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Essais d’herméneutique このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2050-11-18

はじめに……

アカデミズム底辺で生きる流しのヘタレ神学研究者・氏家法雄による神學、宗教學、倫理學、哲學の噺とか、人の生と世の中を解釈する。思想と現実の対話。

2010年11月25日より「はてな」に雑文を移項いたしますので、今後ともどうぞ宜しくお願いします。

ついでですのでひとつ。

絶賛求職ちう。

過去(2007年8月28日〜2010年11月24日)の雑文は以下のURLより閲覧できます。

引っ越しがうまくいけばこちらへ完全移行の予定。

当分はココログと併用いたします。

Essais d’herméneutique

氏家法雄のブクログは以下のURLから閲覧できます。

ujikenorioの本棚 (ujikenorio) - ブクログ


f:id:ujikenorio:20111229153022j:image

2017-01-24

覚え書:「リレーおぴにおん 本と生きる:7 感情のかけら、自分に溜まる ミムラさん」、『朝日新聞』2016年09月28日(水)付。

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リレーおぴにおん 本と生きる:7 感情のかけら、自分に溜まる ミムラさん

2016年9月28日

 9年前から、自宅とは別にマンションの一室を借りて書庫にしています。多いときは月に200冊ぐらい読みます。マンガや絵本も含めてですけど。一時は絵本だけで段ボール40箱ほどあったでしょうか。

 本棚に並んだ背表紙を眺めるのも好きですが、一度収めると根が生えたように動かせなくなって、新しい本があふれてしまう。この夏、書庫の引っ越しに合わせて、思い切って整理しました。手放しても、縁があればまたいつか出会える。読んだ中身は私の中に残っている。そう思えるようになったからか、5箱にまで絞り込んだんです。

 自宅では、ブックカートを使っています。図書館で新刊や返却された本が並べてある、あれです。お気に入りの本を数十冊並べて、寝室とかリビングとか気の向くままにゴロゴロと移動できて、好きな場所で好きなものを読める。しかも、本が増えれば気軽に入れ替えて、新陳代謝しやすい。気持ちもなんだか軽くなりました。

 いま、手元に残っているのは、人生の分岐点や忘れられない思い出に絡んだ作品ばかりです。イタリア在住の作家、内田洋子さんのエッセー。あるいは、向田邦子さんの全集。私にとっては、お守りみたいなものですね。

 向田さんを知ったのは、中学の国語の教科書に載っていた「安全ピン」という作品でした。私は教科書を渡されるとその日にぜんぶ読んでしまうような子どもだったのですが、なんておもしろいんだろう、って3回も読み返して。それ以来のファンです。

 5年前、向田さんの役をテレビで初めて演じさせていただいたとき、人生経験のピースが圧倒的に足りないと感じました。もちろん、経験すれば演じられるわけではないのですが、足りないところを補ってくれるのが本なのかもしれません。本を読むことで、さまざまな感情のかけらみたいなものが自分の中に溜(た)まっていく。そう、湖みたいに。だからといって、演じるときに「あの主人公の、あの気持ちを」と意識するわけではないのですが、湖の深さがどこかで影響するような気がします。役者って、一つの言葉にどれだけグラデーションを持てるかが問われるようなところがありますから。

 だからといって、芝居のために読書をしているつもりはないんです。幼稚園のころからずっと好きで、いまはリラックスのため。休みがあれば、お風呂につかりながら4、5時間でも読んでいます。いつか役者をやめることがあっても、本を読まなくなることはない。私にとっては寡黙な友であり、雄弁な師でもあるんです。

 (聞き手・諸永裕司)

     *

 俳優 1984年生まれ。2003年にデビューし、ドラマや映画で活躍。最新作は、10月公開の映画「カノン」。著書に「文集」ほか=写真は提供

    −−「リレーおぴにおん 本と生きる:7 感情のかけら、自分に溜まる ミムラさん」、『朝日新聞2016年09月28日(水)付。

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(リレーおぴにおん)本と生きる:7 感情のかけら、自分に溜まる ミムラさん:朝日新聞デジタル


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覚え書:「保阪正康 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞』2016年12月25日(日)付。

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保阪正康 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)  [掲載]2016年12月25日

(1)フランクリンローズヴェルト 上・下(ドリス・カーンズ・グッドウィン著、砂村榮利子・山下淑美訳、中央公論新社・各4536円)

(2)密室の戦争(片山厚志ほか著、岩波書店・2484円)

(3)現代語訳 巴里籠城日誌(渡正元著、真野文子訳、松井道昭監修、ヨクトフォリオ・1620円)

    ◇

 ローズヴェルトの評伝の中で、この書は二つの特徴をもつ。第1は次世代による評伝であり、第2に客観的分析と主観的解釈のバランスがすぐれていること。読んでいて安心できるのは、ローズヴェルトの能力、性格について信頼できるとの確信のもとに書かれているからであろう。

 片山書はオーストラリアに設けられた日本人捕虜収容所での尋問記録をもとに書かれた。日本兵は「生」への希望をもつと、戦争への疑問と日本社会への不満を語るという。渡書はパリコミューンを目撃した日本の一軍人の記録。冷静な目で歴史の現場を描写していて、なによりパリ市民の興奮、戦い、そして建設などの細部が紹介される。この書に出会えたことで歴史観を変える者もあるだろう。

    ◇

 世に変化あれど淡々とした日々、よく原稿を書き、よく講演を続けた。年末に『ナショナリズムの昭和』(幻戯書房)を上梓

    −−「保阪正康 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞2016年12月25日(日)付。

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書評:保阪正康 書評委員が選んだ「2016年の3点」 - 今年の3点(書評委員) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト



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フランクリン・ローズヴェルト 上 - 日米開戦への道
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フランクリン・ローズヴェルト 下 - 激戦の果てに
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密室の戦争――日本人捕虜、よみがえる肉声
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現代語訳 巴里籠城日誌
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覚え書:「星野智幸 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞』2016年12月25日(日)付。

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星野智幸 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)  [掲載]2016年12月25日

(1)おばちゃんたちのいるところ(松田青子著、中央公論新社・1512円)

(2)かわいい海とかわいくない海 end.(瀬戸夏子著、書肆侃侃房・2052円)

(3)非モテ品格 男にとって「弱さ」とは何か(杉田俊介著、集英社新書・821円)

    ◇

 松田青子さんの小説は闘っている。でも新作の(1)は一見そう見えない。人間も動物も死者も妖怪その他も、みんなごたまぜに生きている。風通しがよくて、この小説世界が楽しすぎて、読んでいることが爽快。

 『キリンの子』が評判となった鳥居さんの短歌に触れて以来、縁遠かった短歌を読むことが多くなった。短歌の波が今来ているのだ。中でも度肝を抜かれたのが(2)。私の短歌の通念を破壊し尽くした。この言葉の氾濫(はんらん)の強烈な批評性は、体験してもらうしかない。

 たいていの男は、男であることをこじらせて恨みを溜(た)めている。それを暴力に向かわせないためには、(3)が必要。女性は最初は嫌悪を覚えるかもしれない。でもこの本を避ければ、差別主義者の激増を黙認することになるだろう。

    ◇

 自選作品集『星野智幸コレクション』全4巻を人文書院から刊行。今年はその作業に明け暮れた

    −−「星野智幸 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞2016年12月25日(日)付。

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かわいい海とかわいくない海 end. (現代歌人シリーズ10)
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覚え書:「細野晴臣 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞』2016年12月25日(日)付。

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細野晴臣 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)  [掲載]2016年12月25日

(1)武満徹・音楽創造への旅(立花隆著、文芸春秋・4320円)

(2)ポール・マッカートニー 告白(ポール・デュ・ノイヤー著、奥田祐士訳、DU BOOKS・3240円)

(3)相倉久人にきく昭和歌謡史(相倉久人著、松村洋編著、アルテスパブリッシング・2160円)

    ◇

 職業柄、今年は比較的音楽家の評伝をとりあげた。評伝というものは、ともかくどれも分厚い。昨年のブーランジェの評伝と同様、僕はその人の一生を読破する覚悟で臨んだ。ひときわ個性的な音楽家への興味が読書を牽引(けんいん)してくれる。

 とりわけ今年の吉田秀和賞を受賞した(1)は読み応え十分な大著。書評することがはばかられるほど内容が濃く、書評の難しさを痛感したものだ。その点、分厚いが読みやすかったのは(2)だった。やはり“ポップカルチャー御曹司”のお喋(しゃべ)りは自分に最も近しく、僕自身もこういう話をするだろう、と感情移入して読めた。(3)は亡き著者の“履歴書”ともいえ、最近ではあまりお目にかかれない音楽への鋭い視点が勉強にもなり、自分の至らなさを思い知った次第。

    ◇

 1年の早さを思う季節。ライブツアーが多かった今年、ディランのノーベル賞に音楽と文学の関係を考えさせられた

    −−「細野晴臣 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞2016年12月25日(日)付。

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書評:細野晴臣 書評委員が選んだ「2016年の3点」 - 今年の3点(書評委員) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト


