Hatena::ブログ(Diary)

Essais d’herméneutique このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2050-11-18

はじめに……

アカデミズム底辺で生きる流しのヘタレ神学研究者・氏家法雄による神學、宗教學、倫理學、哲學の噺とか、人の生と世の中を解釈する。思想と現実の対話。

2010年11月25日より「はてな」に雑文を移項いたしますので、今後ともどうぞ宜しくお願いします。

ついでですのでひとつ。

絶賛求職ちう。

過去(2007年8月28日〜2010年11月24日)の雑文は以下のURLより閲覧できます。

引っ越しがうまくいけばこちらへ完全移行の予定。

当分はココログと併用いたします。

Essais d’herméneutique

氏家法雄のブクログは以下のURLから閲覧できます。

ujikenorioの本棚 (ujikenorio) - ブクログ


f:id:ujikenorio:20111229153022j:image

2016-08-24

日記:目的のためには手段を選ばない、グンマーの創価学会アクテイブ後閑さん。

Resize2748


以前、ストーカーのように粘着して嫌がらせをしてきたグンマーの後閑由治氏。

本人曰く、創価学会の男子部の活動家で、精鋭中の精鋭の「創価班」、「音楽隊」の所属とのことですが、言うこと為すことが常軌を逸したものがあり、その言動と行為自体が、著しく創価学会の名誉を貶める行為だと思いますので、カツドーカの諸氏は厳しく注意した方がよいのではないかと毎度のことながら老婆心です。

さて、昨年の今頃、安全保障関連法の審議が進んでおりましたが、私自身は、生命尊厳と絶対平和主義の立場から、あらゆる人権を否定する安全保障関連法を許容することができず、反対の声を上げましたが、あげたらあげたで、後閑氏をはじめとする創価学会のアクティヴから著しい嫌がらせのストーキングの連続でございました。

私自身は、生命尊厳と絶対平和主義でありますから、その考え方にもとづき、あらゆる生命を尊重しなければならない訳ですから、「目的のためには手段を選ばない」ことだけは第一にやってはならない行為だと考えます。

そもそも後閑氏らに顕著に見られる「目的のためには手段を選ばない」嫌がらせの粘着行為は問題が多いのではないかと常々そのことを批判してきたものですから、後閑氏の揶揄、すなわち「広宣流布ノ為ニ、邪魔者ハ殺シテモ良イ!」などとは、名誉を著しく損なう言いがかりにほかならないと考えます。

そうレッテルを貼るのであれば、エビデンスをきちんと示してから貼って欲しいものでございます。ほんと、クラクラするとはこのことでしょう。

さて……。

最近では、どうやら考え方の異なる相手に対して、ネット上で、本人の了承なくその個人情報拡散している由。

相手は別に「目的の為なら手段を選ばなくて良いという連中」とは程遠い方のようですが、後閑氏のお約束のパターンですが、一方的にレッテルを張り、今回も「こちらも手段を選ばずやりますよ」だそうな。ご自身こそ「目的のためには手段を選ばない」ようですよ。

誰か、注意してやれよ。



関連エントリ日記:友達でも何でもないのに安保法強行採決後粘着してくるグンマーの創価学会員ゴカンさん(後閑由治 @gokonowsky )、ストーカー行為はおやめなさい。 - Essais d’herméneutique




Resize2214

覚え書:「ひもとく:ブラジルの精神 交ざり合うことを美徳とする [文]今福龍太(文化人類学者)」、『朝日新聞』2016年07月31日(日)付。

Resize2749



-----

ひもとく

ブラジルの精神 交ざり合うことを美徳とする

[文]今福龍太(文化人類学者)  [掲載]2016年07月31日

アマゾナス 2015」(C)渋谷敦志


 ブラジルという建物があるのなら、正面玄関からは入りたくない。観光客のためにとり繕ったピカピカの玄関は、ブラジルの気取らない親しさや素朴な優しさにそぐわない。正面玄関には「オリンピック!」と大書され、地面には「政治混乱」とか「治安悪化」とか「疫病」とかいった抗議の旗の切れ端が残っていたりする。祭典の華麗さに酔うにせよ、社会のネガティブな側面に身を引き締めるにせよ、それはあまりに紋切り型のいまのブラジルでしかない。

 ブラジルと名づけられた国ではなく、「ブラジル」という精神の共同体がたしかにあると私は思いつづけてきた。ブラジルの、あまり知られていない日常の通用門である。インディオの大地を征服した16世紀のポルトガルサトウキビ農園への黒人奴隷の導入と混血化。植民地の終焉(しゅうえん)と奴隷解放によってリオデジャネイロサンパウロのような都会が華やぐ。19世紀のイタリアドイツ移民。20世紀になるとレバノンや日本などアジアから多くの移民を受け入れた。複雑な歴史のなかで「精神の共同体」としてのブラジルが生まれた。単一の過去の根に拘泥しない。交ざり合うことを美徳とする。何ごとも永遠には続かない。だから成功ではなく、楽しく生き延びることに力を傾ける。愛するものに序列をつけず、すべてをあまねく愛する。規則ではなく人の心を信ずる……。

■喪失による覚醒

 そんなブラジルという精神のありようを、どの本よりも見事に語るのがレヴィ=ストロースの不朽の名著『悲しき熱帯』1・2(川田順造訳、中公クラシックス・1566円、1674円)である。刊行から60年経ても、その記述の深さと精確(せいかく)さは色あせない。フランスからサンパウロ大学に教えに行った人類学者の、都市とインディオ世界とを往還しながら書き綴(つづ)られたブラジルへの深い省察。近代の「時」が先住民と都市とを、ともに激烈な勢いで押し流してゆく「悲しさ」のなかに、レヴィ=ストロースは技術文明の進化とは違う、人類が生き延びるために覚醒すべき、つつましい希望の精神のありかを予言した。写真集『ブラジルへの郷愁』に描かれたインディオの姿とサンパウロのくすんだ都市景観の対照のなかから、喪失によって目覚める新たな思想の萌芽(ほうが)が感じとられる。ブラジルは未来の大地である。「産業化社会の後」を展望するための。

 ブラジルの魅力的な裏木戸を入ってくるのは詩人が多い。『めずらしい花 ありふれた花』は、20世紀アメリカの透徹した女性詩人エリザベス・ビショップと、そのリオでの愛人となった建築家ロタ・ヂ・マセード・ソアレスとの出会いと別れを描いた美しくも哀(かな)しい物語。2人のボヘミアンで個性的な女性の情熱と機知とが、新資料と周囲の人々の証言から繊細に浮かび上がる。

■結ばれる「記憶」

 半世紀に及ぶ詩業がいま際立つ詩人吉増剛造。『ブラジル日記』は、2年の滞在のなかで詩人の心に浸透するブラジル精神の細部を描きだす。荒野に林立する蟻塚(ありづか)の傍らに座って、大地の頭脳のような塔の内部でうごめく蟻たちが目撃してきた長大な時間に思いを馳(は)せる。市場の物売りの大音声に聞き惚(ほ)れながら、その喧騒(けんそう)のなかに、海を渡ってきたブラジル人たちの祖先の耳に残った波音を探しあてる。私たちの記憶が不意に未知のブラジルに結ばれる。

 若き写真家渋谷敦志の『回帰するブラジル』(瀬戸内人・3996円)。瑞々(みずみず)しい写真群を見ると、ブラジル精神が脈々と新たな創造の現場に受け継がれているのを確信する。飾らない風景。衒(てら)いのない人々。眼(め)による鮮烈な「発見」の昂揚(こうよう)が、読者にも分け与えられる。

    ◇

いまふく・りゅうた 文化人類学者 55年生まれ。『ブラジルホモ・ルーデンス サッカー批評原論』など。

    −−「ひもとく:ブラジルの精神 交ざり合うことを美徳とする [文]今福龍太(文化人類学者)」、『朝日新聞2016年07月31日(日)付。

-----






ブラジルの精神 交ざり合うことを美徳とする - 今福龍太(文化人類学者) - ひもとく | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト



Resize2215

ブラジル日記 (Le livre de luciole (32))
吉増 剛造
書肆山田
売り上げランキング: 581,621

回帰するブラジル: 渋谷敦志写真集
渋谷敦志
瀬戸内人 (2016-07-11)
売り上げランキング: 191,319

ブラジルのホモ・ルーデンス―サッカー批評原論
今福 龍太
月曜社
売り上げランキング: 530,293

覚え書:「ひもとく:EU離脱する英国 帝国の歴史と折り合えるか 木畑洋一 [文]木畑洋一」、『朝日新聞』2016年08月07日(日)付。

Resize2750


-----

ひもとく

EU離脱する英国 帝国の歴史と折り合えるか 木畑洋一

[文]木畑洋一  [掲載]2016年08月07日

1972年、英国のヒース首相(中央)がEC加盟条約に調印した=AP

 

 欧州連合(EU)をめぐる英国国民投票の結果は、世界中に大きな衝撃を与えた。ここ数年、英国がEU離脱に踏み切る可能性があると言われてきたのは確かである。しかし、そうした傾向が強まるにせよ、英国民がその道を選択するとは、筆者も予想していなかった。キャメロン前首相も、その前提で国民投票実施を決めたのである。

■統合には消極的

 ただ、今回の事態には、歴史的な背景が存在している。欧州統合が具体的に進み始めたのは1950年代であり、52年には欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)、58年には欧州経済共同体(EEC)が発足したが、当初、英国はその加盟国にならなかった。19世紀以降、英国地球上の4分の1といわれる陸地を支配してきた大帝国として、統合をめざす欧州の一部になることに消極的だったのである。

