毎日新聞連載「ネット君臨」で考える取材の可視化問題

http://blog.japan.cnet.com/sasaki/2007/01/post_10.html

やや長い記事ですが、報道というものの在り方や取材方法、といったことを考える上でも、参考になる内容だと思います。
私の場合、まだ経験(被害?)はありませんが、取材によっては、記事の内容、ストーリーが決まっていて、「取材」と称して、単にその根拠を後付けで探しているだけ、ということも少なくないようです。出来の悪い捜査で、先にストーリーができあがっていて、それに沿って関係者から、無理矢理、供述調書をもぎ取って行くのと似ています。取材依頼があると、プライドをくすぐられ、名前が売れる、有名になれる、といった思惑から喜々として応じる人は大勢いますから、取材を行う者が、こういう記事を作りたいと思えば、それほど苦労もなく、一丁上がり、という状態で記事ができてしまう、という側面は、確かにあると思います。
インターネットが普及し、情報が氾濫する状況だからこそ、良いものとそうでないものを見極める能力、といったものが強く求められているということが言えると思います。

日興、有罪元常務を高報酬で雇用…2千万円で9年間

http://www.zakzak.co.jp/top/2007_01/t2007012607.html

元常務は平成9年、総会屋グループ代表に不正に利益供与したとして商法違反などの容疑で逮捕され、翌10年には新井議員への利益供与で起訴された。同年9月、東京地裁で懲役1年執行猶予3年の判決を受けた。
この元常務は10年ごろから、旧日興証券(現・日興コーディアルグループ)の子会社、日興ビジネスシステムズと嘱託契約を結び、年間2000万円近くの報酬を受け取ってきたという。日興が厚遇したのは、汚れ役を引き受けた見返りだった可能性もある。

この種の犯罪は、個人が個人の判断で行うような性質のものではなく、組織の意を受け組織のために行う「組織犯罪」ですから、刑事事件の中では、個人の独断でやった、などという、ふざけた話になっていても、組織は、その後の生活の面倒を徹底的にみるものです。その点、証券会社も暴力団も、やっていることは変わらない、ということでしょう。
日本の企業等が、建前として声高に叫んでいる「コンプライアンス」が、所詮、この程度のもので、本音の部分では、利益のためには手段を選ばない、違法な行為であっても平然と手を染め、そのために犠牲になった者は徹底的に面倒を見る、ということが、よくわかるニュースだと思います。
美しい国」の実態は、この程度のものということでしょう。

富山の冤罪事件、法相が謝罪

http://www.asahi.com/national/update/0126/TKY200701260211.html

長勢法相は「取り調べに(自白の強要などの)問題があって(罪の)容認に転じたことはなかったのは明確」とした上で、「色々な議論はあるところで、慎重に検討していくべき問題だ」と述べた。

真相解明は、今後も続くはずですが、報道を見ていると、

富山県警誤認逮捕の男性「身内が認めたと迫られ自白」
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070126it06.htm

男性によると、取り調べは、任意同行を求められた02年4月8日から始まり、「『身内の者が間違いないと言っている』と何度も告げられ、やっていないと言っても信用されるわけがないと思った。言われるままに認めざるを得ない状況だった」と話した。その上で、「身内までも僕のことを信用していないんだと思った。気が抜けたようになってしまった」と語った。男性は3回目の聴取で自白に追い込まれた。

といったことも報じられています。いかにも、ありそうなことであり、やってもいない人に自白させてしまった取り調べに、何の問題もなかった、と考えること自体に、そもそも無理があります。
法務大臣という重責を担う者であれば、このような深刻な冤罪事件が起きた理由や、取り調べに問題があったか、あったとすれば何が問題だったかということの徹底究明を命じるべきであり、問題発覚後、間もない現時点で、上記のように、取り調べに問題がなかったことが明確、などと、軽々しく述べることは許されないでしょう。
最近の法務大臣は、資質に問題がある人物が多く、これでは法治国家として由々しき問題だと思います。

宮城の女子高生殺害が時効 目撃情報乏しく捜査難航

http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2007012601000703.html

県警は仙台北署に特別捜査本部を設置、延べ約12万5000人を動員して捜査を続けたが、目撃情報が乏しいことなどから有力な手掛かりが得られなかった。最近は専従捜査員6人で被害者の足取りなどを再捜査した。