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覚え書:「行きづまるグローバル化 エマニュエル・トッド氏に聞く 朝日地球会議2016」、『朝日新聞』2016年09月29日(木)付。

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行きづまるグローバル化 エマニュエル・トッド氏に聞く 朝日地球会議2016

2016年9月29日

エマニュエル・トッド氏=イザベル・コントレーラス撮影

 米大統領選におけるトランプ候補への支持の高まり、英国欧州連合(EU)離脱。国際社会で、時代が逆流しているようにも見える現象が続く。フランス知識人エマニュエル・トッド氏(65)は、グローバル化が大きな節目を迎えているのだ、と読み解く。人々は国境のない世界から国民や国家の枠に戻ろうとしている、そしてそれには理があるのだ、と。10月2〜4日に開催される国際シンポジウム「朝日地球会議2016」(朝日新聞社主催)に参加するトッド氏に、来日を前に話を聞いた。

 

 ――大統領選挙ドナルド・トランプ氏が共和党の候補になったことの意味をどう考えますか。

 「(民主党候補者指名を争った)バーニー・サンダース氏の人気も合わせると、米国社会で大きな変化が生まれていると感じます。支離滅裂で挑発的なトランプ氏のスタイルの陰に隠れがちですが、トランプ氏を支持する人たちの反乱には理があります」

 「また民主党の党大会で、サンダース氏の演説に会場が強く反応したのは、自由貿易環太平洋経済連携協定(TPP)の問題に触れた時でした。米国では大衆層だけでなく、前は反対していなかった中流層も意見を変えています」

 「昨年のある人口動態調査によると、45歳から54歳までの米国の白人の死亡率は、1999年から上昇しているというのです。途方もないことです。自殺や麻薬、肥満といったことが原因でしょう。生活レベルの低下、退職後の不安……。グローバル化による低賃金労働力をめぐる競争などが、多くの人にとって耐えがたくなっています。これは、グローバリゼーション・ファティーグ(グローバル化疲れ)なのです」

 「1980年に(小さな政府を目指した)レーガン大統領が選出されてから約35年。1世代が過ぎ、米国は思想的な大転換のとば口に立っています」

 ――それは国民国家が衰退する年月でもあったのでは。

 「最もしっかりしていた国々が弱体化し、最も不安定な国々は壊れていく時代でした。それは、米国が帝国であった時代とも一致します」

 ――今、その米国人英国人国民国家の枠組みに戻ろうとしている、と。

 「そうです。英国の場合、トランプ現象に当たるのはEU離脱問題です。原動力は、あまりにたくさんの移民を受け入れることへの拒否反応です。英国でも民族や国民という問題が優先課題になったのです」

 「英国国民投票は、EU離脱を求めた大衆の声と残留を訴えたエリートたちの対決でした。英国には、エリートに敬意を払うという伝統があります。しかし、それも指導層が国民の安全を守っていると考えられる時に限られます。国民投票の結果は、グローバル化に対する批判です」

 ――エリートが自分の帰属する国などの共同体から離れて動くようになっているということでしょうか。

 「その通り。グローバル化で、エリートは自分の国の人々に対して責任を感じなくなった。それは、彼らの夢だったわけですが」

 ――エリートたちが主導した欧州統合の未来は?

 「アイデンティティー危機共同体帰属しているという感覚の危機が生じています。たとえばフランスへの帰属意識は低下している。けれども欧州帰属しているという感覚はもっと弱い。欧州は、国民国家が消滅することへの治療法を生み出していません。むしろ重症化させています。今、EUは解体しつつある。最後に神話を粉砕したのは移民危機です」

 ――あなたは移民に反対の立場ではなかったはず。

 「反移民ではありません。ある程度の移民は望ましい。社会に活力を与えるし、人口問題の解決に貢献することもある。しかし、その量や受け入れる社会の人類学的な構造にもたらす意味などを考えておく必要がある。問題は、賛成か反対かではないのです」

    ◆   ◆

 ――あなたは、民主主義国民国家の枠組みの中でしかうまくいかない、と指摘しています。しかし、グローバル化する諸問題に対して、国民国家ナショナルな(国ごとの)解決しかもたらせないのでは。

 「それは誤った論理です。国同士が交渉して共通の目的を持つことは可能です。欧州がまだ国民国家の集まりだったころは、偉大な共同プロジェクトの時代でもあった。航空機エアバス人工衛星打ち上げ用ロケットアリアンの開発などが実現しました。ところが、欧州が国家間の交渉を飛び越えようとしたときから、なんの決定もできなくなった」

 ――民主主義も国の枠に戻ればうまくいきますか。

 「民主主義危機は、(グローバル化した)経済の帰結ではない。根源には高等教育の広がりがあります。民主主義の前提は、誰もが読み書きができるようになることでした。そして高等教育を受けるのはごく少数。この人たちが社会でエリートとして生きていくには人々と話ができなければならなかった。ところが今では、高等教育を受ける人が急増し、受けていない人たちとのつながりなしで存在できるようになりました」

 「高等教育を受けた人たちが階層を形成するまでになったため、受けていない人たちの不平等感が高まり、社会に緊張が生じているのです。教育には、民主主義を可能にする要素とそれを破壊する要素が同時に存在するのです」

 「二つの出口が考えられます。高等教育を受けても、グローバル化で苦しむ人は少なくない。ならば、高等教育を受けていない同胞とつながっているのだという理解にたどり着くことです。そうすれば、民主主義は地に足のついたものになる。でなければ、グローバル化どころか無秩序への回帰です」

    ◆   ◆

 ――あなたは近著「家族システムの起源」(藤原書店)で、人類の最初の家族の構造は核家族だと指摘していますね。

 「複雑な家族システムは遅れた形とみられていました。複雑な構造がシンプルになり、個人が登場し、より自由になるのだと。しかし、より自然なのが核家族であり、歴史を経て複雑な形が形成されたのです」

 「グローバル化の夢は一致に向かう夢です。すてきですが、どれほど非現実的な夢であることか。家族構造の歴史の力学も同じです。一致ではなく分岐、分散に向かう力学なのです」

 (聞き手 編集委員・大野博人)

    *

 エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)氏 人類学者、歴史学者。1951年パリ近郊生まれ。パリ政治学院や英ケンブリッジ大学で学ぶ。世界各地の家族構造についての研究の傍ら、現代の政治や社会についても発言。各地の人口動態や識字率などを分析することで、ソ連の崩壊、帝国としての米国凋落(ちょうらく)、欧州共通通貨ユーロの行き詰まりを予見してきた。先進国社会の分断やグローバル化がもたらす危機についても、早くから指摘している。

 ■来月3日、朝日地球会議2016で講演

 「朝日地球会議2016」では、10月3日に「グローバリズム危機」をテーマに講演する。さらに「いま、地球で起きていること」と題したパネル討論に臨む。今回のインタビューの詳報を含め、朝日新聞の紙面に1998年以降掲載されたトッド氏のインタビュー集「グローバリズム以後 アメリカ帝国の失墜と日本の運命」(朝日新書)が近く刊行される。

    −−「

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首相の呼びかけで自民議員が起立・拍手 衆院議長は注意:朝日新聞デジタル





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2017-01-23

日記:地方という幻想

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地方という幻想

 私たちの劇団青年座は、一九九五年夏、沖縄県与那国島に一ヶ月ほど滞在して稽古をし作品を作った。こういった活動を滞在型制作=アーティスト・イン・レジデンスと呼ぶ。いまでこそ、こういった作品制作方法は珍しくないが、当時の私たちの活動は、特に演劇の世界でのアーティスト・イン・レジデンスのはしりと言ってもいいものだった。

 あれから二十年近く経っているから、いまはどうか分からないが、当時、与那国島には本屋さんがなかった。雑貨屋に漫画雑誌は置いてあるのだが、それも少年マガジンとかジャンプとか、確実に売れるものしか置いていない。週刊誌の類さえ売っていないのだ。

 本を買おうと思うと、人びとは四十分かけて飛行機に乗って、石垣島まで行かなければならない(おそらく実際には、多くの人が雑誌などは契約して購読し、配達してもらっているのだろうが)。しかし、石垣島の書店にも私の本は置いていない。いや、今なら置いてあるかもしれないが、当時は置いてはいなかった。私の本を手に入れようとすると、さらに飛行機に乗って一時間かけて、那覇まで行かなければならない。

 では、与那国の人は私の本を読まなくていいのか? まぁ、「いい」と言われればそれまでなのだが、そうではないと考える人がいるから、私たちは、三千館以上の公立図書館というものを全国に建ててきたのだろう。本を読むという権利は、憲法で保障された文化的な生活の一部を為すと考えられるからだ(残念ながら与那国には、当時も今も図書館がない。しかし、数年前から沖縄県図書館移動図書館のサービスを行っている)。もしも、こうした公的施策がなければ、地方ほど、流通と在庫のコストがかかるので、「すぐに、確実に売れるものしか置けない」という状態に陥ってしまう。厳しく言い換えるなら、「辺境の人々は少年ジャンプだけ読んでいればいい」という状態になる。「残ったものだけが文化だ」という橋下市長の言葉を借りるなら、ここでは、「届いたものだけが文化だ」ということになってしまう。市場原理は、辺境ほど、末端ほど荒々しく働くからだ。

