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Essais d’herméneutique このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2050-11-18

はじめに……

アカデミズム底辺で生きる流しのヘタレ神学研究者氏家法雄による神學、宗教學、倫理學、哲學の噺とか、人の生と世の中を解釈する。思想と現実の対話。

2010年11月25日より「はてな」に雑文を移項いたしますので、今後ともどうぞ宜しくお願いします。

ついでですのでひとつ。

絶賛求職ちう。

過去(2007年8月28日〜2010年11月24日)の雑文は以下のURLより閲覧できます。

引っ越しがうまくいけばこちらへ完全移行の予定。

当分はココログと併用いたします。

Essais d’herméneutique

氏家法雄のブクログは以下のURLから閲覧できます。

ujikenorioの本棚 (ujikenorio) - ブクログ


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2017-07-19

覚え書:「そこが聞きたい 防衛装備移転三原則 武器輸出反対ネットワーク代表・杉原浩司氏」、『毎日新聞』2017年03月16日(木)付。

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そこが聞きたい

防衛装備移転三原則 武器輸出反対ネットワーク代表・杉原浩司氏

毎日新聞2017年3月16日 大阪朝刊

武器輸出反対ネットワーク代表の杉原浩司さん=東京都新宿区で、小川昌宏撮影


死の商人国家」化を懸念

 武器輸出を事実上禁じてきた「武器輸出三原則」=1=に代わる新たな「防衛装備移転三原則」を打ち出した安倍政権は、武器輸出に積極的だ。平和国家日本の姿を変えるこの事態に歯止めをかけようと活動する武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)代表・杉原浩司さんに話を聞いた。【聞き手・湯谷茂樹、写真・小川昌広】

−−武器輸出反対ネットワークについて教えてください。

 「積極的平和主義」を掲げる安倍政権は2014年4月、武器輸出を禁じてきた武器輸出三原則を、国会に諮ることなく閣議決定のみで撤廃し、防衛装備移転三原則を策定しました。

 国策として武器輸出を進めるこの政策転換を受け、フランスで開催された兵器見本市「ユーロサトリ」に日本企業が初めて出展し、当時の防衛省装備政策課長がイスラエルの無人機と日本の技術を組み合わせる可能性について発言する様子がテレビで紹介されました。イスラエルの無人機によってパレスチナでは多くの子どもや女性が犠牲になっています。このままでは「死の商人国家」になってしまう。そんな思いで15年12月に武器輸出反対ネットワークを発足させました。

 

−−どんな活動をしていますか?

 武器を輸出しようとしている企業に「死の商人」にならないでほしいと働きかけることを中心に活動しています。申し入れや署名の提出、集会などでチラシを配ってファクスやメール、はがきなどで「死の商人にならないで」という声を届けるよう呼びかけています。シンポジウムの開催や防衛装備庁からのヒアリングなども行っています。

−−武器を輸出しようとする企業はもともと防衛産業です。輸出で何が変わるのでしょう。

 日本の防衛産業が武器を売ってきた自衛隊は、憲法9条のもとで自衛のために存在していました。安倍政権が成立させた安保法制で、海外の戦地への派遣も可能となりましたが、今までは日本を防衛するためだけに使う武器だったんです。

 武器輸出になると、他国の戦闘で使われるわけです。今の中東を見ればわかりますが、武器は軍と軍との戦闘で使われるだけでなく、多数の民間人を殺傷します。武器輸出について「死の商人」という言葉を使うのは、そういう意味なのです。

−−オーストラリアへの潜水艦輸出が注目されました。

 安倍政権が武器輸出解禁を決め、国家安全保障会議(NSC)が最初にOKを出したのは二つの案件です。一つはPAC2という地対空誘導ミサイルの部品の輸出で、米国ライセンス生産三菱重工がしています。米国で作らなくなったので、それを米国に輸出するというものです。もう一つは、ミサイルの性能を向上させる英国との技術研究を三菱電機がする案件です。

 三菱重工川崎重工潜水艦より先にミサイルが動き出しました。このほか、インドへの飛行艇輸出をめざす新明和工業、NEC、富士通富士重工東芝、IHIなどにも武器輸出に関わる企業として、輸出をやめるよう働きかけをしています。

−−反応はどうですか?

 武器輸出について、確信犯といった印象を受けた企業、戸惑っている印象の企業がありました。企業に対する否定的な評判が広まって企業イメージが低下する「レピュテーションリスク」という言葉があります。民生品を多く生産している企業は、武器輸出によるネガティブなイメージが広がることを恐れているように感じました。

 欧米の軍需企業に比べ、日本の防衛関係企業の軍需比率はとても低いんです。三菱重工川崎重工は約1割ですが、その他は数%。私たちはいま、武器生産をやめてと言っているわけではなく、武器輸出をやめてと言っているんです。日本が輸出したり共同開発したりした武器で、他国の市民を殺傷してほしくないからです。もし中東などでそうした事態になれば、平和国家日本への信頼がさらに崩れ、「テロ」の対象になる危険性も高まります。

−−武器輸出の現状はどうなっているのでしょうか。

 武器輸出解禁からまもなく3年ですが、武器本体の輸出はゼロです。潜水艦英国への哨戒機も失敗し、うまくいくと思っていた飛行艇も見通しが立ちません。

 しかし、防衛装備庁は武器輸出が仕事なので、世界中に触手を伸ばして、具体化に動いています。

 新年早々、ニュージーランド川崎重工哨戒機と輸送機を輸出する交渉が進められていることが報じられました。さらに、米軍装備に採用できる研究に関する調査が昨年11月、経済産業省が仲介して秘密裏に行われ、60社が説明会に参加。18社が米軍側と個別面談したことも報じられました。

−−そもそもどうして政府は武器輸出に前向きなのですか。

 安倍政権が成長戦略に位置づけているからです。元経産官僚古賀茂明さんは「悪魔の成長戦略」と言いましたが、その通りです。

 また、日本が持つ人工知能(AI)やロボット、素材などの進んだ技術を米国が活用しようとしていることも一因です。米国は、中国ロシアに対する軍事的優位を保つために民間の技術なども最大限武器開発に取り入れる第3の相殺(オフセット)戦略をもっています。そこに、日本も従属的な形で取り込まれようとしているのです。つまり、米国の軍産学複合体に、安倍政権が作ろうとしている日本の軍産学複合体を融合させる動きです。

−−軍産学では、大学の軍事研究=2=も問題になっていますね。

 防衛省は、税金で大学や研究機関に軍事研究をさせる安全保障技術研究推進制度を15年度にスタートさせました。予算は3億、6億から110億円と激増しています。この制度も、米国の第3の相殺戦略に従属する一環だと思います。いま、日本に軍産学複合体ができてしまえば、米国のように戦争を欲する国になってしまいます。今ならまだ止められます。

聞いて一言

 武器輸出反対ネットワークの呼びかけで2月に行われた神戸の二つの企業への申し入れに同行した。その際に企業の前に掲げられた横断幕にあった「死の商人にはなりたくない」の言葉が、心に重く残った。

 両社に話を聞くと、「政府が進めていることなので……」と困惑しているともとれる言葉も返ってきた。海外の紛争に手を貸したいと思う人は、多くはないだろう。政治主導の武器輸出には、違和感を禁じ得ない。「今ならまだ止められます」。杉原さんの言葉を受けとめたい。

 ■ことば

1 武器輸出三原則

 1967年に佐藤内閣が共産圏や紛争当事国などへの武器輸出を禁じ、76年に三木内閣が全面禁輸へ拡大。その後、米国向け技術供与などの例外が設けられ、2011年には野田内閣が日本の安全保障資する場合について国際共同開発・生産を容認。安倍政権が14年に廃止し、武器輸出を解禁。

2 大学の軍事研究

 科学者の代表機関・日本学術会議は1950年と67年に軍事目的の研究を拒否する声明を決議。近年、研究予算抑制などの事情もあり、防衛省からの予算獲得をめざす研究者もおり、学術会議が対応を検討。今月、過去の声明を「継承する」新声明案をまとめた。

 ■人物略歴

すぎはら・こうじ

 1965年、鳥取県生まれ。京都教育大中退。武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)代表。緑の党脱原発社会運動担当。共著に「武器輸出大国ニッポンでいいのか」(あけび書房)など。

    −−「そこが聞きたい 防衛装備移転三原則 武器輸出反対ネットワーク代表・杉原浩司氏」、『毎日新聞2017年03月16日(木)付。

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覚え書:「書評:集団就職 澤宮優 著」、『東京新聞』2017年06月18日(日)付。

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集団就職 澤宮優 著

2017年6月18日

 

九州沖縄からの実態

[評者]出久根達郎=作家

 「集団就職」という言葉はとうに死語と思っていたら、NHKの連続テレビ小説ひよっこ」で、にわかに蘇(よみがえ)った。

 昭和三十〜四十年代に、毎年地方の中学卒の少年少女が、集団で都市に就職した。世は高度経済成長期で労働力が足りず、安い賃金で雇える未成年者は「金の卵」と称され、引っぱりだこであった。

 評者も、「金の卵」の一人である。集団就職は昭和五十年代前半まで、鳴り物入りで行われたが、その実態は意外に研究されていない。発案者がいまだ分からないのである。

 本書は、主として九州沖縄集団就職の様相が当事者への聞き書きで構成されているが、これ自体が珍しい。従来、集団就職のイメージは東北地方から上野駅に着くのが定型だったからだ。当たり前のことだが、日本全国で行われ、東日本の子は東京西日本の子は大阪名古屋方面に就職した(むろん例外はある)。

 子どもたちは歯を食いしばって、一所懸命(いっしょけんめい)に働いた。親を楽させたいためというのが、最大の理由だった。貧困に苦しむ親を助けている、という自負が子どもたちを支えていた。

 集団就職を歌った流行歌「あゝ上野駅」に「くじけちゃならない人生」という一節があるが、親のために励まなければならなかった。本書は、現代と異なる貧乏の本質を考える手がかりになろう。

弦書房・2160円)

<さわみや・ゆう> 1964年生まれ。ノンフィクション作家。著書『昭和の仕事』。

◆もう1冊

 外岡秀俊著『北帰行』(河出書房新社)。北海道の炭鉱町から集団就職した「私」の挫折と、帰郷の旅を描いた小説。

    −−「書評:集団就職 澤宮優 著」、『東京新聞2017年06月18日(日)付。

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東京新聞:集団就職 澤宮優 著:Chunichi/Tokyo Bookweb(TOKYO Web)



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集団就職《高度経済成長を支えた金の卵たち》
澤宮 優
弦書房 (2017-04-21)
売り上げランキング: 11,013

