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Essais d’herméneutique このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2050-11-18

はじめに……

アカデミズム底辺で生きる流しのヘタレ神学研究者氏家法雄による神學、宗教學、倫理學、哲學の噺とか、人の生と世の中を解釈する。思想と現実の対話。

2010年11月25日より「はてな」に雑文を移項いたしますので、今後ともどうぞ宜しくお願いします。

ついでですのでひとつ。

絶賛求職ちう。

過去(2007年8月28日〜2010年11月24日)の雑文は以下のURLより閲覧できます。

引っ越しがうまくいけばこちらへ完全移行の予定。

当分はココログと併用いたします。

Essais d’herméneutique

氏家法雄のブクログは以下のURLから閲覧できます。

ujikenorioの本棚 (ujikenorio) - ブクログ


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2017-04-23

日記:悲報『聖教新聞』2017年4月19日付2面広告→嫌韓・嫌中を煽るネトウヨ ケント・ギルバートの広告を載せる聖教新聞。どこらへんが『地球民族主義』なんだい?

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覚え書:「書評:殺人の人類史(上)(下) コリン・ウィルソン&デイモン・ウィルソン 著」、『東京新聞』2017年03月26日(日)付。

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殺人の人類史(上)(下) コリン・ウィルソン&デイモン・ウィルソン 著

 

2017年3月26日

 

◆形を変える暴力をたどる

[評者]田中聡=作家

 コリン・ウィルソンは一九五六年に『アウトサイダー』でデビューし、文学哲学心理学、犯罪学、オカルトなど幅広いジャンルで健筆をふるった。アカデミズムからは軽視されても、ときに「二十世紀最大の思想家」と評されるほど影響力は大きかった。とくにサブカルチャーに与えた影響は絶大だろう。主題はつねに、拡充しようとする精神の探求にあった。自己拡充の強い欲求を持つアウトサイダーは、創造的になれないと虚無感や憎悪に囚(とら)われやすい。快楽殺人者は創造性を欠いたアウトサイダーだ。その実存の暗黒を研究するのが彼の犯罪学だった。

 本書は、コリンが執筆中に亡くなったため、息子の作家、デイモンが遺稿の前後に章を加えている。ただの補筆ではない。デイモンは、父のシリアル・キラー論を、人類の暴力史のなかに置いたのである。父子は問う。この数十年、世界中で殺人事件が減少し続けているのはなぜか? 人類はやがて暴力なき世界を迎えられるのか? デイモンは、ヒトが進化の過程でいかに暴力性を身につけたかを考え、さらに暴力の諸相、たとえば人喰(く)い、戦争、魔女狩り奴隷制賃金奴隷、今日のカニバリズム的な経済のあり方まで、膨大な事例を検討し、父の遺稿により奥行きを与えることに成功した。

 繰り返し殺人を犯すシリアル・キラーは、他者への共感を欠き、現在の快のみを求めて未来や過去を考えない社会病質者だという。後悔や反省もない。だが、連続殺人者の犯罪件数も九○年代から減り続けている。デイモンは考えられる減少の要因をさまざま挙げるが、その一方で「実業界や政界のトップの人間の多くが社会病質者なのではないか」「指導的地位にいる少数の有力な社会病質者が制度全体の倫理を破壊したのかもしれない」という疑念をも記す。現状を見渡せば、頷(うなず)くしかないのではなかろうか。連続殺人の減少は、暴力行使の形が変わった結果にすぎない可能性もあるということだ。

 (松田和也訳、青土社・(上)3456円(下)3240円)

<Colin Wilson> 1931〜2013年。英国の作家。Damon Wilson 作家。

◆もう1冊 

 コリン・ウィルソン著『アウトサイダー』(上)(下)(中村保男訳・中公文庫)。秩序の外で生きた作家や思想家から現代人の病を探る。

    −−「書評:殺人の人類史(上)(下) コリン・ウィルソン&デイモン・ウィルソン 著」、『東京新聞2017年03月26日(日)付。

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東京新聞:殺人の人類史(上)(下) コリン・ウィルソン&デイモン・ウィルソン 著:Chunichi/Tokyo Bookweb(TOKYO Web)



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覚え書:「【書く人】破滅型刑事を魅力的に『悪魔の星』(上)(下)  ミステリー作家 ジョー・ネスボさん(56)」、『東京新聞』2017年03月19日(日)付。

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【書く人】

破滅型刑事を魅力的に『悪魔の星』(上)(下)  ミステリー作家 ジョー・ネスボさん(56)

2017年3月19日

写真

 岩登りで鍛えたお腹(なか)は真っ平ら。来日して早速、静岡県伊東市の城ケ崎海岸で登ってきたという。「とても良い感じだったよ。岩は場所によって全部違う。人間も岩も、表面を見ていても分からない。手を伸ばして触らないとね」

 ノルウェーを代表するミステリー作家だ。刑事ハリー・ホーレが主人公のシリーズが、世界三十カ国以上で累計二千万部を超える大ヒット。先ごろ一作のハリウッド映画化が決まった。

 シリーズ五作目で文庫初訳となった本作は、オスロを舞台に、指が切断された女性の遺体が次々に見つかる。その連続殺害事件の謎解きが、息をのむような展開で繰り広げられる。読後、まさに大スペクタクル映画を一本見終わったような感覚に包まれる。

 ハリーはオスロ警察で最も腕の立つ一匹狼(おおかみ)の刑事。だがアルコール依存症で、生活は破綻している。常軌を逸して仕事に執心し、恋人からも別れを告げられる。孤独や痛み、弱さを象徴するような人物像に、読者は引き込まれていく。

 一方、作家本人はだいぶ違う。大学時代に趣味で音楽バンドを始めた。就職した後に出したセカンドアルバムが、ヒットチャートの一位になり大ヒットした。作曲とボーカル担当だったが「音楽を仕事にしたくなくて」、仕事は続けた。

 勤務を終えたあと音楽ツアーに出演する多忙な日々に疲れ果て、燃え尽き症候群になった。長期休暇をとってオーストラリアへ。逃避行の最中、小説を書こうと思い立った。

 幼い頃、身の回りのものから想像を広げ、お話づくりに没頭した。携帯パソコンを開くと、そのときのように「手が止まらなくなった」。昼夜を徹して書いた小説が一九九七年に出版されるや、北欧の最も優れた推理小説に贈られる「ガラスの鍵」賞を受賞した。

 これがハリー・ホーレシリーズの第一作。そして、あっという間にベストセラー作家になった…とくると出来過ぎの感さえある。

 ハリーは仕事一筋の破滅人間。何度も約束を破られ、傷つけられた元恋人の女性は、それでもハリーに見つめられてこんなふうに感じる。子どものような、その優しいまなざしにあるのは「確かな純真さ、堕落していない正直さ。信頼したいと思わせる何か」。

 「なんて魅力的なダメ男なんでしょう」と作家に言うと、「ハリーに伝えておくよ」と返事があった。

 戸田裕之訳。集英社文庫・各八六四円。 

(出田阿生)

    −−「【書く人】破滅型刑事を魅力的に『悪魔の星』(上)(下)  ミステリー作家 ジョー・ネスボさん(56)」、『東京新聞2017年03月19日(日)付。

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覚え書:「【書く人】【東京エンタメ堂書店】<小林深雪の10代に贈る本>祝!ご卒業 人生の大先輩が「贈る言葉」」、『東京新聞』2017年03月27日(月)付。

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東京エンタメ堂書店】

小林深雪の10代に贈る本>祝!ご卒業 人生の大先輩が「贈る言葉

2017年3月27日

 3月、年度末です。卒業のみなさん、おめでとうございます! お祝いに言葉の花束を贈ります。小澤征爾さん、黒柳徹子さん、手塚治虫さん。好奇心が強く感受性豊かな、人生の大先輩3人からの「贈る言葉」です。

 これからなにをしよう?どう生きよう? どんな進路を、仕事を選ぶ? どんな大人になる? どんなふうに暮らす? そう迷った時は、自伝(的エッセイ)を読んでみましょう。そこにはたくさんの手掛かりがありますよ。

 どんな偉人も最初から偉大だったわけではありません。誰でも、わたしたちと同じ、最初は初心者だったはず。では、どうやって、その人たちは夢をかなえ、その道を究めたのか? 今回は、日本を代表する三人の個性あふれる青春記をご紹介します。

◆いきあたりばったり 新しい世界へ!