 私たちには、「田舎はいいのだ。のんびりしていて暮らしやすく人情も厚い」といった地方に対するある種の幻想がある。しかし、地方都市ほど、いったん市場原理が入って来ると無駄を許容できず、効率優先の社会になってしまう。私たちは、地方に対するこういった幻想を捨てるところから出発しなければならない。

    −−平田オリザ『新しい広場をつくる 市民芸術概論綱要』岩波書店、2013年、25−27頁。

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新しい広場をつくる――市民芸術概論綱要
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覚え書:「中村和恵 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞』2016年12月25日(日)付。

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中村和恵 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)  [掲載]2016年12月25日


(1)野良ビトたちの燃え上がる肖像(木村友祐著、新潮社・1728円)

(2)きみがぼくを見つける(サラ・ボーム著、加藤洋子訳、ポプラ社・1944円)

(3)i アイ(西加奈子著、ポプラ社・1620円)

    ◇

 書評しそびれた本から。(1)河川敷に暮らす柳さんらを、野良猫同然の野良ビトと呼び、排除しようとする人々。しかし状況が変われば立場は容易に逆転しうる。敗者は死ねと叫ぶ少年に、日々追いこまれているのは彼自身では、と思う柳さん。暴力の後ろにある怯(おび)えを見すえる目は、弱者ならではの力なのかも。(2)心を閉ざした孤独な男と片目の犬の逃避行。暗い道で小さな灯を一心に見つめているような、忘れがたい印象。犬一匹そばにいれば出口を見いだせる、人間ってそういう生き物でもある。(3)シリア生まれ・日本暮らしの女の子は、紛争災害による死者の数をノートに記し、自分の居場所を問いつづける。世界の問題を自分のこととして考えるチャンネルを開いてくれる話。

    ◇

 ジャッキー・ケイ著『トランペット』(岩波書店)を翻訳。ウェブ平凡と雑誌『世界』の連載は継続中

    −−「中村和恵 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞2016年12月25日(日)付。

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野良ビトたちの燃え上がる肖像
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きみがぼくを見つける
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覚え書:「蜂飼耳 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞』2016年12月25日(日)付。

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蜂飼耳 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)  [掲載]2016年12月25日   [ジャンル]

 

(1)炎と苗木 田中慎弥の掌劇場(田中慎弥著、毎日新聞出版・1620円)

(2)乱舞の中世 白拍子・乱拍子・猿楽(沖本幸子著、吉川弘文館・1836円)

(3)神話で読みとく古代日本 古事記日本書紀風土記松本直樹著、ちくま新書・950円)

    ◇

 (1)著者が得意とする掌編小説、44編を収める。どの一行も、動かしようのない凝縮度を見せ、視線をそらさせない。「自由の首輪」「国益の作家」などのタイトルからも想像できる風刺の、絶妙な味を、力のある文章が支え切る。

 (2)中世に流行した即興的な舞、乱舞。もはや滅びた白拍子、乱拍子などのリズムが、現代に伝わる能の根源〈翁(おきな)〉の成立にいかに関わるかを追究する労作。見えるものを通して、見えなくなったものを考える。

 (3)『古事記』『日本書紀』の神話は、大和王権が、各地で口承されていた神話を利用して創作した政治的な〈神話〉だという視点を推し進め、〈建国神話〉を考察する。国家・地方間の〈神話〉をめぐる攻防と、それがもたらしたものに迫る。

    ◇

 9月、詩の仕事で上海の民生現代美術館へ。文化的事業への志と投資の方法から、かつての日本を想像した

    −−「蜂飼耳 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞2016年12月25日(日)付。

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炎と苗木 田中慎弥の掌劇場
田中 慎弥
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覚え書:「原武史 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞』2016年12月25日(日)付。

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原武史 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)  [掲載]2016年12月25日   [ジャンル]

 

(1)クレムリン 上・下(キャサリン・メリデール著、松島芳彦訳、白水社・各3132円)

(2)また、桜の国で(須賀しのぶ著、祥伝社・1998円)

(3)狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ梯久美子著、新潮社・3240円)

    ◇

 今年は女性が書いた本のなかで印象に残るものが多かったが、その中から歴史書と小説と評伝を選んだ。(1)はクレムリンという国家の一地点を対象とするすぐれた通史が、江戸城ないし皇居のような他国の一地点との比較を通して、新たな思想史学を切り開く可能性を秘めていることを教わった。(2)は小説にするには極めて難しいテーマを選んだ著者の挑戦にひかれるとともに、ワルシャワに対する熱い視線に共感した。第2次大戦を日本とは全く異なる視点からとらえているのも印象に残る。(3)は島尾ミホという対象と共振して「狂うひと」にならなければ決して書き得ない評伝。読んでから自問した。これは著者自身が女性だからこそ書けたのか。いや、男性であっても書けたのかと。

    ◇

 来年4月からのラジオ講座の収録に明け暮れた。テキストは『日本政治思想史』(近刊)。一般書店で販売されます

    −−「原武史 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞2016年12月25日(日)付。

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クレムリン 赤い城塞の歴史(上)
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また、桜の国で
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狂うひと ──「死の棘」の妻・島尾ミホ
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覚え書:「保護犬猫、シニアと生きる 一時預かりボランティアも 愛護団体が橋渡し」、『朝日新聞』2016年09月27日(火)付。

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保護犬猫、シニアと生きる 一時預かりボランティアも 愛護団体が橋渡し

2016年9月27日

みーと高梨司郎さん、玲子さん夫妻。司郎さんは「みーちゃんはわがままな孫です」と笑う

 

 捨てられて保護される犬や猫。高齢だったり病気を抱えていたりして新たな飼い主が見つかりにくい場合もあります。「ペットがほしいけど最後まで飼えるか不安」というシニア層に、そういう犬や猫の「受け皿」になってもらおうという動きが広がっています。

 横浜市の有料老人ホームで、高梨司郎さん(78)、玲子さん(73)夫妻は猫のみー(メス、推定7、8歳)と暮らす。ホームは「生活科学運営」(東京都港区)が運営し、ペット同居可だ。

 飼い始めたのは3年前。司郎さんの気持ちが沈むことが多くなったのがきっかけ。動物愛護団体「ちばわん」の譲渡会で代表の扇田桂代さん(41)と知り合い、譲り受けた。扇田さんは「人柄や緊急時に連絡が取れる人が周りにいるかなどを勘案して、譲渡を決めています」と言う。

 横浜市の病院職員梶原由美子さん(79)は、東京電力福島第一原発事故のあとに同県川内村で保護されたクリ(オス、推定8歳)を動物保護団体「ニュータウン動物愛護会」から引き取り、育てている。クリは保護した時から後ろ脚がまひしており、いまも梶原さんが1日2回、おむつ交換をしている。

 梶原さんはクリ以前にも24匹の保護犬、保護猫を引き取り、みとってきた。引き取るのはすべて高齢だったり、病気を抱えていたりする犬猫。「高齢の子たちなら、自分でもまだ面倒が見られると思って」と話す。

 ニュータウン動物愛護会では、犬猫の平均寿命を考え、子犬や子猫は60歳以下の人にしか譲渡しないが、高齢や病気がちの犬猫は高齢者にも譲渡している。同団体の日向千絵代表は「高齢者の方は経済的、時間的に余裕のある方も少なくない。考慮のうえ、たとえば65歳の方には5歳以上の犬猫を譲渡するようにしています」。

 動物愛護団体「日本動物福祉協会」でも、新しい飼い主が見つからない保護犬、保護猫を、一時的に預かってもらうボランティアとして高齢者世帯に期待する。

 犬や猫にとっては保護施設で多頭飼育されること自体がストレスになることもある。一方で、ペット本位の考え方ができる高齢者ほど、自身の健康や寿命を考慮して新たに犬猫を飼うことをためらう傾向がある。このため、バックアップ体制を整えた上で、高齢者に一時預かりボランティアをしてもらう。

 同協会調査員の町屋奈(ない)・獣医師は、「一時預かりボランティアという形でつながることが、双方にとって良い関係につながるのではないか」と話している。

 (太田匡彦、湊彬子、山田理恵)

 ■飼育放棄など問題に

 ペットと自らの余命を考えて新たに犬猫を飼育することをあきらめる高齢者がいる一方で、全国の自治体では、高齢者が亡くなったり入院したりなどで、犬猫を飼い続けられなくなったことによる持ち込みが増加し、問題になっている。

 改正動物愛護法では、動物の所有者は「動物がその命を終えるまで適切に飼養(終生飼養)することに努めなければならない」と定められている。東京都などは「高齢者による飼育放棄の増加傾向に強い問題意識を持っている」としている。また、高齢者に犬猫を譲渡しない自治体動物愛護団体も少なくない。

 ほかにも、高齢者が中・大型の犬を制御できずに逃がしてしまったり、その犬が咬傷(こうしょう)事故を起こしたりする事例も全国で相次いでいる。

    −−「保護犬猫、シニアと生きる 一時預かりボランティアも 愛護団体が橋渡し」、『朝日新聞2016年09月27日(火)付。

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保護犬猫、シニアと生きる 一時預かりボランティアも 愛護団体が橋渡し:朝日新聞デジタル