 その姿勢は、帝国の解体が加速化し、欧州統合の経済的成果が見られはじめると変化し、61年に英国はEECへの加盟申請に踏み切った。この間の対欧州政策については、日本の研究者による重厚な著作が刊行されている。大戦直後から50年代中葉までを扱った益田実『戦後イギリス外交と対ヨーロッパ政策』(ミネルヴァ書房・5400円)と、小川浩之『イギリス帝国からヨーロッパ統合へ』(名古屋大学出版会・6696円)である。いずれも、チャーチルが提示した「三つの環(わ)」という図式を重視している。帝国とその後継としての英連邦英米関係、西欧という「三つの環」。その結節点として、英国が世界で重要な役割を担っているとするこの構図において、帝国・英連邦の意味が低下してきたことで、英国欧州統合過程への参加を決断した。それに際しては、いま一つの環である米国による後押しの力も働いた。

 英国のEEC加盟申請は、60年代に2度にわたり、フランスのド=ゴール大統領が中心となった反対の動きで却下された。3度目の申請英国が統合欧州の一員となったのは73年の欧州共同体(EC)加盟だが、それ以降も、英国は統合の深化に距離を置く姿勢を一貫してとってきた。こうした様相を、19世紀初めから200年にわたって、英国と大陸ヨーロッパの関係をめぐる歴史的視野のもとで論じているのが、細谷雄一編『イギリスヨーロッパ』である。

■冷静な論届かず

 歴史的な視野が必要であることは、国民投票の最大の争点となった移民問題についてもあてはまる。その点で、パニコス・パナイー『近現代イギリス移民の歴史』の邦訳が出たことは、時宜を得ている。本書はやはり過去200年を対象とする。その間に英国がきわめて多くの移民を受け入れ、それによって利益を得て多文化社会を作り上げながらも、人種主義を抱えつづけてきたことを、説得的に論じている。「日本語版への序文」の、近年の移民流入は「過去二〇〇年の間にイギリスにやってきた連綿とした人々の流れの単なる延長に過ぎない」という表現は印象的である。

 しかし、国民投票移民をめぐる議論では、このような冷静な主張は人々に届かなかった。他方で、世界大国としての英国の歴史がもつ重みは、まだ力をもっているようにみえる。(93年発足の)EUからの離脱を予言し、その後のさまざまなシナリオまで検討した本として知られるロジャー・ブートル『欧州解体』も、離脱後の英国の重要な選択肢の一つとして英連邦をあげており、それは英国がそのすばらしい国家グループの中心にいるからだ、と論じている。

 統合欧州から袂(たもと)を分かとうとしている英国が、歴史的経験とどのように折り合いをつけながら、将来の位置を定めていくのか、注視していきたい。

    ◇

 きばた・よういち 成城大学教授(英国史、国際関係史) 46年生まれ。著書に『帝国のたそがれ』『二〇世紀の歴史』など。

    −−「ひもとく:EU離脱する英国 帝国の歴史と折り合えるか 木畑洋一 [文]木畑洋一」、『朝日新聞2016年08月07日(日)付。

-----







EU離脱する英国 帝国の歴史と折り合えるか 木畑洋一 - 木畑洋一 - ひもとく | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト








Resize2216

欧州解体
欧州解体
posted with amazlet at 16.08.19
ロジャー・ブートル
東洋経済新報社
売り上げランキング: 95,125


二〇世紀の歴史 (岩波新書)
木畑 洋一
岩波書店
売り上げランキング: 119,442

覚え書:「ひもとく:歴史に学ぶ 次の戦争を起こさない責任 赤川次郎 [文]赤川次郎」、『朝日新聞』2016年08月14日(日)付。

Resize2751


-----

ひもとく

歴史に学ぶ 次の戦争を起こさない責任 赤川次郎

[文]赤川次郎  [掲載]2016年08月14日

被爆71年を迎えた原爆ドーム。奥は式典が行われた平和記念公園=6日、広島市


 広島生まれの女優、綾瀬はるかが、自分の祖母をはじめ、広島長崎から沖縄など各地で、すでに高齢となった戦争体験者の話を聞いた、『綾瀬はるか「戦争」を聞く』の中で、最も印象的なのは、婚約者が真珠湾攻撃に参加、撃墜されて死んだという八十六歳の女性である。

 取材班に同行して二〇一〇年、ハワイを訪れたこの女性は、まるでたった今恋人を殺されたかのように、米兵への憎しみをあらわにして綾瀬を当惑させる。まるで七〇年前で時間が止まったままのように。しかし、戦死した米兵のことを聞き、婚約者が墜落した場所に案内される内、「憎しみ」は「悲しみ」へ、そして「感謝」へと変わっていく。七〇年という時を、一日で生きる女性の姿は感動的であり、同時に体験を歴史に変えるにはどんなに年月が必要かを語っている。

 すでに戦争体験者の生の声を聞く機会は少なくなってきている。出版された証言やドキュメンタリーと進んで向き合おう。

■複雑な顔を持つ

 「もういい加減、戦争責任の話はやめてほしい」と、うんざりした顔をする人は少なくない。確かに、今青春を迎えている人々にとって、遠い戦争の「責任」と言われても戸惑うばかりだろう。しかし、私たちは常に「次の戦争を起こさない責任」を負っているのだ。そのためには、かつて戦争がどのようにして起こり、人々はなぜそれを止められなかったのか、学ばなければならない。

 日中戦争から太平洋戦争へ、様々な大国の利害が絡み合う中、日本がどのように戦争への道をたどったか、加藤陽子氏が中高生に講義した記録である『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』は、歴史家としての冷静な視点の貫かれた本である。いま、中高生がこの本を読んで理解するのは容易でないと思うが、戦争とはそれほど複雑な顔を持っているのだということでもある。

 残念なことに、第二次世界大戦にかかわった国の中で、日本は今も侵略や虐殺の事実を認めようとしない人々が国の中枢部に多くいる「特殊な国」である。その特殊さはこの本に挙げられた、「捕虜の扱い」に見られる。ドイツ軍捕虜になった米兵の死亡率が1・2%なのに、日本軍捕虜になった米兵では37・3%に上る。自国の兵士をも使い捨てた国は敵国の兵士を人間扱いしなかった。その象徴的な事件が、「九大医学部生体解剖事件」である。捕虜の米兵を生きたまま解剖した(当然兵士は死んだ)この事件は、「戦争が医師をも狂わせた」出来事として知られる(『九州大学生体解剖事件』熊野以素著、岩波書店・2052円)。

 しかし、罪は戦争にあった、と本当に言えるのだろうか、と私は疑問に思う。あの東日本大震災での福島原発事故放射能被害に対し、「心配ない」「大したことはない」と言い続け、被曝(ひばく)した子供たちへの影響まで、平然と否定する医師を見ていると、戦時下でなくても、医の倫理が失われることはあると思わないわけにいかない。

■「芸術」からこそ

 反戦反原発も、「人間への愛」に根ざしたものでなければ、国家という大きな力に勝てない。ロマン・ロランの『ピエールとリュース』をここに挙げたのは、第一次大戦下で、一組の恋人たちが戦火に押し潰されていく悲劇の中に、戦争の非人間性への真実の怒りがあるからである。愛する人を死なせたくない。その思いは文学や芸術の中からこそ生まれる。

 非戦の決意の土台を、若い日々に固めておくことが大切なのである。

    ◇

あかがわ・じろう 作家 48年生まれ。著書に「三毛猫ホームズ」シリーズ、『東京零年』など。

    −−「ひもとく:歴史に学ぶ 次の戦争を起こさない責任 赤川次郎 [文]赤川次郎」、『朝日新聞2016年08月14日(日)付。

-----







歴史に学ぶ 次の戦争を起こさない責任 赤川次郎 - 赤川次郎 - ひもとく | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト


Resize2217

それでも、日本人は「戦争」を選んだ (新潮文庫)
加藤 陽子
新潮社 (2016-06-26)
売り上げランキング: 205

ピエールとリュース (鉄筆文庫)
ロマン ロラン
鉄筆
売り上げランキング: 13,891

三毛猫ホームズの狂死曲 新装版 (光文社文庫)
赤川 次郎
光文社 (2016-08-09)
売り上げランキング: 160,089


東京零年
東京零年
posted with amazlet at 16.08.19
赤川 次郎
集英社
売り上げランキング: 135,836

覚え書:「くらしの扉:子猫、救うには まず動物病院、飼い主探しも」、『朝日新聞』2016年05月29日(月)付。

Resize2752


-----

くらしの扉:子猫、救うには まず動物病院、飼い主探しも

2016年5月29日

子猫、救うには<グラフィック・秋沢祐磨>

 帰宅途中の道ばたで、散歩先の草むらで、もし子猫に出会ったら――。その命を救うために、できることがあります。一歩、踏み出してみませんか?

