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Essais d’herméneutique このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2050-11-18

はじめに……

アカデミズム底辺で生きる流しのヘタレ神学研究者氏家法雄による神學、宗教學、倫理學、哲學の噺とか、人の生と世の中を解釈する。思想と現実の対話。

2010年11月25日より「はてな」に雑文を移項いたしますので、今後ともどうぞ宜しくお願いします。

ついでですのでひとつ。

絶賛求職ちう。

過去(2007年8月28日〜2010年11月24日)の雑文は以下のURLより閲覧できます。

引っ越しがうまくいけばこちらへ完全移行の予定。

当分はココログと併用いたします。

Essais d’herméneutique

氏家法雄のブクログは以下のURLから閲覧できます。

ujikenorioの本棚 (ujikenorio) - ブクログ


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2019-01-27

日記:寄稿、武田清子『わたしたちと世界 人を知り国を知る』岩波ジュニア新書を読む。

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STARTING POINT ウェブサイト連載「名著を読む」に新しい記事(武田清子『わたしたちと世界 人を知り国を知る』岩波ジュニア新書を読む。)を寄稿しました。

武田清子『わたしたちと世界 人を知り国を知る』岩波ジュニア新書を読む。他者から学ぶことによって、初めて自己を知り、他者と協同できるのではないでしょうか。そのことで相互ヒューマンディグニティーが確立されるはずです。

二十一世紀の世界には、こうした自己規律をもつ、“開かれた精神”が求められているのではないか=武田清子。21世紀は閉じたではなく開かれた社会であるべく人々が努力してきたのですが、その意味では平成の30年間はそれに対するバックラッシュの時代だったのかとも思います。

私たちは、ややもすると、同じ意見の人たちだけで「閉じた集団」をつくりがちです。しかし、同じ考え方をする人からよりも、異なった考え方、異なった意見をもつ人のからのほうが、より多くのことを学ぶことができます=武田清子。だからこそその対話土俵を壊す議論や暴力とは戦う必要があるのです。

本書は内向きな時代への警世の一冊です。有料記事ですが、関心のある方はご笑覧くださればと思います。


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覚え書:「社説 福島の避難者 息長く支援の手を」、『朝日新聞』2018年03月31日(土)付。


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社説 福島避難者 息長く支援の手を

2018年3月31日

 避難生活余儀なくされる人がいる限り、福島第一原発事故の被害は終わらない。政府と関係する自治体は目をそらさず、支援の手を差し伸べ続ける責任がある。

 事故から7年余り。避難指示の解除が進み、福島県の内外で暮らす避難者は減っている。県や復興庁が公表する最新の人数は約5万人で、ピーク時の3割の水準だ。復興は着実に進んでいると行政は強調する。

 だが、この統計には注意が必要だ。数え方にばらつきがあるほか、見かけ上、減っているだけという面があるからだ。

 たとえば福島県などは、仮設住宅の無償提供を打ち切るのにあわせて、避難者として扱うのをやめている。昨年春には、避難指示区域外からの「自主避難者」の多くを除外した。今後も、避難解除から一定期間がたった地域の人を順次除いていく見通しだ。

 こうした措置に、支援団体専門家の間では「問題を見えにくくし、避難者の切り捨てにつながりかねない」と懸念する声が出ている。

 行政に「地元に戻っても大丈夫です」と言われても、すぐに動ける人は少ない。避難先で職に就いた、子どもが学校に通っているといった事情のほか、戻る先の生活環境や放射能への不安も根強い。

 そもそも多くの人が、収入の減少や健康の悪化、仕事の確保、周囲の無理解など、さまざまな悩みを抱え、中には貧困孤立に苦しむ人もいる。

 政府は近く、被災者生活実態を調べ、対応策を見直すという。調査では自主避難者も幅広く対象とし、支援団体からも聞き取りをするなどして、全体像と課題の把握に努めるべきだ。

 生きていくうえで「住」の確保は基本だが、避難先の自治体の対応はまちまちだ。実情に応じた支援に向けて、政府が前面に出るべきではないか。

 内にこもりがちな避難者を直接支えるNPOへのサポートにも心を配りたい。

 「かながわ避難者と共にあゆむ会」は、互いのつながりや健康を保つための交流活動を企画し、困りごと相談にあたる。助成金が頼みの綱だ。山内淳(じゅん)事務局長は「いつまで続けられるか不安を持つNPOは少なくない。行政は10年ぐらいの長さで後押ししてほしい」と話す。