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2017-01-22

覚え書:「今こそ高橋和巳 社会に肉薄『求道者の文学』」、『朝日新聞』2016年09月26日(月)付。

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今こそ高橋和巳 社会に肉薄「求道者の文学

2016年9月26日

 

高橋和巳

 破滅文学、苦悩教の始祖と呼ばれた。全体性をつかもうと格闘し続けた。

 2014年に『邪宗門』で始まった河出文庫高橋和巳作品の復刊が、没後45年にあたる今年、『憂鬱(ゆううつ)なる党派』『悲の器』と続いている。

 『邪宗門』は戦前・戦中に弾圧された宗教団体が、戦後、世直しのため武装蜂起し、政府とGHQ(連合国軍総司令部)に鎮圧される物語。『憂鬱なる党派』は1950年代の左翼運動の分裂を背景にし、『悲の器』は自らのスキャンダルに法をもって戦う刑法学者が主人公だ。

 社会思想史研究者京都精華大学専任講師の白井聡さん(39)は、少し前に高橋作品と出あい、感銘を受けた。『永続敗戦論』の著者らしく、「敗戦と革命の挫折」に思いをはせた、という。

 「対米従属批判は60年安保の頃までは盛んだったが、経済的成功とひきかえに不問に付されていく。安保法など戦後の総決算が迫られている今の課題は、この時代に根があったと改めて痛感しました」

 もう一点、白井さんが刺激を受けたと話すのは、人間社会の実相に肉薄する作家のまなざしだ。権力はいかに複雑な構造に支えられているか。同じ世界観をもちながら、どんな卑俗な思惑から亀裂は生じるのか。この夏の都知事選で敗北した野党共闘を見るにつけ、政治と人間への冷徹で豊かな想像力の引き出しをもつことが、市民の側にも不可欠だと思ったという。

 政治思想史研究者放送大学教授の原武史さん(54)も、学生時代に読んだ『邪宗門』の衝撃が忘れられない。壮大なスケールで描かれる「虚構の戦後像」。マルクス主義の影響がまだ強い中、宗教という土着のものに根差した変革をめざす着想も斬新だった。

 促されるように、大学院では、小説のモデルとされる宗教法人大本の本部に、資料収集のため滞在する。国家への反乱は架空の物語だが、大本の歴史の中で、天皇制国家神道対峙(たいじ)したとみられる要素があったことを知った。

 「政治と宗教の問題を掘り下げていく自分の研究を、決定的に方向づけた小説です」

 一般には難解な点も多い。でも生前退位問題はじめ天皇制について考えることが重要ないま、作品の問題提起は古びていない、と原さん。

 すぐれた中国文学者でもあり、母校の京大へ赴任した高橋は、全共闘運動に一定の支持を表明した。教員の権威主義知識人の欺瞞(ぎまん)に自覚的だった。やがて学生との板ばさみに苦しみ、39歳の若さで病死する。葬儀には多くの若者が弔問に訪れ、「思想的事件」と言われた。「自己指弾」の文学がたどり着いた悲劇と惜しむ論評もあった。

 だが批評家の若松英輔さん(48)は、そうした現象的な作家として語られすぎたことが、三島由紀夫と並ぶスターで、文学史に残る力量ある作家を「過去の人」にしてしまった理由の一つとみる。

 高橋の作品世界の神髄とは「求道者の文学」だと、若松さんは言う。人間と、人間を超えるもの。語り得ることと語り得ないこと。時代と永遠。理想と現実――。

 「ままならない問題の『あいだ』に立って苦しみ抜いたからこそ、宗教を、外側からだけでなく内面の海、実存をもって描き、沃野(よくや)を切り開くことができた。彼の作品を政治運動や時代の文学に置き換えてはいけない。同時に、あまりに形而上(けいじじょう)学的に受け止めてもいけないと思います」

 個人実存から世界の成り立ちまで。「生涯にわたる阿修羅」としての思索の往還が、全体が見えない時代を生きる私たちを、静かに鼓舞する。

 (藤生京子)

 <足あと> たかはし・かずみ 1931年、大阪市生まれ。日雇い労働者の多い西成区で育つ。太平洋戦争空襲で実家と零細工場を焼失。49年、京都文学部入学。62年に「悲の器」で文芸賞を受賞して人気作家となり、『邪宗門』は「朝日ジャーナル」に連載された。専門の中国文学研究も続け、67年、京大助教授全共闘運動のさなかに倒れ、71年死去。妻は作家の故・高橋たか子

 <もっと学ぶ> 小説はほかに『我が心は石にあらず』『日本の悪霊』『散華』など。評論・エッセーに『孤立無援の思想』『わが解体』『人間にとって』など。

 <かく語りき> 「天国はなくていい。地獄もまた虚妄にすぎない。地獄の門前にいて、その門より拒まれてあること、それは地獄でも天国でもない場所に人間の世界をつくるための絶好の条件であろう」(「失明の階層」から)

 ◆「今こそ」は今回で終わります。

    −−「今こそ高橋和巳 社会に肉薄『求道者の文学』」、『朝日新聞2016年09月26日(月)付。

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(今こそ高橋和巳)社会に肉薄「求道者の文学」:朝日新聞デジタル


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悲の器 (河出文庫)
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覚え書:「杉田敦 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞』2016年12月25日(日)付。

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杉田敦 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)  [掲載]2016年12月25日   [ジャンル]

 

(1)尊厳と身分 憲法的思惟と「日本」という問題(蟻川恒正著、岩波書店・3888円)

(2)在日二世の記憶(小熊英二高賛侑・高秀美編、集英社新書・1728円)

(3)原節子の真実(石井妙子著、新潮社・1728円)

    ◇

 日本社会を根底から考える手がかりを、紹介できなかった中から。われわれが真に「尊厳」のある「個人」となるためには、単に人であるだけでは足りず、「名誉」を重んじ、自己の責任を鋭く問う反省的な意識を要すると、(1)は指摘する。市民の形成という戦後の課題は未完だ。(2)は話題となった「在日一世の記憶」の続編で、スポーツ、実業などで活躍する人びとの声を集める。「外国人」でも「日本人」でもない「宙吊(ちゅうづ)り」状態を生きた人びとの経験は、戦後日本の「正体」を暴き出す。「国民的女優」の突然の引退をめぐっては、さまざまな風説があったが、(3)が示すのは、経済的理由で芸能界入りし、差別的な業界で必死に稼いだ「職業婦人」の物語である。女性たちの戦いも続く。

    ◇

 あらゆるものが崩壊して行くような不安に駆られる。少数の友人たちと数冊の本だけが支え

    −−「杉田敦 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞2016年12月25日(日)付。

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在日二世の記憶 (集英社新書)
小熊 英二 高 賛侑 高秀美
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原節子の真実
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覚え書:「武田徹 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞』2016年12月25日(日)付。

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武田徹 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)  [掲載]2016年12月25日   [ジャンル]

 

(1)「共生」の都市社会学 下北沢再開発問題のなかで考える(三浦倫平著、新曜社・5616円)

(2)樺太を訪れた歌人たち(松村正直著、ながらみ書房・2700円)

(3)全裸監督 村西とおる伝(本橋信宏著、太田出版・2592円)

    ◇

 (1)かたや高度利用の実現を求め、かたや昔ながらの町並みにこだわる。「変えろ」と「変えるな」がガチにぶつかり膠着(こうちゃく)しがちな都市再開発問題。サブカル都市「下北沢」を事例に住む者だけでなく、文化享受者をもアクターとみなし、それぞれの権益を調整する視点を導入。二項対立からの脱却の糸口を探る。(2)歌人の著者が往年の歌人たちの足跡を辿(たど)った。歌に結晶していた「日本帝国北限の領土」の記憶と記録が時を跨(また)いで蘇(よみがえ)る感覚が鮮やか。(3)英語教材セールス日本一からAV監督へ。前科7犯、米国では懲役370年を求刑される。50億円の借金をかかえながら息子を最難関小学校に合格させて注目を集め……。反骨ぶりから情の厚さまで全てが過剰な男の「ナイスな」本格的評伝。

    ◇

 ポスト真実の時代に見合うポストノンフィクションの可能性を考えている。自分で実作できればいいのだけれど

    −−「武田徹 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞2016年12月25日(日)付。

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樺太を訪れた歌人たち
松村正直
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覚え書:「立野純二 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞』2016年12月25日(日)付。

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立野純二 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)  [掲載]2016年12月25日   [ジャンル]

 

(1)トランプ(ワシントン・ポスト取材班ほか著、野中香方子ほか訳、文芸春秋・2268円)

(2)沖縄は未来をどう生きるか(大田昌秀・佐藤優著、岩波書店・1836円)

(3)戦地からのラブレター(ジャン=ピエール・ゲノ編著、永田千奈訳、亜紀書房・2 052円)