 「今年もまた、『子猫の季節』がやってきた」

 埼玉県内を中心に活動する保護猫シェルターまたたび家」の塩沢美幸代表はそう漏らす。いとおしい存在だから救う。でも5月に入り、もう10匹以上も子猫が持ち込まれているのだ。

 日照時間が長くなると発情期を迎える猫は、日本ではふつう春から秋にかけて繁殖活動をする。妊娠期間は60日少々。だから5月も半ばを過ぎたこの時期、子猫が人目につき始める。

 もし保健所などに連れて行かれると、多くの場合、不幸な結末が待つ。2014年度、全国の自治体に引き取られた離乳前の子猫は約6万9千匹。その7割近い4万7千匹余りが、殺処分されている。行政動物愛護団体の努力だけでは、救えない命がある。

     *

 では子猫を見つけ、その命を自分の手で助けたい人は、どうすればいいのか。塩沢さんは、「まず母猫がいないかどうか確認してください。離乳までは母猫に任せたほうがいいからです。そのうえで、母猫のいない乳飲み子、または乳歯が生えていて既に自力でウロウロしている子猫を見つけたら、すぐに保護してあげてください」。

 もし離乳前に保護することになったら、保温が大切。夏でもカイロを使って温めるとよいという。また、離乳の前か後かにかかわらず、まずは子猫を連れて動物病院へ。地域猫活動を支援している、おおにし動物病院(東京都立川市)の大西学院長は、「獣医師が見れば、おおよその日齢がわかるので、必要なケアを教えてくれるはずです。生後1カ月くらいの子猫は体力や免疫力が弱く、感染症にかかりやすい。検査を受け、感染がわかれば治療をしましょう」とアドバイスする。

 ほかにも、ノミやダニなど寄生虫の駆除が必要だ。生後2カ月くらいでワクチン接種も。動物病院によっては、野良猫(飼い主のいない猫)なら診療費を割り引いてくれるところもあるので、相談にのってもらおう。

 既に猫を飼っている家庭なら、子猫は最低1〜2週間、隔離しておくこと。寄生虫感染症から先住猫を守るためだ。

     *

 生後2、3カ月くらいまで育てたら、飼い続けることが困難な場合、新たな飼い主への譲渡も可能になる。飼い主募集サイトは、個人でも利用できるところが少なくない。また、譲渡会が定期的に行われている地域もあるので情報を集めてみよう。

 こうして子猫を救ったら、次は親猫のことも考えてみて、と塩沢さんは言う。「親猫をいったん捕まえ、不妊・去勢手術(TNR)をしなければ同じことが繰り返される。飼い主がいないことを確認したうえで検討してほしい。ハードルが高ければ、地域の保護団体に相談してみてください」

 (太田匡彦)

 <「野良」の寿命は3、4年> 4千年以上前、人がヤマネコを家畜化して作り出した新種がイエネコ。人の移動にあわせて世界中に広がった。人と関わりのない野良状態はイエネコには不自然な状態で、飼い猫の平均寿命が15歳超なのに対して「野良猫の平均寿命は3、4歳くらい」(大西学さん)。

 <譲渡後の虐待防ぐには> 譲渡された猫を虐待する事件も起きている。「誰でもいいからもらってほしいなどとは、絶対に思わないこと」と飼い主募集サイト「ネコジルシ」も注意喚起する。各関連サイトでは▽身分証の確認▽できれば自宅まで子猫を届け、飼育環境を確認▽「譲渡誓約書」を活用、などの対策をすすめている。

 <首輪がなくても> ペット関連の法律に詳しい細川敦史弁護士は「首輪がなくても、体が汚れていない場合、飼い猫の可能性がある。近所にチラシを配るなどして飼い主の有無を確認しましょう」。飼い主がいないと分かれば、TNRをしても「法的には問題ない」と話す。なお耳先がV字にカットされているのは、不妊・去勢手術され、地域の人に見守られている印。

 ◇「くらしの扉」は毎週日曜日に掲載します。次回は「ネット時間減らそう」の予定です。ご意見、ご要望はseikatsu@asahi.comメールするへ。

    −−「くらしの扉:子猫、救うには まず動物病院、飼い主探しも」、『朝日新聞2016年05月29日(月)付。

-----




(くらしの扉)子猫、救うには まず動物病院、飼い主探しも:朝日新聞デジタル





Resize2714

Resize2218

2016-08-22

日記:無党派とかあざ笑うまえに、自分自身の顔を鏡で見ろよ。

Resize2738


シールズのみなさんが、政治は日常生活の一コマとしてアイロンをかけた衣類をたたむような出来事として身体化しなくてはいけないと仰っておりましたが、これが正鵠を得ていると思います。

湯浅誠さんに従えば、政治で解決しなければならない課題と、大文字の政治ではないけど、日常生活の中でたえず関わっていかなければならないアクションというのがあります。

投票すること「だけ」で収斂するわけでもないけど、収斂もする。投票すること「以外」のめんどくさいことを本来的には「引き受けなけければならない」ことがあるにも関わらず、投票行動に「依存」して「おしまい」という話もある。

そういうコンビニエンスなことを退けていかなければならないんじゃないのかね。

現に、鳥なき里の蝙蝠界隈、選挙が終わったら一斉に夏休みやん。地域の貧困や生活の現状など一切スルー。夏休みが悪いとは思わないけど、結局は、物語の依存先に「業務委託」して終わりというシンプルな話でしょ。

無党派とかあざ笑うまえに、自分自身の顔を鏡で見ろよ。






Resize2204

覚え書:「黄昏の調べ―現代音楽の行方 [著]大久保賢 [評者]五十嵐太郎(建築批評家・東北大学教授)」、『朝日新聞』2016年07月24日(日)付。

Resize2739



-----

黄昏の調べ―現代音楽の行方 [著]大久保賢

[評者]五十嵐太郎(建築批評家・東北大学教授)  [掲載]2016年07月24日   [ジャンル]文芸 

 新しさを求めて、クラシックから進化した現代音楽の歴史をコンパクトにまとめている。20世紀初頭の調性からの離脱や民俗音楽の採取に始まり、様々な技法や響きを開発した戦後の黄金期、70年代以降のポストモダン(単純回帰)とレイトモダン(超複雑)を経て、「現代音楽」が終わり、古典化した状況までを見通す。

 魅力的な楽曲分析の文章に誘われ、改めてラックに眠っていた十数枚の現代音楽のCDを聴き直した。その興亡を描く各章のあいだに、楽譜に書く行為ゆえに理知的な構成が重視されるという作曲論、聞き手の限界を超えるなかで創造的な受容の可能性が生まれる聴取論、新しい身体を必要とする演奏論を挟み込む。

 興味深いのは、著者は現代音楽を愛するが、ただ礼賛せず、それがなぜ嫌われるのかを徹底的に考えていること。そして終章では、人々とのコミュニケーション回復しつつ、今を刻印する「現代の音楽」に向かう期待を述べている。

    −−「黄昏の調べ―現代音楽の行方 [著]大久保賢 [評者]五十嵐太郎(建築批評家・東北大学教授)」、『朝日新聞2016年07月24日(日)付。

-----






書評:黄昏の調べ―現代音楽の行方 [著]大久保賢 - 五十嵐太郎(建築批評家・東北大学教授) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト



Resize2205_2



黄昏の調べ: 現代音楽の行方
大久保 賢
春秋社
売り上げランキング: 116,775

覚え書:「未確認動物UMAを科学する [著]D・ロクストン、D・R・プロセロ [評者]佐倉統(東京大学大学院情報学環長・科学技術社会論)」、『朝日新聞』2016年07月24日(日)付。

Resize2740


-----

未確認動物UMAを科学する [著]D・ロクストン、D・R・プロセロ

[評者]佐倉統(東京大学大学院情報学環長・科学技術社会論)  [掲載]2016年07月24日   [ジャンル]人文 

 

■“それ”を見させるものは何か?

 雪男ネッシー一度でいいから見てみたい。考えただけでワクワクしてくる。だが残念なことに、どちらもこの世には存在しない。目撃談はたくさんあるが、信頼できる証拠は皆無だ。

 本書は、未確認動物(UMA)に関心の深い二人の著者による、詳細な検討の成果である。対象となるのは雪男イエティ)とネッシーの他に、北アメリカ巨人ビッグフット(サスクワッチ)、大海原の巨大海蛇(シーサーペント)、そしてアフリカコンゴ恐竜モケーレ・ムベンベ−−もう、名前を聞いただけで興奮してきませんか? 未確認動物の代表的なスターを過不足なく取り上げている。妥当な選択だ。

 この本のすごいところは三つある。ひとつは、対象とする未確認動物について、関連する文献や資料を網羅していること。すでに未確認動物に詳しい人にとっても入門者にとっても、有益な情報だ。注と索引がきちんと翻訳されているのもうれしい。

 二つ目は、未確認動物がいるという主張のどこがインチキなのかを丁寧に解明してくれるところ。今までの目撃情報はどうして信憑(しんぴょう)性が薄いのか、未確認動物がいるという主張がなぜ成立しないのか、公平かつ詳しく説明されている。

 本書の特徴の三つ目は、UMAの社会的・文化的背景への緻密(ちみつ)な目配りである。なぜ人は、そこに「それ」を見いだしてしまうのか? 意図的な捏造(ねつぞう)はおくとして、クマやアシカなどの動物を怪物と見間違えたり、《キング・コング》などの映画の影響を無意識に受けていたりといった原因が考察されている。映画封切りの直後に目撃情報が急増したりするらしい。

 UMAについて考えることは、信頼できる科学情報とは何かを考えることでもある。そして、間違った情報を信頼する(同時に、正しい情報を信用しない)こちら側の姿勢についても、いろいろなことを語りかけてくる。

    ◇

 Daniel Loxton 「Junior Skeptic」誌の編集者。Donald R. Prothero 古生物学者、文筆家。

    −−「未確認動物UMAを科学する [著]D・ロクストン、D・R・プロセロ [評者]佐倉統(東京大学大学院情報学環長・科学技術社会論)」、『朝日新聞2016年07月24日(日)付。

-----







書評:未確認動物UMAを科学する [著]D・ロクストン、D・R・プロセロ - 佐倉統(東京大学大学院情報学環長・科学技術社会論) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト








Resize2206


覚え書:「三島由紀夫 幻の皇居突入計画 [著]鈴木宏三 [評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)」、『朝日新聞』2016年07月24日(日)付。

Resize2741


-----

三島由紀夫 幻の皇居突入計画 [著]鈴木宏

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)  [掲載]2016年07月24日   [ジャンル]ノンフィクション・評伝 