 <1>小澤征爾『ボクの音楽武者修行』(新潮文庫、四九七円)

 世界的指揮者小澤征爾さんがスクーターでヨーロッパを旅したのは、二十四歳の時。

 一九六〇年代、海外旅行がまだ身近でなかった時代。神戸から貨物船に乗りこみ、二カ月もかけてフランスマルセイユに上陸、そこからスクーターでパリまでたどり着く。「この先どうやって勉強しようとか、どのくらいヨーロッパにいられるだろうかなどという計画は皆無」、「フランス語もおぼつかない」、「お金もない」。そんな、いきあたりばったりの小澤青年は、指揮者コンクールを「棒振りコンクール」と言い、ホームシックになれば、「ああ、寿司(すし)がくいてー!」と叫ぶ。その飾らないストレートな言動がとても魅力的です。

 軽々と境界を超えて、新しい世界と出会う。異文化と出会って、新しい自分と出会う。その行動し続けるバイタリティーに勇気がもらえます。

◆失敗、挫折…前向きに

 <2>黒柳徹子『新版 トットチャンネル』(新潮文庫、七六七円)

 インスタグラム(写真をシェアするSNS=会員制交流サイト)での独自のセンスが話題のトットちゃんこと黒柳徹子さん。個性的で可愛(かわい)い衣食住が紹介され、こんな八十代になりたいなとわたしも憧れてしまいます。そんなトットちゃんは、いかにして今のトットちゃんになったのか?

 昭和二十八年、新聞広告で見たNHK専属俳優募集の広告に、ふとした思いつきで応募し、テレビ界に入ったトットちゃん。草創期のテレビ界でのドタバタや、自身の失敗や挫折も包み隠さずに素直にユーモラスに書かれていて、ついつい笑ってしまいます。

 そんなトットちゃんが過労で倒れて入院。死に物狂いで続けようとした仕事が、自分がいなくても何事もなかったかのように楽しく進んでいる。病室で何も映っていないテレビを、ただただ眺める最後のシーンには胸を突かれます。

◆人生に迷ったら 本当に好きな方を選ぶ

 <3>手塚治虫『ぼくのマンガ人生』(岩波新書、九〇七円)

 最後は漫画の神様、手塚治虫さんの本。いじめられっ子だった少年時代に自己防衛手段として考えたのが、好きだった漫画。本気で描き始めるとぐんぐん上達し、いじめっ子たちも一目置くように。

 医大に進学し、医師になるか漫画家になるかで悩んだ時、「本当に好きな方を選びなさい」と言ってくれたお母さん。

 その医大大阪空襲の経験から、「生命の尊厳」が手塚漫画の大きなテーマになり、生と死を描いた『ブラック・ジャック』や『火の鳥』に込めた思いも語られます。この二作は、わたしにとっても大好きで特別な作品。ぜひ、併せて読んでみてください。

 人生の選択に迷った時に、思い出してページを開いてほしい。そんな本です。

  *毎月第四月曜掲載。

<こばやし・みゆき> 児童文学作家最新刊は『作家になりたい!』(講談社青い鳥文庫

    −−「【書く人】【東京エンタメ堂書店】<小林深雪の10代に贈る本>祝!ご卒業 人生の大先輩が「贈る言葉」」、『東京新聞2017年03月27日(月)付。

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覚え書:「人模様 食でイスラム教理解を 八木久美子さん」、『毎日新聞』2016年12月03日(土)付夕刊。

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人模様

食でイスラム教理解を 八木久美子さん

毎日新聞2016年12月3日 東京夕刊

 

八木久美子さん=榊真理子撮影

 

 東京外国語大教授の八木久美子さん(58)=宗教学、写真=が「慈悲深き神の食卓 イスラムを『食』からみる」(東京外国語大学出版会、2592円)で辻静雄食文化賞を受賞した。戒律が厳しい印象を持たれているイスラム教について「実際は義務は余裕のある人に課され、断食にはお祭りの雰囲気もある」と話す。

 研究対象は、人口の9割がイスラム教徒エジプト断食月の「ラマダン」は禁欲的なイメージだが、日没後は家族や友人が集って豪華な食事をとる。月の食費が1・5〜2倍にもなるという。街は華やぎ、小さな遊園地やダンスコーナーもできる。「魂に磨きをかける月で楽しみも多く、一昔前の日本の正月のイメージです」

 イスラム法に基づいた食事ハラール」は、豚肉や酒を禁じることで知られる。「日本でカエルを食べないのと同じ。食べ物のルールは、どの集団にもある」と説明する。異文化を理解するには「まずは自分の文化に目を向けること」と強調する。【榊真理子】

    −−「人模様 食でイスラム教理解を 八木久美子さん」、『毎日新聞2016年12月03日(土)付夕刊。

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2017-04-22

覚え書:「アレッポの7歳、命のツイート 『なぜ殺されるの?』平和がほしい」、『朝日新聞』2016年12月28日(水)付。

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アレッポの7歳、命のツイート 「なぜ殺されるの?」「平和がほしい」

2016年12月28日

写真・図版

バナ・アベドさん(右)と母親のファティマ・シハンさん=26日、アンカラ、メスット・クチュクアルスラン撮影

 シリア内戦でアサド政権側が制圧した北部最大都市アレッポから、激しい空爆などの様子をツイッターで発信してきたシリア人の少女、バナ・アベドさん(7)の一家が26日、避難先のトルコ首都アンカラで、朝日新聞の単独取材に応じた。「シリアには食べ物もなくて、住む場所もなくなった子どもたちがたくさんいます。どうか助けてください」と訴えた。

 バナさんの一家は、父のガッサンさん(37)、母のファティマ・シハンさん(27)、5歳と3歳の弟2人の5人。アレッポ東部の反体制派の支配地域で暮らしてきた。内戦前、ガッサンさんは弁護士で、ファティマさんはアレッポ大学で法律を学んでいたという。ファティマさんは流暢(りゅうちょう)な英語を話し、バナさんも簡単な日常会話は可能だ。

 アレッポは2012年から政権軍と反体制派の戦闘が激しくなり、「最激戦地」と呼ばれてきた。東部は、今夏から政権軍に包囲された。

 最初のツイートは今年9月24日。バナさんの名前でつくったアカウントから「私は平和がほしい」とつぶやいた。激しい空爆の様子や過酷な暮らしについての生々しい投稿は、世界の注目を集めた。バナさんは、人道危機に苦しむアレッポ東部住民の象徴として受け止められ、多くの人が安否を気遣ってきた。

 「トルコに来て、チョコレートイチゴ、オレンジを食べることができて、とてもうれしい。アレッポではチョコも果物も、夏から見たことがありませんでした」とバナさんは話した。

 ■連日連夜の空爆

 ファティマさんらによると、外部から食料などが入ってこなくなった今夏以降、一家食事は多くて1日2回。肉や卵、新鮮な野菜は手に入らず、食事は、ゆでたパスタかコメにトマトペーストを添えただけだったという。戦況の悪化を受け、包囲される前に計50キロを買い込んでいたものに頼っていたという。

 上水道も電気も止まり、燃料もなくなった。携帯電話の充電は、購入した簡易ソーラーパネルを使った。飲料水は井戸水を沸騰させてから飲んだ。倒壊した家屋の木材や家具を燃やして調理に使ったという。

 一番恐ろしかったのは、この夏から連日連夜続いた空爆だという。家族の友人や、バナさんの級友も、次々と命を奪われた。バナさんと弟2人は戦闘機の飛来音におびえ、夜もうなされるようになった。

 政権側は2015年ごろから破壊力の強い地中貫通型爆弾を多数投下しているという。内戦の激化で学校は地下に移されていたが、生き埋めを恐れて、家族は昨年12月から、バナさんを通わせるのをやめていた。

 ツイートのきっかけは母子の会話だったという。

 「お母さん、なぜ私たちは毎日こんな怖い思いをするの? なぜ誰も助けてくれないの?」

 「私たちがどんな暮らしをしているか、きっと世界の人は知らないんだよ」

 ファティマさんは、アレッポ東部の状況を、バナさんとともに世界へ発信しようと思い立ったという。

 ■トルコへ越境

 政権側は今月中旬、アレッポ東部を完全に制圧した。バナさん一家は19日午後から17時間かけて現地を脱出し、反体制派が支配する北西部イドリブ県に逃れた。20日にはトルコ政府の手配でトルコに越境し、アンカラへ移動。21日、大統領宮殿へ招かれ、エルドアン大統領と面会した。

 トルコは270万人以上のシリア難民を受け入れているが、急激な難民流入困惑する欧州の要請もあり、現在は重傷者や重病人を除いて原則として受け入れていない。ファティマさんは「私たち一家は信じられないぐらい幸運でした」と振り返った。そして「アレッポ東部から逃れた住民の多くは、アレッポ郊外やイドリブ県の避難キャンプで暮らしています。家を失い、十分な食べ物はなく、雪の降る寒さに耐えています。どうか手を差し伸べてください」と話した。