    ◇

 世界の良識と安定を支えていた積み木細工が崩れていく。そんな1年だった。

 敵を定め、「壁」を求めるトランプ氏とは誰か。改めて系脈を顧みたい。(1)は米ワシントン・ポスト紙の渾身(こんしん)作。共和党候補に勝ち残るまでの詳細をたどる。

 グローバル化が私たちの権利を奪った。そんな欧米の叫びが世界にこだます。だが、同じく自己決定権を奪われて久しい沖縄の声は国内にすら響かない。

 明治から変わらぬ差別をどう考えるべきか。(2)は、大田元知事沖縄にルーツをもつ佐藤氏の対談。

 今の世界秩序の源流である第1次大戦から100年。フランス兵たちが戦場でつづった手紙集(3)は、変わらぬ戦争の愚かさを伝える。いつの世も、敵も味方もまったく同じ人間なのに。

    ◇

 今年も東京築地の空を日々眺めながら日本と世界を考えました。地元の市場も、国際秩序も、先行きが見えぬ年越しです

    −−「立野純二 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞2016年12月25日(日)付。

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沖縄は未来をどう生きるか
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覚え書:「インタビュー 農協、改革できますか 全国農業協同組合中央会会長・奥野長衛さん」、『朝日新聞』2016年09月27日(火)付。

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インタビュー 農協改革できますか 全国農業協同組合中央会会長・奥野長衛さん

2016年9月27日

「国内の市場が小さくなるなら、輸出に打って出るしかない。援軍の来ない籠城(ろうじょう)戦は負けるもの」=仙波理撮影

 

 金融部門の利益に支えられ、葬式や介護も手がける農協安倍政権は「農業に専念を」と問題視し、「予断なく見直す」と次々に改革を迫る。各地の農協のとりまとめ役、全国農業協同組合中央会全中)会長の奥野長衛さんは、自他ともに認める「改革派」としてどこまで足並みをそろえるのか。農協改革、本当にできますか。

 ――「改革派」という自負は、いまも強く持っていますか。

 「僕の人生そのものが、改革だから。変えないかん、変えないかん、と。そればっかりしてきた」

 ――政権改革方針に納得していなかった前会長が任期途中で辞任、10年ぶりとなった昨夏の会長選で当選しました。「一番上は農業者になるような組織にしたい。従来のトップダウン方式はだめ」との抱負、実現できていますか。

 「そこまでは、まだできていない。任期は残りあと1年弱、地域の農協などと全中自由に意見交換できる体制はつくりたい。上が決めて命令しても、ろくなことない。課題の答えは現場にある」

 ――政権は、地域農協に自立や工夫を促して専業農家の支援に力を入れるよう、求めています。農協改革の第1弾は、全中監査・指導権の廃止でした。

 「4月に、全中の約40人の管理職がそれぞれ2〜3の県を担当する制度をつくった。政府は毎年出すコメの生産数量目標を2018年産から廃止するが、農家の不安の声を丁寧に聞くなどしている。金融、保険部門は事務を効率化し、農業部門に人を回している」

 ――他に、取り組みは。

 「全国の農協組合員を東京の日比谷野外音楽堂などに数千人集めて、むしろ旗をたててこぶしをつきあげる反対集会も、やめている。TPP(環太平洋経済連携協定)や貿易交渉などの議論がおきると、以前は必ず開いていた」

 ――「農協は政治運動ではないし、宗教でもない。事業だ」との持論に基づく方針ですか。

 「反対集会は、過去に政府がコメを買い上げる制度をとっていたころ、価格引き上げを求めてデモなどをした米価闘争を引きずっている。しかし、国民の共感は得られないし、どれだけ効果があるのか、と。対決型から対話型に変えていく。一方で、みなで意思を結集することは必要なので、農協の置かれた立場と進む道を確認するシンポジウムは、1千人くらいを集めて、いずれ開きたい」

    ■     ■

 ――農協改革の旗振り役である自民党農林部会長の小泉進次郎さんはいま35歳ですが、「改革派」どうし、息が合いますか。

 「最初に『農業は間口が広く奥行きも深いので、覚悟してください』と言った。いろんなしがらみはあるはずだが、愚痴はこぼさない人。性根がすわっておられる。小泉家の血でしょうか。改革の熱意は買っているが、性急すぎるところがある。『巨大な組織なので、ぱぱっ、とは変わりませんよ』とも言っている」

 ――奥野さん自身の改革の原点は、どこに。

 「大学生のとき、立て看板をみて生協に加入して。2年生で組織部長も務め、大学を中退してそのまま生協に就職した。組合員のニーズはどこにあるのか、常に考えていた。大学で学んだドラッカーの影響もあると思う。事業のあり方は顧客のニーズで決まること、組織はシンプルにしたほうが強くなること、個人を大事にすることなどは、常に意識している」

 ――28歳で継いだ実家の農家でも、改革を重ねたのでしたね。

 「コメだけでは不安定と思い、ダイコンをたくあんにして売ろうと借金もして兵庫県に出店した。30歳ごろです。消費者のニーズを考え、あっさりして子どもも喜ぶもの、減塩タイプも売り出した。コメにこだわる父とは、相当、議論した。地元のJA伊勢でも肥料農薬販売配達をやめ、店頭での販売に切り替えて安くした。無人ヘリコプターでの農薬散布も始めた。失敗もしたけれど」

 ――でも、奥野さんのお子さんは、農家を継いでいないとか。

 「長男は技術者としてロボットをつくり、長女は大学の事務で働いている。長男が、孫に農業を継がせるかを相談にきたときには、『農業が好きか。嫌いな仕事を親が押しつけたらだめだ。大学で経済学を学ぶくらいでないと、経営できない』と言った。一回きりの人生、家に縛りつけたくない」

 ――農業は、経営だと。

 「米国では、作物の価格変動のリスクを減らすために、先物取引などの対策をする農家も珍しくない。資金繰りや流通への販売交渉も担い、経営の素養がかなり求められている。農業は、肉体労働から知的労働の時代に入っている」

    ■     ■

 ――今秋の農協改革の焦点は、全国農業協同組合連合会全農)が扱う肥料など農業用資材の価格の引き下げです。韓国と比べて割高と指摘されています。今月8日には、JAグループが扱う約1万の肥料の品目を減らすことなどで、コストを下げることを目玉にした方針を発表しました。なぜ、これまでできなかったのですか。

 「できるだけ他の地域と差別化したいと、農家が肥料にも細かく出していた要求に、応えすぎていた。しかも、改革は進めていくと、痛みがかなり出る。工場が集約されれば、雇用にも影響する。卸売市場を通さずに野菜を出荷する量を増やして、農家の手取りを増やすことも考えているが、市場の仕事が減ることにつながり、大勢の人の生活にも影響が出る。死ぬ気で、取り組まないと」

 ――これが、奥野さんの掲げた「改革を超える改新」ですか。

 「改新、とまでは言えません。就任直後は3年に一度の農協大会、TPPの大筋合意やその対策づくりに追われた。でも、全農が今回、身を切る改革に乗り出した。損失が出てくる可能性もあるが、グループで支えていこうと話し合った。志は変わっていない」

 ――気持ちはなえませんか。

 「それはない。案外、鈍感だから。会長選に出るとき、何も得るものはないと地元では大反対された。考え抜いた。あのときの覚悟に比べたら、大したことない」

 ――農協金融と保険部門が経営を支えています。そこに甘えてはいませんか。

 「金融マイナス金利政策で運用が厳しく、保険は少子高齢化で新規加入が減っている。フィンテック(ITを駆使した金融サービス)が進化すれば、大手の銀行でさえ旧来型のビジネスモデルが崩れ、どうなるかわからない。1990年代半ば、グループが出資していた住宅金融専門会社が破綻(はたん)したときは、『農協がつぶれる』と窓口にきた組合員もいた。100兆円の預金が一晩で消えることもある世界。組合員の信用を、最も大事にしたい。我々も、赤字の農業部門の収支をせめてトントンにしていく改革は、避けられない」

    ■     ■

 ――60年前に1万2千あった地域農協はいま660を切り、組合員は農家ではない人が半分以上です。この先、金融や生活関連事業見直しも焦点です。

 「高度成長期までは、地域のほとんどが家族で農業にかかわっていた。ただ、国の産業構造が変わって農家が減り、相対的に葬式、介護、病院など生活系のニーズが増えていった。地域の人から、本当に必要と声がある事業は、認めてほしい。時代の要請がある」

 ――農協が、お葬式まで手がける必要があるのでしょうか。

 「業者が運営する四国の葬祭場で義父の葬式をやったら、会計が不透明で驚いた。地元のJA伊勢では7年ほど前に葬祭ホールをつくり、いま三つある。最初に提示した金額を守る明朗会計にして地域の人にも喜ばれているが、『なぜ農協が手をだすのか』との声は、業者からきているようだ」

 ――政府は農家以外の組合員の金融や生活サービスの利用状況を2021年3月末までに調査し、制限するかどうかを決めます。

 「組織は世の中に合わせて常に変わっていかないと、絶対にもたない。地域の支持があってこそ、農業も支えられる」

 ――たとえば、どんな案が?