覚え書:「書評:アガサ・クリスティーの大英帝国 東秀紀 著」、『東京新聞』2017年06月18日(日)付。

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アガサ・クリスティー大英帝国 東秀紀 著

2017年6月18日

 

◆観光・田園を切り口に

[評者]権田萬治文芸評論家

 本書は、観光と都市の歴史研究の専門家で大のミステリー・ファンでもある著者が、世界的な人気作家アガサ・クリスティーの生涯と大英帝国の盛衰をたどりながら、名作の魅力の源泉を<観光>と<田園・都市>というユニークな切り口で浮き彫りにした見事な評論である。

 ポーの世界初のミステリー「モルグ街の殺人」が発表された一八四一年は英国のトマス・クックが鉄道による団体ツアーを組んだ観光元年でもあったという。

 だが、ポーはパリを舞台に名探偵デュパンを活躍させたが、観光には関心がなく、コナン・ドイル名探偵ホームズを旅に出してはいるが、もっぱら仕事のためで観光ではないと著者は指摘する。 

 その点、『そして誰もいなくなった』をはじめとするクリスティーの名作は、観光ミステリーと都市近郊の田園を舞台にした作品が多いのが特徴で、それが独特の魅力にもなっていることを、具体的に長篇六十六作をもとに分類し、鮮やかに分析してみせる。

 謎と恐怖を主題とするミステリーの評論研究はともすると、トリックとか意表を突くプロットの分析に偏りがちになるが、著者はそういう点は十分に理解した上で、クリスティーの魅力の全体像を、乱歩のいう<謎以上のもの>の分析を通して教えてくれるのだ。ミステリーへの愛が行間ににじみ出ている好著である。

(筑摩選書・1728円)

<あずま・ひでき> 1951年生まれ。作家・観光史家。著書『ヒトラー建築家』。

◆もう1冊

 K・ハーカップ著『アガサ・クリスティーと14の毒薬』(長野きよみ訳・岩波書店)。作品で使った毒薬をめぐる話。

    −−「書評:アガサ・クリスティー大英帝国 東秀紀 著」、『東京新聞2017年06月18日(日)付。

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東京新聞:アガサ・クリスティーの大英帝国 東秀紀 著:Chunichi/Tokyo Bookweb(TOKYO Web)








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覚え書:「書評:閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済 水野和夫 著」、『東京新聞』2017年06月18日(日)付。

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閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済 水野和夫 著

2017年6月18日

 

グローバリズムとの決別

[評者]養老孟司=解剖学者

 すでに著者の本を読んだことがあって、内容がある程度わかっていないと、このタイトルはわかりにくいかもしれない。「閉じてゆく帝国」とはなにか。たとえばEUのような統合経済圏を考えればいい。ただしもちろん、話は経済に限らないから「帝国」なのである。これからの世界はその方向に動く。そう考えると、「逆説の日本経済」ということになる。いや、そうじゃないでしょう。TPP(環太平洋連携協定)で見るように、日本は国際化を進めているじゃないか。

 日本でいう「国際化」とは、多国籍企業の利益で、それは「帝国」ではない。国とは無関係の私企業集団である。はなはだ乱暴にいってしまえば、これが著者の考え方の要約になる。

 私自身は経済にはまったくの素人で、中年過ぎまで考えたこともないし、考えたくもなかった。給料日にはちょうど貯金がゼロになるという生活を何十年か続けた。教科書の印税が三百万円入った時に、女房と手を取り合って踊ったのを覚えている。それでは天下国家を考える余裕などない。

 今年物故した義兄は経済学者だった。専門はマルクス経済学の原論だったから、聖書の解釈学みたいなものである。だから私は経済とは抽象だと固く信じていた。もっともその意見は今でも変わらない。お金くらい、抽象的なものはない。お金が使えるのはヒトだけで、動物はこれを理解しない。だからネコに小判。

 この著者の本をはじめとして、近年は「私にもわかる」経済の本が出版されるようになった。銀行預金にいまでは利息が付かない。その意味を説明してくれたのは著者である。でもふつうに新聞や雑誌の記事を読んでいると、答えがわからない。十七世紀のイタリアでもそうだった。そう知らされると、なんだ、人間のすることに変わりはないなあ、と安心する。じつはそれが学問の意味である。学問の効用とは、現実の経済を動かすことではない。

集英社新書・842円)

<みずの・かずお> 法政大教授。著書『資本主義の終焉(しゅうえん)と歴史の危機』など。

◆もう1冊

 吉見俊哉著『大予言』(集英社新書)。歴史を二十五年を核に、さらに百五十年、五百年の尺度で読み解き、世界の未来を展望する。

    −−「書評:閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済 水野和夫 著」、『東京新聞2017年06月18日(日)付。

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東京新聞:閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済 水野和夫 著:Chunichi/Tokyo Bookweb(TOKYO Web)


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閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済 (集英社新書)
水野 和夫
集英社 (2017-05-17)
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覚え書:「月刊・時論フォーラム 今年度を振り返る」、『毎日新聞』2017年3月28日(火)付。

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月刊・時論フォーラム

今年度を振り返る

毎日新聞2017年3月28日 東京朝刊

 

 今年度最後の「時論フォーラム」は、座談会でこの1年を振り返る。イギリス欧州連合(EU)離脱国民投票アメリカでのトランプ大統領誕生と、世界史の転換を物語るかのような事態が相次いだ。水野和夫・法政大教授(現代日本経済論)、遠藤乾・北海道大教授(国際政治学)、ジャーナリストの森健さんが論じ合った。【構成・鈴木英生、写真・内藤絵美】

座談会で話す水野和夫さん=東京都千代田区

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相続財産国庫に戻せ 水野さん/終わりゆく英米覇権 遠藤さん/安倍1強、強い違和感 森さん

座談会で話す遠藤乾さん=東京都千代田区

 遠藤さん 今年度最大の衝撃は、ブレグジット英国のEU離脱を決めた国民投票などの動き)とトランプ米大統領の誕生でした。19、20世紀に世界のモデル国家だった英米が、共に挫折した。19世紀に民主主義を試みた国は、イギリスを目標に議会制を導入しました。第二次大戦後に独立した多くの国は、米国を模して大統領制をとった。この英米のヘゲモニー(覇権)が終わりつつあります。

座談会で話す森健さん=東京都千代田区

 付言すると、米国は世界秩序から「道義的撤退」を始めた。既にオバマ政権は、軍事的に撤退をしていました。とはいえ、オバマ大統領は、世界への道義的責任を語り続けた。ところが、トランプ大統領普遍主義を捨て、道義的にも撤退を宣言した。安倍晋三首相の「価値観外交」は、はしごをはずされましたね。中国ロシアには、トランプの米国は悪くない相手です。何しろ、人権問題も独裁も批判しないのだから。

 水野さん この数百年、英米など覇権国が、常に世界のルールを作ってきました。自由貿易植民地主義、IMF(国際通貨基金)−GATT(関税貿易一般協定)体制……。どれも実態は「自分たちファースト」ですが、一応、「世界秩序を維持する」との看板を掲げてきた。ついにその看板が消えた。世界が悪い意味で「中世に戻った」ともいえます。上位85人の富豪が世界の富の半分を握り、貴族のように世襲する。あるいは、「縁故資本主義」になった。多国籍企業投資家らのネットワークが各国の政策に影響を与える。こうなると、歴史の進歩とはいったい何なのだろう、と思わざるを得ません。

 森さん 今後はフランス大統領選とドイツ総選挙があり、結果次第で大陸系の国も同じ流れに乗りますね。

 遠藤さん トランプ政権のバノン首席戦略官らは、「リベラル勢力など『敵』に国家が乗っ取られている」と本気で信じているのかもしれません。「彼らに乗っ取られた国家を破壊したい」との不健全な願望が、有権者に強く支持されている。「グローバル化」で世界の1%に富が集中したり新興国富裕層が生まれたりし、代わりに先進国労働者が相対的に貧しくなった。そこで彼らのアイデンティティー不安も高まっている。仏でルペン大統領が誕生したら、EUは存亡の機にさらされます。まさに欧州自殺行為ですが。

 森さん いびつな保護主義排外主義が広がるのは、格差を「見える化」した情報化も一因ではないか。インターネットで、誰もが自らの経済的位置が「分かる」と、格差で不安や妬みがあおられる。一方、将来への不安で「強いものに頼りたい」という願望もある。米国からメキシコ人が全員帰ったら、人件費が上がるので米経済は混乱します。それでも移民に責任を押しつけて排除したい。この欲望を政治がすくい取る、いびつなポピュリズムが育っている。

 遠藤さん 選挙テクノロジーの異常な発達も背景にある。AI(人工知能)が、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)での個々人の発信内容を分析して、たとえばパソコン画面に映る内容を「この家では移民について」「この家では雇用不安」「ここではEUについて」と指示する。前は「インターネットで理想的な民主主義が生まれる」との主張も広まりましたが、今思えば、なんと牧歌的な……。

 水野さん 米国は、既に1973年をピークに勤続15年以上の男性労働者の所得が中央値で下がり続けています。世界を二の次にしないと自分が埋没するとの不安が満ちており、もはや先進国と見なすべきではない状態。日本でも2000年代以降、45歳より若い世代は「今の暮らしを楽しむ」人より「将来に備える」人が多数派です。なのに、勤労者世帯はぜんぜん貯蓄できない。ところが、09年以降の預貯金残高は年に14兆円も増えている。つまり、消費税を上げて高齢者に払った年金が貯蓄されている。金融関係者に「生涯一回も、年金を記帳さえしない人が結構いる」と聞きます。本人は使わず、子供が相続する。まさに世襲資本主義です。

 遠藤さん 英国では、ブレグジットに若い世代がむしろ批判的でした。トランプ現象も、白人中高年男性が中心です。経済的な変化は一様でもマグマは国により違う。日本も若者の不安は政治的に表出しにくい。インターネット上で他者を激しく攻撃する人は、安定した中高年男性が多いようです。

 森さん 内政では、安倍1強に強い違和感があります。小泉進次郎衆院議員に、「今は自民1強というより官邸1強」と聞きました。党で議論を尽くした政策より、官邸から突然降ってくる政策が優先される。それに党は対抗できていない。党内に強い対抗軸がいない事情があるのでしょうが、こちらでも「強いものにすがりたい」有権者が、この安倍1強を支えていると映ります。

 遠藤さん 対する民進党は、あまりにだらしない。蓮舫代表の二重国籍問題も、毅然(きぜん)とすればよかった。政権幹部は、蓮舫さんの代表就任で一応警戒はしたそうですが、民進党人事の概要を知り大喜びしたとか。風が吹かないのが確定したと考えたのです。