「専従」とありますが、どこまで専従状態だったか疑問で、実態は、捜査はやっています、という、一種のアリバイ作りのための、なんちゃって専従捜査員だった可能性が高いでしょう。
重大事件は次々と時効、迷宮入りの時効警察、とはこのことで、これでは、被害者も浮かばれず、その遺族も納得はできないはずです。

拉致・特定失踪者、学校や学歴に共通性 「選定者」存在か


http://www.sankei.co.jp/shakai/rachi/070128/rat070128000.htm

北朝鮮による拉致被害者や、拉致の可能性を排除できない「特定失踪(しっそう)者」の出身校や経歴などを調べたところ、学校や学歴に共通性がみられるケースが40人以上にのぼり、特定失踪者全体(約460人)の1割近くに達することが27日、拉致被害者を調べている「特定失踪者問題調査会」(荒木和博代表)の分析で分かった。分析結果は、周辺に“ターゲット”を選定する協力者がいた疑惑を浮かび上がらせている。

拉致自体が目的ではなく、拉致した後、連れ帰って働かせることが目的で拉致していたはずですから、こういった人材がほしい、という目的の下に調査を重ね、ターゲットを絞って拉致していた、という可能性が高いでしょう。
こういった「属性」から逆にたどって行くことで、拉致の計画性、犯行の流れ、といったことについて、見えてくるものもある、ということが強く感じられます。

防衛相発言に米国抗議 「同盟に悪影響危惧」

http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2007012701000445.html

イラクへの米軍増派を決めた大統領が国内外で批判にさらされている時期だけに、同盟国である日本の防衛相発言を深刻に受け止めたとみられる。

DVD硫黄島:地獄の36日間」を観ていて思ったのは、この戦闘に、多大な犠牲を払うだけの価値があった、と思う(思いたい)一方で、本当にそれだけの価値、意味があったのか、という疑問、悔恨の気持ちが、今なお当時の米軍関係者の心に重くのしかかっている、ということでした。映画「硫黄島からの手紙」などの硫黄島関連の映画が、米国でもこれだけ注目されているのは、イラク問題を重ねて見ている人が多いからこそではないかと思います。次の大統領選挙が次第に迫る中で、米国内でも、イラク問題に関し、ブッシュ政権は厳しく批判され、それも一因となって、先日の中間選挙では民主党が大勝した、という事実もあり、ブッシュ政権は次第に追い込まれていると言って良いと思います。
こういう中で、日本が、いつまでもブッシュべったりの「プードル」状態では、国際的にも、また、米国内からも、その見識を疑われるだけでなく、次期大統領に民主党出身者が就任したり、共和党出身者が就いてもブッシュ政権とは一線を引く(特にイラク問題などで)状況になった際に、かえって同盟関係に深刻な亀裂が生じる可能性が高いと思います。
日本政府関係者としても、ブッシュ政権や米国内の動向をよく見ながら、何が日本の国益にとってプラスになるか、ということをよく考えて行動すべきであり、先がないブッシュ政権の最後の悪あがきのおつきあいをすべきではないと思います。

録画ネット、まねきTVに関する記事

30年を経て、ソニー第2の“ベータマックス訴訟” 
http://www.sankei.co.jp/keizai/sangyo/070128/sng070128000.htm
「録画ネット」と「まねきTV」の明暗 
http://www.sankei.co.jp/keizai/sangyo/070128/sng070128001.htm
「法律が、技術の進歩に追いついていない」
http://www.sankei.co.jp/keizai/sangyo/070128/sng070128002.htm
3者インタビュー 「まねきTV」
http://www.sankei.co.jp/keizai/sangyo/070128/sng070128003.htm
3者インタビュー 「録画ネット」
http://www.sankei.co.jp/keizai/sangyo/070128/sng070128004.htm
3者インタビュー 「テレビ局側」
http://www.sankei.co.jp/keizai/sangyo/070128/sng070128005.htm