 「生協労働者福祉協議会などと連携して、事業を任せられないか。生協の宅配制度はすごい。たとえば農協のスーパー事業生協に移管する、とか。『JAグループを守る、守る』と言っても、かえって守れない。逆の発想です」

 ――農家のための農協へ、と。

 「農業の緊急の課題は、後継者を確保すること。農協という名前がついている以上、この役割を果たしていく。JA伊勢では、農業をめざす人に2年間教える子会社とあわせ、農家の作業を代わって担うパッケージセンターをつくった。青ネギの生産で、30歳近い人なら収入は年に700万円ほど。なかなか志望者は集まらないが、こうした取り組みに、JAグループとして力を入れていきたい」

 ――私は、政権が進める農協改革方向性は間違っていないと思います。奥野さんが譲れないところは、どこですか。

 「全農農林中央金庫株式会社化は、受け入れられない。株式会社はカネ(株)をたくさんもつ人に決定権があり、他の企業に買収されたり、不採算事業をすぐ切ったり、日本の食料や農業政策のためにならないことが出てくる。金融、保険部門の分離も認められない。資金がないと、農家や住民に必要な事業もできなくなる」

 (聞き手・編集委員 小山田研慈)

    *

 おくのちょうえ 1947年生まれ。関西大法学部を中退後、生協職員をへて三重県の実家の農業を継ぐ。JA伊勢代表理事会長、JA三重中央会会長でもある。

    −−「インタビュー 農協改革できますか 全国農業協同組合中央会会長・奥野長衛さん」、『朝日新聞2016年09月27日(火)付。

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(インタビュー)農協、改革できますか 全国農業協同組合中央会会長・奥野長衛さん:朝日新聞デジタル





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2017-01-21

日記:自民党とその不愉快な仲間である公明党による権力の暴走への「共謀」の議論には一切誠実さと真実が見られない。

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小泉政権で過去3回、共謀罪国会に提出されているが、法案は成立しなかった。その理由の一つは、公明党内での反対が根強くあったことに由来する。公明党はその思想的淵源といえる創価教育学会(当時)は、戦時下に治安維持法によって初代会長・牧口常三郎、二代会長戸田城聖が逮捕・投獄され、初代会長は獄死している。このことから、治安維持法関連法に対する反発が強い。しかし、この反発は、思想的淵源に由来するだけでなく、人間の自由を権力が勝手に奪ってよいわけではないという普遍的道理に基づくものでもあろう。

しかしながら、オリンピック開催と抱き合わせで提出される新たな共謀罪に関しては、ここにきて反対のトーンが及び腰で、どちらかと言えば、消極的なポーズを取りながら、その実、積極的な賛成に回る構えを見せている。

及び腰でその実、積極的な賛成という構えは、実際のところ「それなりに抵抗した」というアリバイ工作に過ぎずない。安保法制での右往左往に見られたように、その思想的淵源を裏切るだけでなく、普遍的道理をも顧みない権力の暴走への荷担がまた始まろうとしている。

彼らの議論には、誠実さは見られないし、もはや期待することも無益であろう。共謀罪への荷担と彼らのペテンは、自民党との共謀として永遠に記録されることになろう。

さて、1月20日付『公明新聞』に公明党山口那津男代表のインタビューが紹介されているが、彼らのゴマカシの議論を見てみてよう。

山口代表はインタビューで、共謀罪を必要とする理由を1つ上げている。それは“「国際組織犯罪防止条約」の締結に至るためには、それを担保する国内法の制定が必要”だそうだが、条約締結のために国内法の制定は必要なのだろうか。

外務省説明によれば、政府は「国際組織犯罪防止条約の締結のため、国内法の整備が必要」だとしているが、共謀罪を新設したのはノルウェーブルガリアだけだそうな。国内法の新設ではなく従来法での対応がその殆どである。

次に山口代表は「東京五輪パラリンピックラグビーワールドカップなどの国際的行事を前に、テロ防止に対する法制度で世界との共通基盤をつくることは重要な責任だ」と語るが、2013年9月のIOC総会で五輪開催が東京に決まった時、その決め手は「安全と治安の良さ」だった訳だから、五輪開催にあわせて共謀罪を「今更」新設するという議論は、そもそも矛盾するし、この議論を肯定しようとすれば、「安全と治安の良さ」が良いわけではないのに「良い」とウソをついて東京五輪開催を「獲得」したことになる。

いったい、何がアンダーコントロールされているのだろうか。

自民党とその不愉快な仲間である公明党による権力の暴走への「共謀」の議論には一切誠実さと真実が見られない。

息を吐くようにウソをつくのはお辞めなさい。


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五輪前の法整備は重要

公明新聞2017年1月20日(金)付

記者会見で見解を述べる山口代表=19日 党本部

テロ防止 国民の不安招かぬ配慮も

天皇退位 総意に基づくあり方で

記者会見で山口代表

公明党山口那津男代表は19日午前、東京都新宿区の党本部で記者会見し、テロ組織の犯罪を未然に防ぐための国内法整備の必要性について、「東京五輪パラリンピックラグビーワールドカップなどの国際的行事を前に、テロ防止に対する法制度で世界との共通基盤をつくることは重要な責任だ」との考えを示した。

山口代表は、政府テロ防止策として通常国会に提出を予定している組織犯罪処罰法改正案に関して、2003年に社民党以外の与野党の賛成で国会承認された「国際組織犯罪防止条約」の締結に至るためには、それを担保する国内法の制定が必要なことを力説。

その上で、政府同法案を策定するのに当たり、「国民のいたずらな不安を招かないような配慮と、国際社会テロを未然に防ぐには(国内法が)きちんと機能することが重要だ」と述べ、対象犯罪の絞り込みなど慎重に議論し検討を尽くすよう求めた。

一方、天皇陛下の退位をめぐる議論については、憲法天皇地位は「国民の総意に基く」(1条)と規定されていることから、「どう国民の総意に基づくあり方を考えるかだと思う」との認識を表明。有識者会議論点整理が23日に公表されることを受けた政府の対応を踏まえ、「党内で議員の意見も表明できる機会もつくり、意見集約の図り方を考えたい」と語った。

文部科学省が幹部の再就職を組織的にあっせんしていた疑いが浮上している問題については、「指摘されるようなことがあれば、国民に対する信頼を損なう可能性がある。きちんと調査を尽くし、改めるべきは改めてほしい」と述べた。

    −−「五輪前の法整備は重要」、『公明新聞2017年01月20日(金)付。

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五輪前の法整備は重要 | ニュース | 公明党


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共謀罪」新設、2国だけ 外務省説明条約締結に必要なはずが

2017年1月20日

 犯罪の計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する法案をめぐり、外務省は19日、他国の法整備の状況を明らかにした。政府は「国際組織犯罪防止条約の締結のため、国内法の整備が必要だ」としているが、すでに条約を結ぶ187の国・地域のうち、締結に際して新たに「共謀罪」を設けたことを外務省が把握しているのは、ノルウェーブルガリアだけだという。

 民進党内の会議で外務省説明した。英国米国はもともと国内にあった法律の「共謀罪」で対応。フランスドイツイタリアロシア中国韓国は「参加罪」で対応した。カナダはすでに「共謀罪」があったが、条約の締結に向けて新たに「参加罪」も設けたという。

 民進党は187カ国・地域の一覧表を出すよう求めていたが、外務省の担当者は会議で「

政府としては納得のいく精査をしたものしか出せない。自信を持って説明できる国は限られている」と述べた。

 政府は、これまで、条約締結のためには「共謀罪」か、組織的な犯罪集団の活動への「参加罪」が必要だと説明してきた。20日召集の通常国会法案を提出する方針だ。(金子元希)

国際組織犯罪防止条約締結国の状況

・「共謀罪」の国内法を新設

 ノルウェーブルガリア

・国内法としてあった「共謀罪」で対応

 英国米国カナダ(「参加罪」も新設)

・国内法の「参加罪」で対応

 フランスドイツイタリアロシア中国韓国

外務省説明から

    −−「「共謀罪」新設、2国だけ 外務省説明条約締結に必要なはずが」、『朝日新聞2017年01月20日(金)付。

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「共謀罪」新設、2国だけ 外務省説明、条約締結に必要なはずが:朝日新聞デジタル


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2020年五輪東京で開催 安全と治安の良さが決め手

東京での2020年五輪開催決定を喜ぶ人々(8日、都内で) REUTERS

2013 年 9 月 8 日 13:06 JST 更新

 アルゼンチンブエノスアイレスで7日開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会は、2020年の第32回夏季オリンピック大会の開催都市に東京を選出した。不確実の時代にあって、安全と治安の良さが決め手となったようだ。

 東京はより効率的に五輪を成功させることができると訴えて、ライバル都市のイスタンブールマドリードに勝った。東京1964年大会以来56年ぶり2度目の開催となるが、当時は第2次大戦から20年足らずで日本を国際社会に再度印象付ける大会となった。また。2008年の北京大会2018年の昌平(韓国)冬季大会に加え、今回の東京開催決定でアジア2020年に向け、五輪ムーブメントの中心になろう。