 森さん 民進党共産党と組まなければ選挙で勝てないと分かっているのに、連合がストップをかけたがる。30年に原発稼働ゼロの政策も、連合に配慮して一気にやめた。この調子では、自民1強に対抗しようがない。

 水野さん 民進党は、民主党から改名した時点で自滅しました。政権交代を果たした党のアイデンティティーを捨てた。そもそも民主党時代から自民党との違いのない議員が少なくなかった。金融政策ではリフレ派も多かったですしね。

 森さん 4月で黒田バズーカ(黒田東彦日銀総裁による強力な金融緩和政策)から4年です。現在は発行された国債の約4割を日銀が保有している状態。言い換えると、国債を国民が広く薄く買わされているわけですよね。

 水野さん 去年9月に、日銀は年間80兆円の国債を買い入れる従来方針を捨てて白旗を上げました。今後は年に30兆〜40兆円と現状で無理のない形にはします。そもそも、今の日本経済は、ゼロ金利が均衡状態です。日銀金利を上げようと、やらなくてもいい踊りを踊っている。国債は借り換えを続け、株も大量に買って永久保持。新自由主義で国家の経済への介入は弱まるはずだったのが、正反対ですね。

 森さん 政権が経団連に賃上げ要求もする。まるで国家社会主義ですね。

 水野さん 日本を「日本国サービス株式会社」だと考えると分かりやすい。日本全体で約854兆円分の個人預貯金があり、今のゼロ金利を出資にたとえれば配当がない状態。ただし、高齢者に年間計20兆円が社会保障給付(雇用主負担を除く)としてサービス配当される。854兆円の6割弱を60歳以上が保有しているから、彼らは事実上4%弱の配当を受け取っている。

 遠藤さん 現政権が安泰なわけだ。

 水野さん 高齢者は投票しますが、若者は棄権しがちですから。

 森さん それでも、若い人に負担を強いる構図は問題でしょう。

 水野さん 現状を変えるには世襲資本主義を壊す、つまり相続財産をいったん国庫に戻させるしかない。年間50兆円ほどが相続されるのに、相続税は約2兆円にしかならない。残りの半分、24兆円を戻すだけで、かなり余裕が出ます。安倍さんはこれだけ1強なのだから、今ならできるはず。

 森さん 税制や社会保障については、若者にも意見を聞きたいですね。天皇退位について。政府の有識者会議委員の一人に聞いたところ、「『右』の委員には天皇陛下への敬意が全くない」と怒っていました。

 遠藤さん 天皇の一声で政治が動いてはならないとリベラルは伝統的に考えてきたが、今回はその動きをリベラルの多くが支持する。抵抗しているのは保守をうたう安倍政権です。ここにも左右のねじれがありますね。

 森さん この政権は「右」っぽい人が多いですが、国家主義的な考えは表層的ですし、実態は疑問です。経済は左寄りだし改憲論議も進めない。下手に負ける可能性がある国民投票なんて、本音ではやりたくないのでしょう。

 遠藤さん 森友学園問題を見ても、首相は「右」を迷惑だと感じ始めたように見えますね。

 水野さん 全般的に、「イデオロギーの終えん」が起きている。米国でもバノン氏はレーニンを信奉している。つくづく、政治が従来のイデオロギー構図と無縁になってきました。

 森さん 最後に、メディアの変化について。安倍政権の日本は、「ポスト・トゥルース(脱真実)先進国」ですよ。原発事故は「アンダーコントロール」で、武力衝突は「戦闘行為ではない」。

 遠藤さん 日本の歴代自民党政権も二枚舌は使ってきました。憲法と安保の関係も、実利的な二枚舌が支えてきました。しかし、米国のフェイクニュースは水準が違う。意図的にウソを拡散させて、恐怖に形を与える。今後、報道信頼性を保証する枠組みを作らないと、ますますフェイクニュースが見分けられなくなる。

 森さん 実現性が高いのはニュースの発信源に対する格付けでしょうか。手間ひまをかけたジャーナリズムは星五つ、根拠不明のネタは星一つ、と。

 遠藤さん それをメディア業界自身でやればいいのですが。

 森さん 日本は地方紙がほぼ全都道府県にあり、全国紙も多い。報道機関の力が残っているうちに、しっかりとした枠組みを作っておくべきですね。

 ◆今月のお薦め3本

水野さん選

 ■ホワイトハウスの権力構造(会川晴之、アジア時報3月号)

フリン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の更迭は大きな変化を呼ばない可能性。政権内には表面と違った権力構造がある。

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 ■東芝債務超過による存続可能性(細野祐二、世界4月号)

再生には新規だけでなく既に受注した原発建設の受注破棄も必要だ。

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 ■ヤマト運輸は「ブラック宅急便」だ(横田増生文芸春秋4月号)

ベテラン運転手が違法残業を実名で告発。

遠藤さん選

 ■共謀罪立法はなぜ不要か(高山佳奈子、世界4月号)

何重にも根拠のない立法をただす。

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 ■文科省国立大「現役出向」241人リスト(河野太郎文芸春秋4月号)

規制する側とされる側、補助金を出す側ともらう側の癒着を問う。根っこは、現在241人にも上る、文部科学省から大学への現役役人の出向。

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 ■原発ビジネスの罠−−巨大企業を飲み込む暗闇(山岡淳一郎、世界4月号)

日本の国家意志や米の子会社に引きずられる企業の嘆かわしい実態。

森さん選

 ■ツイッターで政治は劣化する(渡辺恒雄文芸春秋4月号)

読売の主筆がトランプ氏の伝達の手法を分析。刺激的な短い言葉の手法を続ければ大衆民主政治は劣化すると指摘。

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 ■推進と反原発、二つに分かれ先鋭化する情報(萩原豊、月刊ジャーナリズム3月号)

TBS・NEWS23の編集長が、原発事故の検証報道から賛否を超えた報道の必要性を論じた。

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 ■産官民がつくり出した「住宅過剰社会」の歪み(野澤千絵、中央公論4月号)

高層マンションが過剰につくられているのは都市計画などの緩和が原因だが、誰も止めない。

 ご意見、ご感想をお寄せください。〒100−8051毎日新聞「オピニオン」係 opinion@mainichi.co.jp

 ■人物略歴

みずの・かずお

 1953年生まれ。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミスト、日本大教授など経て現職。著書「株式会社の終焉」など。

 ■人物略歴

えんどう・けん

 1966年生まれ。「シリーズ日本の安全保障」(全8巻)編集代表。著書「欧州複合危機」。編著「ヨーロッパ統合史」など。

 ■人物略歴

もり・けん

 1968年生まれ。早稲田大卒。「『つなみ』の子どもたち」で大宅壮一ノンフィクション賞。他に「小倉昌男 祈りと経営」など。

    −−「月刊・時論フォーラム 今年度を振り返る」、『毎日新聞2017年3月28日(火)付。

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2017-07-18

日記:21世紀の宗教に求められる条件

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 新時代宗教

 戦後、しばらく無力状態にあった神道仏教も、神道地縁仏教は血縁との結合は根強く、神社初詣でや祭り、寺院は葬式と先祖供養という以前の地位と役割とを回復した。キリスト教もGHQの占領下ほどではないが、それなりに定着している。飛躍的に勢力を伸ばした新・宗教とあわせ、現代の日本の宗教は、教派のうえからも性格からも新旧混在した時代となっている。

 そのなかにも、表面化しつつある新時代の傾向が、いくつか読み取られる。

 第一は、他の宗教との共存である。多価値時代、国際化時代を迎え、他の宗教を排斥する宗教は、結局は自己の宗教の排斥にもなる。宗教的寛容ということが、従来のようなシンクレティズム宗教的無関心ではなく積極的価値として要請されている。

 第二は、「信徒の信徒による信徒のための宗教」への方向である。「在家仏教」とか「信徒使徒職」、「解放の神学」、「民衆の神学」の言葉が語るように、主体聖職者から信徒に移っている。かりに聖職者が存続しても、それは信徒の上に君臨するものではなく、信徒に奉仕する役職である。

 第三は、人間性回復が求められていることである。情報化と新・宗教も含めて教団の大規模化は、人間の生活環境を無機化しつつある。そのなかで、人間同士の暖かいふれあいをもたらす小さな宗教や、町の教会がかえりみられている。

 第四は、宗教活動としての世界的、人類的な課題である。これはグローバル化、国際化も関連するが、世界のどこかで災害が起きたとき、これまでは現場での救済活動はキリスト教に限られていた。今では、どの宗教にも活躍が期待されている。ほかに、平和、地球環境福祉などは日本の宗教の大事な活動になっている。

 第五は、宗教そのものと他の救済方法との境界の流動化である。宗教とか教団を名乗らず、「いやし」、「セラフィー」、「自己啓発」をうたう分野が、従来の宗教の場に代わって登場しつつある。もともと宗教用語であった「霊性」という言葉が、その分野で愛好され、逆に宗教の方でも改めて顧みられている。

 すでに一九一八(大正七)年の世界大戦後、宗教学者姉崎正治は『新時代宗教』(博文館)を著し、このことを次の三項にまとめて指摘している。

 人格の尊厳を認め、人間心霊の無尽なる価値を発揮すること。

 人類生活の感応結合に依って、人性の醇化を成就すること。

 一切生存の根底に神霊あるを信じ、人心人生における神霊の開発を人生の帰趣とすること。

 姉崎も本書で「霊性」に言及しているが、わたしは、「霊性」は、超越的存在とその前での人間の罪性、日本の宗教でいえば凡夫自覚がともなうものであることを付け加えておきたい。

    −−鈴木範久『日本宗教史物語』聖公会出版、2001年、153−155頁。

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覚え書:「エンタメfor around 20 妄想呼ぶ、未完の置き土産」、『朝日新聞』2017年05月28日(日)付。

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エンタメfor around 20 妄想呼ぶ、未完の置き土産

エンタメfor around 20

妄想呼ぶ、未完の置き土産

2017年05月28日

 作家・佐藤大輔が3月22日に52歳で亡くなった。ボードゲームデザイナーとして活躍していた彼は、1991年に作家デビュー。戦艦大和史実と異なる活躍をしたことで皮肉にも日本が分断国家となったもうひとつの戦後を描いた架空戦記小説『征途』(徳間文庫・全3巻)をはじめ、近現代、戦国時代、はるか未来から異世界までを舞台に緻密(ちみつ)な考証と独自の諧謔(かいぎゃく)に満ちた数々の戦記小説を生み出した。さらにアニメ化もされた学園ゾンビパニック『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』(カドカワコミックス・ドラゴンJr.)でマンガ原作を、また別名義ではライトノベルも手がけていたとされ、多彩な才能を発揮。長編シリーズの多くが未完のまま中断していたり、歯にきぬ着せぬ作風などで毀誉褒貶(きよほうへん)もあったが、その実力は誰しもが認めるところだろう。早すぎる死が本当に残念でならない。