 (アンカラ=春日芳晃)

    −−「アレッポの7歳、命のツイート 『なぜ殺されるの?』平和がほしい」、『朝日新聞2016年12月28日(水)付。

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アレッポの7歳、命のツイート 「なぜ殺されるの?」「平和がほしい」:朝日新聞デジタル


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覚え書:「書評:震災があっても続ける 三陸・山田祭を追って 矢野陽子 著」、『東京新聞』2017年03月26日(日)付。

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震災があっても続ける 三陸・山田祭を追って 矢野陽子 著

2017年3月26日

 

◆地域の歴史つくる力

[評者]今石みぎわ=東京文化財研究所研究員

 六年前の東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県山田町、そこに伝わる山田祭の復活の歩みをつづったルポである。現地で取材を続けてきた著者の矢野さんの感性によって引き出された地域の方々の言葉が印象深い。「まつりがなかったらこの町にはいない」「歴史が津波で流されてしまうから芸能がどんどんダイナミックになっていく」「まつりをやることで地域の力を維持してきた」

 人々はまつりや信仰という<非日常>を、震災前から手放さずに大切にしてきた。だからこそ、それが震災後にも大きな拠(よ)り所となった。まつりも神様も震災の死者も抱えこんだ地域の、懐の深さを改めて感じる。

 繰り返し語られる、まつりが変化し続けてきたという事実も印象深い。踊りも囃子(はやし)も演出も、時代に合わせてどんどん変える。古くさい伝統ではなく、「俺(おれ)たちのまつり」にするためだ。

 そのダイナミックさは、津波の凶暴さを無化する力すら持っているように見える。地域は常に変化を続ける。今は「満身創痍(まんしんそうい)」でも、やがてはそれも途切れることない地域の歴史の一ページになるのではないか。そんな逞(たくま)しさを感じる。

 「震災があっても続ける」のはまつりだけではない。その土地で暮らしていくこと、そのものなのだと。

 (はる書房・1620円)

<やの・ようこ> 1968年生まれ。文筆家。著書『注文でつくる』『濁る大河』。

◆もう1冊 

 高倉浩樹ほか編『無形民俗文化財被災するということ』(新泉社)。震災被災地での祭礼や民俗芸能の意味を探る。

    −−「書評震災があっても続ける 三陸・山田祭を追って 矢野陽子 著」、『東京新聞2017年03月26日(日)付。

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震災があっても続ける
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覚え書:「書評:生命(いのち)の詩人・尹東柱(ユンドンジュ) 多胡吉郎 著」、『東京新聞』2017年03月26日(日)付。

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生命(いのち)の詩人尹東柱(ユンドンジュ) 多胡吉郎 著

2017年3月26日

 

獄死の深い意味くむ

[評者]嶋岡晨=詩人

 はや三十余年前になる。韓国の代表的近代詩人尹東柱(一九一七〜四五年)の全詩集『空と風と星と詩』が伊吹郷の訳で、記録社から出版されたのを手にして、われわれは深い感銘を受けた。

 本書は、尹東柱の『自筆詩稿全集』に接した多胡吉郎氏が、その読後の抑えがたい感動から筆をとったものだ。要因には、東柱の「限りある生」の自覚と詩的使命感への熱い共鳴があった。

 一九四三年夏、思想犯として逮捕・投獄され、獄中死にいたるまでの、尹東柱の生涯を−つまりは彼の思想を、詳細かつ執拗(しつよう)なデータ(ノート類や原稿下書きに及ぶ)の精確な確認作業によって検証し、真摯(しんし)に再生したのが本書である。

 尹東柱と親交があった、自称「半韓」詩人の上本正夫(うえもとまさお)への接触から獄死の真相にいたるまで、筆は細部へも柔軟にのびる。著者の告白する、頻繁な電話や図書館通い、また元(もと)稿との入念な対比などの努力と成果は、文章の随所に感知されよう。それらなくして、例えばオリジナル稿にふと記された落書きめいた一語(病院)から「mortal」な生の自覚や使命を読みとり、獄死の深い意味を掴(つか)み取る技(わざ)も、ありえなかった。ふんだんに収録された写真も、じつに興味深い。

 今年は、尹東柱の生誕百年である。長い年月を費やした多胡氏の研究に、そして東柱詩の世界に、注目してほしい。

 (影書房・2052円)

<たご・きちろう> 1956年生まれ。作家。著書『吾輩はロンドンである』など。

◆もう1冊 

 尹東柱詩集『空と風と星と詩』(金時鐘(キムシジョン)編訳・岩波文庫)。戦後出版された表題詩集などから計六十六篇を選んで訳出。

    −−「書評:生命(いのち)の詩人尹東柱(ユンドンジュ) 多胡吉郎 著」、『東京新聞2017年03月26日(日)付。

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覚え書:「書評:マティスとルオー 友情の手紙 ジャクリーヌ・マンク 編」、『東京新聞』2017年03月26日(日)付。

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マティスとルオー 友情の手紙 ジャクリーヌ・マンク 編

2017年3月26日

 

◆作風異なる2人を繋ぐ師

[評者]中村隆夫=美術評論家

 本書は、二〇一三年にスイスフランス語出版されたマティスとルオーの往復書簡集の日本語訳である。

 二人はパリ国立美術学校でのモローの教え子で、その後、マティスフォーヴィスムの色彩画家として活躍し、かたやルオーは独特の重厚な作品で名を残した。絵画的にはまったく異なり、しかもマティスの永遠のライバルで親友としてすぐに脳裏に浮かぶのはピカソである。一体二人にどんな繋(つな)がりがあるのだろうか。

 一九〇六年と翌年の葉書と手紙が冒頭に出てくるが、ほとんどは一九三〇年からマティスの死の前年の一九五三年までの手紙である。ルオーの娘イザベルニューヨークギャラリストとして活躍したマティスの息子ピエール、娘のマルグリットの間で書簡が交わされ、お互いに敬意を抱いた家族ぐるみの穏やかな友情が続いていたことが分かる。本書の最も大きな成果はこの友情の裏付けにある。

 今でこそモローは画家として高い評価を得ているが、戦後になるまでは彼らのよき教師として評価されていた。マティスとルオーが晩年の手紙で、何度も師について回想し、しかもモローの弟子であるという誇りが二人を繋ぎ止める大きな絆であったことが書面からよく理解される。

 第二次大戦中のナチス侵略による不自由な生活、ルオーと画商ヴォラールとの契約による長きにわたる心痛など、この書簡集から得られる情報は多い。また原注が充実していることは、書簡を読み解く助けになるとともに、さまざま情報をも提供してくれるし、索引も充実している。

 私見だが、ルオーにとってセザンヌの影響は大きかったはずである。だがなぜか、これに関してはまったく言及されていないし、二人の制作に踏み込んだ話題は皆無と言ってよい。全体的な印象が表層的で、内容の物足りなさを感じてしまうのは、私の要求が多すぎるせいばかりとは言えないだろう。

 (後藤新治ほか訳、みすず書房・3780円)

<Jacqueline Munck> 現在、パリ市立近代美術館学芸部長。

◆もう1冊 

 『川端康成三島由紀夫 往復書簡』(新潮文庫)。『花ざかりの森』を贈られた川端の礼状から、三島の自決の年までの師弟の対話

    −−「書評マティスとルオー 友情の手紙 ジャクリーヌ・マンク 編」、『東京新聞2017年03月26日(日)付。

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東京新聞:マティスとルオー 友情の手紙 ジャクリーヌ・マンク 編:Chunichi/Tokyo Bookweb(TOKYO Web)


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覚え書:「AV強要、女性「もう消えたい」 支援団体にSOS増加」、『朝日新聞』2016年12月27日(火)付。

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AV強要、女性「もう消えたい」 支援団体にSOS増加

岡田匠2016年12月27日

若草プロジェクトの研修会。村木厚子さん(左から2人目)もグループに加わり、AV被害の支援方法を語り合った=京都市右京区の寂庵

 若い女性がアダルトビデオ(AV)への出演を強要される被害が、あとを絶たない。言葉巧みに誘われて出演の契約書にサインさせられ、断れば違約金を求められ、追い込まれてしまうケースが目立つ。支援団体は「一人で悩まず、すぐに相談を」と呼びかけている。


■寂聴さんら支援へ研修会

 2009年に結成された支援団体ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS〈パップス〉)」に寄せられた相談件数は、14年に36件、15年62件、16年(11月まで)93件と増えている。深刻な相談を伝えたあと、自殺した女性もいるという。なかには、男性の同性愛者向けのビデオに出演を強要された男性の相談もあるという。