 東京2020オリンピックパラリンピック招致委員会水野正人副理事長兼専務理事は「このような不確実な時代にわれわれは確実に五輪を開催できる」と述べた。

 IOC総会での1回目の投票で東京は決定に必要な過半数に達しなかったものの42票でトップ。マドリードイスタンブールがともに26票で並んだ。この2都市で再び投票を行った結果イスタンブールが49票、マドリードが45票となり、マドリードが落選。イスタンブールとの最終投票の結果、東京が60票、イスタンブールの36票を大きくリードして2020年夏季五輪開催地に決まった。

 投票後、総会会場からホールに出てきたIOCメンバーらは、IOCがリスクを取ることよりも賢明で安全な選択を行ったと説明した。

 IOC評価委員会のクレイグ・リーディー委員長は「確実性は重要なファクターだった」と話した。同委員長は、安倍晋三首相が招致プレゼンテーションで、福島第1原発で続いている問題に対し対策を講じている点を評価。「首相は大きな問題に対処している」と述べた。同委員長は、スペイン経済を巡る懸念がマドリード五輪招致に影響したと指摘。「経済は大きなファクターだったと思う」と述べた。

 総会会場を去る安倍首相は、東京の開催が決まったうれしさを日本国民と分かち合えることは非常に幸せだと述べた。

 IOCメンバーによると、投票では、ほぼ安全が確保された地域を選ぶか、世界有数の安全な大都市を選ぶか、シリアと国境を接し中東紛争とあまりに近いところにある国を選ぶかの選択となった。

東京五輪」決定で喜び爆発

 IOCメンバーのジェームズ・トムキンス氏(オーストラリアの元ボート選手)は「それ(治安問題)についての議論があった」と語る。

 イスタンブール五輪招致委員会ハッサン・アラット委員長は投票結果について「これは競争であり、その結果を尊重しなければならない」と述べ、中東地域の政治的混乱がイスタンブール誘致に影響したかについて言及を避けた。

 トルコのエルドアン首相ブエノスアイレスで同行記者団に対し、トルコはIOCの決定を尊重すると指摘。その上で「開催地が一度五輪を開催した国になったことが唯一の心残りだ。イスタンブールは、多くの文化と文明を集合させ、アジア欧州を結ぶような五輪開催都市になるはずだった」と述べた。同首相は将来も五輪誘致活動を続けるという。

 東京では8日午前5時過ぎに東京開催決定のニュースが伝わり、都内のパブリックビューイング会場では歓声が沸き起こった。64年東京大会で女子バレーボールが優勝し、日本中を沸かせる舞台となった体育館には約2000人が集まり、IOC総会の投票結果を待った。 東京が圧倒的に有利とみられていたが、一部では今回の東京開催決定はやはり意外だったとの見方もある。同体育館に来ていた32歳のサラリーマンの男性は「福島原発の事故があり、東京は望み薄だと思っていた」と話した。

 東京は安全な大会を旗印に誘致活動を展開した。他の国と違い日本国内には目立った、組織的な反対はなく、実際に東京開催を望む声が広がっていた。これは、国内に誘致に懐疑的な見方が広がった2016年大会招致の時とは対照的だった。2009年に実施された五輪招致に関する世論調査では支持率は50%をやや上回る程度だったが、最近の調査では90%を超えていた。

 五輪開催を望む声が増えたのは様々な要因が考えられる。2011年の大震災津波原発事故の3重苦から日本が復興を目指す決意を固めたことなど背景にある。人気のある新首相安倍氏が個人的に土壇場まで五輪誘致を支援したが、2009年当時の政府五輪誘致には口出ししない姿勢を取った。

 他の開催国候補同様、日本政府の財政状況は悪い。公的債務がGDPの2倍以上あり、対GDP比は先進国では最大だ。しかし、公的債務はほぼ国内で保有され、国債市場は安定しているほか、金利も低く資金調達が困難になる兆候はない。

 今回の誘致活動で東京はすでに54億ドルの大会開催準備金を確保しており、大会運営の財政も安定していると強調した。東京大会の総予算は74億ドルになる見込みだが、2008年の北京大会、2012年のロンドン大会を下回り、近年の五輪では有数の低予算になる。

 東京五輪誘致に影を落したのは、政府が対応に乗り出した福島第1原発事故問題だ。ここ最近では、海外メディアが目立って報道している大量の汚染水漏出問題が表面化。これに対し、安倍首相は最後の誘致演説でIOCメンバーに対し、大きな懸念はないと直接訴え説得したようだ。首相は「状況はコントロールされている。決して東京にダメージを与えることを許さない」と述べた。

 来年2月のソチ冬季五輪準備の遅れや2016年リオデジャネイロ大会の準備などの対応に追われているIOCには、東京大会開催決定で一息付ける時間が与えられる。

 IOCのジャック・ロゲ会長は東京に決まったことについて、誘致内容の質が高かったほか、4年間前のプロセス見直した誘致チームの経験によるものだと指摘した。同会長は「東京は自身をそつがない能力を持つと表現した。外科医の私にってそれは訴えるものがある」と述べた。

 「われわれは安全策を取った」と語るのはIOCメンバーのジョン・コーツ氏(オーストラリア)。同氏によると、東京には投票までにアジアオセアニアから強い支持が集まったほか、マドリードイスタンブールでの開催を支持していなかった可能性のある欧州の国からの支持も集めた。これらの2都市のいずれかに決まれば、2024年大会誘致に名乗りを上げる可能性のあるパリやローマなどが不利になるためだ。「東京は安全で治安が良好な都市だ。世界第3位の経済大国で開催すれば、IOCにとっても商業的にも有利だ」(コーツ氏)という。

 東京開催は、2014―2020年まで五輪米国放映権を40億ドルで獲得した米NBCにとって、1つの課題になる。2018年昌平(韓国)冬季大会と2020年東京大会と2大会連続で13―14時間の時差に対応する必要があるためだ。NBCスポーツのマーク・ラザラス会長は「これらの地域での放送は問題がない。北京大会でも非常にうまく行った」と述べた。

 東京の勝利は予想外ではなかったが、マドリードが最終投票に残らなかったことは予想外だった。IOCメンバーであるモナコのアルベール王子も、スペイン経済的苦境があまりに大きな障害となったが、イスタンブールとの再投票でマドリードが敗退したことには驚いた、と述べた。イスタンブールでは最終投票で東京に太刀打ちできないと見方が多かったためだ。最終投票でイスタンブールは10票しか積み増せなかった。

 アルベール王子は「一部の欧州国のメンバーはより長期的な戦略をとった可能性がある」と述べ、他の欧州国が2024年大会開催を視野に入れて、イスタンブール支持に回った可能性指摘した。

 米国2024年大会誘致を検討している。米国のIOCメンバーであるアニタ・デフランツ氏は「米国は非常に有望だが、他の強豪国と争うこことになる」と述べた。

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2020年五輪、東京で開催―安全と治安の良さが決め手 - WSJ

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覚え書:「斎藤美奈子 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞』2016年12月25日(日)付。

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斎藤美奈子 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)  [掲載]2016年12月25日   [ジャンル]

 

(1)ことばの地理学 方言はなぜそこにあるのか(大西拓一郎著、大修館書店・2376円)

(2)化粧の日本史 美意識の移りかわり(山村博美著、吉川弘文館・1836円)

(3)手のひらの京(綿矢りさ著、新潮社・1512円)

    ◇

 書評で取り上げられなかった本から3冊。

 (1)は方言の分布と伝達の過程を論じた、やや専門的だが楽しい本。東の「言わない」と西の「言わん」の境界はどこか。「言うだ」「言うずら」の本家はどこか。言葉は人を介して旅をし、定着するのだと納得。

 (2)は古墳時代−昭和末期の化粧の変遷を追う。白粉の白、お歯黒や眉墨の黒、口紅の赤という3色を基本とする日本の化粧に、肌色が加わるのは大正、青や緑のアイメイクが定着したのは戦後、などの指摘が新鮮。

 (3)は京都を舞台に三姉妹の恋愛模様を描いた綿矢版『細雪』。結婚願望は強いが奥手の長女。恋愛体質裏目に出る次女。やがて京都を出る三女。四季の彩りに満ちた物語はドラマにもぴったり。いまなら早いもん勝ちだ。

    ◇

 『名作うしろ読みプレミアム』『学校が教えないほんとうの政治の話』を上梓(じょうし)。1月には岩波新書が出ます

    −−「斎藤美奈子 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞2016年12月25日(日)付。

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ことばの地理学: 方言はなぜそこにあるのか
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手のひらの京
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覚え書:「佐倉統 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞』2016年12月25日(日)付。

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佐倉統 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)  [掲載]2016年12月25日   [ジャンル]

 

(1)描かれた病(リチャード・バーネット著、中里京子訳、河出書房新社・4104円)

(2)ホワット・イズ・ディス?(ランドール・マンロー著、吉田三知世訳、早川書房・3456円)

(3)ヘンリー・ソロー 野生の学舎(今福龍太著、みすず書房・4104円)

    ◇

 書評できなかった本から。(1)は、さまざまな病態を描いたリアルな図版を多数集めて俯瞰(ふかん)した問題作。超グロテスクだが、図で表現するという行為は、それだけ衝撃的なのだ。「見た目」が病気や病人のイメージを固定化するのに果たした役割は大きい。