 ふるさとを奪われた人々が平穏な日常を取り戻すには、多くの時間がかかる。関係省庁、避難元と避難先の自治体、官民の支援組織が連携を強め、息長く寄り添っていかねばならない。

    −−「社説 福島避難者 息長く支援の手を」、『朝日新聞2018年03月31日(土)付。

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(社説)福島の避難者 息長く支援の手を:朝日新聞デジタル





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2019-01-26

覚え書:「社説 放送法見直し 性急、乱暴、思惑ぶくみ」、『朝日新聞』2018年03月31日(土)付。

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社説 放送法見直し 性急、乱暴、思惑ぶくみ

2018年3月31日

 フェイク(虚偽)ニュースの拡大と、それへの対応が大きな社会問題になっているときに、性急で乱暴に過ぎる。

 政府内で検討されている「放送事業の大胆な見直し」のことだ。放送番組について▽政治的に公平である▽報道は事実をまげない▽多角的に論点を明らかにする——などと定める放送法4条の撤廃が浮上している。

 新しいコンテンツ産業の参入を促して、経済活性化させる規制改革の取り組みの一環だという。一面的な発想に驚く。

 不偏不党な番組づくりを通して健全な民主主義を築くという、これまで放送に期待されてきた使命をどう考えるか。ネットの発達に伴い、放送と通信の境が見えにくくなっているからこそ、社会でどんな規範を新たにうち立てるべきか。

 そうした根源的な議論こそ、求められているのではないか。

 放送法は戦前の報道統制の反省の上に成立した。ただし電波は有限なこと、映像や音は活字以上に訴える力が強いことなどから、4条が設けられた。

 表現の自由を保障する憲法に反するとの意見もあったが、放送界では事業者が自律的に守るべき倫理規定として定着する。実効あるものにするため、03年にはNHKと民放連により、第三者機関放送倫理・番組向上機構(BPO)もつくられた。

 裏づけ取材などをしないまま沖縄の反基地運動を侮蔑・中傷したMXテレビの番組「ニュース女子」が、BPOから放送倫理違反や人権侵害を指摘されたのは記憶に新しい。4条がなくなれば、こうした仕組みも事実上機能しなくなるだろう。

 テレビ離れが言われているとはいえ、影響力は依然大きい。それが、ネット上の情報と同様「何でもあり」の世界になりかねない危険性をはらむ。放送法を所管する野田聖子総務相が、国会答弁などで疑義を表明しているのはもっともである。

 こうした構想がなぜ唐突に浮上したのか、政権の真意を疑わざるを得ない。

 安倍内閣は従来の自民党政権にもまして、4条を口実に放送に介入し圧力をかけてきた。だがその強権姿勢は厳しい批判を浴びた。一方で首相は、バラエティー番組や政治的公平性を求められないネットテレビには進んで出演し、自らを宣伝する。4条撤廃の衣の下からは、メディアを都合良く使える道具にしたいという思惑がのぞく。

 放送と通信の今後のあり方を検討するのは大切だ。だがそのことと、今回の危うい議論とは切り離して考えねばならない。

    −−「社説 放送法見直し 性急、乱暴、思惑ぶくみ」、『朝日新聞2018年03月31日(土)付。

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(社説)放送法見直し 性急、乱暴、思惑ぶくみ:朝日新聞デジタル


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覚え書:「折々のことば:1061 鷲田清一」、『朝日新聞』2018年03月26日(月)付。


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折々のことば:1061 鷲田清一

2018年3月26日

 俺は息してるだけ

 (高橋秀実〈ひでみね〉の従兄〈いとこ〉)

     ◇

 ノンフィクション作家が幼い頃、従兄の部屋で遊んでいると、彼はよく弟のいいところを指折り数え、「すげえべ」と褒めた。妬(や)かないのと訊(き)くと、従兄は真顔でこう答えた。この謙遜の言葉にふれて、以後、生きている間ずっとしているのは息で、「生きがい」や「自己実現」などオマケみたいなものだと思えるようになり、人生がぐっと楽になったと言う。『結論はまた来週』から。

    −−「折々のことば:1061 鷲田清一」、『朝日新聞2018年03月26日(月)付。

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折々のことば:1061 鷲田清一:朝日新聞デジタル





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結論はまた来週
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高橋 秀実
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2019-01-25