 『帝国宇宙軍1−領宙侵犯−』(ハヤカワ文庫JA)は、そんな佐藤の遺作の一冊だ。超光速航法に失敗して漂流した人類が、複数の星間国家を築いた未来。そのひとつ、銀河帝国隣国領土問題を抱え、連日にらみあいを続けていた。軍を辞めることばかり考えていた帝国宇宙軍の天城大尉は、不幸な偶然から隣国との「実戦」を経験。そのことで駆逐艦艦長に異例の抜擢(ばってき)をされてしまう。緻密な設定や屈折した登場人物など従来の著者らしさはそのまま。一方、ほかに妙な宗教が流行しても困る、というまったくの実用本位な理由から帝政を採用した銀河帝国の制度や、リーダビリティーあふれる文体など新たな境地も感じさせてくれた。ところが読者の期待をあおるだけあおり、いよいよ物語が大きく動き出すところで、本書には未完の二文字が刻まれてしまう。

 本書とともに『エルフと戦車と僕の毎日2』(上下巻・カドカワBOOKS)、『宇宙軍陸戦隊』(中公文庫)と遺作が計4冊も刊行された。新作を待っていたファンも、こんな形での新刊ラッシュなど、望んでいなかったはずだ。本書の、そして数多(あまた)の未完作品のその後を、評者はずっと妄想し続けるだろう。大変な置き土産を残してくれたものである。(前島賢

    −−「エンタメfor around 20 妄想呼ぶ、未完の置き土産」、『朝日新聞2017年05月28日(日)付。

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コラム別に読む : 妄想呼ぶ、未完の置き土産 - 前島賢 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト



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覚え書:「エンタメfor around 20 まるで実直なカブのよう」、『朝日新聞』2017年06月25日(日)付。

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エンタメfor around 20 まるで実直なカブのよう

エンタメfor around 20

まるで実直なカブのよう

2017年06月25日

 1958年に販売が開始されたホンダオートバイスーパーカブ。バイクはあまり詳しくないという方でも、その特徴的な形状は思い浮かべることができるのではないか。めったなことでは壊れない、常識外れの耐久性や優れた燃費など数々の「伝説」を持った本車は、発売から半世紀を経た今でも世界中で愛され続け、今年、2017年には全世界の生産台数が1億を突破する予定だという。

 トネ・コーケン『スーパーカブ』は、タイトルのとおり、そんな「世界で最も優れたバイク」スーパーカブをモチーフにした小説だ。

 両親を失い、奨学金を頼りに細々とした一人暮らしを営む山梨県北杜市女子高生・小熊。山がちな通学路を自転車で登る毎日に辟易(へきえき)した彼女がワケありのスーパーカブをわずか1万円で手に入れたところから物語は始まる。

 身寄りもなく、趣味もなく、友達もいない。ないないづくしの少女の生活が、スーパーカブと一緒に暮らし始めたことで少しずつ変わっていく様が主題だ。時速30キロのスピードに慣れ、自分の生活に合わせてあれこれカスタマイズし、メンテナンスの方法を学び、配達のアルバイトを始め、あるいは同じスーパーカブに乗る友達を見つけ、彼女がカブで富士山に挑んだ冒険譚(ぼうけんたん)に耳を傾ける。そうした小さな変化を積み重ねながら、田舎町でひっそり暮らしていた女の子は、自分ひとりでどこにだっていける力を身につけていく。

 派手な展開や強烈なキャラクターがウリの作品ではないが、生活感にあふれた描写や、素朴で実直な文体など、本書それ自体が、スーパーカブのような魅力を持った小説だ。

 本作は、もともと株式会社KADOKAWAの小説投稿サイト「カクヨム」に投稿された作品。同サイトからは、本書をはじめ、自己増殖する横浜駅日本中が支配されてしまった柞刈湯葉(いすかりゆば)『横浜駅SF』(カドカワBOOKS・1296円)など、個性派の作品が書籍化されている。新作・新人の供給源として大きな存在感を持つようになった小説投稿サイトだが、今後は、サイトごとの特徴が際立ってくると、一層面白くなるのではと思う。(前島賢

    −−「エンタメfor around 20 まるで実直なカブのよう」、『朝日新聞2017年06月25日(日)付。

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覚え書:「速水健朗の出版時評 マンガの今 スマホに特化、IT企業参入」、『朝日新聞』2017年06月04日(日)付。

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速水健朗の出版時評 マンガの今 スマホに特化、IT企業参入

速水健朗の出版時評

マンガの今 スマホに特化、IT企業参入

2017年06月04日

マンアプリ

 電車で人々がスマホの画面に夢中になっているおなじみの光景。その画面をのぞいてみると映るのは、ゲームでなくマンガ……。

 電子コミックの市場が急成長中。昨年の電子コミックの売り上げは、1460億円と前年比約27%増(出版科学研究所)。電子書籍全体における占有率は76・5%と、電子書籍の主流は明らかにマンガだ。その主戦場は、スマホである。

 小学館の「マンガワン」は、スマホアプリ上でマンガが読めるサービス。オリジナル作品、コミック誌で連載中の新作、手塚治虫らの過去作品などを無料で読むことができる。まとめて読みたい場合に課金が生じる仕組み。

 「電子書籍ではなく“第3の形”。電子書籍のようにデータを保有するのではなく、スマホ上でもっと手軽に読める」と言うのは、マンガワンの和田裕樹副編集長だ。

 現状、1日のアクティブユーザー数は130万人。元々ウェブで始めたサービスをスマホに特化し始めて急成長が始まったという。

 若い世代が紙のコミック誌から離れつつある。マンガワンは、そんな危機感から、より身近なスマホを使った「作品との出合いの場」として位置づけての運営が行われている。実際、ユーザーは、10代、20代前半までが多い。

 和田は「ライバルは、出版社ではなくLINEやサイバーエージェントのようなIT企業」だという。SNS系の企業が運営する「LINEマンガ」(LINE)や「マンガボックス」(DeNA)などが有力な運営元となり、数字を伸ばしている。出版社がマンガ市場を独占できた時代は終わったのだ。

 かつて電子書籍は、ソニーアマゾンといった専用端末を持つ企業を中心に、出版社が参加するといったビジネスとして予測されてきた。だが、実際にできたものは、それとは違う姿のものだった。

 月刊『創』編集長の篠田博之は「来年中にもコミックスの市場でデジタルが紙を上回る可能性がある」と予測している。革命は静かに、そして突然やってくる。

    −−「速水健朗の出版時評 マンガの今 スマホに特化、IT企業参入」、『朝日新聞2017年06月04日(日)付。

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コラム別に読む : マンガの今 スマホに特化、IT企業参入 - 速水健朗(コラムニスト) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト


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覚え書:「そこが聞きたい 震災と臨床宗教師 東北大学大学院教授・鈴木岩弓氏」、『毎日新聞』2017年03月09日(木)付。

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そこが聞きたい

震災と臨床宗教師 東北大学大学院教授・鈴木岩弓氏

毎日新聞2017年3月9日 東京朝刊

 

みとりこそ宗教者の意義

 東日本大震災から6年。大地が激しく揺れたあの日の記憶は被災地では今も生々しい。一方で6年の時間がたつ中で、震災の経験から育った社会の知恵もある。「臨床宗教師」と呼ばれる存在もその一つだろう。臨床宗教師養成に取り組んできた東北大学大学院文学研究科の鈴木岩弓教授(65)は「これからの超高齢多死社会=1=に欠かせない存在」と語る。【聞き手・森忠彦】

−−震災直後の住民の精神的な不安は相当のものだったでしょうね。不思議な話もあったとか。

 大震災では、主に津波のために沿岸部で多くの死者が出ました。宮城県でも9500人以上が亡くなっています。例年の宮城県の死者は年間約2万人ですが、あの年は3万人超。つまり、震災さえなければ死ぬことのなかった「突然死」がそれほど大量に出たのです。私の知人にも家族を一度に失った人がいます。遺族の多くが身近な人の死を受け入れるのに時間がかかりました。「死んだ直後は涙さえ出なかった。2、3年たってようやく泣けるようになった」という話もよく聞きました。

 しばらくは、現地では不思議な話も出回りました。「車を運転中、人をひいてしまったが、降りても誰もいなかった。警察に電話したら『今夜あなたで5件目の通報です』と言われた」「深夜、遺体安置所の方からうめき声が聞こえる」。こんな「怪異譚(たん)」が続きました。私自身も石巻付近を深夜に走行中、カーナビに目的地とは違う沿岸部へと導かれた経験があります。あたりは真っ暗な闇。「誰が呼んでいるのか」と、ぞっとしたこともありました。科学的に説明のつく話ではないのですが、起こったことの原因をそう考える自分たちがいた。あれだけの大災害ですから、この世に未練を残していった人たちの霊が存在してもおかしくはない、と感じてしまう理解がわれわれの「文化」の中にあったのです。

 

−−遺族の心のケアはどういう状況だったのですか?

 被災地では、震災直後からさまざまな宗教団体が物心両面からの支援を開始しており、斎場や遺体安置所に出向いてお弔いをするボランティア活動も各地で見られました。こうした活動は突然死に直面した人々にとって心の大きな支えになっていました。しかし、中にはこの機会に信者獲得を狙う布教をする人々もいて、避難所などに「宗教者お断り」の張り紙が出た所もありました。曹洞宗の檀家(だんか)が多い沿岸部に浄土真宗の僧侶が入る時、「ナンマンダブ」とお念仏を唱えなさいと言ってよいのか、といった疑問は、多くの宗教者の悩みだったのです。

 そうした問題解決のために大学の中に宗教宗派を超えて心のケアに当たる宗教者の養成を行う寄付講座開設を目指し、資金集めを行いました。その結果、世界宗教者平和会議(WCRP)などからの寄付が集まり、2012年度から東北大学大学院文学研究科内に「実践宗教学寄付講座」が設置されました。目的は自身が末期がんでいらした在宅ホスピス推進の医師岡部健さん(12年没)が命名した「臨床宗教師」の養成です。これはキリスト教世界にある「チャプレン」=2=に相当する日本版の専門職です。

 3カ月に及ぶ研修はスピリチュアルケア、宗教対話、人権擁護などの講義と、会話記録や傾聴などのグループワーク、そして実習からなります。中でも他者の死を受け入れる「グリーフケア(悲嘆へのケア)」や自己の死を見つめる「ターミナルケア」は重要です。参加者の8割は仏教宗教者で、修了した152人は日本各地で活躍しています。昨春からは東北大付属病院の緩和ケアでも働いています。龍谷大、鶴見大、上智大など、同様の講座を持つ大学も増え、今春には計9大学に。昨年2月には「日本臨床宗教師会」という全国組織も発足しました。

−−日本で「チャプレン」的な存在が育たなかったのは?