 AV被害の実態を調べようと、警察庁は今年、全国の警察に寄せられた相談件数を初めて集計し、11月に公表した。それによると、6月までの2年半で22件にのぼる。

 被害に苦しむ女性を救おうと、若い女性の支援に取り組む「若草プロジェクト」が今月11日、京都市で研修会を開いた。

 プロジェクトの呼びかけ人代表は、僧侶で作家の瀬戸内寂聴さん(94)と元厚生労働事務次官村木厚子さん(60)。各地で活動する支援者ら約50人が参加し、PAPSがAV被害の実例を紹介した。

 都内の大学に通う女性は新宿駅で、モデルのスカウトマンと名乗る男に声をかけられた。話を聞くだけならと、写真スタジオに行くと、学生証のコピーをとられた。水着や上半身裸の姿を撮られ、「人気アイドルも通った道だから」とAV出演の契約書にサインさせられた。

 女性は、いったん家に戻り、3日後に電話をし、撮影を断った。すると、「違約金を払え。親や学校に知られてもいいのか」と脅された。さらに「断るなら事務所に来て」と言われ、行くとその場でレイプされ、撮影された。その後も怖くて抵抗できず、何度もAVに出演させられた。女性は相談に来たとき、「死にたい、苦しい」「もう、消えたい」と訴えていたという。

 村木さんは「AVの被害は驚くほど深刻。児童ポルノを規制する法律はできたが、AV被害の法整備は不十分で、防ぐ手立てを早急に整えなければいけない」と指摘した。

■相談員「オレオレ詐欺に似ている」

 PAPSの相談員、金尻(かなじり)カズナさん(35)によると、若い女性が契約書にサインしてしまうのは、「オレオレ詐欺の被害に似ている」という。巧みな言葉にだまされ、高齢者は金をとられ、若い女性は性を狙われる。いったんサインしてしまえば、AV事業者から「契約したでしょ、仕事」と迫られ、撮影に応じてしまう。

 だが、契約書に有効性があるかは別問題。相談があれば、違約金を払わないという書面を支援団体がAV事業者に送り、契約自体を取り消すこともあるという。

 裁判でも、強引な契約の効力を認めない判断が出ている。出演を拒否した女性に対し、AVプロダクションが「契約違反だ」と2460万円の違約金などを求めて提訴。東京地裁は昨年9月の判決で、「本人の意に反して強要できない性質の仕事だ」として、プロダクション側の請求棄却した。

 契約書のほかに、インターネットに画像や動画が残るという新しい人権侵害も起きている。支援団体は、ネットの事業者に動画や画像の削除を求め、出回っているAVの販売の差し止めにも取り組む。

 金尻さんは「契約書にサインしてしまったからとあきらめるのではなく、支援団体に相談することで被害回復ができる場合が多い。何もしないで孤立して苦しまず、相談にきてほしい」と呼びかける。

 PAPSへの相談は、メール(paps@paps−jp.org)か電話(050・3177・5432)で。

     ◇

 若草プロジェクトはAV被害のほか貧困虐待ネグレクト、DV、薬物依存などの相談もLINEで受け付ける。時間は、月曜と土曜の午後1〜7時、水曜午後5〜7時。詳細は団体ホームページhttp://wakakusa.jp.net/ウインドウで開きます)。(岡田匠)    −−「AV強要、女性「もう消えたい」 支援団体にSOS増加」、『朝日新聞2016年12月27日(火)付。

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AV強要、女性「もう消えたい」 支援団体にSOS増加:朝日新聞デジタル





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2017-04-21

日記:思考欠如(ソートレスネス)−−思慮の足りない不注意、絶望的な混乱、陳腐で空虚になった「諸真理」の自己満足的な繰り返し−−の時代に、「私たちが行っていること」を吟味する意味

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 しかし、それはただ外見においてそう見えるだけである。近代は理論の上でも労働を栄光あるものとし、その結果、社会全体は労働社会へと事実上変貌を遂げた。したがって、おとぎ話の中でかなえられる望みにも似て、労働からの解放という願望が実現される瞬間、この願望の実現そのものが帳消しになってしまう。労働の枷から解放されようとしているのは労働者の社会なのであって、この社会は、そのためにこそ労働からの自由を手にするのに値する労働以上に崇高で有意味な他の活動(アクティビティ)についてはもはやなにも知らないのである。この社会は、平等主義が人びとを共生させる労働の仕方であるゆえに平等主義的であり、その内部には階級もなく、また、人間の他の能力の回復の新しい出発点となりうる政治的あるいは精神的な貴族制もない。大統領や国王や首相でさえ、自分たちの公務を社会の生活に必要な賃仕事(ジョブ)であると考え、知識人の中では、自分たちの行っていることを生計としてではなく、仕事(ワーク)として考えるただ孤独な個人だけが残る。私たちが直面しているのは、労働者に残された唯一の活動力である労働のない労働者の社会という逆説的な見通しなのである。もちろん、これ以上悪い状態はありえないだろう。

 本書は、このような緊急の問題や難問にたいして解答を与えようとするものではない。むしろ、このような解答は、日々与えられている。これは実践的な政治にかんする事柄であり、多数者の同意に属するものである。つまり、この解答をただ一人の人間の理論的考察や意見の中に求めることはできないし、ただ一つの解答しかありえないかのように問題を取り扱ってはならないのである。これから私がやろうとしているのは、私たちの最も新しい経験と最も現代的な不安を背景にして、人間の条件を再検討することである。これは明らかに思考が引き受ける仕事である。ところが思考欠如(ソートレスネス)−−思慮の足りない不注意、絶望的な混乱、陳腐で空虚になった「諸真理」の自己満足的な繰り返し−−こそ、私たちの時代の明白な特徴の一つのように思われる。そこで私が企てているのは大変単純なことである。すなわち、それは私たちが行っていることを考える以上のものではない。

 「私たちが行っていること」こそ、実際、この本の中心的なテーマである。本書は、人間の条件の最も基本的な要素を明確にすること、すなわち、伝統的にも今日の意見によっても、すべての人間存在の範囲内にあるいくつかの活動だけを取り扱う。このため、あるいはその他の理由で、人間がもっている最高の、そしておそらくは最も純粋な活動力、すなわち考えるという活動力は、本書の考察の対象とはしない。したがって、理論上の問題として、本書は、労働(レイバー)、仕事(ワーク)、活動(アクション)にかんする議論に限定され、これが本書の三つの主要な章を形成する。

ハンナアレント(志水速雄訳)『人間の条件ちくま学芸文庫、1994年、14ー16頁。

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覚え書:「売れてる本 アンダーアース・アンダーウォーター 地中・水中図絵 [作・絵]アレクサンドラ・ミジェリンスカ&ダニエル・ミジェリンスキ」、『朝日新聞』2017年04月02日(日)付。

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売れてる本 アンダーアース・アンダーウォーター 地中・水中図絵 [作・絵]アレクサンドラ・ミジェリンスカ&ダニエル・ミジェリンスキ

2017年04月02日

■絵本で広がる地球への好奇心

 子どもの頃、原っぱにある大きな石を見つけてはひっくり返していた。その湿った土を少し掘ると、見たことのない世界が広がっていた。ダンゴムシやミミズだけではなく、名も知らぬ生き物が蠢(うごめ)いていた。掘ると何かいる、との確信があったのだ。

 世界42カ国を精緻(せいち)なイラストで紹介した『マップス 新・世界図絵』が全世界で300万部を超えるヒットを記録した、ポーランド絵本作家夫妻による新刊は、地面の下を掘った世界と、水の中へ潜った世界の広がりを描いた大型絵本だ。本の表と裏の双方から読み進めることができ、赤い表紙からは地中の世界、青い表紙からは水中の世界が連なる。それらがぶつかる真ん中のページには「地球の中心」の図解。見事な設計だ。

 「地中」からめくってみる。世界一深いところまでのびた木の根は、カラハリ砂漠井戸を掘っているときに見つかった68メートル。ウクライナキエフの人たちは地下鉄に乗るために建物38階分以上の深さまでエスカレーターで下りる。確認されているなかで最も深いクルーベラ洞窟では、深さ2キロ近くでトビムシ一種を発見、暗闇の中で生きているために目がなく、菌類等を食べていたという。

 「水中」をめくる。1715年、英国人のジョン・レスブリッジは樽(たる)の形をした潜水服で難破船から貴重品を引き上げ、財を築いた。海の上に立つ巨大なプラットホームはどのように固定されているのか。60メートルにもなる海底の煙突(チムニー)に集まってくる生き物とは……。

