99歳精神科医の挑戦/秋元波留夫

 一世紀も生きるというのは凄いことですね。西丸四方先生よりもさらに高齢の著者は1906年生まれの精神科医です。若い頃には島田清次郎の「地上」を読み、東大の医学部にはいって石田昇の「新撰精神病学」を読んで、精神医学を志し、石田昇がアドルフ・マイアーのところに留学中、統合失調症を発病して殺人罪で拘留された後、病状悪化のため帰国して入院したかつての勤務先松沢病院で主治医をしていたそうです。長崎医専で石田の後任となったのが斎藤茂吉。また石田が「新撰精神病学」で写真入りでとりあげた有名な症例、芦原将軍とその後の石田のからみも数奇なものでした。
 笠原嘉先生といい、時代を生き抜いてきた人たちのパワーはやっぱり違いますね。

うつ病を体験した精神科医の処方せん/蟻塚亮二

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 タイトル通りの内容ですが、著者はうつ病の体験の一方で弘前市長選立候補などエネルギッシュな顔も持っているようです。
 なぜか昨日に続きイギリスの精神分析家で神田橋條治先生のスーパーヴァイザーだった John Padel の名前をこの本にも発見。ウィニコットみたいなメジャーな人ならともかくちょっとびっくりしました。神田橋先生の名前もちらほら。作者の師匠は日下部病院の松井紀和先生のようです。

精神分析の間に人生の上で重要な決定をしないというのは、現実原則じゃないですよ。

精神科ER救急救命室/備瀬哲弘

 府中病院のER(救急外来)を訪れる精神科救急の患者さんに関する現役の精神科医のノンフィクションです。タイトルはテレビ番組を意識していますが、精神科専門のERがある訳ではありません。
 僕のつとめていた病院も精神科救急はやっていましたが、やはり都市部の場合は大変さが違うでしょうね。

p.22 患者さんを自分の子どもに重ねてみてしまうのが「投影性同一視」?

子育てはなぞとき/内田良子

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 就学前の子どもの教育の部分に関しては、うなずく部分が多いのですが、不登校の問題になると僕とは意見が合わない部分も結構ありました。子どもが理想化され、学校が脱価値化されるのですが、例えば義務教育を廃止したら教育がうまくいくかというとそんなことはないのではと思ってしまいます。