 仏教界の伝統的な構造があると思います。江戸時代徳川幕府は統治策の一つとして徹底した寺檀制度を取りました。国民は「家」を単位としてどこかの寺に檀家として属し、その寺は宗派の本山に属す。寺と檀家とは絶対的なつながりを持っていました。寺の住職は「ホーム」である自分の檀家の面倒さえみていればよかった。「アウェー」であるよその宗教宗派の信者に関わることはなかったし、関わろうともしてこなかった。だから宗派を超えたチャプレンのような存在が育ちにくかった。

 ところが、今回のような事態になると宗教宗派を超えたケアが必要になる。志を持って集まってきた宗教者でしたが、「自分の宗教のやり方でやっていいのか」と悩む人もいました。それだけ、日本の宗教アウェーで活動することに慣れていなかったわけです。

−−日本では厳然として宗教は存在しながらも、どこか「あやしい」ものと見られる面もありますね。

 存在感を失った理由はいくつかあります。戦中派に多いのが敗戦で神も仏も信じられなくなった例。戦後は政教分離が強まって宗教教育ができなくなった。文化としては教えても信仰の対象としては教えません。家の意識が薄れ、わが家の宗派を知らない若者もいる。さらにお金がらみの、犯罪的な布教をするところまで出ると、「宗教はあやしい」となる。きちんと理解されていないため、正当な判断ができていないのです。

 仏教の教えには臨終行儀、つまりターミナルケア作法があるのですが、いつのまにか葬式仏教になって生きている人を相手にすることが抜けてしまった。もし病院に袈裟(けさ)姿の坊さんが行ったら「まだ早すぎる」と嫌がられます。本当なら死に直面した人や家族に寄り添い、「みとり」の意味を伝えるべきなのに、できていない。

 しかし、そこにこそ宗教者の存在意義があると思います。自分の信仰を持つ経験があるからこそ、死や死後世界の意味が伝えられる。今回の出来事は、仏教をはじめとした宗教の役割を見直すいい機会になります。これから日本は前例のない超高齢多死社会を迎えます。寿命が延びて「死」と向き合う時間も長くなる。誰にも必ずやってくる「死」を忌み嫌うのではなく、安心してその時を迎えることができる社会にしたいですね。

聞いて一言

 鈴木さんは3月で定年退職され、18日には最終講義「学問救世 宗教民俗学と臨床宗教師」がある。「学問救世」とは「遠野物語」で知られる民俗学者柳田国男が唱えた言葉で、「学問は世の中の役に立つべきだ」という意味。大震災という不幸な出来事ではあったが、そこから生まれた臨床宗教師の存在が日本の宗教を再生し、多死時代で新たな役割を与えるものになるとすれば、まさに宗教学が「救世」することになる。講義(午後2時〜3時半、大学文系総合講義棟で)は誰でも聴講可能。

 ■ことば

1 超高齢多死社会

 日本の平均寿命は、男性が80.75歳。女性が86.99歳。いずれも世界最高水準にある。一方で多死化も迎えており、昨年の死者は約130万人で史上最多。今後、団塊世代が死期を迎える2040年ごろまでは増え続けるとみられる。都市部では遺体の火葬の順番待ちが続き、「家」の崩壊により、葬儀を行わない直葬も増えている。

2 チャプレン

 キリスト教世界では、特定の宗派の布教とは関係なく、公共空間で心のケアを行うことができる宗教者として「チャプレン」と呼ばれる人たちがいる。宗教団体だけでなく、多くの大学などにも専門課程があり、一つの職業として確立している。

 ■人物略歴

すずき・いわゆみ

 1951年生まれ。東京都出身。東北大学卒、同大学院修了。専門は宗教民俗学・死生学。島根大学助教授を経て93年から東北大学助教授、97年から現職。民間信仰の側面から日本人の信仰構造の形成などをフィールドワークで研究する。4月以降は同大総長特命教授に。

    −−「そこが聞きたい 震災と臨床宗教師 東北大学大学院教授・鈴木岩弓氏」、『毎日新聞2017年03月09日(木)付。

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覚え書:「特集ワイド 最近話題の「教育勅語」肯定論は… 歴史修正主義と表裏一体」、『毎日新聞』2017年03月28日(火)付夕刊。

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特集ワイド

最近話題の「教育勅語肯定論は… 歴史修正主義と表裏一体

毎日新聞2017年3月28日 東京夕刊

 

教育勅語が出されてから50年後、1940年に明治神宮外苑で開かれた記念式典。平成の現在も一部の国会議員は、全文の額を掲げたり、「奉読会」に参加したりするが……

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 国民の代表たる国会が戦後に否定した127年前の文書について、閣僚が「取り戻そう」と叫ぶ平成ニッポンである。文書とは、森友学園問題で注目された「教育勅語」。稲田朋美防衛相をはじめ、安倍晋三政権の周辺には肯定論を唱える人が多い。彼らの主張は正しいのか?【吉井理記】

<まんがで解説>教育勅語とは

皇国史観」と「国家への服従」思想 明治期、「古くて偏向」と改定の動き 戦時期には「玉砕」を助長

 まず教育勅語を読んでみよう。戦前・戦中は小学校令などでは勅語の写し(謄本)に最敬礼するのが義務だったが、今は平成の世である。落ち着いて読んでほしい。

 教育勅語は、1890年に明治天皇が国民に与えた。戦前教育のベースとされたが、敗戦後の1948年に「主権在君や神話国体観に基づき、基本的人権を損なう」などとして、戦後の選挙で国民が選んだ衆参両院の議員議論し、排除・失効を決議した。

 その教育勅語森友学園の人々だけでなく、稲田氏も「教育勅語の核は取り戻すべきだ」(3月8日、参院予算委員会)と評価した。安倍首相自身、排除された経緯に触れながらも「『夫婦は温かい家庭を築き……』など大変素晴らしい理念が書いてある」(2006年6月2日、衆院教育基本法特別委)と褒めているし、閣僚の多くが関わる保守団体「日本会議」の小堀桂一郎副会長は「教育勅語を復活すべきだ」(月刊誌「正論」03年11月号)と訴えるのだ。

 だが、以下の事実を知っても、彼らの認識は「素晴らしい」と思えるだろうか?

 「教育勅語は、明治期ですら政府内で内容が問題視され、改定が議論された。それを今に至って政治家が称賛するとは……」と絶句するのは、日本教育史が専門の日本大教授、小野雅章さんである。

 実際、教育勅語が出た4年後に文相になった西園寺公望は、勅語の価値観を「文明の進歩に少なからず障害を与える。皆さんは注意し、古く偏った考えを打破し、世界の文明に合わせた教育を進め……」(1895年4月、東京高等師範学校での訓示)と批判し、「女子教育を充実させ……外国人に親切に」などと書き込んだ「第2次教育勅語」の草案を書いた。

 驚くことに、明治天皇自身が西園寺の指摘を受け入れ、草案の起草を命じたという。しかし西園寺の病気で実現しなかった(文相参事官を務めた竹越与三郎著「西園寺公」1947年)。

 小野さんが解説する。「西園寺の懸念は勅語にある『皇祖皇宗、国を肇(はじ)むること……』ににじむ皇国史観が『日本は特別な国だ』という内向き思考を招き、国際協調に悪影響を与える、ということです。教育勅語は数年で改定が議論される程度のものでしたが、天皇の権威が確立し、天皇の言葉の改定・撤回はありえない状況になりました」

 では内容はどうか。安倍首相いわく「大変素晴らしい」ものらしいが……。

 調べると、教育勅語が出た翌年、1891年に出版された解説書「勅語衍義(えんぎ)」に行き着いた。勅語の読み方を詳述したものだ。

 ただの解説書ではない。宮内省帝室編修官を務めた渡辺幾治郎の「教育勅語渙発(かんぱつ)の由来」(1935年)などによると、明治天皇の命で時の文相・芳川顕正哲学者井上哲次郎に書かせた。私著として出版されたが、明治天皇も「天覧」し、教育勅語が国民に何を求めているかを説明した事実上の「公式教科書」として扱われた。

 何を求めているか。例えば「一旦緩急あれば義勇公に奉じ」(国家に事変があれば、勇気を奮い一身をささげて皇室国家のために尽くすべし=尋常小学修身書)の項だ。

 「(臣民は)ただただ徴兵の発令に従いて己の義務を尽くすを要す……真正の男子にありては、国家のために死するより愉快なることなかるべきなり」。もう、訳する必要もあるまい。

 「爾(なんじ)臣民父母に孝に」の項は「一国は一家を広げたもので、君主が臣民に命じることは一家の父母が子らに言いつけることと同じだ」、「以(もっ)て天壌無窮(てんじょうむきゅう)の皇運を扶翼(ふよく)すべし」(かくして天地とともにきわまりなき皇位のご盛運を助け奉るべきなり=同)も「臣民は君主の意を体し、逆らってはならない。服従は臣民の美徳である」など、あらゆる場面で「天皇主権」が強調される。明治政府勅語を通じて国民に求めたものを、現代ではどう感じるか。

 政治思想史に詳しい放送大教授の原武史さんは「現憲法国民主権基本的人権の尊重と正反対の内容です。『良いことも書いてある』と評価する人は、一体どういう読み方をしているのか」とあきれるのだ。

 なぜなら「父母に孝に……」などの「徳目」が並ぶ一文は「以て天壌無窮の……」で結ばれる。「つまり『良いこと』のように並ぶ徳目は、すべて皇室を支えるために臣民に課す、という位置づけです。戦前の小学校でも、これが教育勅語の核と教えられた。一部を切り出し、全体を評価することはできません」と解説する。

 元文部科学相下村博文氏も14年4月に「内容はまっとうだが、昭和期に誤った使われ方をした」と述べたが、原さんは「確かに小学校で暗唱が課されたが、昭和期に語句が変わったわけではない。最初から問題のある思想を内包していた」と両断した。