 

■理想としての天皇を守るとは

 1960年代後半は、学生運動が高揚した時代だった。68年10月21日の国際反戦デーで騒乱の巷(ちまた)と化した東京を見た三島由紀夫は、その1年後に同様の光景が再び現れ、自衛隊治安出動することを期待した。だが実際には68年ほどの騒乱にはならず、治安出動もなかった。これが三島にとって重大な挫折を意味したことは、自決した70年11月25日に撒布(さんぷ)された檄文(げきぶん)にも書かれている。

 しかし本書によれば、檄文に書かれていない計画があった。69年10月21日に治安出動があった場合、三島は自分がつくった楯(たて)の会の会員や自衛隊の一部と連携して、国立劇場から半蔵門を抜け、皇居に突入しようとしたというのだ。

 資料が少ないなか、楯の会の関係者にも取材しながらここまで大胆な仮説を導き出した著者の推論は読みごたえがある。ではなぜ、三島皇居に突入しようとしたのか。著者は、三島自身の天皇に対する文学的な見方にその理由を探ろうとする。三島昭和天皇という現実の天皇、すなわちザインとしての天皇を否定することで、三島自身が理想とする天皇、すなわちゾルレンとしての天皇を絶対視しようとしたからではないかと推理するのだ。

 しかし、これだとまるで天皇を暗殺するテロ計画していたようにもとれてしまう。本書では触れていないが、三島は66年1月8日に長編小説『豊饒(ほうじょう)の海』の取材のため、乾門(いぬいもん)から皇居に入り、天皇が祭祀(さいし)を行う宮中三殿を初めて見学している。そしてその感激を、ドナルド・キーンに「平安朝の昔にかへつた気がしました」と伝えている。この事実は重要である。

 宮中三殿は、乾門よりも半蔵門の方が近い。もし三島が本当に皇居突入を考えていたとすれば、真っ先に目指そうとしたのは宮中三殿ではなかったか。著者にならっていえば、それこそがゾルレンとしての天皇を守るための究極の手段と考えられるからである。

    ◇

 すずき・こうぞう 45年生まれ。山形大学名誉教授(英文学)。兄・鈴木邦男氏の影響で三島事件に関心。

    −−「三島由紀夫 幻の皇居突入計画 [著]鈴木宏三 [評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)」、『朝日新聞2016年07月24日(日)付。

-----







書評:三島由紀夫 幻の皇居突入計画 [著]鈴木宏三 - 原武史(放送大学教授・政治思想史) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト


Resize2207




三島由紀夫 幻の皇居突入計画 (フィギュール彩)
鈴木 宏三
彩流社
売り上げランキング: 110,739

覚え書:「時事小言:オバマ大統領とアメリカ 核兵器を拒絶するには 藤原帰一」、『朝日新聞』2016年05月25日(水)付夕刊。

Resize2742


-----

時事小言:オバマ大統領アメリカ 核兵器を拒絶するには 藤原帰一

2016年5月25日

 オバマ大統領広島訪問にあたり、謝罪すべきではないかという点に議論が集中している。さて、どう考えるべきだろうか。

 アメリカ国民のなかに広島長崎への原爆投下を肯定する意見が多いのは事実である。もっとも、時代による若干の変化も認めることはできる。

 1945年9月に行われた世論調査では、2都市への原爆投下に賛成するものが53%に上った。投下直後にしては少ないと思われるかも知れないが、日本が降伏する機会を得る前にもっと早く、もっと多くの原爆を投下すべきだったという意見が23%に上る。威嚇効果に目的を限って無人地帯に投下すべきだったという意見は14%あるが、原爆を投下すべきではなかったとする声は4%に過ぎない。

 この過去の調査を発掘したスコット・セーガン(スタンフォード大学教授)とベンジャミン・ヴァレンティノ(ダートマス大学准教授)が2015年に同じ内容の世論調査を行ったところ、広島長崎への原爆投下に賛成するものは28%に減り、無人地帯への威嚇的投下は32%、そして原爆は投下すべきでなかったとの意見は15%近くに増えた。核兵器使用に賛成する意見を合計すれば優に半数を超えるが、その内容には変化が生まれている。

     *

 では、アメリカ国民は核兵器使用に消極的になったのか。それを調べるため、セーガン氏のチームは、次の架空の設定を元に世論調査を行った。核合意違反を理由にアメリカイランへの経済制裁を再開したところ、イランアメリカ空母を攻撃し、2403人が死亡した。米国イランに宣戦するが、ここで軍事戦略の選択に直面する。イランに地上軍を派遣すれば米兵の犠牲は2万人に上る。他方、テヘラン付近の主要都市に核兵器を投下すればイラン側に10万人程度の犠牲が生まれるが、イランには同様に攻撃をアメリカに加える力はない。

 地上軍派遣核兵器使用、どちらを選ぶか。この調査によれば、核兵器使用に賛成する声が59%に上った。イラン側の犠牲を20万人と倍増しても、やはり同じ59%が核の使用に賛成した。広島長崎への原爆投下を肯定する声が減ったからといって、現在核兵器を使うことにアメリカ国民が消極的になったとまでいうことはできない。

 もちろんこれは架空の事例による調査に過ぎないが、ここで議論しているのは核の保有や抑止ではなく、実戦における核の使用である。広島への原爆投下から70年以上経った現代世界において核兵器による殺戮(さつりく)を肯定するアメリカ国民が存在することは、広島への投下を正当化する声以上に、私を戦慄(せんりつ)させる。

     *

 就任当初のオバマ大統領にはヨーロッパを中心とした世界各国から大きな、時には過大な期待が寄せられた。イラク戦争という正当性も必要性もない侵略を行ったブッシュ大統領と異なり、戦争に頼らないアメリカを実現する指導者となるのではないか。原爆投下国としてアメリカ核兵器廃絶を進める責任があると述べたプラハ演説でその期待はさらに高まり、まだ政策も結果も見えないうちにノーベル平和賞を受賞してしまった。

 しかし、就任から7年、オバマ大統領就任前よりも平和な世界をつくりあげたということはできない。各国とともに軍事介入を行ったリビアも、当初は介入せず、その後には空爆に踏み切ったシリアも破綻(はたん)国家となってしまった。プーチン政権のもとで米ロ関係が緊張したためとはいえ、ブッシュ政権まではなんとか進んでいた米ロの核兵器削減も進んでいない。

 オバマ大統領広島訪問が行われるのは、軍事介入は成果がなく、米ロ、さらに米中の対立が厳しい世界である。原爆投下謝罪しないと批判する人がいるだろう。北朝鮮、さらに中国を前にするとき、必要なのは核軍縮ではなく核抑止の強化だと主張する人もいるだろう。この大統領は口だけだ、演説はうまいが結果が出ないとあざける人もいるだろう。

 だが、今回の広島訪問は、核の使用は何をもたらすものなのか、その巨大な犠牲にアメリカ、さらに世界の人々の目を向けさせる機会として意義が大きい。原爆投下正当化し、核兵器のおかげで平和を享受していると考え、状況によっては核兵器の使用も辞さない人々の数多いアメリカの指導者としては、勇気を要する行動である。

 訪問だけでは意味がない。プラハ演説において、オバマ大統領核兵器を廃絶する責任を訴えた。広島訪問はその地点に立ち戻る機会である。それはまた、核廃絶を訴える一方でアメリカの核に頼って安全を模索してきた一面も否定できない日本が、核のカサに頼らない安全保障を考える機会でもあるだろう。

 (国際政治学者)

    −−「時事小言:オバマ大統領アメリカ 核兵器を拒絶するには 藤原帰一」、『朝日新聞2016年05月25日(水)付夕刊。

-----




(時事小言)オバマ大統領とアメリカ 核兵器を拒絶するには 藤原帰一:朝日新聞デジタル





Resize2711

Resize2208

2016-08-21

覚え書:「インタビュー:広島と核めぐる意識 神戸市外国語大学准教授・山本昭宏さん」、『朝日新聞』2016年05月28日(日)付。

Resize2732


-----

インタビュー:広島と核めぐる意識 神戸市外国語大学准教授・山本昭宏さん

2016年5月28日

「かつては、広島を語ることが戦後の日本を語ることでした。今はそうではなくなってしまった」=水野義則撮影

写真・図版

 米大統領の歴史的な広島訪問を、日本社会はいっせいに歓迎した。だが、1960年代だったら、原爆投下国の指導者をどう迎えていただろうか。核に対する日本人の視線はいつ、どのように変化したのか。「ヒロシマゴジラフクシマ」の視点から、日本人の「核のイメージ」の変遷を読み解いてきた気鋭の研究者に聞いた。

 ――米国の現職大統領広島を訪れました。その様子や日本社会の受け止めをどう見ましたか。

 「71年後とはいえ、原爆を投下した側の大統領広島を訪れたことに、歴史的な意義はあるでしょう。ただ、誰にとっての、どんな意義なのか。それを真剣に考えないまま、オバマ氏を歓迎一色で迎えたように感じられ、違和感も覚えました。いまの日本人は、『核』をリアルにイメージできなくなっているのだと思います」

 ――歓迎一色はおかしいと。

 「反発や怒りが出てこなかったのが不思議でした。被爆者がアメリカに恨みを抱くのはごく自然なことで、今回も『ふざけるな』と思っている方がいたかもしれない。しかし、そうした怒りが、社会の反応として出てこない」