そんな開発者の意図とは無関係な次元で、ロケフリを大量に預かるまねきTVのサービスは、放送制度の根幹を揺るがす問題もはらんでいる。放送免許は都道府県ごとの「県域免許」だが、地方在住者が永野商店にロケフリ装置を預ければ、東京のキー局の番組をいつでも視聴でき、地方局が視聴者を失う恐れがあるのだ。
また、ロケフリは外国で日本の番組も視聴できるため、国際的な放映権の枠組みをも無意味にしてしまう可能性もある。
このため放送局側は、ロケフリを自宅などに設置するなら私的使用として容認するが、業者が関与する形は絶対に認めない構えだ。

「インターネット」対「電波利権」という、ステレオタイプの見方はしたくありませんが、やはり、この問題に、そういった側面が存在するのは事実でしょう。
この問題におけるインターネットは、観たい番組を手軽に観たい、という、利用者のささやかな願望を実現し、電波利権が作り出した不自由から利用者を解き放つ、奴隷を解放したリンカーン大統領のような存在と言っても過言ではないでしょう。
インターネットを手放しで礼賛するつもりはなく、様々な問題を抱えていることは直視すべきだとは思いますが、インターネットが、情報の遍在、情報流通の不公平、そういった問題に付け込む形で儲けている人々から大衆を解放する、といった役割を既に果たし、今後も果たそうとしているのは事実だと思います。
利用者を自分達の掌の上で踊らせ、巨利を博し、豪華な社屋を建設し高収入を得て栄耀栄華を極め笑いが止まらない、という、昔の藤原氏平氏のような状況が、いつまでも続くと考えるべきではなく、時代に合った生き残り方、儲け方、ということを考えないと、気がついたら、壇ノ浦で滅亡した平氏のような末路をたどる、ということにもなりかねません。>電波利権者の人々

インターネットは5年以内にテレビに革命もたらす=ビル・ゲイツ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070128-00000527-reu-bus_all

滝井繁男・元最高裁判事インタビュー(平成19年1月24日・朝日新聞朝刊)

http://d.hatena.ne.jp/okaguchik/20070125/p1
http://imak.exblog.jp/5036922/

でも取り上げられていましたが、先程、じっくりと読んでみました。
私自身、元々、検察庁にいて、刑事事件に対する関心が高いということもあり、滝井氏が語る中の、刑事事件について、

最高裁判事が事実認定を取り上げ、有罪破棄の結論を出すのは、今の仕事量では困難だ。膨大な記録と長時間、格闘しなければならない

などと、最高裁が、徹底的に審理しきれていない実情を率直に吐露している部分は、深刻な問題だと感じました。
地裁の裁判官はいろいろな点で未熟、高裁の裁判官は有罪判決を書きすぎて検察べったり、といった場合に、許されざる有罪判決を破棄し不正義を防止する最後の安全弁は最高裁しかなく、その最高裁が、滝井氏が語るような状態では、正義はどこに求めれば良いのか、ということになるでしょう。
単に、最高裁を責めるのではなく、事件数や仕事量に対し、人員が追いついていない実態がある以上、特に刑事事件については、抜本的な組織改革(例えば、通常の刑事事件を取り扱う最高裁判事の人数を増やし、現行の最高裁判事に該当する人々は憲法問題や重要な法律問題のある事件に専念するなど)ということも、真剣に検討される必要があると思います。

お堅いイメージ捨て、検察がキャラクター

http://www.asahi.com/national/update/0128/TKY200701280168.html

昔、どこかの暴力団で、「仲良し組」という感じの名前のものがあった、という話を聞いたことがありますが、それと似た不気味さ(?)を感じますね。
画像を引用させてもらいますが、

左上の熊(ヒグマ?)は、起訴された被告人をバイバイしながら見送っているところ
上の真ん中の、何だかよくわからないキャラクターは、「絶対無罪にはしないぞ!」と頑張っている姿
右上のクラゲ(イカ?)みたいなキャラクターは、被告人や弁護人の主張・立証をのらりくらりとかわしているところ
左下の熊(多分、シロクマでしょう)は、無罪主張・立証に立ちふさがっている姿
右下の鳥(鶴?)は、思い通りに主張・立証がはかどって、喜々として飛び回っているところ

を現しているように見えます。
映画「それでもボクはやってない」で、警察署の玄関前に、大きなピーポ君が置いてあり、見ているだけで腹が立ってきたことを思い出しました。
とはいえ、親しまれる検察庁になる、というのは、それがもし可能であれば、悪いことではありません。