Criss Crossのweb siteで見てから早く聴いてみたいと心待ちにしていたBill Stewartの新作!2025年4月25日にリリースされた「Live At The Village Vanguard」を聴いてみた感想をつらつらと書いていきます。
20代からのアイドル
Bill Stewartといえば、僕にとって20代の頃からのアイドル的存在。Boston時代はLarry Goldings TrioやJohn Scofieldのバンド)が町にやってくる度に見に行ってました。あの頃は若かったなぁ...。
今回のアルバムは、ジャズの歴史が刻まれた聖地「Village Vanguard」で2023年9月に録音されたライブ盤。Bill Stewart(ドラム)、Walter Smith III(テナーサックス)、Larry Grenadier(ベース)という強力メンツでの演奏です。
コードレス・トリオの魅力
ピアノもギターもないサックス、ベース、ドラムだけのトリオ編成。こういうコードレスのフォーマットって、ソニー・ロリンズやジョー・ヘンダーソンのVillage Vanguard録音を彷彿とさせますよね。
自由度が高いので、Bill Stewartの個性がもろに出ます。全編にわたってBill Stewart節が炸裂しっぱなし!こういうのを待ってたんですよ。
Walter Smith IIIのプレイも素晴らしい。抑制された感じから徐々にビルドアップしていくところが昔から好きでした。彼がまだ10代の頃の演奏を観て「こりゃすげえ」と思った記憶が鮮明に蘇ります。彼の「個性的なサックス」とLarry Grenadierの「雰囲気のあるベース」、そしてBill Stewartの「個性的かつドライブ感に溢れるドラミング」がぴったりハマってます。
思い入れのある曲たち
収録曲は9曲で、8曲がBill Stewartのオリジナル作品、1曲がWalter Smith IIIの「ACE」です。個人的に思い入れが強いのは:
- 「Mynah」: Bill Stewartの「Telepath」に収録されてるけど、Larry Goldings Trioの「As One」にも入ってる曲。若い頃によく聴いてました。6/4拍子?で、あのベースラインが印象的でずっと耳に残りますよね。
- 「Space Acres」: 1995年の「Snide Remarks」からの一曲。
- 「How Long Is Jazz?」: 2005年の「Keynote Speakers」から。
- 「7.5」: アルバム最後の曲で、8小節目が2/4拍子になってるという変わった構造が面白い。Chris Potterの「Lift Live at the Village Vanguard」にも入ってます。僕もライブで演奏したことがありますよ。
Village Vanguardの空気感
Village Vanguardといえば、ビル・エヴァンスの「Sunday at the Village Vanguard」やコルトレーン、ソニー・ロリンズなど、数々の伝説的録音の場所ですよね。その空気感がしっかり伝わってくるのも、このアルバムの魅力です。
Village Vanguardに初めて行ったのは25年くらい前。Joe LovanoとGreg Osbyのバンドを見にいき、ドラマーIdris Muhammadのすぐ横の席で見たのを思い出す。あの独特の地下空間の雰囲気は忘れられません。
Billは若い頃からVillage Vanguardでエルヴィン・ジョーンズやトニー・ウィリアムス、ロイ・ヘインズ、ビリー・ヒギンスといった巨匠たちの演奏を間近で見てきたそうです。みんなそういう風にして「身体言語と雰囲気」を自分のものにしてきたんでしょうね。
評価と反響
このアルバムはリリース直後から高評価みたいで、marlbank.netでは4つ星獲得。「肉厚でストレートなジャズ」って言われてます。
おわりに
「Live At The Village Vanguard」は、Bill Stewartファンなら絶対に聴くべき一枚です。彼のドラミングの精緻なテクニックと音楽的センス、洗練された作曲力が詰まった作品だと思います。
ジャズドラマーとしての実力はもちろん、作曲家としてのセンスも素晴らしいBill Stewart。現代ジャズ界の重要人物として、これからも追いかけていきたいと思います。