 同じ図版集でも、さまざまな物の分解・解説図を集めた(2)は、脱力系科学コミュニケーターの語り口が、ほのぼのとしていて楽しい。子供の頃、折り込み広告の裏にこんな絵をよく描いていたなあ。懐かしい。

 (3)は、瑞々(みずみず)しい感性をもつ人類学者が、視覚だけでなく五感をフル回転させた、ソローの自然遍歴追体験。19世紀アメリカの、美しくも素朴なその姿。ぼくたちはそのようなアメリカを再び見ることができるのだろうか。

    ◇

 同僚と企画編集している独立系同人学術誌『5(ファイブ)』の第6号〈アンスロポセン特集〉を12月に発行。テレビでは「真田丸」にはまったのでロスが怖い

    −−「佐倉統 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞2016年12月25日(日)付。

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覚え書:「末國善己 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞』2016年12月25日(日)付。

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末國善己 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)  [掲載]2016年12月25日   [ジャンル]

 

(1)孤高のハンセン病医師 小笠原登「日記」を読む(藤野豊著、六花出版・1944円)

(2)秋萩の散る(澤田瞳子著、徳間書店・1620円)

(3)スペース金融道(宮内悠介著、河出書房新社・1728円)

    ◇

 今年は、ハンセン病患者の強制隔離を定めたらい予防法が廃止されて20年の節目だった。(1)は、国が進めた強制隔離に戦前から一貫して反対した医師小笠原登の実像を通して、日本のハンセン病政策の非人道性に迫っている。医学的知見と良心に基づき、国策の誤りを指摘した小笠原の姿勢には学ぶところも多い。

 歴史小説の世界では、古代史が静かなブームになっている。(2)はその牽引(けんいん)役による珠玉の短編集。特に地方再生を題材にした「南海の桃李」、失脚した道鏡が最後にたどり着いた境地が感動的な表題作は出色だ。

 債権回収に励む2人組を描く(3)は、SF、ミステリー、経済小説の要素が渾然(こんぜん)一体となっている。コミカルな物語の中に、アクチュアルなテーマを織り込んだ手腕も光る。

    ◇

 歴史小説アンソロジー『血闘! 新選組』『刀剣』を編纂(へんさん)。「特選小説」誌上でエロ文学を紹介する連載を始めました

    −−「末國善己 書評委員が選んだ「2016年の3点」 [評者]今年の3点(書評委員)」、『朝日新聞2016年12月25日(日)付。

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書評:末國善己 書評委員が選んだ「2016年の3点」 - 今年の3点(書評委員) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト


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孤高のハンセン病医師――小笠原登「日記」を読む
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覚え書:「科学の扉 日本発、がん新薬 24年前発見の分子、免疫抑制」、『朝日新聞』2016年09月25日(日)付。

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科学の扉 日本発、がん新薬 24年前発見の分子、免疫抑制

2016年9月25日

 

写真・図版

日本発、がん新薬<グラフィック・山本美雪>

 免疫の働きのブレーキをはずすという新たな方法のがん治療薬・オプジーボ一般ニボルマブ)。外科手術、放射線抗がん剤が中心の治療を大きく変えつつある。京都大の研究者らが24年前、カギとなる分子を見つけ、役割のナゾに迫った基礎研究の成果は、ついに患者の元に届いた。

 京都医学部の本庶佑(ほんじょたすく)教授(当時、現名誉教授)の研究室。1991年、助手だった石田靖雅さん(現奈良先端科学技術大学院大学准教授)は、細胞が自ら死を選ぶ「アポトーシス」という現象に関わる遺伝子を探していた。免疫細胞が攻撃するべき相手か、そうでない自分かを見分ける仕組みに迫れると考えていた。

 石田さんは当時最先端だった方法を導入。マウス免疫細胞を自ら死ぬように操作し、死ぬ前後で働いている遺伝子を比べ、後だけで働く遺伝子を捕まえる。それだけでは候補となる遺伝子が多くなり過ぎ、どれが重要かしぼり切れないので、もう1種類の細胞でも同じ実験をし、共通して働く遺伝子を探した。すると、一つの遺伝子が見つかった。予定(プログラム)された細胞死(デス)の頭文字から「PD―1」と名付け、92年に論文発表した。

 当初はこの遺伝子がつくるPD―1分子がアポトーシスを起こすと思われた。だが、何度実験しても起きない。「なぜ起きないんだろう」。石田さんは困惑した。

 本庶さんは考えていた。「(狙った分子と)違うからやめるか、違うけど面白そうだから続けるか。別にアポトーシスでなくてもいいわけや。免疫で面白そうなものが取れてきた。決着するまでやろうやないか」

 石田さんが留学で離れた後も、本庶さんらはこの分子の働きを見つけるため、PD―1を作れないようにしたマウスを作った。

 ■治療に応用へ

 本来体にある分子がないマウスは何らかの症状が出るはずだが、現れなかった。そこで同じ京大医学部免疫を研究する湊長博教授(現副学長)に助言を求めると、湊さんはまず、PD―1を作れないマウスを症状が安定して出る遺伝子型にする必要性を指摘した。

 約1年半かけ、やっとそのマウスができた。このマウス細胞の実験で免疫を抑える役割をする可能性が分かった。「粘って待とう」とさらにマウスの観察を続けると、生後約1年でマウス腎臓で炎症が起き、湊さんは免疫が過剰に働く「ループス腎炎」に似ていると直感した。逆に言えば、PD―1は免疫が過剰に働くのを抑えていることになり、免疫ブレーキ役であることが確認できた。

 実験を重ね、PD―1の仕組みが次第に分かってきた。活性化した免疫細胞の表面にあるPD―1は、別の細胞の表面にある結合相手の分子であるPD―L1などとくっつくと攻撃をやめるよう指示する。病原体などと闘う免疫細胞が自分の細胞を間違って攻撃するのを防ぐ仕組みだった。

 本庶さんは「これを壊したら、免疫ががんと上がるやないか。がんが治るかもしれん」と考えた。がん細胞はPD―1の結合相手を示し、免疫細胞の識別の仕組みを乗っ取り、攻撃にブレーキをかけているのだろう。結合を邪魔すれば、免疫細胞が攻撃して、がんを退治できるかもしれない――。

 PD―1を作れないマウスにがん細胞を移植しても、増殖が抑えられることが確認できた。「マウスできれいなデータが出ている。人に効かないはずがない」。普通のマウスにPD―L1とくっつく抗体を注射すると、がん細胞は増えず、マウスは生き延びた。論文発表は2002年だった。

 ■54カ国で承認

 本庶さんはPD―1にくっつく抗体を人の薬に応用しようと動き出し、小野薬品工業と共同で特許出願した。

 当時、抗体医薬の開発の経験が乏しかった小野薬品は別の製薬会社と共同開発を模索したが、国内外の十数社全てに断られた。当時は「免疫でがんを治す」という考えに懐疑的な見方が多かった。

 そんな中、共同開発を提案したのが米ベンチャー企業「メダレックス」だ。同社は後に米製薬大手「ブリストル・マイヤーズスクイブ」が買収。その後、この薬の開発と販売は、小野薬品が日本と韓国台湾で、ブリストルがその他の地域で担うことになった。

 治験米国で06年、日本で08年に始まり、12年に米国での結果が英医学誌で発表されると、世界中に驚きを与えた。末期がん患者296人に約半年間投与すると、肺がん皮膚がんの一種メラノーマ腎臓がんの患者の各2〜3割でがんが小さくなったという。

 抗体医薬「オプジーボ」は14年に世界に先駆けて日本でメラノーマの治療薬として承認。米国欧州でも承認された。国内では15年に肺がんの一部、今年に腎臓がんの一部も加わり、高額な薬価も話題になった。先月現在、54カ国で承認されている。

 「本庶先生は『絶対に薬にすべきだ』という意思が強かった」と湊さん。本庶さんは語る。「新しいことをやるときは、人が注目しないところで、自分に確信があることをやらないといけない。それがイノベーション」(合田禄)

 <チェックポイント分子> PD―1は免疫細胞が自己の細胞か、攻撃するべき非自己かを点検して攻撃にブレーキをかける検問所のような役割を果たしているため、「免疫チェックポイント分子」と呼ばれる。こうした分子はほかにもCTLA―4などがある。これらの分子の働きを阻害する薬は、免疫の働きのブレーキを外す仕組みで機能するため、がんなどを直接攻撃する抗がん剤とは大きく異なる。PD―1にくっつくオプジーボのほか、複数の製薬会社がPD―L1やCTLA―4にくっつく抗体を薬として開発している。

 ◇「科学の扉」は毎週日曜日に掲載します。次回は「津波避難に科学の技」の予定です。ご意見、ご要望はkagaku@asahi.comメールするへ。

    −−「科学の扉 日本発、がん新薬 24年前発見の分子、免疫抑制」、『朝日新聞2016年09月25日(日)付。

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(科学の扉)日本発、がん新薬 24年前発見の分子、免疫抑制:朝日新聞デジタル





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