 ――怒りが現出しないのは最近の現象なのでしょうか。

 「かつては激しい怒りが描かれていたこともありました。思い出すのは、『はだしのゲン』の作者で、自身も被爆者だった中沢啓治さんの『黒い雨にうたれて』(1968年)という短編です。主人公は被爆者で、原爆を落としたアメリカへの怒りから、外国人だけを狙う殺し屋になる。アメリカ日本政府も恨んでいる主人公が、アメリカ大統領広島に来ると知ったら、どう思ったでしょうか」

    ■     ■

 ――原爆への感情は、時代と共に変化してきたのですか。

 「アメリカへの怒りや恨みの感情はずっと存在していたのでしょうが、その表出のされかたは時代によって変わってきました。大きく分けると、怒りを表せなかった終戦直後、それが解き放たれた50〜60年代、『平和国家』の名のもとに怒りを表しづらくなった70年代以降、となるでしょうか」

 「敗戦直後は、占領下ということもあって、原爆を『平和の礎』とする空気がありました。被爆体験を書いた『長崎の鐘』(1949年)で知られる医学者の永井隆は、原爆投下は『神の摂理』であり、死者は『平和のための聖なる犠牲』だと書いています」

 「怒りがはっきりと表明され始めたのは、50年代の左翼運動の中でした。アメリカ帝国主義原爆を結びつけ、怒りをぶつけた。ただ、左翼運動や平和運動から、被爆者の情念的な怒りが次第に排除されました。個人の恨みは、平和の理念にそぐわないものと見なされていたんです」

 ――被爆者の怒りは、水面下に押し込められていたわけですね。

 「60年代になると、被爆個人に向き合う人たちが広島長崎以外からも出てきます。代表的なのが作家の大江健三郎さんや芸術家岡本太郎さんです。大江さんは個別の被爆者を取材したルポ『ヒロシマ・ノート』(1965年)で、『われわれには《被爆者の同志》であるよりほかに、正気の人間としての生き様がない』と書いています。岡本さんも広島を訪れ、『われわれ自身が被爆者なのだ』という感想を残す。被爆個人に連なり、水面下にある被爆者の怒りを表面に出す『パイプ』をつくろうとした。しかし70年代に入ると、それがなくなっていく」

 ――なぜですか。

 「70年代に、『平和』という美名のもとに国民がうまく取り込まれてしまったからです。そこで大きな役割を果たしたのは佐藤栄作です。佐藤は首相として初めて、広島の平和記念式典に出席しました。実際には沖縄への核持ち込みを認めておきながら、非核三原則を表明して、ノーベル平和賞まで取った。『平和国家・日本』という美しい物語を国民に提示してみせたわけです」

 「国民の側もそれを望んだ。高度経済成長を経てみんなが豊かになり、保守化して、自民党政権と『平和国家・日本』という物語を受け入れた。原爆をめぐる問題は『平和』に覆い隠され、被爆個人の怒りは表に出てこなくなってしまった。それが今回の歓迎ムード一色にもつながっています」

 ――原爆の問題が見えにくくなっているわけですか。

 「常に核を意識し、それを批判しつづけるという緊張関係が重要なのに、『平和』の美名のもとで核を徹底的に否定するあまり、核兵器想像力の範囲外に置かれてしまったのだと思います」

    ■     ■

 ――日本人が核兵器をリアルに捉えられなくなったのは、いつごろからでしょうか。

 「戦後の核の恐怖には、核戦争の恐怖と、核実験の恐怖という2種類がありました。『ゴジラ』(1954年)に表れているのは核実験の恐怖です。水爆実験で目覚めたゴジラが、放射能を吐きながら東京に上陸する。放射能が生活の場に入り込んでくるという恐怖です。その原点は、第五福竜丸や、放射能で汚染されたマグロのイメージでしょう。しかし63年に大気圏内での核実験が禁止されると、その恐怖は薄れていきます」

 「一方、核戦争の恐怖は、総力戦と結びついていました。戦後の日本人がイメージする戦争は、総力戦すなわち第3次世界大戦で、核兵器はそれに直結していた。50年代の朝鮮戦争、60年代のキューバ危機、70年代後半のソ連アフガニスタン侵攻の際には、このまま第3次世界大戦に発展し、核兵器が使用されるかもしれないという恐怖が語られました」

 「80年代前半までは、核戦争の恐怖がまだリアルなものとしてありました。しかし、冷戦が終わると、誰も総力戦が起きるとは考えなくなった。総力戦と密接に結びついていた核兵器のイメージも希薄になり、唯一の戦争被爆国でありながら、核兵器をリアルに実感できなくなってしまった」

 ――ふつうの日本人の核への意識が変化してきたわけですね。

 「その変化は、映画やマンガなどのポピュラー文化からも読み取れます。50〜60年代には、核兵器による最終戦争が映画や小説で数多く描かれました。61年の映画『世界大戦争』では、二つの大国の間で核戦争が起き、日本が滅んでしまう。そういう作品が作られたのは、核戦争リアリティーがまだ残っていたからでしょう」

 「80年代になると、『北斗の拳』(武論尊原哲夫)、『AKIRA』(大友克洋)、『風の谷のナウシカ』(宮崎駿)など、核戦争らしきものが起きた後の世界を描く作品が次々に現れ、歓迎されます。核戦争リアリティーを失い、一種の舞台装置として機能するようになってしまった」

    ■     ■

 ――現実には、北朝鮮の核開発など脅威は高まっています。

 「皮肉なことですが、日本人の意識の中では、『核なき世界』がすでに実現してしまっているのかもしれません。だから、オバマ大統領広島に来ても何のハレーションも起きない。次期大統領候補のトランプ氏に『日本の核武装容認する』とまでいわれても、騒がずにスルーしてしまう」

 ――5年前の福島第一原発事故で、日本人の核に対する意識はまた変わったのではないですか。

 「原発事故を経て、多くの人が被曝(ひばく)の可能性を身近に感じるようになりました。それは、かつての核実験の恐怖に近い。生活の場に放射能が入り込んでくる恐怖が、再びリアルなものになった」

 「しかし、原発事故は、核戦争核兵器の恐怖とはなかなかつながらない。3・11を経験したことで、広島長崎を捉え直す動きが出てきたようには思えません」

 ――日本人が現実の核と向き合うには何が必要だと考えますか。

 「戦後の日本が、核に対して矛盾した態度を取ってきたことを問い直すべきです。『唯一の被爆国』といいながら、核の傘の下にあり続け、『安全・繁栄・平和』を享受した。矛盾を自覚することが生産的な議論に繋(つな)がるはずです」

 「核について建前だけで話すのではなく、感情を取り戻すべきです。非生産的だといわれて抑圧されてきた情念的な怒りや恨みが、生産的なパワーとなって、『平和』や『日米友好』の美名にヒビを入れられるかもしれない」

 ――大統領広島訪問は日本人の核への意識を変えますか。

 「セレモニーだけでは、何も変わらない。やはりその場で、戦略的謝罪を求めるか、『核兵器が死の道具だと言うのであれば、投下したことをどう思われますか』と質問すべきでした。単にアメリカを責めるためではなく、われわれが核とどう向き合ってきたのかを問い直すための『戦略』です。それを日米の対話の糸口にしたい」

 「オバマ大統領広島訪問は、核についての生産的な議論をするためのきっかけになる可能性をもっていました。その貴重な機会を現状では生かし切れていないのではないでしょうか。大統領原爆慰霊碑に献花した象徴的な映像を、『これで原爆の問題は解決した』というイメージづくりに利用されてはならないと思います」(聞き手・尾沢智史)

    *

 やまもとあきひろ 84年生まれ。専門は日本近現代文化史、歴史社会学。著書に「核と日本人 ヒロシマゴジラフクシマ」「核エネルギー言説の戦後史1945―1960」。

    −−「インタビュー:広島と核めぐる意識 神戸市外国語大学准教授・山本昭宏さん」、『朝日新聞2016年05月28日(日)付。

-----

(インタビュー)広島と核めぐる意識 神戸市外国語大学准教授・山本昭宏さん:朝日新聞デジタル


Resize2737


Resize2199

覚え書:「伯爵夫人 [著]蓮實重彦 [評者]斎藤美奈子(文芸評論家)」、『朝日新聞』2016年07月24日(日)付。

Resize2733



-----

伯爵夫人 [著]蓮實重彦

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)  [掲載]2016年07月24日   [ジャンル]文芸 

 

■官能の奥に戦争へのまなざし

 東大元総長という肩書三島賞の受賞会見での不機嫌な振る舞い。そんな外形的な情報に惑わされてはなりませぬ。

 本書は往年の文学ファンを裏切らない華麗にして淫靡(いんび)な作品ですから。ただし、お若い方はご注意あそばせ。「秘本」と呼ぶに相応(ふさわ)しい本書の毒気に当てられて卒倒しても不能になっても責任は負えませぬ。

 物語の舞台は日米開戦前夜の帝都東京。主人公は二朗という少年のように見えるけれども、それ違うわね。ほんとの主役は二朗の性器よね。二朗は帝大の受験を控えた旧制高校生。一方「伯爵夫人」と呼ばれる中年女性は変幻自在、百戦錬磨のその道の達人。年上の女性が未成年の少年を教育する、と申し上げれば意味はおわかりよね。

 ところが、さまざまな呼称(「おみお玉」とか「青くせえ魔羅」とか)で呼ばれる二朗の性器一式は受難続きで、触れられもしないのに屹立(きつりつ)するわ、強い力で捻(ひね)り上げられるわ、思わぬところで粗相はするわ、過去に遡(さかのぼ)ればボールに直撃されるわ、揚げ句、女たちの手で莫迦(ばか)丁寧に介抱されるわ……。そのいたぶられ方ときたら、おいたわしいやら可笑(おか)しいやら。