 著者の2人は何も知らない状態から一つ一つ調べ上げ、3年かけてこの本を完成させた。2人は「ぼくたちの仕事は、子どもたちの好奇心を刺激すること」と語る。検索すればひとまず答えが出る現在だが、その答えの近くで起きていることを教えてはくれない。当然のことだが、モグラの穴と水道管は同じ地中にある。大きな石の裏から海底まで、呼吸する地球への好奇心を豊かに広げてくれる。

    ◇

 徳間書店・3456円=2刷5万部

16年12月刊行。重さ1・5キロで渋い色使い。「『マップス』の読者に加え、理系の内容にひかれる人も新たな読み手になっている」と担当編集者。

    −−「売れてる本 アンダーアース・アンダーウォーター 地中・水中図絵 [作・絵]アレクサンドラ・ミジェリンスカ&ダニエル・ミジェリンスキ」、『朝日新聞2017年04月02日(日)付。

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アンダーアース・アンダーウォーター: 地中・水中図絵 (児童書)
アレクサンドラ ミジェリンスカ ダニエル ミジェリンスキ
徳間書店
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覚え書:「売れてる本 売れてる本 一九八四年[新訳版] [著]ジョージ・オーウェル [訳]高橋和久」、『朝日新聞』2017年04月09日(日)付。

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売れてる本 一九八四年[新訳版] [著]ジョージ・オーウェル [訳]高橋和

 

2017年04月09日

■絶望が誘う「二重思考」の社会

 

 「売れた」ことと社会的事象の健全な因果関係がこれほど明確な本も珍しい。1949年に近未来ディストピア小説として発表された『一九八四年』は、ある時期には反共象徴として、またある時期にはファシズムへの批判として大きな反響を呼び、70年近く読み継がれてきた。そして今回は、トランプ政権の顧問が就任式動員数を巡って発した「もう一つの事実(オルタナティヴファクト)」なる語を契機に読まれたわけだ。

 作品は、全知全能な「ビッグ・ブラザー」の管理支配下の世界と人間を描く。そこでは反社会的な思考はもとより、自由な恋愛も、個人の日記すらもが犯罪である。なぜなら、支配に不都合な存在や事実はあらゆる記録から抹消され書き換えられて「なかったこと」になるからだ。そんな社会では、矛盾する二つの事柄を同時に信じるための「二重思考(ダブルシンク)」が強いられる。2+2は4だが、党が5だと言えばそう思える−−そんな荒唐無稽な状況を主人公は生きている。

 日記や恋愛や事実を武器に社会に微(かす)かな反抗を試みる者に訪れる過酷な宿命の確認は読者にお任せするし、現実世界の顧問の発言や報道官の虚偽の空々しさも今さら評するまでもない。彼らに権力を与える社会システムと支持構造への危機感が『一九八四年』を人々に読ませたことも明らかだ。

 だが、読んで現実のディストピア化をただ愁えたり、著者の先見と批判力に留飲を下げるだけでは意味がない。一貫性と責任意識の薄らいだ「二重思考」こそ、ネットが人々を無限に結びつけた結果、今世紀の社会に現実に訪れたものであり(主体の分裂を奨励する言説すらある)、トランプの勝利もその帰結の一つでしかない。それは対岸の火事ではないのだ。

 より危険な誘惑は、そうした現実への絶望がAIをはじめとする「真の(最善の)ビッグ・ブラザー」への期待に至ってしまう未来にこそある。その予兆に、何度目かの“『一九八四年』ブーム”は自ら気づくだろうか?

 市川真人(批評家・早稲田大学准教授

    ◇

 ハヤカワepi文庫・929円=34刷22万8千部

09年7月刊行。20代の購入が目立つといい、担当編集者は「若者は、古典というより現在の話ととらえて読んでいるようです」。

    −−「売れてる本 売れてる本 一九八四年[新訳版] [著]ジョージ・オーウェル [訳]高橋和久」、『朝日新聞2017年04月09日(日)付。

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覚え書:「著者に会いたい 日本の近代とは何であったか―問題史的考察 三谷太一郎さん」、『朝日新聞』2017年04月09日(日)付。

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著者に会いたい 日本の近代とは何であったか―問題史的考察 三谷太一郎さん

2017年04月09日

三谷太一郎さん=山本和生撮影

■現在を歴史に位置づける総論 三谷太一郎さん(80歳)

 「自分のこれまでの各論的研究を土台にして、日本近代についてできるだけコンパクトで、わかりやすい総論を目指しました」

 ヨーロッパ近代をモデルとした日本で、政党政治資本主義植民地帝国・天皇制は、なぜ作られたのか。政治史家がこれらの問題に正面から取り組み、歴史に現在はどう位置づけられるか考えた。

 政党政治はなぜ生まれたか。幕藩体制の合議制や月番制が、明治憲法下の議会制と権力分立制につながり、藩閥政治から政党政治が作られた。東アジアでは例外的な複数政党制が成立するが、軍部などの専門家支配によって崩壊した。今後は「政権とその周辺の新しい専門家支配にどう対抗するかが問われている」という。

 ヨーロッパキリスト教にあたる「国家の機軸」は、日本近代では天皇に求められた。が、憲法に拘束される「立憲君主」の天皇が臣民の「精神的支配者」になっていいのか。明治憲法教育勅語の起草に関わった法制局長官・井上毅(こわし)が悩んだのは、この点だった。

 1890(明治23)年に発せられた教育勅語には、天皇署名のあとに、内閣総理大臣以下の国務大臣の責任を示す署名(副署)がない。異例の形だ。「井上は、この勅語は政治上の命令とは異なる『天皇著作』だ、という驚くべきフィクションを作り上げた」

 こうして教育勅語は、憲法に縛られない「神聖不可侵」な天皇による、絶対的な規範となった。

 「この形式こそ問題なのです。明治憲法と現行憲法では、天皇と国民の位置づけが全く違います。でも、天皇は自らの意思を直接伝えることができるのか、天皇の言葉に伴う責任は誰が負うのかは、今も直面する問題です」

 振り返ると、日本は一国近代化路線だった。「第1次大戦後、軍縮条約に基づく多国間協調を志向したワシントン体制を、日本は教訓とすべきではないでしょうか」

 10年前、大きな手術を受けた。夏目漱石が病後に書いた『思ひ出す事など』を読み、触発された。

 「生きるとは奇跡ですね。これを最後にしたくないので(笑)、奇跡を頼んで、次は15年戦争下の日本軍隊を書く予定です」

    ◇

 岩波新書・950円

    −−「著者に会いたい 日本の近代とは何であったか―問題史的考察 三谷太一郎さん」、『朝日新聞2017年04月09日(日)付。

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覚え書:「真珠湾攻撃、そのとき日本は 泥沼の日中戦、対米開戦に賭け」、『朝日新聞』2016年12月26日(月)付。

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真珠湾攻撃、そのとき日本は 泥沼の日中戦、対米開戦に賭け

2016年12月26日

日米開戦への道

 

 太平洋戦争の開戦を象徴するハワイ真珠湾を、27日、日米両首脳が初めてそろって訪れる。真珠湾攻撃は、日本にとっては、泥沼化した日中戦争を打開する賭けであり、米国にとっては、国民心理を激変させた「だまし討ち」だった。なぜ日米は戦争に突入したのか。真珠湾はその後の世界をどう変えたのか。幾層にも重なる歴史を読みとく。

 中国からの撤兵要求にどう対処するか。日米対立の根本には、日本の中国侵略があった。

 戦争回避のための日米交渉が続く1941年10月14日午前、首相近衛文麿は、主戦論者の陸相東条英機官邸に呼んだ。

 近衛「支那事変日中戦争)に決着がついていない今日、さらに前途の見通しのつかない大戦争に入ることは何としても同意し難い。この際、中国から撤兵する形をつくって日米戦争の危機を救うべきだ」

 東条「到底同意できない」「これは性格の相違ですなあ」(近衛「平和への努力」=要旨)

 続く閣議でも東条は力説した。

 「撤兵問題は心臓だ。……米国の主張にそのまま服したら支那事変の成果を壊滅するものだ。満州国をも危(あやう)くする、さらに朝鮮統治も危くなる」(稲葉正夫ほか編「太平洋戦争への道 別巻」)