 憲法学専門家の意見を聞いてみたい。早稲田大教授の水島朝穂さんだ。普段は温厚なのに本気で怒っていた。

 「戦前は学校の『奉安殿』に教育勅語の写しと天皇皇后の写真が保管された。文部省学校防空指針では人命より重視され、空襲時に持ち出そうとして焼け死ぬ校長も相次いだのです。子供も勅語で『皇室国家に命をささげよ』と教えられ、兵士となって戦場では降伏せずに玉砕した。その勅語の称賛は、不見識を越えて不届き至極です」

 現憲法の精神に反する教育勅語をたたえる国会議員は、公務員に課された憲法尊重擁護義務から見ても不適格だ、と怒りが収まらない。

 「歴史修正主義者は、枝葉を否定して全体をも否定しようとします。日本でも戦前・戦中の歴史で同じような議論がありますね。逆に教育勅語では、枝葉を肯定することで全体をも肯定する。勅語肯定論と歴史修正主義は裏表の関係なのかもしれません」

 前出の原さんはこんな危惧を抱く。「来年は『明治維新150年』です。明治天皇の言葉である教育勅語を再評価する可能性もある。結局、私たちが歴史を見る目を養うほかはないんです」

 個人の考えは自由である。だが閣僚や国会議員歴史観や思想は注視すべきだろう。教育勅語が人々を縛った時代の再来を防ぐためにも。

教育勅語(現代仮名遣い)

朕(ちん)惟(おも)うに我が皇祖皇宗、国を肇(はじ)むること宏遠(こうえん)に、徳を樹(た)つること深厚なり。我が臣民克(よ)く忠に克く孝に、億兆心を一にして、世世(よよ)その美を済(な)せるは、これ我が国体の精華(せいか)にして教育の淵源(えんげん)また実にここに存す。爾(なんじ)臣民父母に孝に、兄弟に友に、夫婦相和(あいわ)し、朋友(ほうゆう)相信じ、恭倹(きょうけん)己を持し、博愛衆に及ぼし、学を修め業を習い、以(もっ)て智能を啓発し、徳器を成就し、進んで公益を広め、世務(せいむ)を開き、常に国憲を重んじ国法に遵(したが)い、一旦(いったん)緩急あれば義勇公に奉じ、以て天壌無窮(てんじょうむきゅう)の皇運を扶翼(ふよく)すべし。かくのごときは、独り朕が忠良の臣民たるのみならず、また以て爾祖先の遺風を顕彰するに足らん。この道は実に我が皇祖皇宗の遺訓にして、子孫臣民の倶(とも)に遵守(じゅんしゅ)すべき所、これを古今に通じて謬(あやま)らず、これを中外に施して悖(もと)らず、朕爾臣民と倶に拳拳服膺(けんけんふくよう)して咸(みな)その徳を一にせんことを庶幾(こいねが)う。

    −−「特集ワイド 最近話題の「教育勅語肯定論は… 歴史修正主義と表裏一体」、『毎日新聞2017年03月28日(火)付夕刊。

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覚え書:「コミック 1122(1) [作]渡辺ペコ」、『朝日新聞』2017年06月18日(日)付。

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コミック 1122(1) [作]渡辺ペコ

コミック

1122(1) [作]渡辺ペコ

2017年06月18日

■仲良しセックスレス夫婦のもつれ方

 第1話の扉絵、だるま落としのように不安定に積み重なったウェディングケーキ象徴的だ。主人公は、11月22日(いい夫婦の日)が結婚記念日の仲良し夫婦。結婚7年目30代半ばの共働きで子供はいない。傍目(はため)にはうらやましいくらいの“いい夫婦”だが、実は二人はセックスレス。しかも、夫には妻公認の恋人がいる。相手は薄幸な人妻で、いわゆるW不倫状態だ。

 設定だけ聞くとドロドロの愛憎劇を思い浮かべるかもしれない。しかし、作中に流れる空気はむしろ透明感があり温度も低い。当意即妙の会話は笑いすら誘う(性欲についてあけすけに語る女子会シーンの破壊力たるや!)。

 その飄々(ひょうひょう)とした語り口で繰り出す愛と性、男と女に関する考察は鋭く深い。平気なはずだった夫の不倫に湧き出すもやもや、セックスレスになったきっかけについての妻と夫の認識の差など、特殊なようで普遍的な心と体のもつれが生々しく描かれる。温泉旅行で夫にセックスを拒まれた妻が〈もし男だったら〉と想像する場面には震えた。

 夫婦のみならず親子関係から社会全体まで、目配りは効いている。主人公らが抱える痛みは読者に伝染し、低温火傷(やけど)のような疼(うず)きを残す。

(南信長=マンガ解説者)

    ◇

講談社 616円

    −−「コミック 1122(1) [作]渡辺ペコ」、『朝日新聞2017年06月18日(日)付。

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覚え書:「コミック マッティは今日も憂鬱―フィンランド人の不思議 [作]カロリーナ・コルホネン」、『朝日新聞』2017年07月02日(日)付。

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コミック マッティは今日も憂鬱―フィンランド人の不思議 [作]カロリーナ・コルホネン

コミック

マッティは今日も憂鬱―フィンランド人の不思議 [作]カロリーナ・コルホネン

2017年07月02日

フィンランド「あるある」感覚に共感

 洋服屋で「店員さんが、話しかけてくる」その気配だけで、もうその場から立ち去りたくなる。「出かけたいのに、ドアの外に住人がいる」いつまでも家のドアの内側で、外の気配を探っている自分。

 悪いことをしているわけでもないのに、なぜこんなに気後れしてしまうのか。そんな「あるある」感覚の1コママンガが詰まった、フィンランド発のコミックスだ。2015年にネットで発表されて話題になり、翌年書籍化され、この春日本語版が登場した。

 ささいなことだからこそ、恥ずかしさが先に立つ。空気を読んだつもりの行動の、かえって気まずい結果。他人への気づかいは、じつは付き合い下手の裏返し。シャイな日本人らしい特徴だな、と思っていたあれやこれやが、遠い海の向こうの国の本にみごとに描かれていて、驚きとともに、親近感がわく。

 絵がいい。最小限のシンプルな線。にもかかわらず、(だからこそ?)絶妙な表情のニュアンスがじわじわと伝わり、私の心の奥にこの主人公が入り込んでしまうのだ。

 読んでいて、とてももどかしい。でも、これがわかってしまう自分を、否定したくもない。そっと小さな声で、共感を語りたくなる本だ。

ササキバラ・ゴウ=まんが編集者)

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 方丈社 1620円

    −−「コミック マッティは今日も憂鬱―フィンランド人の不思議 [作]カロリーナ・コルホネン」、『朝日新聞2017年07月02日(日)付。

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覚え書:「作家LIVE 「100%正しい人間」の怖さ」、『朝日新聞』2017年06月25日(日)付。

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作家LIVE 「100%正しい人間」の怖さ

作家LIVE

「100%正しい人間」の怖さ

2017年06月25日

あきよし・りかこ 兵庫県生まれ、大阪市在住。早稲田大卒業後、米国ロサンゼルス大学院で映画・テレビ制作修士号を取得。2008年に『雪の花』で第3回Yahoo!JAPAN文学賞。13年の『暗黒女子』が注目され、映画化もされた。他に『自殺予定日』『機長、事件です!』など。=滝沢美穂子撮影

 作家の秋吉理香子さんを迎えた第21回「関西スクエア 中之島どくしょ会」(朝日新聞社主催)が5月中旬、大阪市北区中之島フェスティバルタワーであった。正義を何よりも優先する女性に翻弄(ほんろう)される人々を描いた『絶対正義』(幻冬舎)の執筆経緯や、読後に嫌な気持ちになるミステリー「イヤミス」の書き手になるまでの道のりを語った。

■イメージは大人版「暗黒女子」

 秋吉さんが作家を目指すきっかけは小学6年のころ。フランツ・カフカの『変身』を読み、「頑張れば報われたり、悪い人は最後に罰せられたりするような小説しかないと思っていたので、そうではない文学というものに衝撃を受けた」。

 その後、太宰治を読み、人間の汚い部分や、人生に救いのないところに焦点をあてて書かれているのを新鮮に感じた。中学2年のころには「私も小説家になる」と周りに宣言していた、と振り返る。

 今ではイヤミス書き手として知られる秋吉さんだが、かつては純文学ばかり読んでいたため、書くものも純文学だった。しかし、文学賞に応募しても「映画やドラマのようだ」と言われ、落選ばかり。最後までどんでん返しがなく、犯人がわからなくてもいい純文学の世界で、どのように物語に決着を付ければいいのかに悩む日々だった。

 転機になったのは、2013年に書き上げた、女子校の文学サークルで開かれた闇鍋会が舞台のミステリー『暗黒女子』(双葉社)。担当の編集者に薦められて執筆を始めたが、それまでにはミステリーを書いたことがなく、有名作家の作品をひたすら読み、書き上げた。「やってみると、とても書きやすくて、私はこっちだったとやっと気付いた」

 本の帯では「新しいイヤミス」と紹介してもらった。だが、当時は意味がわからず、編集者に尋ねてびっくりされたというエピソードを明かした。「普段からイヤミスをまったく意識せずに書いている」と述べ、会場を驚かせた。

 『絶対正義』は、大人版の暗黒女子をイメージした作品。高校の同級生だった4人の女性にパーティーの招待状が届く。差出人は5年前に殺したはずの同級生、高規範子。間違ったことや法律を犯すことは絶対に許さない正義の塊のような人間で、4人の女性は範子に翻弄された過去を持っていた。

 「ふと、100%正しい人間がいたらどうなるのだろう、と思って書き始めた」。死んだ人から招待状が届いたら怖い、という以前から書きたいと考えていたアイデアと組み合わせ、物語を構築していった。

 「4人の人生の中で、範子のどこが許せなかったのかを具体的につくる過程が大変だった」と振り返り、1人の女性に対し、一冊の本が書けるほどの人生を描いた。しかし、書けば書くほど範子のモンスター性が浮き彫りになった。「本当に範子が気持ち悪いし、怖くて、この人に付き合っていると自分までおかしくなる」と思うようになるまで追い詰められた。

 ただ、読者からは「私の周りにもこういう人がいる」との反応が多い。「少しくらいはいらっしゃるかなと思ったけど、想定外でした」と語った。

 会場からは「絶対正義の反対が、忖度(そんたく)なんじゃないか」との質問も。秋吉さんは、かつて米国にいた際、隣の庭に葉っぱが2−3枚飛んだだけでクレームが来たという体験を明かし、「日本もだんだん似てきていて、実生活では忖度している人が、インターネットという仮面をかぶるとモンスター化し、絶対正義になってしまう。真ん中がなくて、二極化しているような気がする」と話した。

 (聞き手・野波健祐、文・渡義人)