 さらにはここに〈色気のない小娘〉なのに、背伸びをしたがる二朗の従妹(いとこ)の蓬子(よもぎこ)が加わって、繰り広げられるのは、性の饗宴(きょうえん)ならぬ性の周囲をぐるぐる回るような物語なわけで。

 その雰囲気は作中に頻出するココア缶の図柄のよう。〈尼僧が手にしている盆の上のココア缶にも同じ角張った白いコルネット姿の尼僧が描かれており、その尼僧が手にしている盆の上にも同じココア缶が置かれているのだから、この図柄はひとまわりずつ小さくなりながらどこまでも切れ目なく続く〉

 実在するドロステ・ココアの缶(日本にも同じ趣向で少女を描いたミルク缶があったわね)の図柄は読者を迷宮に誘い込むけど、伯爵夫人はいいきる。あの尼僧が見ているのは〈戦争にほかならぬ〉と。

 表層を覆う官能小説風の装いは手の込んだ擬態。既成のポルノグラフィーが、中心に向かって突き進み、発砲によって相手を征服したと錯覚し、しかる後に萎(な)えて「無条件降伏」状態に陥る物語にすぎないことを、伯爵夫人はせせら笑う。

 〈わたくしども女にとって、殿方のあれが所詮(しょせん)は「あんなもの」でしかないことぐらい、女をご存じない二朗さんにもそろそろご理解いただけてもいいと本気で思っております〉

 戦争と愛欲は敵対するのか類似するのか。よーくお考えあそばせ。ただ、これに賞を出された作家は迷惑よね。深夜に隠れて読む本だもの、本来は。

    ◇

 はすみ・しげひこ 36年生まれ。フランス文学者、映画評論家。元東京大学総長。著書に『反=日本語論』『監督 小津安二郎』『「ボヴァリー夫人」論』など多数。小説は本書が3作目となる。

    −−「伯爵夫人 [著]蓮實重彦 [評者]斎藤美奈子(文芸評論家)」、『朝日新聞2016年07月24日(日)付。

-----






書評:伯爵夫人 [著]蓮實重彦 - 斎藤美奈子(文芸評論家) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト



Resize2200


伯爵夫人
伯爵夫人
posted with amazlet at 16.08.19
蓮實 重彦
新潮社
売り上げランキング: 570

覚え書:「イエスの幼子時代 [著]J・M・クッツェー [評者]星野智幸(小説家)」、『朝日新聞』2016年07月24日(日)付。

Resize2734


-----

イエスの幼子時代 [著]J・M・クッツェー

[評者]星野智幸(小説家)  [掲載]2016年07月24日   [ジャンル]文芸 

 

善意だけの静かな国、その恐怖

 世界の酷薄さと暴力性を最も知悉(ちしつ)している作家クッツェーの、驚異的な新作。あまりに面白すぎて、作品世界から戻れずにいる。

 いわゆる近未来もの。ノビージャという国は、過去を捨て新しい人生を始める人たちが集まっている。皆、本当に過去の記憶をなくし、新しい名前を持ち、公用語スペイン語を話す。ノビージャに着いたばかりの中年男シモンは、船で知り合った孤児の男の子ダビードの母親を探すことを、新生活の目的としている。

 この設定を、難民移民の置かれた状況と読むこともできるが、シンプルかつ矛盾だらけのこの小説は、一筋縄ではいかない。

 ノビージャは妙に社会福祉が整っていて、シモンは船の荷揚げの仕事に就き、楽ではないけれど堅実な暮らしを手に入れる。しかし、会う人会う人が「実にきちんとしていて親切で、善意にあふれている」ことに違和感を覚え、「まるで生気がない」と苛立(いらだ)つ。

 シモンは偶然目にしたイネスという若い女性をダビードの母親だと直感し、母親になるよう頼む。イネスもなぜかこの突飛(とっぴ)な説得を受け入れ、奇妙な擬似(ぎじ)家族生活が始まる。イネスの過保護な溺愛(できあい)が深まるころ、ダビードもその才気走った型破りな性格を露(あら)わにし、三人は社会と衝突する。

 ノビージャの住人は、余暇自分磨きに余念がない。市民講座に通い、哲学を学んだりする。この小説は全編、哲学的な対話だらけなのだが、これがすれ違いだらけで抱腹絶倒。

 「歴史」とは作り話で「現在」しかないと考えるノビージャ住民から見れば、シモンは「過去があった」という幻想に縛られる不自由な存在だ。穏やかで融和的な社会で無理せずに生きていけば、安心して暮らせるのに、過剰な三人ははみ出していく。笑いに満ちたドタバタ劇を読んでいたはずが、気がつくと私は底なしの恐怖に震えている。善人だけの社会が何を殺しているのか、知ったことで。

    ◇

 J.M.Coetzee 40年、南アフリカケープタウン生まれ。03年にノーベル文学賞。『マイケル・K』『恥辱』。

    −−「イエスの幼子時代 [著]J・M・クッツェー [評者]星野智幸(小説家)」、『朝日新聞2016年07月24日(日)付。

-----







書評:イエスの幼子時代 [著]J・M・クッツェー - 星野智幸(小説家) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト








Resize2201



覚え書:「愉しき夜―ヨーロッパ最古の昔話集 [著]ストラパローラ [評者]蜂飼耳(詩人・作家)」、『朝日新聞』2016年07月24日(日)付。

Resize2735


-----

愉しき夜―ヨーロッパ最古の昔話集 [著]ストラパローラ

[評者]蜂飼耳(詩人・作家)  [掲載]2016年07月24日   [ジャンル]文芸 

 

 ヨーロッパの昔話といえばペローやグリムが思い浮かぶ。それらの成立に重要な影響を与えたのが十六世紀半ばにヴェネツィアで出版された『愉(たの)しき夜』だ。作者ストラパローラは、民間伝承の魅力と面白さに記述文学としての可能性を見いだした。ヨーロッパ最古の昔話集とも称される本書には、竜退治や動物婿や報恩の物語など、長い間語り伝えられてきたモチーフが詰まっている。

 漁師に捕らえられたマグロが、逃がしてくれた恩を忘れずに漁師を助ける物語「あほうのピエトロ」。全身毛むくじゃらで山野に暮らす野人が登場する「グエッリーノと野人」。「猫」は、ペロー童話「長靴をはいた猫」の最古のかたちを示す。本書の段階ではまだ長靴をはいていない。

 ストラパローラの昔話は、これまで日本では翻訳や紹介の機会がほとんどなかった。解説も丁寧。昔話とは、人間の希望と失望と欲望を濃縮して出来た美酒だと、改めてわかる。

    −−「愉しき夜―ヨーロッパ最古の昔話集 [著]ストラパローラ [評者]蜂飼耳(詩人・作家)」、『朝日新聞2016年07月24日(日)付。

-----







書評:愉しき夜―ヨーロッパ最古の昔話集 [著]ストラパローラ - 蜂飼耳(詩人・作家) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト


Resize2202




愉しき夜: ヨーロッパ最古の昔話集
ジョヴァンフランチェスコ ストラパローラ
平凡社
売り上げランキング: 211,211

覚え書:「ひと 笹森恵子さん=米国に移住した被爆者」、『毎日新聞』2016年5月28日(日)付。

Resize2736


-----

ひと

笹森恵子さん=米国に移住した被爆

毎日新聞2016年5月28日 東京朝刊


笹森恵子(ささもり・しげこ)さん(83)

 「ヒロシマへようこそ。勇気を持って、来てくれてありがとう」

 「原爆乙女」の一人として渡米し、26歳から米国在住。郷里の広島へたまたま帰っている時に、オバマ大統領が訪れた。

 核兵器廃絶への道筋を示せなかった大統領批判もあるが、「平和の思いを実現できないのは、反対する政治勢力がそれだけ強いということ。でも、大統領には感じたことを発信するパワーがある」と今後に期待する。

 13歳だった。真っ青な空に銀色の飛行機がきらきら光り、白い雲を引いた。「見て、きれいよ」。指をさした瞬間、吹き飛ばされて気を失った。

 大やけどを負い、家族は鏡を隠した。ある日、庭で鏡の破片を拾い、のぞき込んだ。映るのは鬼のような形相。皮膚が溶けた鼻、ケロイドでピンクになった頬、めくれた唇−−。大きな目だけは自分の目だった。

 やがて、賛美歌の美しさにひかれて教会に通い、米国人ジャーナリスト、ノーマン・カズンズ氏と出会う。後の養父だ。被爆から10年後、米国でケロイド治療を受ける原爆乙女の一人に。癒着していた首とあごを切り離し、皮膚を移植した。

 「ケロイドはだんだん薄らぐの。でも、触ってごらん」。記者の手を顔面に導いた。特に鼻のでこぼこが目立っていた。

 「この顔になったのは、ヒロシマを伝えるための神の使命。『絶対平和に』という気持ちは譲れない」。世界各地を回り、体験を伝えている。<文・竹下理子 写真・山田尚弘>

 ■人物略歴

 女学校の学徒動員先で被爆。現在は米国籍も取得。カリフォルニア州の自宅近くで、息子と2人の孫が暮らす。

    −−「ひと 笹森恵子さん=米国に移住した被爆者」、『毎日新聞2016年5月28日(日)付。

-----




no title





Resize2710

Resize2203

2016-08-20

日記:ホンキで戦う「新聞」にならないと、第二次大戦下、「大本営発表」を煽り「聖戦」を高揚させた罪を再び犯しますよ。「あの時は抵抗できなかった」と手遅れになる前に。まだ「抵抗」できるんだから。