 東条は近衛の説得をはねつけた。近衛内閣総辞職し、東条が組閣した。

 31年に満州事変を起こした日本は翌年、傀儡(かいらい)国家「満州国」を建国。37年の北京郊外、盧溝橋での武力衝突をきっかけに中国との全面戦争に突入した。

 このとき、首相だった近衛は、戦争の拡大を食い止めることに失敗していた。

 中国との戦争は、中国側の抵抗でやがて行き詰まる。日本は、資源獲得のため、英国オランダ植民地をもつ東南アジアへの進出を国策にすえた。

 41年7月、日本軍は、南進の足がかりとして仏領インドシナ南部(現在のベトナム南部)に進駐。米国ただちに日本への石油輸出を全面禁止した。

 対米交渉で日本は中国からの撤兵を決断できなかった。中国との戦争継続には東南アジアの石油が必要だった。石油の備蓄があるうちに米英と開戦すべきだとの声が高まった。

 11月5日、米英オランダとの戦争を決意し、12月初めの武力発動に向けて準備する、という方針が御前会議で決まった。

 11月26日、米国務長官ハルは日本側に覚書(ハル・ノート)を手渡した。それは中国インドシナからの一切の兵力、警察力の撤収を改めて求めていた。

 同日、択捉(えとろふ)島単冠(ひとかっぷ)湾に集結する日本海軍機動部隊真珠湾に向け出港した。

 ■短期戦へ奇襲、士気そぐ狙い

 ハワイオアフ島、12月7日(現地時間)。穏やかな日曜日の朝の空に突然、日本海軍機動部隊戦闘機などが現れた。同島の真珠湾に迫った第1次攻撃隊長の淵田美津雄は、突撃指示後も米側からの攻撃がないため、「奇襲に成功」を意味する暗号電文「トラトラトラ」を発した。各機が同湾に停泊中の米太平洋艦隊艦船などに襲いかかった。

 いつも通り、軍旗の掲揚や朝食の支度を進めていた米軍の将兵たち。日本軍機の機影を味方機と思った者もいたが、艦船などが次々に襲われ、「これは演習ではない」と大混乱に陥った。

 対米戦で日本海軍は、日本近海で艦隊を迎え撃つ作戦を考えていた。だが、連合艦隊司令長官山本五十六は、日米の生産力の差や石油などの資源確保の難しさから、米艦隊が攻めてくるのを待つ長期戦を戦うのは厳しいと見ていた。近衛文麿米国と戦争になった場合の見通しについて「是非やれといはれれば初め半年か一年の間は随分暴れて御覧(ごらん)に入れる。然(しかし)ながら二年三年となれば全く確信は持てぬ」と言っていた(近衛「平和への努力」)。

 そこで山本が考えたのがハワイの米太平洋艦隊への奇襲だった。航空機を活用して開戦直後に米艦隊主力を徹底的にたたき、米軍米国民の士気をそいで有利に戦争を進めようとした。

 奇襲攻撃にあたって山本は、「開戦通告」が攻撃前に米側に届くかどうかを気にしたという。しかし、予定では攻撃30分前には通告するはずだったが、在米日本大使館が日本からの暗号を解読して通告したのは、真珠湾への攻撃開始から約1時間後だった。

 日本軍の奇襲で、米側は戦艦アリゾナなど21隻が沈没や大破するなどし、将兵のほか民間人も含めて約2400人が亡くなった。

 奇襲攻撃成功の報に日本中がわいた。漫談や「ラジオ小説」で活躍していた徳川夢声は「日本海軍は魔法を使ったとしか思えない」と日記に記した(「夢声戦争日記」)。日本軍真珠湾攻撃の約1時間前には英領のマレー半島陸軍が上陸作戦を実施した。

 ただ、山本が狙ったように米国民の士気をそぐことはできなかった。日本生まれで、戦後に駐日米国大使を務めたライシャワーは著書で、「日本はアメリカ人の心理を読みちがえるという大ヘマをおかしたのではないか、と思いました」と振り返っている(「日本への自叙伝」)。

 ■米「だまし討ち」戦意に火

 「昨日12月7日は、不名誉の日として歴史に長く記憶されるだろう」

 ルーズベルト米大統領は、一夜明けた米東部時間8日、連邦議会で開戦教書演説を行った。「不名誉の日」という表現は、演説の推敲(すいこう)段階で大統領自身が付け加えた。

 卑劣なだまし討ち。それが、米国人が受けたイメージだった。欧州の戦争へ巻き込まれることを恐れていた米国孤立主義は、一瞬で消え去ってしまった。

 戦争中、「真珠湾を忘れるな(リメンバー・パールハーバー)」は米国民を戦争遂行に動員するスローガンとなった。「日本本土が焼夷(しょうい)弾、原爆によって焦土となり、ようやくそのスローガンはやんだのである」(歴史家のジョン・ダワー「戦争の文化」)。

 第2次世界大戦中から、米国では真珠湾攻撃をなぜ防げなかったかが、大きな問題となった。46年までに行政府立法府により幾度も調査が行われた。ルーズベルト政権の怠慢も糾弾されたが、今日では、端緒となる断片情報をつかみながらも、全体を総合して判断できなかった情報活動の弱さが大きな原因だったと指摘されている。

 真珠湾のショックは根深かった。広島長崎への原爆投下直後には、原爆真珠湾への報復だと位置づけられた。冷戦時代になると、「真珠湾を忘れるな」は「奇襲に備えろ」を意味する政治シンボルとして、軍備拡大に利用された。真珠湾は、1回の歴史的事象にとどまらなかった。

 ひとつの転機が訪れた。冷戦終結後の91年12月、真珠湾50周年式典で、ブッシュ大統領(父)は「もう罪のなすり合いをすべき時ではない。第2次大戦は終わった。すでに歴史だ」と和解を呼びかけた。日本も外相談話で「我が国の過去の行為に対し深く反省します」と表明した。真珠湾攻撃は過去になったかと思われた。

 2001年9月、ハイジャックされた旅客機が米国の中枢を襲った。同時多発テロである。翌日、米紙の多くが1面見出しで「不名誉の日」と打った。ブッシュ大統領(息子)は、テロを「21世紀の真珠湾」と位置づけた。テロ犯による旅客機を使った攻撃はカミカゼと呼ばれた。日米戦争を想起させるイメージが米メディアにあふれ、人々の怒りをかき立てた。戦火はイラク戦争へと続いた。

 米国にとって真珠湾とは、現代でもなおうずく、深いトラウマなのだ。

 ◇文中は敬称略。上丸洋一、藤井裕介、藤原秀人、三浦俊章が担当しました。

    −−「真珠湾攻撃、そのとき日本は 泥沼の日中戦、対米開戦に賭け」、『朝日新聞2016年12月26日(月)付。

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真珠湾攻撃、そのとき日本は 泥沼の日中戦、対米開戦に賭け:朝日新聞デジタル





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覚え書:「社説余滴 「逃げるな消さう」重い過去 加戸靖史」、『朝日新聞』2016年12月23日(金)付。

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社説余滴 「逃げるな消さう」重い過去 加戸靖史

2016年12月23日

社会社説担当・加戸靖史  

 「最後まで頑張れ」

 「持場(もちば)は死守しよう」

 「逃げるな消さう」

 ため息が出た。1945年3〜4月の朝日新聞の見出しだ。大阪弁護士、大前治(おおまえおさむ)さん(46)が先月出した「『逃げるな、火を消せ!』戦時下トンデモ『防空法』」(合同出版)で紹介されている。

 大戦末期のこの時期、3月10日の東京を皮切りに、名古屋大阪神戸が次々と米軍機の大空襲に見舞われた。

 だが当時の新聞に惨状の報道はほとんどない。目立つのは、消火に努めよとの呼びかけだ。猛火に立ち向かって死んだという「美談」も多い。

 37年制定の防空法が背景にあった。米国との開戦直前の41年11月に改正され、「退去の禁止」と「応急防火の義務」が国民に課せられた。

 「国民は国土防衛戦士であることを自覚し」「国家と運命を共にする決意で一死奉公すること」。朝日新聞社が翌年発行した「防空法解説」はこう筆を振るっている。

 大前さんは、大阪空襲被災者らが国を相手に08年に起こした訴訟弁護団で、防空法の問題を掘り下げてきた。

 国は戦後、「国民は戦争被害を受忍しなければならない」という「受忍論」をたてに、空襲被害の補償を拒んできた。「命を投げ出して国を守れ」という国策が多くの人を死なせたのに。大前さんの詳細な検証からは、受忍論の理不尽さが浮かび上がる。

 国民を死に追いやりながら、責任を取ろうとしない国は明らかにおかしいと思う。

 では、国が言うがまま「死ぬまで頑張れ」と書き続けたメディアはどうだったか。

 私は今まで、自分が属する社が何を書いてきたか、聞いたことも、考えたこともなかった。そのこと自体、いたたまれない思いにかられる。

 大前さんは、新聞・雑誌記事を中心に200点超の図版を本に盛り込んだ。見出しを追うと、法改正などのたびに時代の空気が少しずつ変わり、「逃げるな、火を消せ」がもはや異常でなくなっていった流れがよくわかる。

 特定秘密保護法安保法制と、戦後政治の転換が続く現代と重なる部分はないか、と大前さんは問いかける。「先々を読み、『今の空気』に違和感を持つために、過去の教訓をよく知ってほしい」

 「今」への違和感を忘れず、「この流れでよいか」を常に問い直す。かつて時代に流されてしまったメディアの一員として、肝に銘じたい。

 (かどやすふみ 社会社説担当)

    ーー「社説余滴 「逃げるな消さう」重い過去 加戸靖史」、『朝日新聞2016年12月23日(金)付。

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(社説余滴)「逃げるな消さう」重い過去 加戸靖史:朝日新聞デジタル


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覚え書:「文庫この新刊! 池澤春菜が薦める文庫この新刊! 池澤春菜が薦める文庫この新刊!」、『朝日新聞』2017年04月09日(日)付。

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文庫この新刊!> 池澤春菜が薦める文庫この新刊!