日記:ご紹介、「私の名前はルイザ」=セラフィーニまり。


僕が連載しているウェブマガジンに、イタリアからの新しいお便りが届きました。「私の名前はルイザ」=セラフィーニまり。

他人を蹴落として自分が上に行こうとするのか、それとも皆で共に一歩前へ進むのか。

声を上げる事の出来ない、弱い立場の人達の声なき声を聴くこと、それが本当の「洗練された社会」に近づいていく一歩ではないかと思います。

子どもを大切にするという意味を一新してくれる素晴らしい寄稿文です。無料記事です。会員登録なしで読むことができます。ぜひ、幅広く読まれて欲しいと思います。


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覚え書:「社説 財政再建論議 まずは「森友」の解明だ」、『朝日新聞』2018年03月30日(金)付。


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社説 財政再建論議 まずは「森友」の解明だ

2018年3月30日

 新年度予算の成立を受け、政府はきのう、首相が議長を務める経済財政諮問会議で、新たな財政再建目標とそれを達成する具体策に向けた議論を始めた。

 来年秋に予定する10%への消費増税を前提に、高齢化で膨らみ続ける社会保障費をどの程度抑制するかなどが焦点になる。

 しかし肝心の財務省、そして安倍政権は、森友学園への国有地の大幅値引き売却とそれを巡る決裁文書改ざんについて納得のいく説明をしておらず、国民の信頼を失ったままだ。

 こんな状態で、国民に痛みを求める財政再建を進められるのか。まずは疑惑を解明し、きちんと説明するのが先だ。

 国の借金が1千兆円を超え、日銀による国債の大量購入で財政規律のゆるみが指摘されるだけに、財政再建自体は待ったなしの課題である。

 借金に頼らず政策経費をまかなえるかを示す基礎的財政収支について、政権は20年度に黒字化するとしていた。しかし首相は昨年、衆院解散の表明にあわせて、消費税収の使途を教育無償化にも広げる政策変更とともに目標の達成を断念した。

 内閣府が1月に示した最新の試算では、経済が高めの成長を続けた場合でも、基礎的収支が黒字になるのは27年度だ。

 今後の議論では、黒字化の時期をどれほど前倒しするか、それに伴いどんな歳出抑制策をとるかが問われる。ただでさえ国民の反発が予想されるのに、森友問題でその視線は厳しさを増している。疑惑の解明が議論の前提になるのは当然だろう。

 ところが国会での証人喚問で、財務省佐川宣寿(のぶひさ)・前理財局長は核心部分について証言拒否を繰り返した。省内を調査中の財務省も、大阪地検の捜査の行方を見守る姿勢だ。

 安倍首相は全容解明の必要性を強調しながら、リーダーシップを発揮しているとはいえない。麻生財務相は、森友問題が連日大きく報道される一方、環太平洋経済連携協定(TPP11)の記事が少ないとして「(それが)日本の新聞のレベル」と国会答弁で揶揄(やゆ)した。

 事態の深刻さに向き合わない不誠実な姿勢である。問われているのは、国民を代表する国会行政が欺いたという重大な問題だ。与党野党もなく、森友問題を調べる態勢を国会に整える。その場を通じて財務省をはじめ政府説明責任を果たす。国民の信頼を取り戻すには、そうした取り組みが不可欠だ。

 もう一度言う。信頼を失った政権財政再建を論じても、国民の理解は得られない。

    −−「社説 財政再建論議 まずは「森友」の解明だ」、『朝日新聞2018年03月30日(金)付。

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(社説)財政再建論議 まずは「森友」の解明だ:朝日新聞デジタル





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2019-01-24

覚え書:「特集ワイド フロム「自由からの逃走」日本に照らせば 今そこにあるファシズム」、『毎日新聞』2018年03月27日(火)付夕刊。

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特集ワイド

フロム自由からの逃走」日本に照らせば 今そこにあるファシズム

毎日新聞2018年3月27日 東京夕刊

休日の繁華街で行われたヘイトスピーチへの抗議に駆けつけた大勢の人たち。プラカードを手に、差別をやめるよう声を上げた=大阪市中央区難波交差点で2014年10月19日、後藤由耶撮影



 書店には「反中・嫌韓本」とともに「日本礼賛本」が並ぶ。排他的な雰囲気が漂う現代日本社会学者のエーリッヒ・フロムナチズムに傾倒したドイツを考察した名著「自由からの逃走」で解き明かした社会に似てきていないか。【庄司哲也】

 翻訳本を出版している東京創元社ホームページでこの本をこう紹介する。<現代の「自由」の問題は、機械主義社会や全体主義圧力によって、個人自由がおびやかされるというばかりでなく、人々がそこから逃れたくなる呪縛となりうる点にあるという斬新な観点自由を解明した>。訳者は日高六郎さん。入学シーズンだが、社会学専攻の学生には必読の古典とも言われる。ネット上では、ネトウヨやへイトスピーチなど現代日本に「自由からの逃走」を照らし合わせた書き込みも目につく。