Resize2727

朝日新聞x18歳19歳(asahi1819)がネトウヨからSEALDs叩きのDM集めてノーガードでRTし始める - Togetterまとめ





Resize2194

覚え書:「書評:移民大国アメリカ 西山隆行 著」、『東京新聞』2016年07月24日(日)付。

Resize2728



-----

移民大国アメリカ 西山隆行 著

2016年7月24日

共存目指して新たな難問

[評者]池田智=アメリカ文化研究者

 シリアからの難民受け入れの賛否が各国で生活保護や就労問題などを軸に問われ、英国がEUから離脱することになった理由に移民への福祉付与の是非や彼らが低賃金で働くために在来の労働者雇用が奪われることなどが挙げられている。またアメリカ大統領選では、共和党のトランプ氏がメキシコからの不法移民を犯罪者集団に位置づけ、国民の不安をかき立てている。

 一方、我が国では移民難民について日常話題にすることはあまりないが、少子高齢化に伴う「人口オーナス」、すなわち生産年齢人口を補充できない状態では今の経済状態を維持できないという理由で、本腰で移民受け入れを考えなければならないと主張する論者もいる。国内外における移民難民問題を目の前にする今、我が国への提言を含める形で出版された本書の先見性を評価したい。 

 本書は、移民と言えば誰もが思い浮かべるアメリカ合衆国について、その建国期から現在に至るまで、移民に伴う問題がどのようなものであり、どのように処理してきたかについて語りながら、今なお直面する問題やその対応策の模索を紹介している。多くの問題は、新しい移民は白人のプロテスタントが「歴史的に築き上げてきたアメリカ的信条の基盤を掘り崩す」のではないかという不安と結びついている。

 公民権運動が渦巻いた一九六〇年代以降、移民に対し「アメリカ的信条」に「どっぷりつかることを半ば強制する」同化政策よりは、「そのライフスタイルをある程度尊重して長期的な共存を目指す」文化多元論的な考え方が広がった。近年は慰安婦問題オスマン帝国時代のアルメニア系民族虐殺問題などをめぐり、特定の少数派民族集団が、出身国の関与するロビー活動を活発に展開しているという。

 私たちが移民受け入れを考えるとき何を考慮しなければならないかについて、実践的な視点で検討を行っている点でも、本書は一読に値する。

 (ちくま新書・886円)

 <にしやま・たかゆき> 1975年生まれ。成蹊大教授。著書『アメリカ政治』など。

◆もう1冊 

 高岡望著『アメリカの大問題』(PHP新書)。格差と移民、力の行使エネルギーという米国が直面する問題の本質を読み解く。

    −−「書評移民大国アメリカ 西山隆行 著」、『東京新聞2016年07月24日(日)付。

-----






東京新聞:移民大国アメリカ 西山隆行 著:Chunichi/Tokyo Bookweb(TOKYO Web)



Resize2195


移民大国アメリカ (ちくま新書)
西山 隆行
筑摩書房
売り上げランキング: 15,799

覚え書:「【書く人】居場所求め「個」の闘い 『ジニのパズル』 作家・崔実(チェシル)さん(30)」、『東京新聞』2016年08月14日(日)付。

Resize2729


-----

【書く人】

居場所求め「個」の闘い 『ジニのパズル』 作家・崔実(チェシル)さん(30)

2016年8月14日


 「この小説は、いま居場所がないと感じている人たちにも、読んでほしい」

 そう話す崔実さんが紡いだのは、自らと同じ在日コリアンの少女ジニの物語。群像新人文学賞に応募すると、「素晴らしい才能がドラゴンのように出現した!」「現代を考え直させてくれる力を持つ傑作」と満場一致で受賞が決定。芥川賞候補にもなり、選考会では「作品の持つ熱量が素晴らしい」と評価された。

 北朝鮮のミサイル発射が伝えられた翌日、朝鮮学校の制服チマ・チョゴリを着た中学生のジニは、繁華街で男たちに暴力を振るわれる。作家の多和田葉子さんいわく「いつ暴力にさらされるか分からない者だけが知る緊張感」が全編を貫く。

 ジニは一人で「革命」を起こそうと思い立つ。北朝鮮独裁政権への批判が高まれば、日本で危険にさらされるのは朝鮮学校に通う子どもたちだ。そうしたためた声明文を教室でばらまき、金日成・正日親子の肖像画を外して外へ放り投げる。

 結局、「革命家の卵」にもなれずに満身創痍(そうい)で米国に留学するが、そこでも退学処分になりかける。世界のどこにも居場所がない。そんなジニがたどり着くのは−。

 崔さんは中学一年のとき、東京朝鮮学校に一年間通った。「脱ぐ?」と男子生徒に話し掛けられて仰天し、朝鮮語の「ヌグ(誰)?」だと後で気付く場面は、自身の経験でもある。「朝鮮学校にもいろんな子がいる。いっしょくたにせず、個人個人を見てほしいと思った」と話す。

 主人公は自ら考え抜き、蛮勇とも思える行動に出る。日本社会の卑劣な差別に傷つき、北朝鮮の実情を知って無批判でいられない。欺瞞(ぎまん)に満ちた体制と対照的なその思想は、まっすぐに光を放つ。

 ふだんは販売の仕事をしている。二十代前半で二回文学賞に応募したが、どちらも一次選考を通らなかった。三十歳の誕生日を間近に控え、一念発起した。寝る間も惜しんで一気に書き上げたのが本作だ。

 自らデザインしたTシャツを着こなす。ホットパンツからは長い足がのびる。米国産の駄菓子の山を前に「お菓子中毒なんです」。子どもの時、お話をつくって家族や友達に聞かせるのが好きだった。公園のベンチでホームレスの人と談笑することも。そんなのびやかな感性で次作の構想を練っている。

 講談社・一四〇四円。 (出田阿生)

    −−「【書く人】居場所求め「個」の闘い 『ジニのパズル』 作家・崔実(チェシル)さん(30)」、『東京新聞2016年08月14日(日)付。

-----







東京新聞:居場所求め「個」の闘い 『ジニのパズル』 作家・崔実(チェシル)さん(30):Chunichi/Tokyo Bookweb(TOKYO Web)








Resize2196


ジニのパズル
ジニのパズル
posted with amazlet at 16.08.18
崔 実
講談社
売り上げランキング: 209

覚え書:「【東京エンタメ堂書店】戦争の実相に迫る3冊 報道の視点から探る」、『東京新聞』2016年08月15日(月)付。

Resize2730


-----

東京エンタメ堂書店】

戦争の実相に迫る3冊 報道の視点から探る

2016年8月15日

 ちょうど30年前、私は「戦争を取材したい」と考え、新聞記者を職業に選びました。学生時代に、18世紀のドイツ哲学者カントが著した「永遠平和のために」などの平和論を勉強する中で、戦争の実情を知りたいという思いを強くしたためです。以来、旧ユーゴスラビア戦争、パレスチナ紛争イラク戦争などの現場を見る機会を持ち、平和について考えています。第2次大戦の終戦から71年の8月15日にあたり、ジャーナリズムの視点から戦争の実相に迫ろうとした3冊をおすすめします。 (外報部デスク・嶋田昭浩)

◆責任回避

 先週、「原爆」をテーマにした本が紹介されましたが、私もまず<1>半藤一利湯川豊著『原爆の落ちた日 決定版』(PHP文庫、一〇八〇円)を推します。日本の敗戦が決定的となって、戦争が一日長引けばそれだけ多くの人命が失われる状況が明らかであるにもかかわらず、日本の指導者たちが決断を先送りし、ついには原爆投下という破滅につながる日々が、再現されています。

 自分の責任における重大な決断を回避しようとするのは、今日の日本の政界やさまざまな組織にもはびこり続ける弊害だけに、歴史から学びたいものです。

情報操作

 二十世紀後半に朝鮮戦争と並ぶ甚大な人的被害を出したベトナム戦争で、米政府がいかに誤りを犯して泥沼に陥ったかも、振り返らなければなりません。

 <2>デイヴィッド・ハルバースタム著『ベスト&ブライテスト 中巻 ベトナムに沈む星条旗』(二玄社、一八三六円)は、戦場となったベトナムからの客観的な情勢報告が軍上層部によって握りつぶされ、しかもワシントンの当時のケネディ政権が楽観的声明を出す「PR活動による戦争」によって事態が悪化していく経緯を、活写しています。ベトナム戦争前後の国際情勢に詳しくない場合は、上巻から読み始めるのがいいでしょう。

◆対テロ

 現代の戦争では<3>ボブ・ウッドワード著『オバマの戦争』(日本経済新聞出版社、二五九二円)が挙げられます。対テロ戦の名目で米中央情報局(CIA)などが行う秘密作戦を題材にした政権内幕物です。

 米国での出版直後、米情報機関の元トップに直接、読後感を聞くと「退屈だった」。現実の極秘工作はもっとすさまじいよ、と言いたいのでしょうが、この本に書かれているだけでも十分に興味深い内容です。

写真

◆原典批判

 番外編として<4>石原莞爾(かんじ)著『戦争史大観』(中公文庫、782円)はいかがでしょう。書かれたことをうのみにするのでなく、テキストを批判的に読み込むのも大切な読書です。同じ著者の『最終戦争論』が有名ですが、宗教観が前面に出ていることもあり、むしろ戦争史大観の方が軍事的主張が明解な気がします。

 旧日本陸軍の軍人だった石原は、東条英機無能呼ばわりした異色の関東軍参謀として知られます。欧米の軍事哲学に精通し、将来の原爆の出現を予想していたとも言える石原独自の軍事論。その主張のどこに問題があるかを考えるのは、有益なことでしょう。

    −−「【東京エンタメ堂書店】戦争の実相に迫る3冊 報道の視点から探る」、『東京新聞2016年08月15日(月)付。

-----







東京新聞:戦争の実相に迫る3冊 報道の視点から探る:Chunichi/Tokyo Bookweb(TOKYO Web)


Resize2197


原爆の落ちた日【決定版】 (PHP文庫)
半藤 一利 湯川 豊
PHP研究所 (2015-07-03)
売り上げランキング: 33,764


戦争史大観 (中公文庫BIBLIO)
石原 莞爾
中央公論新社
売り上げランキング: 64,461

覚え書:「危機の20年 北田暁大が聞く 第2回 ゲスト・姜尚中さん 保守政治の流れ」、『毎日新聞』2016年05月28日(日)付。

Resize2731


-----

危機の20年

北田暁大が聞く 第2回 ゲスト・姜尚中さん 保守政治の流れ(その1)

毎日新聞2016年5月28日 東京朝刊

 21世紀の日本は、経済の「失われた20年」を経て、政治や社会も激変した。北田暁大東京大教授(社会学)が当事者や識者と振り返る。今回は、政治学者姜尚中さんと、戦後政治の流れの中にこの20年を位置づける。【構成・鈴木英生、写真・内藤絵美】

経済成長が支えた路線小渕政権で完全に終了

 北田 今の安倍晋三政権に至る、特に過去約20年の保守政治の流れをどうご覧になりますか?