池澤春菜が薦める文庫この新刊!

2017年04月09日

 (1)『風の名前1』 パトリック・ロスファス著 山形浩生ほか訳 ハヤカワ文庫 886円

 (2)『マイルズの旅路』 L・M・ビジョルド著 小木曽絢子訳 創元SF文庫 1404円

 (3)『天体嗜好症 一千一秒物語』 稲垣足穂著 河出文庫 1296円

    ◇

 今月は長い物語の終わりと始まり、そして時を超えて愛される物語を。

 (1)は話題沸騰のファンタジー長編の第1巻。一気呵成(いっきかせい)に読み終えてはたと気づいたのだが、1巻の時点ではほぼ宿屋の亭主が生い立ちを語っているだけだ。なのにこれだけ読ませてしまう筆のうまさ!今後どれだけ面白くなることか。読み始めるなら、今!

 (2)は現時点で16巻から生(な)るヴォルコシガン・サガのクライマックス。なので未読の方は第1巻『戦士志願』から読んで欲しい、と言う甚だ横紙破りな書評になってしまうが、このシリーズにはそれだけの価値がある。障害を持って生まれ、口八丁で宇宙を股にかけ飛び回るマイルズの冒険をぜひ。

 (3)は全ての文、全ての言葉が美しいタルホ文学の精髄。揺るぎない美学に裏打ちされた、唯一無二の世界は月光から醸造した酒のように私たちを酔わせる。ただし相当強いので、一気読みせず、一日一編ずつ嘗(な)めるように読むことをお勧めします。

    −−「文庫この新刊! 池澤春菜が薦める文庫この新刊! 池澤春菜が薦める文庫この新刊!」、『朝日新聞2017年04月09日(日)付。

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覚え書:「売れてる本 老いへの「ケジメ」 [著]斎藤茂太」、『朝日新聞』2017年03月19日(日)付。

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売れてる本 老いへの「ケジメ」 [著]斎藤茂太

老いへの「ケジメ」 [著]斎藤茂太

2017年03月19日

■晩年の「お手本」を求めて

 高齢者に向けて、老後の生き方を指南する本が目立つようになった。本書もそのひとつで、2006年に逝去した著名な精神科医の生前の本をまとめ直したものである。すっきりと気持ちよく過ごすためには、先手を打って心身をともに整理していくことが必要だと著者は説く。大晦日(おおみそか)にあわてて大掃除をするのでは間に合わないかもしれないから、ふだんから部屋の中をきちんと片づけておこうという。不要な家財道具は捨てて、家族に遺(のこ)す財産もほどほどに、形見分けは生きているうちに、気になる人にはさりげなくあいさつを、といったごく真っ当な論が展開されている。

 こうした本が多く読まれるようになったのは、必ずしも高齢者が増えたからばかりではないだろう。背景には、「老後」のありかたの時代変化がある。昭和のころは、人は正社員として企業で働き、定年退職し、退職金年金で老後の生計を立て、子や孫に囲まれて安楽な日々を送るというのが理想だった。加えて年長者の経験や意見は、社会の中でそれなりに尊重されていた。

 ところが近代の終焉(しゅうえん)と高齢化社会の訪れというダブルパンチで、高齢者の古い経験は以前ほど敬われなくなり、高齢者の数も激増した。「老後」は幸せな晩年ではなく、不安で不透明な未来へとイメージを変えつつある。そういう状況では、どのように人は老いて成熟すれば良いのかが明確ではなくなってしまう。「老後」の良きロールモデルが喪(うしな)われたのだ。だから高齢者は、手本を求めて生き方指南本に手を伸ばす。

 これは社会人の良きお手本が身近な場所で見つけにくくなった結果、若者やビジネスマンの間で自己啓発本が読まれるようになったのと、きわめて似た現象だと言える。実際、本書の身辺整理の哲学はこの分野で人気の「そうじ」ものやミニマリスト本に通じるものがある。老いも若きも、自己啓発の時代なのだ。

    ◇

 新講社ワイド新書・1080円=13刷12万部

15年6月刊。97年の元本を11年に改題・再編集し、それをさらに改題・再編集したのが本書。毎日のように読者から熱い感想が届くという。

    −−「売れてる本 老いへの「ケジメ」 [著]斎藤茂太」、『朝日新聞2017年03月19日(日)付。

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コラム別に読む : 老いへの「ケジメ」 [著]斎藤茂太 - 佐々木俊尚(ジャーナリスト) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト








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覚え書:「売れてる本 タテ社会の人間関係 [著]中根千枝」、『朝日新聞』2017年03月26日(日)付。

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売れてる本 タテ社会の人間関係 [著]中根千枝

タテ社会の人間関係 [著]中根千枝

2017年03月26日

■アイデアが明快、応用もきく

 半世紀にわたり本書が読まれ続けている理由はなにか。

 第一に、学問の裏付けがしっかりしていること。著者はイギリスに留学して社会人類学を学び、それを踏まえて日本社会を考察した。カギは社会構造。狭くは親族構造(血縁集団のつくり方)を指すが、それを企業組織の解明に応用している。

 第二に、比較方法論を用いていること。社会構造は変化しにくい。西欧やインド中国と比べて、日本社会の特徴を取り出す。その分析は刊行から五〇年後も少しも古びていない。

 第三に、体系的であること。シンプルな前提(「場」を共有する)から始め、企業組織のリーダー像やマネジメントのあり方まで、首尾一貫した議論演繹(えんえき)する。モデルにもとづいて現象説明する、科学的分析のお手本のようなやり方だ。

 第四に、イデオロギーと無縁なこと。戦後の社会科学は、マルクス主義の影響が強かった。本書は逆に、左翼労働運動にもタテ社会の法則があてはまりますよ、とやりこめている。

 第五に、高度成長の時代にぴったりだったこと。企業は拡大し続け、マネジメントが大事になった。欧米の輸入でなしに日本で生まれた分析ツールなのがよい、とみんな思った。

 本書は英訳されてペンギンブックスに入り、日本理解の定番となった。村上泰亮他『文明としてのイエ社会』や山本七平小室直樹日本教社会学』も続いたが、本書をしのぐベストセラーはまだ現れていない。

 だが、本書には限界もある。まず、社会構造を永遠不変と考えている点。社会人類学の定石だが、戦後にようやく一般化した終身雇用を、大昔からとみなすのは困る。議論の運びに印象論が多く裏付けに乏しい。タテ社会の概念があいまいで、カースト制の逆なのか西欧のルール社会の逆なのかも不明だ。

 とは言え本書の魅力は、アイデアが明快で、切れ味が鋭く、応用がきくこと。刺激に満ち、愛され続けるのも当然だ。

    ◇

 講談社現代新書・756円=128刷117万部

67年2月刊行。今も毎年着実に売れるロングセラー本。「中央公論」64年5月号の論文日本的社会構造の発見」がもとになっている。

    −−「売れてる本 タテ社会の人間関係 [著]中根千枝」、『朝日新聞2017年03月26日(日)付。

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コラム別に読む : タテ社会の人間関係 [著]中根千枝 - 橋爪大三郎(社会学者) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト


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覚え書:「分断世界 孤立の末に、弱者排斥 相模原とノルウェーの事件、根底に「挫折」」、『朝日新聞』2016年12月25日(日)付。

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分断世界 孤立の末に、弱者排斥 相模原ノルウェーの事件、根底に「挫折」