 ドイツ出身のフロムが、亡命先の米国でこの本を著したのは、欧州ファシズムが猛威をふるった1941年。第一次大戦で敗戦後、経済的に多くの人が苦しんでいる時にナチス勢力を伸ばした背景を考察した。

 <近代社会において、個人が自動機械となったことは、一般のひとびとの無力と不安とを増大した。そのために、かれは安定をあたえ、疑いから救ってくれるような新しい権威にたやすく従属しようとしている>

 フロムはこうしたドイツ国民の傾向を「権威主義パーソナリティー」と名付けた。自由を持て余し、不安や孤独から強い権威(ナチス)に身を委ねていったというのだ。

 では、今の日本が全体主義に陥る危険はあるのか。2006年から学生を対象にアンケートを行い、ファシズムの兆候がないか調べている帝京大教授の大浦宏邦さん(社会学)に聞いた。「劇場型」といわれた05年の郵政解散総選挙で、小泉純一郎首相(当時)が圧倒的な支持を得て以来、授業を履修する学生に「ファシズム(F)尺度調査」を実施している。ドイツ哲学社会学者テオドール・アドルノが開発した調査を簡略化したもので、「先輩後輩などの上下のけじめはつけるべきだ」「今の若者にはもっと規律が必要だ」など6項目の質問を投げかけ、権威主義的な傾向を数値化した。

 例えば「上下のけじめ」「規律の必要性」の質問は、先行きの不安や自信のなさを抱えた人が、強者や偉い人の言葉を信じ、安心を得ようとする個性を測る質問だ。フロムが「権威主義的な服従」と指摘したこうした個性を持つ人は、質問に対して「とてもそう思う」と答える傾向にあるという。

 06年から17年まで、4000人近い学生を調査した結果、平均は4・5点(最高点は7点)だった。大浦さんはどう評価するのか。「ナチス・ドイツの親衛隊員が5点と言われていますので、高い値です。ただ、この間、数値はほぼ一定しており、直ちにファシズムの傾向があるわけではありません。今後の動向に注目していく必要があるでしょう」

「空気読む社会」の危うさ

 「自由からの逃走」では、ドイツの民衆がユダヤ人排斥に動いた心理が記される。

 <普通の発展過程では金や力を獲得する機会のほとんどない何十万というプチブル中産階級のこと)が、ナチ官僚機構のメンバーとして、上流階級を強制して、その富と威信の大きな部分を分けあたえさせたということが問題であった。ナチ機構のメンバーでない他のものはユダヤ人や政敵からとりあげた仕事をあたえられた。そして残りのものについていえば、かれらはより多くのパンは獲得しなかったけれども「見世物」をあたえられた>

 現代日本には、ヘイトスピーチがあり、生活保護受給者など社会的に立場の弱い人を攻撃する空気も一部にある。

 フロムが指摘するような心理が生まれたのはなぜか。「『怒り』がスーッと消える本」(大和出版刊)などの著書がある元衆院議員精神科医水島広子さんは「ヘイトスピーチを行うのは疎外感を持っており、自己肯定感が低い人です。自信が持てないため、『仮想敵』を作り上げ、優位に立とうとすることで自信を持ったような気になる。ただ、あくまでも形だけの自信なので、団結することで疎外感を抱かない場を作るのです」と解説する。

 水島さんによると、「反中・嫌韓本」や「日本礼賛本」もそうした自信を得るためのツールだ。人口減少社会など将来に不安を抱える中、隣国排他的非難することで自国の存在価値を膨らませ、「欧米から評価されている日本」を強調することでやすらぎを求めるというのだ。

 もう一人、ドイツ文学を専門とし、昔話研究で知られる筑波大名誉教授の小沢俊夫さんを訪ねた。ヒトラー自殺が日本に伝わった45年4月、小沢さんは15歳だった。当時の日記に「ヒトラーは偉かった」と書いている。「私は『世紀の英雄』だと思っていたんですよ。私自身、軍需工場で爆薬を作っており、日本の勝利を疑わない軍国少年でした」

 北朝鮮情勢の緊張が続いていた昨年、小沢さんは、弾道ミサイルの飛来を想定した避難訓練の映像を見ながら戦中の竹やり訓練を思い出した。父の開作さんは戦中、婦人会が竹やりでB29爆撃機に対抗しようとする様子を見て「ばかか」と笑い、特高警察の監視がついたという。