対談する北田暁大東大教授(左)と姜尚中東大名誉教授=東京都千代田区で、内藤絵美撮影

 姜 戦後政治全体の中で捉えるべきでしょう。戦後民主主義を支えてきたのは、実は大きくいえば吉田(茂)=注<1>=路線。この20年は、与党内で吉田路線に代わるものの試行錯誤が続いてきた。

 北田 吉田路線とは?

 姜 戦前の体制から軍部や統制官僚などを排除した、保守派の政治路線です。軍部国家社会主義では国体を護持できないと結集した保守政治家昭和天皇周辺の人々が、アメリカの求めた改革を受け入れて天皇制を残した。日米合作で「戦後国体」を護持し、民主主義平和主義本土内で達成した。戦後レジームとは憲法日米安保沖縄の犠牲の三本柱で、経済成長に支えられていた。吉田路線は1970年代半ば以降の低成長期を経て冷戦終結とバブル崩壊、95年の阪神大震災で壁にぶち当たった。90年代半ばから少子高齢化も進み、小渕恵三政権(98年7月〜2000年4月)を最後に、吉田路線は完全に終わったと言えます。

 北田 それまでの自民党と支持層に、ある程度の民主主義的な感覚やバランス感覚を与えた基盤は、経済の順調さへの信頼でした。政治が、どうしたら幸福な人生を過ごせるかを示し、それを実現する土壌として経済成長があった。人々の「幸せ」の形は、お父さんが外で働き、お母さんが専業主婦で子供2人に持ち家、という「家族の戦後体制」=注<2>=でした。これ自体、欺まんに満ちたものでしたが、とにかくその幸せ像で政治は人々を引っ張れました。

 今の安倍政権がしようとしているのは、かつての幸せ像提示の反復でしょう。アベノミクスで成長の夢を見せて、反ヘイトスピーチ法や性的少数者の権利擁護法案などでリベラルさも出す。最終目標は改憲ですが、人々の社会意識、平等や多様性をうまくつまみ食いしています。他方で野党財政均衡ばかり。対抗策は、経済成長と安定に支えられた民主主義を取り戻すことしかないのに。

 姜 それと、日本の宿痾(しゅくあ)は中央集権的な動員体制です。行政の集中が極端で、先日私が熊本で経験した大地震のような災害で、見事に問題が噴出する。道州制も必ずしもよくはないですが、(分権的な)ドイツは日本よりはるかにうまくいっている。行政の集中を変えるには「政治の集中」が必要ですが、民主党の政治主導は見事にこけた。ともあれ、日本はこの20年間、成長が難しくなったが故に集権化が進んだのではないかと。

 北田 行政による直接の規制は、20年で確実に緩和されました。僕の立場も公務員から国立大学法人の非公務員になった。他方で小さい予算をえさに、みんなが競争にかり出されている。露骨な支配ではなく形式的に自立させて、えさを細分化して誘導する。農漁業も工業も教育も、規制緩和と統治の強化がセットです。

 姜 僕は79年を戦後の転換点と見ますが、当時の大平正芳首相は、財政再建のため、初めて消費税導入を目指した。20年後に首相を務めた小渕は大平を尊敬していた。吉田路線は大平政権で曲がり角を迎え、小渕政権で終わる。小渕政権で別の道を選べたら、今ほどはひどくならなかった。

 北田 戦後、自らの能力で官僚を御し切れた首相は、岸信介=注<3>=まででしょう。続く池田勇人以後の首相は、官僚との調整型になる。ちなみに、60年安保ではあれだけ「反岸」機運が高まったのに、直後の総選挙自民党は「負けなかった」。この経験を野党や反安倍の立場の人たちは思い出した方がいい。ともあれ、池田政権以降は経済官僚主導の高度成長が成功した。この調整型が大平あるいは小渕で終わった。特に小渕後は、官僚をコントロールしているつもりで、実はまったく官僚に勝てない首相が続いています。

 調整型首相の時代は、ほぼ、「家族の戦後体制」幻想の時代と重なる。この幻想を前提に国も企業も労組も制度を作ってきた。79年は確かに分水嶺(ぶんすいれい)で、80年代には主婦がパートつまり非正規労働をしないと住宅ローンが払えなくなる。90年代には、本格的に幻想が壊れた。今こそ、以前と違う形での調整と幸せ像の提示が必要なのに、調整のできない人たちが政治をしている。少子化も家族も労働も貧困も対策がばらばら。お金をばらまいたり、行政婚活パーティーをしたり、道徳教育で家族の大切さを教えても解決しません。

 ■人物略歴

カン・サンジュン

 1950年熊本市生まれ。東京大名誉教授、熊本県立劇場館長。早稲田大大学院博士課程修了。聖学院大学長など経て現職。著書『悩む力』『在日』『漱石のことば』など多数。

    −−「危機の20年 北田暁大が聞く 第2回 ゲスト・姜尚中さん 保守政治の流れ(その1)」、『毎日新聞2016年05月28日(日)付。

-----



-----

危機の20年

北田暁大が聞く 第2回 ゲスト・姜尚中さん 保守政治の流れ(その2止)

毎日新聞2016年5月28日 東京朝刊

壊れた家族の戦後体制 調整できない政治家

 姜 中曽根康弘政権が86年に衆参同日選で大勝したとき、中曽根さんは「自民党は左にウイングを伸ばした」と言いました。古い自民党は完全な農村型政党でしたが、第2次以降の安倍政権は、中曽根以来の都市政党化の流れにある。

 北田 安倍政権は都市中間層を取り込むため、政策のばらまきに本当に努力している。「保育園落ちた日本死ね」騒動への迅速な対応を見ても、都市の30〜50代を確実に意識している。とはいえ、問題は山積ですから与党への対抗軸が必要です。そこで、経済成長をどう考えるか。今、日本の1人あたりのGDP(国内総生産)は世界で26位です(名目、2015年)。政治が幸せ像を提示する、北欧型といわずとも、西欧型の福祉政策をやるにもこの回復が喫緊の課題です。それには健全な成長が必要です。

 姜 2020年に基礎的財政収支プライマリーバランス)を黒字化するのは無理ですね。プライマリーバランスはいったん脇に置き、医療や教育、年金など市場経済化できるような社会関係資本財政出動によって5年なりの期限付きで育て内需を喚起する。いわば5カ年計画が必要です。

 北田 医療や教育など人的資源に投資したとき、回収にはせめて5年、あるいは10年かかります。スウェーデンは、これを何十年単位でやりました。

 姜 野党は単年度で政権を取ろうとしても……。

 北田 政権は取れませんね。なにせ現状は、目前の参院選改憲阻止が目標ですから。

 姜 改憲を阻止できる議席の確保では、55年体制と変わらない。「立憲主義擁護」は一般の人に分かりにくく、民進党対米従属に違いはない。だからこそ、社会的資本への投資とそれによる将来像をパッケージで示して、与党との違いを見せてほしい。今のままでは、下手をすれば与党が3分の2の議席をとりかねませんよ。

注<1>=1878〜1967年。46〜47年と48〜54年、計5次にわたり首相。戦前は親英米の外交官で、戦中は和平工作を企てた。

注<2>=落合恵美子京都大教授の言葉。

注<3>=1896〜1987年。57〜60年に首相。戦前は革新官僚、戦中は東条英機内閣に入閣。戦後はA級戦犯容疑者(不起訴)。安倍晋三首相の祖父。

 ■対談の背景

 以前、大阪の市場で取材したときに、「アベノミクスのおかげで中国人観光客が増えて景気がいい」と言われた。今回の議論から、第2次、第3次安倍政権は、岸政権で失敗した改憲路線を基盤に、表層ではむしろ、池田政権以降の成長路線、あるいは中曽根政権以降の都市中間層向け路線を引き継いでいると分かる。だから、「立憲主義の破壊」程度で支持率はあまり下がらない。この複雑さを前提にした分析が、より広まることを期待したい。【鈴木英生】=次回は6月25日掲載

 ■人物略歴

きただ・あきひろ

 1971年神奈川県生まれ。東京大大学院博士課程退学。博士(社会情報学)。筑波大講師など経て現職。著書『嗤(わら)う日本の「ナショナリズム」』『広告の誕生』など。

    −−「危機の20年 北田暁大が聞く 第2回 ゲスト・姜尚中さん 保守政治の流れ(その2止)」、『毎日新聞2016年05月28日(日)付。

-----


no title

no title



Resize2725

Resize2726

Resize2198