2016年12月25日

イラスト・上村伸也   

 今年7月、平成に入って最悪の殺人事件が起きた。19人が死亡、27人が重軽傷を負った相模原障害者施設殺傷事件。弱者を排斥し、社会を自らの思いのままに「浄化」したい——。孤立した若者の「心の闇」から生じる凶悪事件は5年前、北欧ノルウェーでも起きていた。独善的な思想を阻むどころか、そこから力を得て、さらにあおり立てようとする指導者が誕生する時代に、私たちはどう向き合うべきか。

 ■強い自己正当化、命に優劣

 相模原市緑区の山あいにある障害者施設「津久井やまゆり園」。献花台には、今も花が絶えない。

 5カ月前の7月26日未明、ここで起きた凶行は瞬く間に世界に伝わった。

 元職員の植松聖(さとし)容疑者(26)による障害者を狙った殺傷事件。現場には、多くの外国メディアの記者も詰めかけた。世界で相次ぐ「テロの波」が日本にも及んだのでは、との思いが広がっていた。イスラム過激派との関連がないと分かると関心はしぼんだ。

 だが日本から8千キロ以上離れた北欧ノルウェーに、事件に強い関心を抱いた社会学者がいた。オスロ大学のトーマス・ハイランドエリクセン教授(54)だ。

 「2人の男には、多くの共通点がある。自らにとって『不健康な要素』を取り除き、社会を『純化』したいという意図を感じる」

 教授が植松容疑者との共通点を見いだした男。2011年7月22日、ノルウェーで77人を殺害したアンネシュ・ブレイビク受刑者(37)だ。

 首都オスロ国会議事堂周辺で自動車爆弾によって8人を殺害。さらに郊外の島で銃を乱射し、与党労働党の集会の参加者69人を射殺した。ネットに反イスラム的な投稿を続けた末に、狙ったのは移民受け入れに寛容な人々だった。「欧州イスラムの支配から救う」と自らの犯行を正当化した。禁錮21年の判決を受けて収監されている。

 2人の共通点は、挫折と孤立だ。

 ブレイビク受刑者は両親の離婚で外交官の父と離別。高級住宅街に住み、王族も通う名門小学校へ通ったが、大学には行かず、正規雇用にも就かなかったという。

 植松容疑者は「父親のように教師になりたい」と語り、教育実習もした。だが結局、教員採用試験は受けなかった。「頭が悪いから、教員はあきらめた」と話したという。

 表向き好青年で過激派集団にも属さない。そんな2人が行き着いたのが、命に優劣をつけ、「劣等」とみなした者や、その人たちを受け入れた者の殺害すら辞さない犯行だった。

 ネオナチサイトに参加していたブレイビク受刑者。「ヒトラーの思想が降りてきた」と語った植松容疑者。犯行を自らの使命ととらえ、周到に準備した点も似通っている。

 植松容疑者は犯行の約5カ月前、東京永田町衆院議長公邸に「障害者470名を抹殺することができます」と記した手紙を持参した。ブレイビク受刑者は1500ページを超す犯行声明文をネットに投稿した。

 そこには強い自己正当化と、自己顕示欲が見える。

 ■差別あおる指導者に喝采

 「ヘイル トランプ(トランプ万歳)!」。演台の男性がマイクで叫ぶと、出席者が叫んだ。「ジーク ヘイル(勝利万歳)!」

 独裁者ヒトラーをたたえるように、右手を高々と挙げる者もいる。ドナルド・トランプ氏が勝利した11月の米大統領選後、白人至上主義グループ「アルトライト」が首都ワシントンで開いた会合だ。

 「我々は社会から認められた」。演台にいた代表のリチャード・スペンサー氏は高揚感を隠さなかった。約200人の参加者から一斉に拍手が湧いた。ほぼ全てが白人の若い男性だ。

 人種や性的な少数者、女性への差別意識を隠さない集団。従来の保守とは一線を画し、日本では「オルタナ右翼」とも称される。

 「我々は社会に疎んじられる傍流ではなく、まさに主流派になった。トランプ氏は運動を勇気づけた」。スペンサー氏は米アトランティック誌に語った。同誌は「アルトライトはトランプ氏の勝利を、白人国家の最初の一歩と考えている」と分析した。スペンサー氏は、国政進出を検討していることも表明している。

 アルトライトだけではない。大統領選以降、ヘイト事件が米国内で急増している。南部貧困法律センターによると、大統領選後のわずか10日間で867件の嫌がらせや脅迫が報告された。対象は移民や黒人、性的少数者だ。

 「アメリカを再び白人のものに」という言葉とナチスのカギ十字の落書きが、ニューヨーク州で見つかった。コロラド州では、12歳の黒人少女が「トランプが大統領になった今、おまえとすべての黒人を銃撃する」と脅された。テキサス州ダラスでは、ヒスパニック系男性が「メキシコに帰れ」と白人の高齢者に罵倒された。カリフォルニア州サンノゼでは、イスラム教徒の女性が背後からスカーフをつかまれたため、首が絞まって転倒した。

 イスラム教徒移民侮蔑し、女性差別の言葉をまき散らす。そんな人物が来年1月、世界で最も影響力のある国家の指導者となる。

 ■「心の闇」、社会の中から

 弱者への差別意識が、なぜ凶悪犯罪へと至るのか。

 無差別殺人・殺人未遂事件を研究し、容疑者らとの面談を重ねてきた独ギーセン大学のブリッタ・バンネンベルク教授は、容疑者の「心の闇」を見つめる。

 他者と深く関係を築けず、一方で極端な被害妄想や自己陶酔を抱く人たち。「自分が受け入れられないのは、社会が悪いからだ」という思いがネット上の優生思想や、過激派組織「イスラム国」(IS)などの論理と共鳴する。

 他者と異なる自らを、正当化してくれるからだ。

 では社会は、事件にどう向き合うべきなのか。

 ノルウェーは国を挙げて犠牲者を追悼し、首相が「さらに寛容な社会をつくる」と宣言した。事件の生存者の中には「テロを機に監視社会ができたら、彼の思うつぼだ。そうさせないのが、生き残った僕らの役割だ」と地方議会選に出馬した人もいた。

 一方、相模原の事件では、容疑者の異常性が注目を浴びる一方、措置入院のあり方や、障害者施設の防犯の対策が優先された。

 オスロ大学のエリクセン教授は、警鐘を鳴らす。

 「植松容疑者の『障害者には生きる価値がない』との考えは、欧州イスラム教徒少数民族に対する根強い差別的な見方と酷似している。単なる個人の犯行と片付けず、こういう思想を生む社会の背景に目を向けていく必要がある」

 ブレイビク受刑者の幼なじみの公共放送記者は事件後に言った。「彼が狂っていたとは思わない。社会の産物で、私たちの一人だ」

 植松容疑者には、差別思想をいさめる友人がいた。

 今年1月末。友人の男性は電話で、「障害者はいらないから殺したいけど、政府が許可してくれない」と相談を受けた。男性が否定すると、植松容疑者はムキになり、障害者の「抹殺」をほのめかす文章を音読した。その後、衆院議長公邸に持参することになる手紙の内容だった。「聞きたくない」と突き放した男性に、植松容疑者は事件直前の7月、「最近友達が少ないんだよね」とぼやいた。

 植松容疑者は、刑事責任能力を見極めるため、来年1月23日までの予定で鑑定留置に入っている。和光大学名誉教授の最首悟(さいしゅさとる)さん(80)は、精神異常者でも快楽殺人者でもなく、「今の社会にとって、『正しいことをした』と思っているはずだ」と話す。

 横浜市内で、ダウン症で重度の複合障害がある三女の星子さん(40)と暮らす最首さん。植松容疑者を「個人になり損ねた孤人」だと評する。

 「社会との絆を失った『孤人』のよりどころは、国家へ向かう。国家や社会の『敵』を倒すことで、英雄になろうとするんです」

 弱者を「国家や社会の敵」とみなす空気。私たちの周りに漂っていないか。

 やまゆり園には、今も60人の障害者が暮らす。献花台は、月命日の12月26日を区切りとして撤去される。

 (照屋健、伊東和貴、ミュンヘン=高野弦、ニューヨーク=真鍋弘樹)

 ◇世界で同時進行する「分断」の現場を訪ね、点と点を結んで問題の根源を探ります。随時掲載します。

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(分断世界)孤立の末に、弱者排斥 相模原ノルウェーの事件、根底に「挫折」

    −−「分断世界 孤立の末に、弱者排斥 相模原ノルウェーの事件、根底に「挫折」」、『朝日新聞2016年12月25日(日)付。

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(分断世界)孤立の末に、弱者排斥 相模原とノルウェーの事件、根底に「挫折」:朝日新聞デジタル





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