 フロムは、周囲に合わせて自我を捨てることを「機械的画一性」と呼び、ナチス台頭の温床となったと指摘した。今の日本の言葉でいえば「空気を読む社会」だ。

 <個人的な自己をすてて自動人形となり、周囲の何百万というほかの自動人形と同一となった人間は、もはや孤独や不安を感じる必要はない。しかし、かれの払う代価は高価である。すなわち自己の喪失である>

 小沢さんは、昔話の講義の受講者を引率し、グリム童話のゆかりの地を巡る研修旅行でドイツを訪れる際、ワイマール共和国時代に民主的な憲法を生んだ地であるワイマールと、政治犯ユダヤ人ホロコースト(大虐殺)が行われたブーヘンバルトナチス強制収容所跡に案内する。「民主憲法を持ったワイマール共和国は、わずか14年でファシズムに変わりました。ワイマールとブーヘンバルト距離は10キロと離れていません。この短い距離が、国家の変容を物語っていることを知ってほしいのです」。民主主義のすぐ近くにファシズムはある。

「絆」は不安感の裏返し

 「フロムが説いた権威主義パーソナリティーには、実は二面性があるのです。決してマイナス面ばかりではありません。他者に共感を持つ人や、社会に貢献したいと思っている人が、権威主義的な服従性を併せ持つ表裏一体の傾向があるのです」と解説するのは、前出の大浦さんだ。

 例えば、サークル活動に熱心な人ほど、会費を納めない人に対し「ずるい」「不公平」という怒りの感情を持ちやすくなる。また、社会が大きく変動するときには、集団が結束して危機を乗り切ろうとする。こうした状況では、集団に貢献しようという意識が働く半面、不当な行為やほかの集団への攻撃性が高まるというのだ。大浦さんは「自分が属する集団へのひいきと、そうではない外の集団を拒否することは、多くの人が持つ性質です。権威主義的な人は、この性質が極端になりがちで、マイナスに働いてしまうことがあるのです」と説明する。

 続けて、大浦さんはこう警告する。「東日本大震災で社会に不安感が高まりました。『絆』という言葉で他者への共感が広がったのはプラス面ですが、実は不安感の裏返しでもあるのです。関東大震災朝鮮人虐殺があったように、マイナス面に作用させてはなりません」

 経済的な繁栄の時代から右肩下がりとなり、少子高齢化、人口減など先が見えない不安感が募る現代日本。それを転化して隣国への憎悪をあおったり、排外的になったりする動きの背景に何があるのか直視しなければならない。

ファシズム尺度」調査結果

 とてもそう思う=7点▽ややそう思う=5点▽どちらとも言えない=4点▽あまりそう思わない=3点▽全くそう思わない=1点で計算。全項目の平均=4.5点

 ◆権威主義服従性=平均4.8点

 問1「先輩後輩などの上下のけじめはつけるべきだ」

 問2「今の若者にはもっと規律が必要だ」

 ◆権威主義的攻撃性=平均4.4点

 問1「自分たちの名誉が侮辱されることは、我慢できない」

 問2「不道徳な人を排除できれば、多くの社会問題解決するだろう」

 ◆偏見・冷笑の傾向=平均4.3点

 問1「生まれつき、勇気と決断を持った人がいるものだ」

 問2「人間は弱者と強者という二つの種類にわけられる」

 注)帝京大の大浦宏邦教授が2006〜17年の4月、学生計3925人を対象に実施

    −−「特集ワイド フロム自由からの逃走」日本に照らせば 今そこにあるファシズム」、『毎日新聞2018年03月27日(火)付夕刊。

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特集ワイド:フロム「自由からの逃走」日本に照らせば 今そこにあるファシズム - 毎日新聞





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覚え書:「折々のことば:1060 鷲田清一」、『朝日新聞』2018年03月25日(月)付。


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折々のことば:1060 鷲田清一

2018年3月25日

 その年齢を超えてしまったら、今度は逆に体自身が行動を始めるようになる。

 (横尾忠則

     ◇

 80を超えて現役で創作活動を続けている9人と語らううち、彼らが「身体知性」とでも言うべきものに身を委ねようとしているように感じたと、美術家は言う。社会を漆喰(しっくい)のように塗り固めてきた〈物語〉を独自に深めるのではなく、逆に「脳の支配から離れ」ること。余計な意味付けを削いで軽くなること。それをこそ成熟と言うのかも知れない。対談集『創造&老年』から。

    −−「折々のことば:1060 鷲田清一」、『朝日新聞2018年03月25日(月)付。

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折々のことば:1060 鷲田清一:朝日新聞デジタル





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