻頭に掲げてある「エッセンス叢書発刊の趣旨」という文章に、〈縮刷の次ぎに来るべき要求は、当然この「内容の縮刷」でなければなりません〉とある。まあ、早い話が名著のアンチョコである。いちいち原書や訳本をちゃんと読まずにこれ1冊サッと目を通して知ったかぶりが出来るというわけだ。しかしこのエッセンス・シリーズ、ごくたまーに古書展の棚で見かけることがあるが、といってもアカギ叢書と同じくらいで、いつでもというわけではない。大正の頭っていうのは、アカギ叢書含めて、こういう合理主義というか、教養主義早道みたいなマニュアルとでもいうべきものが流行ったわけだ。白樺派が伸びていくのとこういうのとが同根の事象という気がする。

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うちにも数冊あった筈と思っていま書架を見たら、2冊あったが、もう1冊くらいあったようななかったような。