    −−「作家LIVE 「100%正しい人間」の怖さ」、『朝日新聞2017年06月25日(日)付。

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覚え書:「そこが聞きたい メディアの役割 キャスター・国谷裕子氏」、『毎日新聞』2017年02月16日(木)付。

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そこが聞きたい

メディアの役割 キャスター国谷裕子

毎日新聞2017年2月16日 東京朝刊

事実に向き合う報道

 NHKの看板報道番組クローズアップ現代」のキャスターを23年間務めた国谷裕子さん(60)は昨春、降板にあたり、「物事を伝えることが次第に難しくなってきた」とコメントした。その言葉には、テレビの課題がにじむ。メディアの役割と、今後自身が何を伝えていくのかを聞いた。【聞き手・望月麻紀、写真・森田剛史】

−−番組は毎回、その日のテーマについての国谷さんのコメントで始まりました。この「前(まえ)説(せつ)」は自分で書いていたそうですね。

 最初に自分の言葉で語ることで、カメラを通して向き合った視聴者に伝わる熱が違うと感じていました。番組は、社会問題や科学など難しい課題について視聴者が考える上で大事な情報を、映像とゲストのトークで複眼的に伝えることを目指していました。一方で、あまり多くの視点を入れて伝えようとすると、わかりにくくなります。前説で、今日はどの視点で見ていくのかを明確にすることが、視聴者に対してフェアだと考えました。

−−その前説が次第に長くなったと聞きます。

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 番組が始まった1993年に55年体制が崩壊しました。何かが崩れていくとき、人々の間には議論の土台となる共通認識がありました。年月がたち、個人は多様化し、社会は複雑になりました。平均的な視聴者像を想定しにくい中、各自が「この人は私に語りかけてくれているのか」「自分は置き去りにされていないのか」という目で番組を見ます。

 伝える側としては、いろいろな立場があるという認識を示した上で、「今日はこの目線で伝える」ということをはっきりさせることが大事になりました。過去に番組で伝えたことで、今、新たにこういう問題が起きている、という経過も正直に伝えたいと考えていました。

−−報道姿勢を丁寧に説明しても、批判を受けることはあったのでしょうか。

 インタビューでは、支持や感謝をされていても説明責任がある人には、あえてネガティブな側面から質問をしました。事実を浮かび上がらせるためですが、私個人の意見と受け止められ、反発を受けました。ただこれは番組開始当初からあった批判です。

−−番組が終了し「伝えることが難しくなってきた」というコメントを出されました。では、その意味は?

 放送法=1=は、番組の編集について「政治的に公平であること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」と定めています。

 私は長い間、放送の公平公正について、一つの番組ではなく、NHKの放送全体の中でバランスを取るものと理解してきました。NHKの場合、ニュースで政府方針を毎日のように伝えていれば、番組では違う視点から伝えても、公平公正を逸脱しないという理解でした。ところが、同じ番組の中でバランスを求められるようになってきたのかな、と変化を感じるようになりました。

−−誰がバランスを求めたのでしょうか。

 直接言われたことはありません。衛星放送でのキャスター時代を含めて30年近くNHKで生放送に携わりましたが、政治からの圧力を直接的に意識することはありませんでした。周りに守られていたところもあったと思います。

−−変化はどこから感じたのでしょうか。

 議論があるテーマを番組で取り上げにくくなったという事実から、変化を感じていました。特定秘密保護法を取り上げることはなく、安全保障関連法も1回だけでした。制作現場が提案しても、26分の番組ではバランスを取ることは難しいとの理由で提案が通らなくなったと思います。安保政策の転換点で議論が必要な時に、そうした理由で十分に伝えることができなかったことは残念です。

−−降板されてからこの間に、英国欧州連合(EU)離脱を決め、トランプ米大統領が誕生しました。

 米国大統領ツイッターで直接発信し、多くの人に影響を及ぼす大統領令署名をして、反対するメディアに「フェイク(偽)ニュースだ」とレッテルを貼る。こんなことが実際に起きているのかと信じられません。真実や事実よりも感情的に寄り添うものを信じるという「ポスト・トゥルース」=2=の傾向が強まっています。人々は気づかないうちに感情に寄り添う情報ばかりを選び、分断を深めてしまう。

 感情の一体化が進むとメディアもそれに寄り添ってしまいがちです。より多くの視聴者を獲得しようと、共感しやすい情報を流す。それが多角的な報道を阻害し、同調圧力メディア自身が高めてしまう。ただ、ポスト・トゥルースと言われて、黙っているメディアはないはずです。ある意味で今は、メディアのチャンスといえるかもしれません。

−−国谷さんは何を伝えますか。

 人間の生存を維持してくれる地球の機能が破壊されるかもしれないという危機感が世界に広がっています。国連では、地球温暖化、格差、貧困ジェンダー、食料などの問題を同時に解決していこうとする「持続可能な開発目標」(SDGs)が採択されましたが、日本ではあまり伝えられていません。クローズアップ現代で、個別の問題を一つずつ取り上げる中で、底流で深くつながっていることに気づかされました。課題に取り組む行政や政治がものの見方を変え、横断的に課題に取り組むよう、実践している企業や、国家予算にSDGsを取り入れている国などを、専門家の方々と連携しながらさまざまなメディアで伝えていきたい。

−−テレビに復帰することは?

 メディアを問わず、自分が大事だと思っていることを伝える場が与えられ、役に立つことがあればやっていきたいと考えています。

聞いて一言

 国谷さんは、単純化して物事を伝えようとするテレビ報道に危うさを感じ、複雑な問題をいかに伝えるかに心を砕いてきた。近著「キャスターという仕事」(岩波新書)にも詳しい。今、横断的な課題解決に強い関心を持っているのは、こうした経験を踏まえてのことだろう。テレビも新聞も、多様化し分断された社会に向けて、複雑な問題をあきらめずに投げかけ続けなければならない。「質問を大切に。答えは平凡でも、質問で何が問題なのかを伝えることができる」。背中を押された。

 ■ことば

1 放送法

 放送番組の編集など放送局の運営全般を規律する法律。1950年に制定。第3条で番組編集の自由を保障し、第4条では番組編集の基準として、政治的公平、事実の報道、多角的論点の提示などの4項目を定める。準則は放送界の「倫理規範」とする解釈が通説だが、政府は「法規範」との見解を示し、放送への監視を強めている。

2 ポスト・トゥルース

 オックスフォード辞典によると「世論形成にあたり、『感情や個人的な信念』が優先され『事実』が二の次になる状況」。英語で「post」は「後」、「truth」は「真実」。英国のEU離脱を巡る国民投票米大統領選で、事実に反する主張や誇張が横行し、政治文化や風潮を表す言葉としてよく使われるようになった。

 ■人物略歴

くにや・ひろこ

 1957年大阪府生まれ。米ブラウン大卒。81年NHKニュースの英語放送に携わり、フリー契約のまま、93年から「クローズアップ現代」を担当。2002年同番組スタッフと菊池寛賞受賞。

    −−「そこが聞きたい メディアの役割 キャスター国谷裕子氏」、『毎日新聞2017年02月16日(木)付。

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2017-07-16

日記:「あんときのデジカメ」SONY DSC-W35 2007年製 「エントリークラス」という「限界」

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2011年に使い倒した2007年のコンパクトデジタルカメラ

シリーズ「あんときのデジカメ」において、過去に実際所有して実写でガンガン使っていたカメラを取り上げたことは、これまでなかったのですが(2017年7月現在、借りたりしてちょっと触ったカメラは横に置きますが)、今回、取り上げるSONYのDSC-W35は、逼迫的にガンガン使ったカメラでございまして、使わなくなって5年近くの歳月を経た「今」、カメラとは何か、などと考えております。

まあ、そんな難しい話でもないのですが、ちょうど、2011年震災のあと、財政逼迫にて、色々とデジタルカメラを処分したのですが、その渦中で、巡り合ったのが、このSONYのDSC-W35。ソフマップにて中古で購入したと覚えておりますが、そのとき、2000円ぐらいだったでしょうか。当時ですでに4年落ち。発売当時の実売が2万3千円程度なので、デジタルカメラの価格クライシスを思い知らされた訳ですけれども、自分としては久しぶりの「エントリークラス」(要するにデジタルカメラ新規購入者向けの低価格モデル)ながら、実際に「よく写るな−」と思いつつも、エントリーという「限界」を突きつけられたカメラでもあり、理由は金欠でこのカメラしか手元になかったこともあり、その悪戦苦闘をよく覚えております。

■「エントリークラス」という「限界」

でわ、簡単にスペックをおさらい(……この「おさらい」が定型句になってくるぐらいこのシリーズが定着したのだなあと自分のなかでは「しみじみ」ってどうでもいい話でございますが)。

イメージセンサーは1/2.5型CCD740万画素。なので、自分的にはポスト2005年デジタルカメラなので画素数の中途半端は否めなくても、十分な実用範囲。レンズは、35mmフィルム換算で38-114mm。やや、というか広角端が40mmに近くて……当時既に35mmよりワイド広角のコンデジがぼちぼちスタンダードになりつつあったわけなので……「きびしい」なあと思いつつも、バリオ・テッサーレンズの開放値はF2.8と明るく(光学3倍ズームでF5.2)、マクロも最短2cmなので、エントリークラスのカメラとしては十分過ぎる仕様ではないかと思います。

■「よく写る」けれどもエントリークラスの「限界」

ノスタル爺で恐縮ですが、このカメラに出会うまで、ほとんど、高級コンデジを乗り継いできたので、この条件で撮影して「なんでこんなにブレブレなんだ」とか云云カンヌンの連続で、エントリークラスの「限界」に直面し当惑したことを覚えております。ただ、同時に、条件が揃えば、「よく写る」というのも正味の話であり、結局は写真の「撮り手」の力量につきるのか、などと悩まされたものです。とわいえ弁明するなら、やはりエントリークラスのカメラには、コスト的なものもありますから「限界」があるのは必然的な話でもあり、デジタルであるからこそ、そこは連写によってカバーするほかないのかなあ、などという寸法で、高級コンデジ以上に、条件を替えながら、何度も同じ被写体を撮影しまくった訳ですが、手放してから再度手にとっても、同じことをしておりました。

以下、作例。ISO100、プログラム撮影、ホワイトバランスオート、露出補正なし。画像は7Mで保存。筐体はiPhone6sで撮影。



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↑ (A)広角38mm端で撮影。

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↑ (A)を3倍ズーム114mmで撮影

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↑ (A)をデジタルズーム6倍で撮影

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↑ (B)広角38mm端で撮影

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↑ (B)を3倍ズーム114mmで撮影

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↑ (B)をデジタルズーム6倍で撮影

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Playing old digital camera SONY Cyber-Shot DSC-W35 2007 | Flickr

DSC-W35 主な仕様 | デジタルスチルカメラ Cyber-shot サイバーショット | ソニー

2011年にw35で撮影した記録その1

旨いもの・酒巡礼記:北海道・札幌市編「函館海鮮居酒屋 魚まさ」 - Essais d’herméneutique

2011年にw35で撮影した記録その2

旨いもの・酒巡礼記:福岡県・福岡市編「海物(かいぶつ)」 - Essais d’herméneutique


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覚え書:「コミック アンと教授の歴史時計(2) [作]もとなおこ」、『朝日新聞』2017年05月21日(日)付。

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コミック アンと教授の歴史時計(2) [作]もとなおこ

コミック

アンと教授の歴史時計(2) [作]もとなおこ

2017年05月21日

■激動の時代舞台に壊された未来を修復

 イギリスを舞台にしたタイムトラベルもの。18−20世紀のさまざまな歴史の局面を主人公が渡り歩き、史実を背景にしたミステリアスなエピソードが展開される。

 主人公の少女は、人々の破壊されてしまった未来を修復する役目を負う。彼女も自身の未来を乱され、放っておけば1年後には命を失う運命を抱えているのだ。

 伝統的な少女まんがらしい華やかで軽やかな読み味のまま、厚みある歴史ドラマが展開される。そのバランスがみごとだ。作中で描かれるのは、たとえばイギリス初の本格的な英語辞典を編纂(へんさん)したサミュエル・ジョンソングリニッジ標準時を毎朝精密時計で顧客に配達する、一風変わったビジネスに取り組むルース・ベルヴィルなど、思いがけない人にスポットがあたる。狂言回しのように小説家H・G・ウェルズ、宰相チャーチルなども加わり、心おどる歴史の万華鏡が繰り広げられる。

 歴史の題材の面白さや、ラブロマンスもからめた物語展開に加え、最新の2巻では、主人公の抱える死の運命が、激動の時代を生き抜く人々の姿と重なりながら、大きなテーマへとふくらみ始めている。続刊が楽しみだ。(ササキバラ・ゴウ=まんが編集者)

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 秋田書店 463円

    −−「コミック アンと教授の歴史時計(2) [作]もとなおこ」、『朝日新聞2017年05月21日(日)付。

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覚え書:「コミック 熱海の宇宙人 [作]原百合子」、『朝日新聞』2017年06月04日(日)付。

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コミック 熱海の宇宙人 [作]原百合

コミック

熱海の宇宙人 [作]原百合

2017年06月04日

■日常から逸脱した世界、軽やかに

 新鋭の初作品集だ。表題作ではスランプ中の小説家が自分の小説の登場人物そっくりの宇宙人に出会う。そこには繊細かつエネルギーの強い線で構築された世界が淀(よど)みなく広がっており、初見でそののびやかさに目を奪われた。

 タイトルのセンスもいい。歴史深く、山海の美味に恵まれた気候温暖な熱海温泉もある魅力的な土地だ。宇宙人がやってきたっておかしくない−−そんな温度感のある言葉の組み合わせだけでも惹(ひ)きつけられる要素十分。

 大人になることは、身体の一部が退化すること。そんな世界で生きる少女の恐れの影の深さを音楽のように美しく描いた「退化の日」は息もつかずに読んだ。少年の日の憧れを秘めたまま成長した青年を描いた「中指バレエ」も突飛(とっぴ)な話だが、流れるようなリズムがある。

 リアルと虚構の境界が近づいている今日では、逆に両者の違いを意識してしまう。しかし、日常からいとも簡単に逸脱し、またこちらに戻ってくる本作の世界観には、日頃の言葉にならない想(おも)いを掬(すく)いあげてもらったような気がした。見えるものだけの世界を軽やかに飛び出した1冊。見方ひとつで世界がこんなにも美しく繋(つな)がるなんて。(山脇麻生=ライター)

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    −−「コミック 熱海の宇宙人 [作]原百合子」、『朝日新聞2017年06月04日(日)付。

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覚え書:「コミック ストレンジ [作]つゆきゆるこ」、『朝日新聞』2017年06月11日(日)付。

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コミック ストレンジ [作]つゆきゆるこ

コミック

ストレンジ [作]つゆきゆるこ

2017年06月11日

■6組の男同士の友情と歓喜と成熟

 教師に疎まれクラスメイトには怖がられる問題児と友達のいない図書委員、動物好きの教師とコワモテ男子、アニメオタクの伯父とクールな甥(おい)など、6組の男同士の友愛を描いた短編集。なかでも鮮烈なのは、やはり表題作だ。

 ナイーブで夢や目標もない高校生が、女装バーに勤めるゲイの男と友達になる。その出会いのシーンがまず素晴らしい。絵ヅラ的には不細工なのに人間性の発露としての言葉の交差が美しく胸に響く。年上の風変わりな友達の生き方に刺激され、将来への一歩を踏み出す姿も清々(すがすが)しい。

 出張先のハワイで娘からの電話で婚約を知らされ落ち込むお父さんが、ガイドの青年に半ばむりやり南国の光と風を味わわされることで立ち直る第3話もハッピーだ。

 英語の「strange」には「奇妙な」「風変わりな」のほかに「不慣れな」「初めての」といった意味もある。これは表題作のみならず全編に通じる主題だろう。異質な相手と交流することで初めての経験と感情を得る。不慣れゆえの戸惑いや失敗もあるが、未知の世界の扉が開く。そんな心の動きを縦糸に、偏見と多様性対話と共感などの現代的課題を横糸とした友情と歓喜と成熟の物語にシビれる。(南信長=マンガ解説者)

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リイド社 724円

    −−「コミック ストレンジ [作]つゆきゆるこ」、『朝日新聞2017年06月11日(日)付。

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覚え書:「特集ワイド おおさかブルース 美穂蘭 子どもの夢中を紡ぎ奏でる」、『毎日新聞』2017年03月27日(月)付夕刊。

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特集ワイド おおさかブルース 美穂蘭 子どもの夢中を紡ぎ奏でる

毎日新聞2017年3月27日 大阪夕刊

豊新小の「いきいき活動室」で子どもたちと歌う美穂蘭さん=大阪市東淀川区で、山崎一輝撮影

 授業を終えた子どもたちが、制服のままランドセルを背負って、校舎4階の教室に次々と駆け込んでくる。大阪市立豊新(ほうしん)小学校(東淀川区)での「いきいき活動室」の始まりだ。学年が異なる子どもたちが机に隣り合って宿題に取り組む。その後は塗り絵あやとり、外遊び。低学年を中心に約50人が放課後を過ごす。

 歌の時間になった。ギターを抱えた地域指導員の「らんせんせい」を子どもたちが囲み、声を張り上げて合唱が始まった。

 まちにまったうれしい放課後

 パズルのピース ぼくらを待っている

 1、2、3、4、ゴーゴーいきいき

 ひらめくメッセージ 色えんぴつでえがく

 地平線に続く まっすぐな この気持ち

 らんせんせいが作った「ゴーゴーいきいき」。勢いがあるビートに乗せ、子どもたちは歌いながら跳びはねたり、走り回ったり。そのはしゃぎぶりは、歌から得た気持ちを表現しているようだ。2年生の女の子は「ゴーゴーっていうところはジャンプしたくなる」とニコニコ。

いきいき活動室では、子どもたちの宿題も見る=大阪市東淀川区で、山崎一輝撮影

 美穂蘭さん(51)。約20年前から大阪を拠点に活動するシンガー・ソングライターだ。「聴いて喜んでくれる人がいるなら、どこへでも」。今月11日、大阪府富田林市公民館でのライブ。会場を埋めた約200人は体を揺らし、歓声を上げ、手をたたいて喜んだ。病院や福祉施設にも定期的に通い、ボランティアとして歌を聴かせる。

 「音楽を通して子どもたちを元気にしてくれないか」。ファンとしてライブを長年見てきた「いきいき」の運営指導員、辻本裕司さん(67)から相談を受け、昨年4月から週に数回、子どもたちと向き合う。

 初めは思い通りにいかなかった。「歌いましょう」「リズム遊びをしようね」。そう呼びかけても子どもたちはつれない。「音楽嫌いや」「面白くない」「外で遊ぶ方が楽しい」。教員ではない。子育ての経験もない。悩み、疲れて、腰が引けた。

 ある日、廃品の段ボールを使い、打楽器を作ってみた。見よう見まねで段ボールをいじり始める子どもたち。箸でドラムスティックを、ペットボトルでマラカスを作ると、即興の合奏が始まった。夢中になってリズムを紡ぎ出す子どもたちを見て「一つのものをみんなで作るきっかけ。自分がそれになればいいんだ」。そう思うと、少し気持ちが楽になった。

 子どもを主人公に歌を作ったらどうだろう。作りかけのメロディーに、「いきいき」での様子を描いた歌詞を乗せた。「気に入ってくれるかな」。教室で初めて披露すると、女の子がせがんだ。「もう一回、歌って」。その歌が「ゴーゴーいきいき」だった。

 先月開かれた指導員の集まりで、市内200以上ある放課後事業の中で、特色ある活動として取り上げられ、「ゴーゴーいきいき」を弾き語り披露した。

さあ歌の練習だ。黒板に張る歌詞の表記は平仮名が中心=大阪府富田林市で、山崎一輝撮影

 29日、豊新小の「いきいき」で、新1年生を迎える催しがある。みんなで「ゴーゴーいきいき」を歌って歓迎するのだが、同時にこの1年間の、らんせんせいと子どもたちとの成果発表でもある。立候補を募って当日の役割分担も決める。前に立って指揮する係。段ボールで作った太鼓をたたく係。それぞれが自分の役割を果たせば、それがハーモニーとなり、一つの成果が生まれる。そんなことを子どもたちが知ってくれればうれしい、と思う。

 本番では、子どもたちの元気を存分に引き出してあげるつもりだ。<文・今西拓人/写真・山崎一輝>=今回で終わります

大阪西成で来月28日ライブ

ワンピース姿で熱唱。ライブでは別の顔を見せる=大阪府富田林市で2017年3月11日、山崎一輝撮影

 次回のライブは4月28日午後7時、大阪市西成区萩之茶屋2の「難波屋」で。歌手でギタリストのカオリーニョ藤原さんと共演。投げ銭制。4月中旬には故郷、宮崎県延岡市のイベントに出演する。

    −−「特集ワイド おおさかブルース 美穂蘭 子どもの夢中を紡ぎ奏でる」、『毎日新聞2017年03月27日(月)付夕刊。

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